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中村主水

中村 主水(なかむら もんど)は必殺シリーズに登場する、藤田まことが演じた架空の人物である。小説などの原作を持たないテレビ番組オリジナルのキャラクターである。

第2作『必殺仕置人』の初登場以来、第31作『必殺仕事人2009』まで、シリーズの半分を超える16作にレギュラーとして登場した。その他のシリーズでも『助け人走る(第12話)』や『必殺剣劇人(第8話)』にゲスト出演し、公式にも「必殺の顔」と称されるなど、シリーズを通して活躍した。

キャラクター

表稼業

典型的な「(昼行灯)」として江戸中で知れ渡っている南町奉行所[注 1]定町廻り同心。職務怠慢が目立つが、自分の担当地域の商家に袖の下(賄賂)を要求したり、同じく軽犯罪の場合には金で見逃すという、現代でいうところの悪徳警官である。史実として同心(役人)に付け届けをすることは頻繁にあったが、当時の時代劇では主人公の同心が小悪党という設定は珍しいことであった。普段は無気力だが、旗本や大名などの巨悪が絡む事件については上役の命令を無視してまで捜査をしようとするなど、元の性格が現れることもある。『必殺仕置人』最終話や『新・必殺仕事人』第47話のように、自身の得にならないことでも、黙って見過ごせない状況について意見することもあった[注 2]

シリーズ中盤までは他の同心と同じく黒の羽織を着ていたが、後期からは紫から茶色へと羽織の色が変わって行った。

上役の多くは主水のことを軽んじるか蔑ろにし、時には疫病神とも呼んだが、中には主水の素質と性格を見抜き、報償金で上手くコントロールする者もいた。同僚たちからも馬鹿にされているが、10年以上に渡って宴会の幹事を務め、宴の仕切りに関しては同僚たちからも信頼されていた。賭け事では胴元を務めることも多く、その際には、普段は口うるさい上司も上手く丸め込んだ。キャリアについての正確な描写は少ないが、後期の作品[1]で、勤続20年の表彰を受けるシーンがある。また、スペシャル『2007』の時点ではせんが『奉行所勤めが30年』と発言している[注 3]

好物は甘いものと目刺。旧仕置人の頃は饅頭や柏餅をほおばる描写が特に多かった。酒は仕置人までは下戸であったが、仕業人から飲むようになる[注 4]。また仕事人では甘い物の好物で和菓子屋に借金が貯まっている事が言われている。

劇中では異動や出張が多く、シリーズによって勤務地や職務が変わっている(#経歴参照)。

裏稼業

晴らせぬ恨みを金銭で晴らす殺し屋。同心(警察)の立場を利用して、標的の経歴や身分を調べ上げる「密偵」の役割と「殺し」の役割を両方担う。敵は主水が犯罪を取り締まる役人である為、殺し屋だと疑う事がほとんど無い為、大半が油断して殺されるパターンがほとんどである。また、仲間たちが殺し屋の疑いが掛からないように、捜査中に証拠を隠滅する重要な役割も担っている。『必殺仕置人』で棺桶の錠が持ち掛けて来た、百姓娘の父親の仇討ちを請け負ったのをきっかけに、裏稼業に足を踏み入れた。以降、「仕置人」や「仕事人」などと名乗りながら、長きに渡って裏稼業を続けてきた。

当初は参謀として登場し、殺しを行った仲間たちの撤収や、侵入が困難な大名屋敷の潜入の手配を主に行っており、『仕置人』は特にその傾向が強く、実際に殺しを行うのは鉄と錠だけで、サポートにすら関わっていないエピソードも存在する。その後、主に実働隊の一員、リーダーとして活躍し、なおかつ参謀として計画を立案することもある。殺し技は剣術#剣術参照)。

なお必殺シリーズでは剣術の殺し屋は浪人が大半を占めるが、主水のような公務に就いている殺し屋は比較的珍しい例でもあった。(後に山田朝右衛門や渡辺小五郎と公務につく殺し屋は度々登場する)

