工藤正廣

工藤 正廣（工藤 正広、くどう まさひろ、1943年5月5日 - ）は、日本のロシア文学者、詩人、北海道大学名誉教授。元・公益財団法人北海道文学館理事長。現・北海道立文学館館長（2023年3月現在）。

津軽方言を用いた詩を書くほか、ボリス・パステルナークの詩を多く翻訳、研究した。専門はロシア文学・ポーランド文学。文芸誌『同時代』同人^[1]。

経歴

1943年（昭和18年）5月5日、青森県黒石生まれ^[2]。北海道大学文学部露文科を卒業し、東京外国語大学大学院修士課程を修了。大学院在学中にロープシン『蒼ざめた馬』『漆黒の馬』の翻訳を手がけ、頭角をあらわす。札幌の同人誌『黎』^[3][4]に所属して詩や小説を書きながら、ロシア文学を翻訳。同人誌『オリザ』^[5]を主宰^[2]。1984年、北海道大学言語文化部助教授、教授、2007年定年、名誉教授。

1993年、『ロシア・詩的言語の未来を読む : 現代詩1917-1991』で第27回北海道新聞文学賞、2021年、『チェーホフの山』で第75回毎日出版文化賞特別賞受賞。小熊秀雄賞、北海道新聞文学賞選考委員を務める。2014年より公益財団法人北海道文学館第5代理事長を務め（後任は平原一良）^[6]、同財団が運営する北海道立文学館館長を前任の池澤夏樹から2018年に引き継いだ^[7]。

著書

• 『桜桃の村にむけて』創映出版、1972年
• 『パステルナークの詩の庭で : 工藤正広試論集』白馬書房、1976年
• 『眠る故郷 : 工藤正広作品集』白馬書房〈白夜叢書〉、1980年
• 『ゆめ雪』白馬書房、1982年
• 『パステルナーク研究 詩人の夏』北海道大学図書刊行会、1988年
• 『新サハリン紀行』風媒社、1990年
• 『ドクトル・ジバゴ論攷』北海道大学図書刊行会、1990年
• 『ロシア・詩的言語の未来を読む 現代詩1917-1991』北海道大学図書刊行会、1993年
• 『なつかしい終わりと始まり ぼくの<津軽>方言詩』津軽書房、1997年
• 『ロシアの恋 1953-1991年 : 工藤正廣詩集』未知谷、2001年
• 『Tsugaru : 物語の声・文体論レッスン』未知谷、2001年
• 『籾と先生』緑の笛豆本の会、2002年
• 『片歌紀行 : 今に生きる建部綾足』未知谷 2005年
• 『“秋田雨雀”紀行 1905〜1908』津軽書房 2008年
• 『永遠と軛 : ボリース・パステルナーク評伝詩集』未知谷、2015年
• 『アリョーシャ年代記 春の夕べ』未知谷、2019年
• 『いのちの谷間 : アリョーシャ年代記2』未知谷、2019年
• 『雲のかたみに : アリョーシャ年代記3』未知谷、2019年
• 『郷愁 : みちのくの西行』未知谷、2020年
• 『西行抄 : 恣撰評釈72首』未知谷、2020年
• 『チェーホフの山』未知谷、2020年

