川瀬 一馬(かわせ かずま、1906年1月25日 - 1999年2月1日[1])は、昭和時代の書誌学者・日本文化史家。文学博士(東京教育大学・1954年)。
経歴
東京市赤坂区表町で生まれる。父方の先祖は伊勢で米商を営んだ家柄という。麹町小学校を卒業する[2]が、その間、父と母を失ったために進学の道を絶たれ東京市役所に給仕として勤める。小学校の旧師の尽力により成蹊実務学校に入学し、中村春二の薫陶を受ける。日本史専攻の志を立て東京高等師範学校文科に入学、ついで東京文理科大学へ進み、卒業[3]後は国文研究室初代助手となるが、2年あまりで職を解かれる。以後は公職に就かず研究活動を続ける。
2代目安田善次郎の知遇を受け、安田文庫の典籍蒐集に助力。昭和25年(1950年)から昭和49年(1974年)まで青山学院女子短期大学国文科主任となり、同時に昭和40年(1965年)から文化財保護審議会専門委員に任命され81歳まで務めている。青山学院女子短大名誉教授、財団法人大東急記念文庫理事、五島美術館理事、財団法人(阪本龍門文庫)理事長などの要職を兼ね、晩年には石川文化事業財団が所蔵する(成簣堂文庫)の再調査・目録編纂に従事。静岡英和女学院院長、静岡英和女学院短期大学学長を歴任した。
昭和29年(1954年)に「古辞書の研究」により、東京教育大学から文学博士の学位を授与される[4]。昭和41年(1966年)に紫綬褒章、昭和51年(1976年)に勲三等旭日中綬章を受章している。研究者としては白鳥庫吉・諸橋轍次の影響を受け、さらに若い頃から弓道・茶道・能・香道・華道に至るまで研鑽を積み、個人の文庫で珍籍を扱った経験は多数の学術書に結実している。
著書
- 『古活字版の研究』(安田文庫、1937年)
- 『日本書誌学の研究』(講談社、1943年)
- 『足利学校の研究』(講談社、1948年/増訂版 吉川弘文館、2015年)
- 『花伝書(風姿花伝)』(わんや書店、1949年/講談社文庫、1972年)現代語訳
- 『古辞書の研究』(講談社、1955年)
- 『五山版の研究』(日本書籍商業協同組合、1970年)
- 『江戸時代仮名絵入文学書概論』(雄松堂書店、1972年)
- 『方丈記・鴨長明』(講談社文庫、1971年)校注・現代語訳
- 『徒然草』(講談社文庫)校注・現代語訳
- 『古写古版物語文学書解説』(雄松堂書店、1974年)
- 『能とは何か -能芸術の表現の本質-』(講談社文庫、1976年)
- 『日本文化史』(講談社学術文庫、1978年)
- 『成簣堂文庫随想』(お茶の水図書館、1988年)
- 『随筆 柚の木』(中公文庫、1989年)
- 『随筆 蝸牛』(中公文庫、1991年)
- 『日本における書籍蒐蔵の歴史』(ぺりかん社、1999年/吉川弘文館<読みなおす日本史>、2019年)