『必殺仕置人』では日々の鬱憤を悪人にぶつけるように積極的に仕置に関わっていたが、『暗闇仕留人』で、糸井貢が仕留人としての生き方に苦悩し命を落としてからは極力感情を面に表わさず、佐渡金山以来の顔馴染みだった念仏の鉄や、中村家の端唄の師匠である三味線屋の勇次、奉行所の同僚である渡辺小五郎などを除き、裏稼業以外では仲間と会う機会があっても知らない者同士を装い、馴れ合いを避けて必要以上に親しく接することはなかった。

仲間が私生活のトラブルで捕まった時は特に敏感になり「お前に何かがあって捕まったら俺たち全員が獄門晒し首になる」と注意する事が多い。

仕置の狙いを定めた獲物に情けをかけることはないが、ごく稀に弱気になることもあった[2]。仲間内では冷静で、念仏の鉄が頭の血がのぼって喧嘩沙汰になりかけた時は仲裁にまわり、なだめる事も多かったが、時折甘さや未熟さを見せた場合は叱咤し、感情が先走りがちだった飾り職人の秀や子供じみた正義感を振りかざす西順之助に対し、鉄拳を振るったこともあり。旧友が仕置きの対象になり主水を利用して暗殺を止めた鋳掛屋の巳代松にいたっては特にこっぴどく鉄拳制裁を振るっていた。チームが危機に瀕した場合は、その原因となったメンバーを容赦なく斬るとも宣言していたが、仲間が危機に陥った場合は自ら死地に飛び込む場面も多く、実際に仲間を粛清したり裏切ったことはない。

がめつい性格ではあるが、仕置する悪人が主水を買収しようとしても拒み、悪人の金には手をつけない。また損得勘定で動くため、仕置料が安かったり相手が旗本や幕府関係者の場合は割に合わないと断る場合もあるが、最終的には正義感や義侠心から引き受ける。

仲間からは主に「八丁堀」と呼ばれ(町役人達も自称する)、苗字や名前で呼ばれる機会は少ない。

必殺仕事人2007』以降、主役の座を渡辺小五郎へ譲り、若手のサポート役に廻るようになる。だが血気盛んな仕事人たちを叱責したり諭すことも忘れなかった。

『新・仕置人』での重要な伏線として、前期シリーズでの主水は裏稼業の世界では知られておらず、主水も自分の正体を隠していた。特定の斡旋人(元締)に就かず、自身もそのような人物や組織については「人殺しの集団」「信用できない」と発言したこともある。シリーズを通して、寅の会や闇の会などに間接的に関わった例を除き、特定の元締から仕事を請け負ったのは『必殺仕事人』と『必殺仕事人・激突!』の時だけである[注 5]。主水の名が仲間以外の裏稼業の人間に知られるようになるのは『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』第22話以降である。

一方、後期シリーズ(仕事人シリーズ)では裏の社会に主水の名が知れ渡り、様々な同業者たちと面識があった。その中には有力な元締もおり、仕事を斡旋されたこともあるが、特定の元締の下で働くことは稀である。後期エピソードの中には、悪党が闇の世界を牛耳るために主水を懐柔しようとする回が多数ある(『必殺仕事人V・激闘編』第24話、最終回。『必殺仕事人V・風雲竜虎編』第1話など)。『仕事人』第82話のように、主水のことを知らない裏稼業の者たちも登場している。

剣術

殺し技は、手持ちの刀を用いた剣術である。親しげに話し掛けて相手の油断を誘う不意討ちや騙し打ちを主に行う。その腕前は一流で、劇中の描写や設定によると奥山神影流、御嶽新影流、小野派一刀流、一刀無心流の免許皆伝で、心形刀流の心得もある。寺子屋では一番の腕前であったとも語られ、奉行所内では五本の指に入るといわれている。

仕掛人の西村左内とは異なり、状況に応じて様々な剣技を披露し、単に斬り掛かるだけでは無く、相手を挑発させて先に剣を抜かして返り討ちに合わせる事や、助太刀に見せかけて敵に切りかかる技も披露する、稀に多勢を相手に刀を抜く事もある。

