概要
女神
「ひなてるぬかたびちおいこちにのかみ」と訓まれるが、書籍によっては「ひなてりぬかたびちおいこちにのかみ」ともされる。
『古事記』にのみ登場する神であるが、系譜以外の具体的な事績については不明。
長い神名は文字の配列から考えて「日名照・額田毘道男・伊許知邇神」と分解できる。次にこの神は女神であるのに、「男」を含むのは異常であるから、「日名照・額田毘道男」は「伊許知邇神」の父神の名で、それを娘の名に冠したものと考えられる。
- まず「日名照」は「日な(の)曇り」の反対で「日な(の)照る」の意で、「額田」は「額のような四角い田」の意で良田を指す。これは額田の上に「日がよく当る」という修飾語を冠している。「毘道男」の「毘」は「辺」で、「額田辺へ行く道の男」の意。これが父神の名。
- 次に「伊許知邇」の「伊許」は「厳(いか)」で、「いこよか」の語もあるように、勢いの盛んなさまで、ここでは「稲の繁茂」の表象、「知」は「神霊」、「邇」は人につく親称と解する。これが娘神の名。
上記から名義は「日が照る、額田辺の道を父にもつ、勢いの盛んな精霊」と考えられる。またこの神の農業神的性格が子の国忍富神に引き継がれている[1]。