坂本 工宜(さかもと こうき、1994年8月19日 - )は、滋賀県高島市出身のプロ野球選手(投手)。右投右打。兵庫ブレイバーズでの登録名は工宜(こうき)。
経歴
プロ入り前
祖父が大の巨人ファンだった影響で、小学3年から野球を始める[1]。高島市立安曇川中学校から関西学院高等部に進学。部員約180人の硬式野球部で外野手としてレギュラーを目指したものの、公式戦ではベンチ入りすら果たせないまま、系列校の関西学院大学に進んだ。
関西学院大学で投手への転向を志したが、硬式野球部が「高校時代までの投手経験者しか投手として公式戦に出場させない」という方針を取っていたことから、外野手として準硬式野球部へ入部[2]。2年時に投手に転向してからは、ストレートで最速147km/hを計測するまでに成長した。関西六大学準硬式野球のリーグ戦では、4年時の春季にチーム9季振りの優勝へ貢献。最多勝利・最多奪三振・MVPのタイトルも獲得した。
2016年のNPB育成ドラフト会議で、巨人から4巡目で指名。支度金300万円、年俸240万円(金額は推定)という条件で、育成選手として入団した。入団当初の背番号は006[3]。
巨人時代
2017年には、フューチャーズの一員として臨んだ4月12日の対東京ヤクルトスワローズとの非公式戦で実戦デビューを果たした。公式戦での登板機会はなかったが、三軍戦では5勝3敗、防御率2.92を記録。シーズン終了後に台湾で開かれた2017アジアウインターベースボールリーグには、二軍(イースタン・リーグ)公式戦での登板実績がないにもかかわらず、NPBイースタン選抜のメンバーに名を連ねた[4]。
2018年には、イースタン・リーグ公式戦で、ヤクルトとの開幕カード第2戦の先発投手に抜擢。その後は、先発・救援の両方で実戦経験を積みながら、通算23試合の登板で3勝4敗、防御率4.85という成績を残した[5]。
2019年には、春季1次キャンプを二軍で迎えたが、キャンプ中の紅白戦で好投。育成選手からただ1人、2次キャンプから一軍に合流[6]すると、オープン戦でも開幕から救援で好投を続けた[7]。3月2日には、育成選手契約から支配下選手契約へ移行するとともに、背番号を58に変更することが発表された[8]。3月4日付で、NPBから支配下登録選手として公示[9]。4月13日の対東京ヤクルトスワローズ戦(東京ドーム)で2点を追う8回表に5番手として登板し、これが一軍初登板となった。しかし、田代将太郎に適時三塁打を打たれるなど3者連続適時打を浴び、1回3失点というデビューになった[10][11]。翌4月14日の試合(対ヤクルト)では敗色濃厚の5点差の9回表に6番手で登板し、2安打されながらも1回を無失点で抑えたが、4月15日に一軍登録を抹消された[12]。二軍で23試合に登板し、4勝5敗、防御率3.28という成績を挙げるも[13]再度一軍に昇格することはなく、10月1日、戦力外通告を受ける[14]。11月12日に大阪シティ信用金庫スタジアムで開催された12球団合同トライアウトに参加し、打者3人に対して2三振を奪うなど無安打で抑え込む好投を見せ[15]、「まだまだやれると思っている」と語った[16]。
無所属時代
トライアウト後、どの球団からも声が掛からなかったが無所属のまま、兵庫県西宮市の野球専門施設「ベースボールメディカルセンター」を拠点に練習を続けた[17]。現状ではプロでは通用しないと判断して独学でアンダースローの投球法を習得、独立リーグへの入団を模索した[18]。
神戸三田・兵庫時代
2021年4月28日、関西独立リーグ(さわかみ関西独立リーグ)の神戸三田ブレイバーズに入団することが発表された[19]。登録名は「工宜」[19]。5月9日の対和歌山ファイティングバーズ戦(串本町の総合運動公園 サン・ナンタンランド)で救援として公式戦初登板。同月25日に行われたオリックス・バファローズとの交流戦にも登板し、ともに1回を無失点に抑えた[20][21]。6月11日の対和歌山戦(アメニスキッピースタジアム)で、入団後初めて先発登板したが、制球難から球数がかさみ、3回を投げて被安打8、5失点(自責4)と炎上した[22]。以降は、登板なくシーズンを終えた。
2022年5月12日、古巣・巨人三軍との交流戦で、同じく元巨人の折下光輝、山川和大、村上海斗とともにリーグ選抜メンバー入り[23]。3回に救援登板したが、1回を投げて被安打3、3失点を喫した[24]。
選手としての特徴
最速149km/hのストレートを武器とする本格派右腕。投球フォームは、2段モーションからやや上体をのけぞらせて角度をつけるオーバースロー[17]。持ち球はスライダー、チェンジアップ、カーブ、フォーク[25]。
