『大ダーク』(だいダーク)は、林田球による日本の漫画。『ゲッサン』(小学館)にて、2019年4月号から連載中[2]。著者にとっては『ドロヘドロ』に続く同誌における2作目の連載となる。[独自研究?]
あらすじ
主人公のザハ=サンコの骨を奪った者は「どんな願いも叶える」と言われ、絶えず多くの宇宙人から命(骨)を狙われる運命にある。相棒のアバキアンと共に、襲い掛かる宇宙人を返り討ちにしながら骨を集め、噂を流した者を特定するため宇宙を旅し続ける[3]。
登場人物
四匹の害悪
- ザハ=サンコ(小学生時はミートボール=スパゲティの偽名で活動)
- 本作の主人公[1]。闇の世界出身の少年。「どんな願いも叶える」骨の持ち主であり、子供のころから命を狙われ続けてきた。相棒のアバキアンの機転でもぐりこむことに成功した小学校で、死の肉を捜しに来た死ま田=デスと知り合い交友関係を結ぶこととなった。
- アバキアン
- 闇の世界出身の闇のニーモツ。骨の形をしたバックパック型の生命維持装置の一種で自我を有している。ザハ=サンコが死ぬとアバキアンも死ぬとされており、常に行動を共にする存在である。口からザハ=サンコが使う闇の武器を出して援護するほか、火炎放射も行う。
- 死ま田=デス
- 闇の世界出身。若い女性の姿をしているが、通常は闇の皮で覆い体形を隠している。体形は自由に変形させることができ、ザハ=サンコの通う小学校では小学生の格好で潜入することもあった。宇宙人の死を喰らうために活動し、時には自ら宇宙人を殺害する。
- 一=ダメ丸
- 光力塊から狙われる年齢不詳の謎の存在。環境の変化に弱いため、個々のストーリーの序盤には行動不能となっていることがほとんど。相手の意識を奪う精神攻撃を使うほか、情報収集能力に長けている。アバキアン、死ま田=デスからは信用されていない。
闇の武器および食品販売業者
- 店谷=ボックス
- 闇の武器および酒饅頭の移動販売業者。一=ダメ丸の骨を安く買いたたこうとして見抜かれる、戦闘中の現場に呼び出されて商品収納ボックスを失うなど、しばしばビジネスセンスの欠如を露呈する。
沿革
2018年9月12日発売の『ゲッサン』10月号にて、林田の『ドロヘドロ』の最終回が掲載され、同号にて本作の連載を準備していることを発表[4]。2019年3月12日発売の4月号より連載を開始[2]。
第1巻のカバーの初期のコンセプトは「クラシカルでノスタルジーを感じる1冊にしたい」であった[5]。そこで「今売れているコミックスを見に行こう」と林田と担当編集者が都内の大型書店へ訪れたところ、「色々と悩んだ」林田は青山剛昌の『まじっく快斗』の単行本を手に取った[5]。しかし紆余曲折あり、第1巻は別物となった[5]。単行本第1巻と同日に発売した『ゲッサン』2019年12月号では、その「初期コンセプトが詰まったデザイン」を採用したアナザーカバーが付属している[5]。
2019年、ヴィレッジヴァンガードの公式フリーペーパーの『VVマガジン』12月号の表紙に『ドロヘドロ』とともに本作が採用される[6]。2020年1月1日より、ヴィレッジヴァンガードにて「ドロヘドロ&大ダーク」福袋を展開[6]。2020年1月、YouTubeにて本作のCMを公開[7]。
作風
広い宇宙を舞台としたコメディ[1]、ダークファンタジー。主人公らの攻撃により、敵の肉と骨が分離するグロテスクなシーンが頻発するが、全編軽快なストーリーが展開する。[独自研究?]