『仕事人V』『仕事人V・激闘編』からは刀のに(仕込み打刀)のような刃を仕込み、それを様々な形で使用する事が多くなる。基本は目釘を外した柄を鞘のように抜いて相手を暗殺する事もあるが、刀の長さを利用して仕込みの刀の刃先を槍のように用いて刺し殺したり、出会いがしらに茎を抜いて刀を握らずに接近してそのまま刺し殺す等、暗殺のレパートリーが増えて行く。

奉行所では昼行燈を装い、剣の腕前を周囲に隠している。奉行所での剣術の稽古や試合などでもわざと負けたり、実力がないように見せるため、竹光を腰に差すこともあった。

また、必殺シリーズでは剣豪の仕事人は西村左内や畷左門等の浪人が担当する事が多かったが、次第に主水の活躍が増えた事により、剣豪の殺し技は主水が一任することへとなった。

家族など

妻のりつ、姑のせんと3人で、八丁堀の役宅に暮らしている。下総の筆頭同心 北大路家の次男である主水が、わずかな伝手を頼って、中村家に婿入りしたのがなれそめである。中村家の出自は清和源氏義光流[3]家紋は「丸に唐花」。宗派は不明だが、恐らく法華宗であると思われる[4]

『必殺仕事人Ⅳ』第43話で、自らを「中村主水之介 玉五郎」と上司の筆頭同心 田中の前で名乗る場面がある[注 6]

身長は五尺三寸[5]、体重は十六貫五百匁。黒羽織は仕置人~仕置屋、新仕置人~仕事人III 第3話まで、アヘン戦争へ行くと剣劇人で着用、茶色羽織は仕業人と仕事人1話の冒頭、仕事人III4話以降~仕事人IVは茶色羽織と煤けた黒羽織を、薄い茶色羽織は仕事人V~風雲竜虎編12話まで着ている。

恐妻家で、元々世渡りが下手な上、やる気の無さゆえに奉行所での出世の見込みがないこと、主水自身の怠惰な生活態度から、家では2人から疎まれ、陰に日向にいびられ続けている。主水もまた、そのような態度で接する2人、特にせんに対しては相当に嫌気が差している様子が窺える。もっとも、表に出さないだけで深い愛情で結ばれており、それを示唆するエピソードも劇中に数多く見られた。

30歳を過ぎても子供ができず、懐妊の兆しもないことから、せんとりつからは「種無しかぼちゃ」と罵られている。子供が授からない理由ははっきりしないが、主水が子供のころにおたふく風邪にかかり高熱を発したことが判明したときは、せんとりつからはこれが原因ではないかと疑われていた[5]。『商売人』ではりつが懐妊するが、最終的には死産[注 7]という結末を迎えた。夫婦ともに性欲は旺盛で、りつが床入りを迫る場面があり、主水も時折、他の女性に浮気をしている。なお放送当時の社会を舞台にした2回のTVスペシャルにおいて主水ならびにせんとりつの子孫が登場しているが、主水の子孫とされた人物はそれぞれ名前も職業も違っている[注 8]

子供についてだが、必殺仕事人V・旋風編第11話「主水の隠し子現れる」で、17年前に、お島(中村メイコ)が、主水と一度だけ過ちがあった(不倫)と語っており、作中で、お小夜(三沢恵理)が主水の子供ではないかと問われた時、お島(中村メイコ)は否定しなかったが、その後お小夜は悪人によって殺害され、お島も死亡したため詳細は不明。

へそくりが趣味で、袖の下や裏の仕事などで得た金銭を、家の様々な場所に隠している。それを必要な時に持ち出し、様々な用途に用いているが、せんとりつに見つかり、生活費や遊興費に当てられてしまうことも多い。また、『商売人』では珍しくへそくりをしていない。

また、『仕留人』の段階ではせんには妙心尼(本名はたえ)、あやと娘がりつ以外に二人おり(いずれもりつにとっては妹)、妙心尼の情夫・村雨の大吉と、あやの夫・糸井貢はいずれも主水にとってはチームを組んだ裏稼業仲間であった。
なお、あやは『仕留人』劇中にて死亡しているが、妙心尼は後に『新・必殺仕置人』第14話にゲスト出演し[注 9]、別の男を情夫にしていて、その様子を影から見ていた主水は「昔と同じで、進歩がまるで無い」と憤慨しつつ呆れている。