巨人退団後、2019年12月にアンダースローに転向[26]。転向後も140km/h前後の球速は出せるようになっている[17]。変化球もオーバースロー時代から減らさないようにした結果、アンダースローとしては非常に珍しいフォークを投げることができ、これを決め球としている[26]。
人物
高校時代の野球生活については、巨人への入団後に「不完全燃焼という感じで、悔しいことの方が多かった。いい思い出はない」と述懐している[27]。しかし、関西学院大学の準硬式野球部へ所属していた3年時に、準硬式野球の関西選抜チームの一員として台湾に遠征したことが転機になった。それまでは一般企業への就職を志していたが、台湾で硬式球へ触れた際に、「硬式球が指にしっかりと引っかかる」という感覚をつかめたという。この遠征を機に、進路をNPBの球団に絞ったため、就職活動から手を引いた[27]。
巨人へ入団するきっかけになった2016年のNPBドラフト会議で、東北楽天ゴールデンイーグルスから6位で指名(後に支配下登録選手として入団)した鶴田圭祐(指名の時点では帝京大学準硬式野球部投手)とは、同郷(滋賀県出身)のよしみから連絡を取り合うほど仲が良い[27]。
学生時代は自身と同姓・同じ関西地方(兵庫県)出身の坂本勇人の大ファンで、勇人の背番号(6)のレプリカユニフォームを身にまとって、阪神甲子園球場の阪神タイガース対巨人戦で巨人を応援したこともある[28]。巨人への入団を機にチームメイトになったため、入団が決まった直後に勇人へ挨拶すると、関西弁で「お前が入ってきたせいで(名前で区別するために)俺が『坂本勇』って3文字になったやん」と突っ込まれた[25]。
詳細情報
年度別投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 巨人 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 12 | 2.0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 3 | 3 | 13.50 | 2.50 |
NPB:1年 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 12 | 2.0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 3 | 3 | 13.50 | 2.50 |
- 2019年度シーズン終了時
年度別守備成績
- 2019年度シーズン終了時
記録
- 投手記録
- 初登板:2019年4月13日、対東京ヤクルトスワローズ2回戦(東京ドーム)、8回表に5番手で救援登板、1回3失点
- 初奪三振:同上、8回表に西浦直亨から空振り三振
独立リーグでの投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 神戸三田 兵庫 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | .000 | 26 | 4.0 | 10 | 0 | 3 | - | 1 | 1 | 0 | 1 | 5 | 4 | 9.00 | 3.25 |
2022 | 15 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | .000 | 95 | 19.0 | 17 | 1 | 20 | - | 5 | 13 | 2 | 0 | 17 | 17 | 8.05 | 1.95 | |
通算:2年 | 17 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 4 | .000 | 121 | 23.0 | 27 | 1 | 23 | - | 6 | 14 | 2 | 1 | 22 | 21 | 8.22 | 2.17 |
- 2022年度シーズン終了時
背番号
登録名
- 坂本工宜 (2017年 - 2019年)
- 工宜 (2021年 - )
代表歴
- 2017アジアウインターベースボールリーグ:NPBイースタン選抜[4]
登場曲
- 「Beautiful Now feat. Jon Bellion」Zedd(2019年)
脚注
出典
- ^ “大学倶楽部・関西学院大:巨人から育成枠で指名 準硬式野球部の坂本工宜投手”. 毎日新聞 (2016年10月23日). 2021年12月30日閲覧。
- ^ “【巨人】坂本工宜、準硬式野球と出会い自分が何をすべきか考えるようになった”. スポーツ報知 (2018年5月1日). 2021年12月30日閲覧。
- ^ “【巨人】育成4位・坂本、準硬式出身でも「やれるんだ」支配下登録へやる気満々”. スポーツ報知 (2016年10月25日). 2017年4月22日閲覧。
