手取川(てどりがわ)は、石川県の主に白山市を流れて日本海へ注いでいる一級河川。石川の通称で呼ばれた時代もあり、郡名(石川郡)および県名の由来となっている[1]。
地理
石川県白山市南部の旧白峰村の岐阜県境にそびえる白山に源を発し北流する。上流には手取川ダムがあり、中流域の旧鳥越村・吉野谷村地区では河岸段丘を下刻して(手取峡谷)を形成している。旧鶴来町市街地で流路を西へ変更し、山から金沢平野へ抜ける地点を扇頂とした扇状地を形成している。能美市と能美郡川北町の境界を流れ、白山市の旧美川町で日本海に注いでいる。平均河床勾配1/27は日本有数の急流河川である。
河口より約40km北東に位置する「千里浜なぎさドライブウェイ」で有名な千里浜は、手取川が運搬した土砂が沿岸流によって運ばれ堆積したものである。
名称
倶利伽羅峠の戦いの後、平家軍を追う木曾義仲軍が篠原の戦いを前に、増水して濁流の川を渡るとき、多くの兵士が互いに手に手を取って流されないようにして渡ったことに由来する[2]。また、氾濫のたびに渡るのに手間取ったことに由来するとも言われる[3]。徳光パーキングエリアの南脇の大川、大慶寺川(現・大慶寺用水)など扇状地での流れも変わってきたが手取川と呼ばれる以前は「比楽河・ひらかがわ」とも呼ばれた[4][5][6]。河口の港は比楽湊、その後「本吉湊」と呼ばれ、室町時代には三津七湊の1つであった。
支流
- 柳谷川
- 三ツ谷川
- 大道谷川
- 百合谷川
- 赤谷川
- 下田原川
- 尾添川
- 瀬波川
- 大日川
- 直海谷川
七ヶ用水
七ヶ用水(しちかようすい)は、手取川を水源とし、金沢平野の北側半分を潤す7つの用水の総称である[7]。疎水百選。
ほとんどは新たに用水を掘ったのではなく、何度も流れを変えた手取川のかつての川筋を元にして作られている。
2006年(平成18年)に疎水百選に選定[7]、2014年(平成26年)には国際かんがい排水委員会によるかんがい施設遺産に登録されている[7]。また、大水門および給水口が土木学会の土木遺産に登録されている。
災害
暴れ川として知られ、過去幾度となく洪水・氾濫を繰り返した。
1912年(大正元年)には、支流の甚之助谷が地すべり性崩壊を起こして荒廃。砂防事業による対策が進められた[8]。また1934年(昭和9年)7月の災害は手取川最大の土砂災害が発生。前年の豪雪による残雪と豪雨の影響で水量が増加、上流の別当谷で大崩壊が発生し(別当崩れ)死者・行方不明者が100人を超える大災害となった。白山麓の市ノ瀬集落はこの災害で壊滅した。2004年(平成16年)5月の災害では別当出合にある砂防新道の吊橋が流失した。国直轄の白山砂防事業として砂防堰堤や砂防トンネル、地滑り対策が実施され、白山砂防科学館が設置されている。
手取川扇状地上の集落は洪水を避けるため自然堤防の微高地に立地しており、島集落と呼ばれる景観を形成している。
百万貫の岩
旧白峰村白峰集落(旧・牛首)の上流、石川県道33号白山公園線沿いの河床にある高さ16mの大岩。1934年(昭和9年)の大洪水の時に支流の宮谷川から流出した。大災害の様子を後世に伝える資料であり、県指定天然記念物に指定されているとともに日本の地質百選にも選定されている。
河川施設
1980年(昭和55年)に建設された手取川ダムは上水道、工業用水、電力、治水に利用される。上水道は、石川県の七尾市以南に広く供給されている。また、農業用水も各地から取水される。
主な橋梁
上流より示す。
- 赤谷大橋(国道157号)
- 鴇が谷大橋(国道157号)
- 大倉谷大橋(国道157号)
- 女原大橋(国道157号)
- 対山橋(石川県道178号木滑釜清水線・石川県道302号手取川自転車道線)
- 黄門橋(国道360号)
- 江津橋(石川県道180号河合江津線)
- 広瀬大橋(石川県道44号小松鳥越鶴来線)
- 金名橋(石川県道302号手取川自転車道線)
- 鳥越大橋(石川県道44号小松鳥越鶴来線)
- 一の宮大橋(国道157号)
- 山上郷大橋(国道157号)
- 天狗橋(石川県道4号小松鶴来線)
- 川北大橋(旧川北大橋有料道路)
- 辰口橋(石川県道22号金沢小松線)
- 手取川橋(石川県道157号松任寺井線)
- 手取川大橋(国道8号)
- 手取川橋梁(北陸新幹線)[9][10]
- 川北能美大橋(石川県道25号金沢美川小松線 加賀海浜産業道路)[11]