経歴

劇中では以下のような職務歴を経ている。基本的に時間の経過はシリーズの順序に沿い、時代設定はシリーズによって異なるが、江戸時代後期の設定となっている。しかし、具体的な時期については必ずしも時系列に沿ってはおらず、過去の作品の後日談が過去の作品よりも前の時代を舞台にしているという矛盾が発生していることもある。

主水シリーズの2作目『暗闇仕留人』は黒船来航の時期(1853年 以降)であり、後期作品には桜田門外の変1860年)を扱ったスペシャル特番がある。また、寛政 - 天保期(1800年 前後)も多い。一方で、『新春仕事人スペシャル 必殺忠臣蔵』の元禄期(1700年 前後)はそれまでより極端に遡った時代設定となっている。

それ以外にも整合性が取れない事例として、主水が南町に転属になったのは鳥居耀蔵が既に奉行を務めていた時であったが(『仕置屋』)、後のスペシャル『春日野局の秘密』『仕事人vsオール江戸警察』では少なくとも鳥居が着任する前から、主水が南町にいたことになっている。これらの矛盾の回答として、『必殺忠臣蔵』冒頭で、藤田まことが「どの時代にも、主水のような人物がいたと解釈してほしい」と説明している。

またそもそも『必殺シリーズ』自体が放送当時の高度経済成長期の現代を江戸時代に置き換えたパラレルワールドとして制作されている事をプロデューサーの山内久司は述べている。

作品名 役職 備考
前史 佐渡金山同心 見習い
必殺仕置人 北町奉行所 定町廻り同心
助け人走る
暗闇仕留人
必殺仕置屋稼業 南町奉行所 定町廻り同心 北町奉行所からの組み替え
最終回で伝馬町牢屋敷に左遷
必殺仕業人 伝馬町牢屋敷 牢屋見廻り同心
新・必殺仕置人 南町奉行所 定町廻り同心
必殺商売人
八王子同心の指導係 南町奉行所からの出向(左遷)
必殺仕事人 南町奉行所 定町廻り同心

激闘編のみ雑訴詮議所係

新・必殺仕事人
必殺仕事人III
必殺仕事人IV
必殺仕事人V
仕事人V・激闘編 最終回で、定町廻りの班長に昇格
仕事人V・旋風編 石川島百軒長屋の番所勤め 南町奉行所 配下
仕事人V・風雲竜虎編 富岡八幡宮へ架かる橋の番所勤め
必殺剣劇人 南町奉行所 定町廻り同心
TVスペシャル期間
必殺仕事人・激突! 南町奉行所 定中役同心
必殺! 主水死す 南町奉行所 定町廻り同心 劇中で死亡(厳密には生死不明)
必殺仕事人2007 南町奉行所 書庫番 渡辺小五郎の赴任に伴う配置換え
必殺仕事人2009 木挽町自身番勤め 左遷 / 南町奉行所 配下
必殺仕事人2010 西方へ赴任
必殺仕事人 (2018年) 南町奉行所 配下? [注 10]

エピソード

中村主水の誕生

シリーズ第1作『必殺仕掛人』の放送後、プロデューサーの山内久司は次作『必殺仕置人』に同心を登場させるため、中村主水の基本設定を決めたという。山内は主水にサラリーマンの様な平凡さを求め、配役には「男前でもなければ、不細工でもない。体格も極めて平均的な日本人である、藤田まことしかないと思った」と述べている[6][7]。配役については、藤田は『てなもんや三度笠』のイメージが強すぎるため、ABC社内では反対する声が多かった[8]が、監督の深作欣二の推挙もあり、藤田に決まった。一方で、藤田は「スタッフは他の有名俳優にも主水役を打診したが、家庭で嫁姑にいびられる情けない役どころを引き受ける人間が誰もおらず、最終的に自分のところに回ってきた。依頼から撮影までたった一週間だったのが合点がいった」と語っている。