コミックナタリーによると、本作は「『ドロヘドロ』にもあったコメディ要素がさらにパワーアップ」し、「アップテンポで賑やかに描かれて」いるが、「登場キャラクターがかぶっている“マスク”」や「主人公を囲む陽気なキャラクターたち」など、『ドロヘドロ』の読者も楽しめるよう描かれている[1]。
制作背景
連載決定
2017年、『ヒバナ』(小学館)がなくなり、『ドロヘドロ』が『ゲッサン』に移籍した時には、同作のアニメの話があった[1]。その当時は2019年の秋アニメの予定で当時の『ゲッサン』の編集長が「アニメと同時に新連載の1巻を出したいね」と言ったことにより、同作の終了時には新連載の掲載号が決定していた[1]。しかし同作の終了後から本作の開始までの半年には、同作の企画や作業をしていたため、本作の「準備期間はほぼゼロ」であった[1]。「主人公の外見も性格も、全然決まら」ず、「主人公って難しい」と何か月も考えながら、2019年1月くらいに本作の第1話のネームを描き始めた[1]。「編集長のOKを取る前に、連載が始まることだけ決定して」いたため、同月、担当編集者は編集長から「タイトル以外影も形もないけど大丈夫」かと言われていた[1]。
構想
「もともと、映画の『エイリアン』が好き」で、「宇宙でクリーチャーと戦う『Dead Space』という洋ゲーが大好き」な林田は、宇宙がすごく好きでも「宇宙……つまりSFは私には描けないとほぼ諦めていた」が、新連載の予告をしなければならないため、「もう宇宙しかない」と考え、「『宇宙でいく、好きだからなんとかなるだろう』と宇宙と向き合うこと」にした[1]。「予告には内容が多少わかるように書きたい」と考えていた担当編集者が「『宇宙、惑星、大冒険』でどう」かと提案したため、林田は「じゃあそれでなんとかします! それでいきましょう!」と答え、「予告の通りの展開」となった[1]。林田は「『ドロヘドロ』が長期連載できつい時期もあった」ため、「次は軽いものを、という思いもあ」った[1]。林田によると「『ドロヘドロ』にもコメディ要素」があったが、本作は「軽く読める、ちょろちょろって読んでもらうのに適したマンガ」であり、「本当にコメディだと思ってい」ると話している[1]。
連載開始と主人公
主人公の「名前も決まらない、性格も決まらない、どうしよう」と考え、「一人称は「ぼく」で、14歳にしてみようか」程度の「あんまり固まりきらない」状態で第1話が開始された。林田は「普通の少年を描くのはあまり得意ではない」ため、大きくしようと考えた[1]。林田によると「最初は主人公をおっさんにしようとか、すごくぽっちゃりにしようとか、いろいろ考えた」が、「自分が好きになれるキャラクターというのは大前提として、みんなが描かない主人公のほうが、まだ勝機がある」と考え、試行錯誤の末、「14歳と言いつつ少年らしさを排除したサンコ」が誕生している[1]。『ゲッサン』は「恋愛を描く作品がすごく多い」が、「恋愛や青春の描写を描けない」林田は、「恋愛を描かずにネームが通るのか」と悩んだこともあると話している[1]。林田は『おかしなガムボール』や『ぼくはクラレンス!』などの「小学校が舞台の作品が多い」ようなカートゥーンアニメを観ており、ネタ帳に「小学校」とメモをしていたが、「新連載のネタとして「宇宙」とくっつけてみようかと」考え、サンコの8歳の時のエピソードが挿入されている[1]。
作品について
林田によると、「SFを描いていて大変なこと」は用語であり、「独自のカッコいいSF用語」は無理だと考え、「想像しやすい、簡単な言葉で作るように」している[1]。ネーミングのルールを決めるまで、時間がかかったという[1]。「主人公側のアイテムは“闇の某”、敵対勢力の光力塊が作ったものは“光”土コンテナとか“光”油先生」と決まっている[1]。
「食べたいけどすぐ食べに行けないものをマンガに出す」という林田は、「ギトギトしたのが食べたい」と考え、みぼすぱん(ミートボールスパゲティパン)を登場させている[8]。
評価
書誌情報
- 林田球『大ダーク』小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉、既刊6巻(2023年4月12日現在)
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t “「大ダーク」特集 林田球インタビュー”. ナタリー (2020年8月12日). 2023年4月21日閲覧。
- ^ a b c “舞台は宇宙!林田球の新連載「大ダーク」開幕、「ドロヘドロ」マグカップの全サも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年3月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク1”. 小学館 (2019年). 2023年4月21日閲覧。
- ^ “林田球「ドロヘドロ」18年の連載に幕!最終巻はガイド本と同発、新連載も予告”. コミックナタリー (ナターシャ). (2018年9月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ a b c d e “「ドロヘドロ」林田球の新作「大ダーク」1巻発売、ゲッサン付録に別カバーも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年11月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ a b “「ドロヘドロ」ギョーザ男のマスコットやTシャツなどがVVに、年賀状風特典も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年12月26日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “ゲッサンで「陽気なしめりけ」が連載化、「ドロヘドロ」の特別鼎談&全サも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年1月11日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “アニメ「ドロヘドロ」特集 林田球インタビュー”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年1月10日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “次にくるマンガ大賞2022、コミックス部門1位はつるまいかだ「メダリスト」”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年8月31日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 1”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。
- ^ “「大ダーク」アナザーカバーがゲッサンに、あだち充読み切り「足つりバカ日誌」も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年8月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 2”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。
- ^ “「大ダーク」「ドロヘドロ」の会員証もらえる書店フェア、ゲッサンに別カバー付録も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年4月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 3”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。
- ^ “「大ダーク」描き下ろしイラストのメンコもらえる書店フェア、ゲッサンに付録も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年11月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 4”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。
- ^ “「大ダーク」「ドロヘドロ」の描き下ろしミニうちわもらえる書店フェア開催”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年8月8日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 5”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。
- ^ “「大ダーク」6巻発売、表紙にも登場した宇宙貨物用ステッカーもらえる書店フェアも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年4月12日)2023年4月22日閲覧。
- ^ “大ダーク 6”. 小学館. 2023年4月22日閲覧。