心所(しんじょ、巴: cetasika, チェータシカ、梵: caitasika, チャイタシカ)とは、仏教における心・精神の構成要素・機能のこと。五位分類においては、「心所法」として表現される。
部派仏教
上座部大寺派
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南伝の上座部仏教(上座部大寺派)では、『アビダンマッタ・サンガハ』に則り、心所を以下の全52種とする[2][3]。
- 心所(しんじょ、cetasika, チェータシカ)(52)
- 同他心所(どうたしんじょ、aññasamāna cetasika, アンニャサマーナ・チェータシカ)(13)
- 共一切心心所(くいっさいしんしんじょ、sabba-citta-sādhārana cetasika, サッバチッタサーダーラナ・チェータシカ)(7)
- 雑心所(ぞうしんじょ、pakinnaka cetasika, パキンナカ・チェータシカ)(6)
- 不善心所(ふぜんしんじょ、akusala cetasika, アクサラ・チェータシカ)(14)
- 浄心所(じょうしんじょ、sobhana cetasika, ソーバナ・チェータシカ)(25)
- 【共浄心所】
- 信(しん、saddhā, サッダー) - 仏法僧など、善なる対象に対して心を澄ませること
- 念(ねん、sati, サティ) - 気づき、自覚
- 慚(ざん、hiri, ヒリ) - 罪を恥じること
- 愧(き、ottappa, オッタッパ) - 罪を恐れること
- 無貪(むとん、alobha, アローバ)
- 無瞋(むしん、adosa, アドーサ) - 慈しみ
- 中捨(ちゅうしゃ、tatramajjhattatā, タトラマッジャッタター) - 心の平静さ
- 身軽安(しんきょうあん、kāyappassaddhi, カーヤッパッサッディ)
- 心軽安(しんきょうあん、cittappassaddhi, チッタッパッサッディ)
- 身軽快性(しんきょうかいしょう、kāyalahutā, カーヤラフター) - 体の身軽さ
- 心軽快性(しんきょうかいしょう、cittalahutā, チッタラフター) - 心の身軽さ
- 身柔軟性(しんにゅうなんしょう、 kāyamudutā, カーヤムドゥター) - 体の柔軟さ
- 心柔軟性(しんにゅうなんしょう、 cittamudutā, チッタムドゥター) - 心の柔軟さ
- 身適合性(しんちゃくごうしょう、kāyakammaññatā, カーヤカンマンニャター)
- 心適合性(しんちゃくごうしょう、cittakammaññatā, チッタカンマンニャター)
- 身練達性(しんれんだつしょう、kāyapāguññatā, カーヤパーグンニャター)
- 心練達性(しんれんだつしょう、cittapāguññatā, チッタパーグンニャター)
- 身端直性(しんたんじきしょう、kāyujukatā, カーユジュカター)
- 心端直性(しんたんじきしょう、cittujukatā, チットゥジュカター)
- 【離心所】
- (正語)(しょうご、sammā-vācā, サンマーヴァーチャー) - 嘘をつくことなど悪しき言葉の行為から離れること
- (正業)(しょうごう、sammā-kammanta, サンマーカンマンタ)
- (正命)(しょうみょう、sammā-ājīva, サンマーアージーヴァ)
- 【無量心所】
- 悲(ひ、karunā, カルナー) - 他人の苦しみを取り除いてあげたいという心
- 喜(き、muditā, ムディター) - 他人の幸福を喜ぶ心
- 【智慧の心所】
- 慧根(えこん、paññindriya, パンニンドゥリヤ) - 真理に対する智慧
- 【共浄心所】
- 同他心所(どうたしんじょ、aññasamāna cetasika, アンニャサマーナ・チェータシカ)(13)
説一切有部
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詳細は「(五位#諸説)」を参照
説一切有部の『倶舎論』では、心所(心所法)を以下の全46種とする。
- 心所法(しんじょほう、caitasika dharma, チャイタシカ・ダルマ)(46)
- 大地法(だいじほう、mahā-bhūmika dharma, マハーブーミカ・ダルマ)(10)
- 大善地法(だいぜんじほう、kuśala-mahābhūmika dharma, クシャラ・マハーブーミカ・ダルマ)(10)
- 大不善地法(だいふぜんじほう、akuśala-mahābhūmika dharma, アクシャラ・マハーブーミカ・ダルマ)(2)
- 大煩悩地法(だいぼんのうじほう、kleśa-mahābhūmika dharma, クレーシャ・マハーブーミカ・ダルマ)(6)
- 小煩悩地法(しょうぼんのうじほう、parītta-kleśabhūmika dharma, パリーッタクレーシャブーミカ・ダルマ)(10)
- 不定地法(ふじょうじほう、aniyatabhūmika dharma, アニヤタブーミカ・ダルマ)(8)
大乗仏教
唯識派・法相宗
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唯識派及びその東アジア後継である法相宗では、『唯識三十頌』に則り、心所(心所法)を以下の全51種とする[4]。
- 心所法(しんじょほう、caitasika dharma, チャイタシカ・ダルマ)(51)
- 遍行心所(へんぎょうしんじょ、sarvatraga, サルヴァトラガ)(5)
- 別境心所(べっきょうしんじょ、viniyata, ヴィニヤタ)(5)
- 善心所(ぜんしんじょ、kuśala, クシャラ)(11)
- 煩悩心所(ぼんのうしんじょ、kleśa, クレーシャ)(6)
- 随煩悩心所(ずんぼんのうしんじょ、upakleśa, ウパクレーシャ)(20)
- 小随煩悩(10)
- 中随煩悩(2)
- 大随煩悩(8)
- 不定心所(ふじょうしんじょ、aniyata, アニヤタ)(4)
脚注・出典
- ^ Primary Minds and the 51 Mental Factors by Alexander Berzin (see section "Count of the Mental Factors")
- ^ 心を育てるキーワード集 - 日本テーラワーダ仏教協会
- ^ ウ・ウェープッラ, 戸田忠『アビダンマッタサンガハ 南方仏教哲学教義概説〔新装版〕』中山書房仏書林、2013年、47-52頁。ISBN (978-4-89097-076-6)。
- ^ 「仏教の言葉の「心王(しんのう)・心所(しんじょ)」について、いくつか種類があったと思うが、それぞれの名称を確認したい。」(山梨県立図書館) - レファレンス協同データベース