『仕置人』の主水は準主役級であったが、人気を博し、次作『助け人走る』にゲスト出演、『暗闇仕留人』ではレギュラー出演を果たし、『てなもんや』以降、不遇だった藤田をスターの座に返り咲かせることとなった。撮影を担当した石原興は「当初は藤田の演技は未熟だったが、『仕置人』が終わるころには物になっており、主水は藤田以外にはいないと思った」と述懐している[9]。後年、「中村主水というキャラクターが自分の中に確立できたのはいつ頃か?」という質問に対し、藤田は「『商売人』の頃だ」と答えている[10]

中村主水の名前の由来に関しては諸説ある。平凡な名前にしようと会議で決めていた時、山内は冗談で「ジェームス・ボンドにしましょうか?」と発言したところ、深作が「“モンド”という名前は平凡やね、目立たん名前やね」と返し、決まったという[6][7]。他方で、それは制作陣による後付けのリップサービスで、実際は日本では一般的な中村という苗字に、八木節に登場する怠け者の鈴木主水の名前を取って付けたという説もある[11]

トレードマークのマフラーは、『仕業人』の撮影時、寒さを凌ぐために小道具係から借り、撮影に用いたものが定着したものである。後に藤田の死後に製作された『仕事人2010』からはそのマフラーを仕立て屋の匳が受け継ぎ、それ以降は渡辺小五郎が受け継ぎ、仕事を行う際に襟に巻いている。

最期

主水の最期について現時点では明確な描写は無く、それとなく匂わせるものに留まっている。

劇場版第6作『必殺! 主水死す』では、権の四郎との死闘の末、その場に居合わせたかつての愛人・お千代に刺され、その直後に爆発に巻き込まれた。そのタイトルからして主水の死を思わせるものだが、劇中では爆発後の現場に十手が落ちている描写があるのみで死体は映っていないため、実際には生死不明である。その3年後に連載が始まった漫画『必殺仕置長屋』では「3年前から行方不明」と語られている。しかし、その約10年後に制作、放送した『必殺仕事人2007』には特に説明もなく登場しており、その経緯は説明されていない[注 11]

その後の藤田まことの急逝を受けての『必殺仕事人2010』では「西方へ赴任した」[注 12]とされ、主水、せん、りつのその後については言及されていなかったが、その後主水は2018年のテレビスペシャル『必殺仕事人』で江戸木挽町の自身番屋に戻っており[注 13]、小五郎の窮地を救い、未だ中村主水が健在であることが判明した[注 14]

これらが描かれる前に、主水の末路について藤田は「どぶ川に顔を突っ込む、みっともない死に方」。山内久司は「平穏無事に晩年を迎え、認知症となり、『俺は仕事人だ』と公言するも周りは誰も相手にしない[12]」と想定していた。なお、制作側の思惑は『水戸黄門』や『遠山の金さん』、『銭形平次』のように「主水が死ぬ状況について、特に描写しない」というものであり[13]、『必殺仕事人』第27話で、殺し屋組織との抗争で、奉行所に裏稼業が発覚し、主水が単身で戦い、命を落とすものもあったという。なお、劇中では、主水は『必殺商売人』第18話の冒頭でも殺されている[注 15]

1992年に企画された脚本では「主水の裏稼業が発覚し、せんとりつは奉行所に捕らえられる。発覚後、仲間に匿われていた主水は取調べを受ける、せんとりつの救出のために駆け付け、2人を救い出す。しかし、せんは拷問のために命を落とし、主水の裏の顔を知った、りつが彼を刀で刺し、主水は追っ手に囲まれながら、中村家の門前で命を落とす」といった凄惨極まりないものになっていたという[14]

主人公問題

ドラマにおいては通常、配役表の先頭には主人公(並びに演じた俳優)が記されるのが慣例になっている。初登場作の『必殺仕置人』は主水では無く、念仏の鉄が主人公として扱われたため、エンディング クレジットは鉄を演じる山﨑努が先頭に、主水演じる藤田が最後(トメ)に配置されていた。再度レギュラー入りした『暗闇仕留人』も石坂浩二が主演という扱いだったため藤田の名前はトメに置かれた。

