概要
側坐核は報酬・快感・嗜癖・恐怖に重要な役割を果たすと考えられている[1]。
側坐核は両側の大脳半球に一つずつ存在する。尾状核頭と被殻前部が(透明中隔)の外側で接する場所に位置する。側坐核は(嗅結節)などとともに(腹側線条体)の一部である。側坐核は「core」と「shell」という、構造的にも機能的にも異なる二つの構造に分類される。側坐核の神経細胞のうち約95%はGABA産生性の中型有棘神経細胞(medium spiny neuron)であり、出力される投射は側坐核からの出力のうち最も主要である。他にはコリン作動性の大型無棘細胞(large aspiny neuron)が存在する。
側坐核からは(腹側淡蒼球)(ventral pallidum)に投射する(GABA作動性出力)。その後に腹側淡蒼球からは視床の背内側(MD)核に投射し、視床背内側核は大脳新皮質の前頭前野に投射する。他に側坐核からの出力として黒質と橋網様体(脚橋被蓋核など)への結合がある。
側坐核への主な入力として、前頭前野・扁桃体・海馬からの物や、扁桃体基底外側核のドーパミン細胞から中脳辺縁系を経て入力する物、視床の髄板内核、正中核からの入力があるため[2][3][4]、側坐核は皮質-線条体-視床-皮質回路の一部として見做されることもある。腹側被蓋野からのドーパミン性入力は側坐核の神経活動を調節すると考えられている。モルヒネなどは腹側被蓋野でドーパミン神経を刺激し、側坐核へ投射する神経(A10神経)の末端からドーパミンの分泌を促し、シナプス間隙のドーパミンが増えることによりシナプス後細胞が非生理的な興奮状態となり、モルヒネ摂取者は「何物にも代え難い幸福感」を味わい、依存のうち精神依存はこの機序で形成する。一方で嗜癖性の高い薬物でもコカインやアンフェタミンなどは側坐核にて主にシナプス前細胞に作用する。メチルフェニデートやコカインはシナプス前細胞によるドーパミンの再取り込みを阻害し、ドーパミン濃度の上昇を来す機序による。
アンフェタミンやメタンフェタミンなどの覚醒剤はドーパミンの再取り込み経路から逆行性にシナプス前細胞に侵入し、ドーパミンの産生を亢進させ、再取り込み経路の流れを逆転させ、そこからもシナプス間隙にドーパミンが分泌されるという非生理学的な現象を起こさせる(生理的な再取り込みは発生しない)。更に不要なドーパミンを分解し、ドーパミン作用の安定化に寄与するモノアミンオキシダーゼ(MAO)の働きを阻害する。これらの効果のため、ドーパミン量の調整機構が部分的に機能しなくなる。このようにドーパミンを増加させることで嗜癖作用を有する。メチルフェニデート(治療薬)は側坐核にてドーパミンを分泌させ、報酬系のドーパミン充足により衝動性を抑制する(ただし積極性も抑制する)。ADHDの作用点は前頭葉と考えられており、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤の投与でもある程度の改善効果を認めるのがその証左である。
意欲との関係
側坐核は意欲ややる気とも関わっており、側坐核は行動することで機能し始める。脳は基本的に変化に対応して動くが、何もしていない状態では脳の機能が低下し、意欲は起きないという[5]。またクオリティに固執し過ぎず、完璧でなくてもよく、とにかく行動を開始してみることが大事であるという[6]。ズーニンの法則(初動4分の法則)[7]と関連しており、行動開始後の最初の4分間で側坐核が機能する。
研究
脚注
- ^ Schwienbacher I, Fendt M, Richardson R, Schnitzler HU (2004). “Temporary inactivation of the nucleus accumbens disrupts acquisition and expression of fear-potentiated startle in rats”. Brain Res. 1027 (1-2): 87–93. doi:10.1016/j.brainres.2004.08.037. PMID (15494160).
- ^ “The accumbens: beyond the core-shell dichotomy”. J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 9 (3): 354-81. (1997). (PMID 9276840).
- ^ “Convergence and segregation of ventral striatal inputs and outputs”. Ann N Y Acad Sci. 877 (3): 49-63. (1999). doi:10.1111/j.1749-6632.1999.tb09260.x. (PMID 10415642).
- ^ “Hippocampal and prefrontal cortical inputs monosynaptically converge with individual projection neurons of the nucleus accumbens”. J Comp Neurol. 446 (2): 151-65. (2002). (PMID 11932933).
- ^ “”. web.archive.org (2022年7月31日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ “”. web.archive.org (2022年1月24日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ “”. web.archive.org (2022年10月24日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ Olds J, Milner P (1954). “Positive reinforcement produced by electrical stimulation of septal area and other regions of rat brain”. J Comp Physiol Psychol 47 (6): 419–27. doi:10.1037/h0058775. PMID (13233369). article
- ^ Menon, Vinod & Levitin, Daniel J. (2005) The rewards of music listening: Response and physiological connectivity of the mesolimbic system." NeuroImage 28(1), pp. 175-184
- ^ “”. web.archive.org (2007年4月28日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ “”. web.archive.org (2022年10月4日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ Abe N, Greene JD (2014) Response to anticipated reward in the nucleus accumbens predicts behavior in an independent test of honesty. J Neurosci 34 (32):10564-72. DOI:10.1523/JNEUROSCI.0217-14.2014 PMID (25100590)