翻訳

• ロープシン『蒼ざめた馬』晶文社〈晶文選書〉、1967年
• ロープシン『漆黒の馬』晶文社〈晶文選書〉、1968年
• ユーリイ・オレーシャ『愛』晶文社、1971年
• ボリス・ピリニャーク『機械と狼』川端香男里共訳 白水社、1973年
• ミハイル・ジョーミン『日は鉄格子に昇る』講談社、1976年
• アクショーノフ『星の切符』〈世界文学全集42〉 学習研究社、1979年
• オリガ・イヴィンスカヤ『パステルナーク詩人の愛』新潮社、1982年
• 『晴れようとき パステルナーク詩集 1956～1959』響文社、1984年
• 『パステルナーク詩集』双書・20世紀の詩人 小沢書店、1994年
• アレクサンドル・レベジ『憂国』工藤精一郎・佐藤優・(黒岩幸子)共訳 徳間書店、1997年
• 『わが妹人生 1917年夏 : ボリース・パステルナーク詩集』未知谷、2000年
• 『バリエール越え : ボリース・パステルナーク詩集 1914-1916』未知谷、2002年
• パステルナーク『初期1912-1914 あるいは処女詩集から』未知谷、2002年
• ヴェリミール・フレーブニコフ『シャーマンとヴィーナス』未知谷、2003年
• アントン・チェーホフ『中二階のある家 : ある画家の物語』未知谷、2004年
• 『早朝列車で : ボリース・パステルナーク詩集 1936-1944』未知谷、2004年
• 『第二誕生 : ボリース・パステルナーク詩集 1930-1931』未知谷、2006年
• 『主題と変奏 : ボリース・パステルナーク詩集 1916-1922』未知谷、2008年
• アンナ・アフマートヴァ『夕べ（ヴェーチェル）』未知谷、2009年
• パステルナーク『リュヴェルスの少女時代』未知谷、2010年
• パステルナーク『物語』未知谷、2010年
• 『パステルナーク全抒情詩集』未知谷、2011年
• パステルナーク『ドクトル・ジヴァゴ』未知谷、2013年 ISBN (978-4-89642-403-4)

脚注

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1. ^ 「同時代」同人一覧、『同時代』第34号、2013年6月、p. 153。
2. ^ ^{a b} 北海道文学館 編 1985, p. 130, 「工藤正廣」.
3. ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(下) : 第十編 現代の札幌 : 第九章 芸術・文化の拡がり : 第一節 芸術文化 : 一 文学 : 評論大国・北海道を支えて”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市 (2005年3月31日). 2023年4月4日閲覧。 “〔昭和〕51年〔1976年〕創刊の季刊『詩と創作 黎』も評論活動に特色がある。同人に沖典代（沖藤典子）、熊谷政江（藤堂志津子）らもいたが、編集人の有土健介（のち本名の谷口孝男）が二葉亭四迷論から中島みゆき論、谷川雁（がん）論等、幅広い評論活動を展開した。また、経済評論家・小林睦夫が、〔平成〕6年秋号から「同人誌文芸季評」をスタート（以前は「エコー・ポスト・ジャンボ」名で不定期寄稿）し、道内同人誌をきめ細かに批評している。〔平成〕15年の102号は、14年末に死去した発行人・いのうえひょう（井上彪）の追悼号であった。”
4. ^ P.L.B.(川口則弘). “『黎』”. 同人雑誌評の記録. 2023年4月4日閲覧。 ※同人誌『黎』掲載作品として雑誌『文學界』の同人雑誌評で言及された作品の一覧。
5. ^ P.L.B.(川口則弘). “『オリザ』”. 同人雑誌評の記録. 2023年4月4日閲覧。 ※同人誌『オリザ』掲載作品として雑誌『文學界』の同人雑誌評で言及された作品の一覧。
6. ^ “概要 : 沿革”. 北海道立文学館. 2023年3月20日閲覧。
7. ^ “公益財団法人北海道文学館のあゆみ”. 北海道立文学館. 2023年3月20日閲覧。 “2018年6月29日午後5時から、臨時理事会を開催し、池澤夏樹館長から申し出のあった館長退任を了承するとともに、当財団前理事長・詩人・ロシア文学者の工藤正廣さんに北海道立文学館の館長就任を委嘱した。発令は7月1日付。”

参考文献

• 『文藝年鑑2012』 新潮社、2012年6月。
• 北海道文学館 編『北海道文学大事典』北海道新聞社、1985年。  ※項目「工藤正廣」は神谷忠孝の担当執筆。

外部リンク

• 「同時代」公式サイト