- ^ a b “2017アジアウインターベースボールリーグ(AWB)NPBメンバー一覧”. 日本野球機構 (2017年10月19日). 2017年11月2日閲覧。
- ^ シーズン成績
- ^ “巨人育成の坂本工宜、沖縄キャンプ行き決定 戸根、大城、吉川大、立岡も”. Full-Count (2019年2月11日). 2019年3月4日閲覧。
- ^ “巨人・坂本工が1回1/3完全!支配下登録にまた前進”. サンケイスポーツ (2019年2月11日). 2019年3月4日閲覧。
- ^ “【巨人】準硬式出身の坂本工宜が支配下契約会見「やってやろうという気持ちは人一倍強かった」”. スポーツ報知 (2019年3月2日). 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b c “新規支配下選手登録 | 2019年度公示”. 日本野球機構. 2019年3月4日閲覧。
- ^ “巨人坂本工宜3失点ほろ苦デビュー「悔しい初登板」”. 日刊スポーツ. (2019年4月13日)2019年11月27日閲覧。
- ^ “【巨人】準硬式出身の坂本工、3失点でホロ苦1軍デビュー”. スポーツ報知. (2019年4月13日)2019年11月27日閲覧。
- ^ “出場選手登録および登録抹消 | 公示”. 日本野球機構 (2019年4月15日). 2019年11月27日閲覧。
- ^ “2019年度 読売ジャイアンツ 個人投手成績(イースタン・リーグ)”. 日本野球機構. 2019年11月27日閲覧。
- ^ “【巨人】坂本工宜に戦力外通告 準硬式出身右腕、異色の経歴持つ育成の星”. スポーツ報知 (2019年10月1日). 2019年10月1日閲覧。
- ^ “元巨人・坂本工、トライアウトで打者3人相手に2奪三振とアピール”. SANSPO.COM. (2019年11月12日)2019年11月27日閲覧。
- ^ “元巨人坂本工宜がトライアウトで2K「まだやれる」”. 日刊スポーツ. (2019年11月12日)2019年11月27日閲覧。
- ^ a b c 桑原幹久 (2020年4月4日). “絶対諦めない巨人戦力外の坂本工宜が下手投げ挑戦 - プロ野球番記者コラム”. 日刊スポーツ2020年9月28日閲覧。
- ^ “元巨人・坂本工宜、アンダースロー挑戦で再起誓う! 独立から再びプロ入りへ”. サンケイスポーツ (2020年4月3日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ a b 新入団選手のお知らせ - 神戸三田ブレイバーズ(2021年4月28日)2021年4月28日閲覧。
- ^ “工宜(神戸三田ブレイバーズ)-選手名鑑”. 一球速報.com. OmyuTech. 2021年9月22日閲覧。
- ^ 広尾晃 (2021年6月30日). “巨人育成ドラ4→一軍で2試合登板→戦力外… “大谷世代”独立Lでサブマリン転向・坂本工宜は「プロをあきらめきれない」”. Number Web: p. 32021年9月22日閲覧。
- ^ “元巨人・坂本工宜、独立リーグで初先発…アンダースローに転向、3回8安打5失点”. スポーツ報知. (2021年6月12日)2021年9月22日閲覧。
- ^ “【読売ジャイアンツ(三軍)との交流戦についてのお知らせ】”. さわかみ関西独立リーグ (2022年5月5日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “【巨人】3軍戦で元G戦士たちが躍動 折下光輝が2安打2打点 投手転向の村上海斗は1回無失点”. スポーツ報知. (2022年5月12日)2022年7月2日閲覧。
- ^ a b “【巨人】育成・坂本工宜、強気の投球で支配下登録へ前進 原監督「見事でしょう」”. スポーツ報知 (2019年2月12日). 2021年12月30日閲覧。
- ^ a b “19年巨人戦力外の坂本工宜、独立Lで下手投げに転向「必ずNPBに復帰して恩返ししたい」”. スポーツ報知 (2021年6月2日). 2021年6月2日閲覧。
- ^ a b c 球界ここだけの話(1375)】“ジュンコー”が熱い! 巨人育成・坂本工、準硬式からプロの道へ 成長の軌跡
- ^ “巨人の育成D4・坂本工、坂本勇との対面望む「いろいろ聞いてみたい」”. サンケイスポーツ (2016年10月26日). 2021年12月30日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 個人年度別成績 坂本工宜 - NPB.jp 日本野球機構
- 選手の各国通算成績 Baseball-Reference (Japan)、The Baseball Cube