しかし『必殺必中仕事屋稼業』の放送期間中にネットチェンジによって東京地区でのネット局がTBSからNETテレビに変更されたことに伴い視聴率が低迷。この打開策として次作『必殺仕置屋稼業』では人気のあった主水が初めて主役として扱われることになった。ところが藤田の完全な主役扱いに市松役の沖雅也の義父で所属事務所社長だった日景忠男から執拗な抗議を受けたためクレジットは沖が先頭に置かれ藤田は主役ながらトメに置かれた。
さらに再度主役となった『必殺仕業人』でも何の相談もなくクレジットの先頭は中村敦夫とされまたもトメに回された。藤田及び当時、藤田が在籍していた渡辺プロダクションはこれについて、制作サイドに幾度となく申し入れを行っていたが、クレジットの配置が変更されることはなかった。

一方、局側もこの扱いに対して何の配慮もしなかったわけではなく、藤田のクレジットに手を加えて[注 16]強調することで藤田が主役であることをアピールしようとした。しかしながら結果的には視聴者に不自然な印象を与えただけで効果はほとんどなく、結局多くのメディアや視聴者に沖(中村)が主役であるという間違った印象を与えることになった。

そのような事情の中で、山崎が再びレギュラー出演することになった『新・必殺仕置人』の制作が決定。藤田側はこれに対し、またも名前がトメに回される可能性が高くなったと判断し、必殺シリーズそのものを降板する構えを見せ、厳重に抗議。これに局側も折れて、藤田の名前がキャストの最初に登場するようになり、それ以降はゲスト出演の『必殺剣劇人』を含め、エンディングの先頭を飾った。『必殺仕事人2007』以降は主役の座を東山紀之に譲り、トメに回っている。

出演作

TVシリーズ

TVスペシャル

舞台

  • 必殺仕置人(1976年、九州地方にて巡業[注 17]
  • 藤田まこと特別公演「新・必殺仕置人」(1978年、新歌舞伎座
  • 納涼必殺まつり(1981年 - 1987年の毎年8月下旬、京都南座
    • 必殺女ねずみ小僧(1981年)
    • 必殺・鳴門の渦潮(1982年、南座に先がけ、名鉄ホールで上演)
    • 必殺ぼたん燈籠(1983年)
    • からくり猫屋敷(1984年)
    • 琉球蛇皮線恨み節(1985年)
    • 女・稲葉小僧(1986年)
    • 地獄花(1987年)
  • 藤田まこと特別公演『必殺仕事人 中村主水参上!(地獄花改め)』(1988年、梅田コマ・スタジアム
  • 藤田まこと特別公演『必殺仕事人 主水、大奥に参上!』(1989年、梅田コマ・スタジアム → 新宿コマ劇場 → 1991年、名鉄ホール → 新宿コマ劇場)
  • 藤田まこと特別公演『必殺仕事人 地獄花』(1990年、名鉄ホール)
  • 南座 八月公演『必殺 中村主水、大奥に参上!』(1996年、京都南座)
  • 藤田まこと特別公演『必殺仕事人/主水、大奥に参上!』(1997年、新宿コマ劇場 → 1998年、中日劇場劇場飛天 → 1999年、全国巡業 → 2002年、明治座