- 手取川鉄橋(北陸本線) - 北陸新幹線の金沢駅 - 敦賀駅間開業後はIRいしかわ鉄道へ移管予定[12][13]。
- 美川大橋(石川県道25号金沢美川小松線)
- 手取川橋(北陸自動車道)
水力発電
1911年(明治44年)に金沢電気瓦斯(現在の金沢市企業局の前身)が福岡に発電所を建設したのが手取川水系の水力発電の第1号である(現在の北陸電力福岡第一発電所)。現在は水系に22(電源開発:1、北陸電力:21)の発電所がある。
北陸電力吉野第一発電所
北陸電力福岡第一発電所
環境
河口では毎年秋にサケが遡上する[14]。有効利用調査の対象河川として、事前申込制で期間内にサケの遊漁ができる(手取川サーモンフィッシング)[14][15]。
舞台となった作品
※発表順
- 映画
脚注
- ^ 『意外と知らない石川県の歴史を読み解く! 石川「地理・地名・地図」の謎』実業之日本社、2015年1月5日、74頁。ISBN (978-4-408-11100-1)。
- ^ “木曽義仲の伝説 鶴来町”. 石川新情報府. 2010年7月20日閲覧。
- ^ 石川県. “手取川”. 石川県. 2019年9月6日閲覧。
- ^ “昔々の手取川は「比楽河」”. 北陸先端科学技術大学院大学. 2010年7月20日閲覧。
- ^ “2.中・近世(1)中世の本吉湊、比楽湊・本吉湊(美川漁港)の「みなと文化」” (PDF). pp. 4-5/19 ページ. 2010年7月20日閲覧。
- ^ “白山・手取川と生きる、白山砂防通信” (PDF). 国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所. pp. 2/4ページ (2005年冬号、VOL.10). 2010年7月20日閲覧。
- ^ a b c 七ヶ用水(石川県) - 農林水産省
- ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』293頁 河出書房新社刊 2003年11月30日刊 (全国書誌番号):(20522067)
- ^ “”. 北國新聞 (2018年10月12日). 2019年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月21日閲覧。
- ^ “北陸新幹線の手取川橋梁が連結 石川・川北”. 北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ(北國新聞). (2019年6月26日)2022年8月21日閲覧。
- ^ “加賀海浜産業道路(川北町橘〜能美市福島町間)の開通式について” (PDF). 石川県土木部道路建設課 (2023年3月2日). 2023年3月5日閲覧。
- ^ “北陸新幹線延伸、どうなる「サンダーバード」と新快速 - 敦賀駅へ”. マイナビニュース (2022年7月24日). 2022年8月21日閲覧。
- ^ “北陸新幹線24年延伸 JRと石川県、並行在来線譲渡で合意”. 日本経済新聞. (2022年8月17日)2022年8月21日閲覧。
- ^ a b . 北國新聞. (2021年10月22日). オリジナルの2021年10月30日時点におけるアーカイブ。2022年8月21日閲覧。
- ^ 手取川サーモンフィッシング - 手取川サケ有効利用調査実行委員会
- ^ 千葉真一 (1989年1月13日) (日本語) (Color). なんだ、こいつら。JACスーパーアクション in 激突 (VHS). 東映ビデオ
関連項目
- 白山手取川ジオパーク
- 白山国立公園
- 篠原の戦い
- 手取川の戦い - 1577年(天正5年)に起きたとされる織田氏と上杉氏の戦い。
- 島集落 - 手取川扇状地における独特な集落形態。
- 三津七湊 - 河口は本吉湊と呼ばれた七湊の1つ。
- 手取フィッシュランド - 能美市にある遊園地。手取川堤防に接して立地。
- 清酒「手取川」 - 株式会社吉田酒造店が醸造する日本酒。(日本酒メーカー一覧)を参照。
- 石川県道302号手取川自転車道線(手取キャニオンロード) - 手取川沿いに走る自転車専用道路
外部リンク
- 手取川 - 国土交通省水管理・国土保全局
- 手取川の概要 - 国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所
- 手取川七ヶ用水土地改良区