映画

パチンコ機

※ いずれも京楽産業.から発売。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 第6作『必殺仕置屋稼業』で、北町奉行所から南町奉行所に転属となる。
  2. ^ 後者に関しては私情を挟んでいることを本人が認めているが、意見の内容自体は堤防の手抜き工事(主水が一目でわかるほど粗悪な材木が使われており、川が増水すればすぐに決壊する恐れがある)を改めさせようという真っ当なものである。
  3. ^ 『2007』の時代設定は文政3年なので、これに従えば寛政2年より勤続していることになる。
  4. ^ 当初は完全な下戸だったが、提供スポンサーへの配慮から、いくらか飲めるようになったとして、設定変更されたという(出典:山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p53)
  5. ^ 新・必殺仕事人』から『必殺仕事人V』まで共に仕事をしていたおりくを「元締」と呼ぶこともあったが、あくまでもチームのまとめ役としてであり、おりくを介して仕事を請け負うというわけではない。
  6. ^ 尤も、田中の前でふざけて名乗っていたので、この名前が主水の本名だと言及されている訳ではない。
  7. ^ ただし実際には「一旦無事に生まれた(実際、産声を聞いている)ものの、その後力尽きて亡くなった」というのが正しく、厳密な意味での死産ではない。
  8. ^ 1982年放送の(秘) 必殺現代版 主水の子孫が京都に現われた 仕事人vs暴走族においては"中村主水"、保険会社の保険勧誘員で京都在住。1991年放送の必殺スペシャル・春 世にも不思議な大仕事 主水と秀 香港・マカオで大あばれにおいては"中村誠"、ツアーコンダクターで東京在住となっている。
  9. ^ 別人ではなく、『暗闇仕留人』での大吉とのシーンも挿入され、同一人物であることが明示されている。
  10. ^ 『2009』で勤めていた木挽町の自身番屋に戻っているが、それが一時的な帰還か西方から再赴任されたのかは不明。
  11. ^ 必殺シリーズでは、テレビ シリーズで亡くなったはずの人物がスペシャル番組で復活することはある(元締・虎など)が、スペシャルと劇場版で亡くなった人物がテレビ シリーズで復活する例は主水以外にない。
  12. ^ 「西方」には「西方浄土」という意味合いがある。また、中村家の門に貼り出された赴任を知らせる書き置きには、弔意を示すが描かれている。
  13. ^ 一時的な帰還か再赴任かは不明
  14. ^ 『必殺仕事人2007』『必殺仕事人2009』での藤田まことの演技を流用したビデオ出演。
  15. ^ 主水役の藤田まことが見たという夢オチ
  16. ^ 『仕置屋稼業』では起こし、『仕業人』ではズームとテロップ表示に効果を加えている。また『仕置屋稼業』ではほかの出演者のクレジット背景が軒並み静止画だったのに対し藤田のみ動画とされている。
    なおクレジットの起こし処理は後年『新・必殺仕事人』~『必殺仕事人V』におけるおりく役の山田五十鈴にも流用されている(ただし山田の場合は主役扱いというわけでなく『仕事人』以外のシリーズ作品で主役を張った経験を持つ実力者であること、俳優としても藤田より格上であること、役の上でも主水よりおりくの方が格上扱いなことへの配慮から)。
  17. ^ 詳細不明だが、(中村主水の主人公問題)で急遽組まれたと見られる。

出典

  1. ^ 必殺仕事人・激突!』第10話
  2. ^ 必殺仕置屋稼業』第19話。結局主水は手を下すことなしに、標的の全覚(佐藤慶)が自害する。
  3. ^ 必殺仕事人V 第25話「主水、源氏と平家に泣かされる」
  4. ^ 必殺仕事人V・激闘編』第11話で、せんとりつが南無妙法蓮華経を朗詠している
  5. ^ a b 『必殺仕置屋稼業』第10話。なお身長は『新・必殺仕事人』第33話でのりつとの縁談の回想シーンでは自分を「五尺八寸」と言っていた。
  6. ^ a b 講談社 2010年『必殺DVDマガジン 仕事人ファイル 1stシーズン壱 必殺仕置人 中村主水』
  7. ^ a b 朝日放送「必殺シリーズ作品総編集」極私的回想録
  8. ^ 洋泉社『必殺シリーズを作った男』p100、p102 - 103
  9. ^ 『必殺を斬る』時代劇専門チャンネル製作番組
  10. ^ 『必殺! CD-ROM』NECインターチャネル
  11. ^ データハウス刊『必殺シリーズ完全百科』p17
  12. ^ 山田誠二『必殺シリーズを創った男―カルト時代劇の仕掛人、大いに語る(映画秘宝SPECIAL)』(1997年12月、洋泉社)(ISBN 978-4896912937)
  13. ^ 山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p15 - 16
  14. ^ 山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p16
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