ロッド・エヴァンス（Rod Evans , 1947年1月19日 - ）は、イギリス出身のヴォーカリスト。ディープ・パープルのオリジナル・メンバーであったことで知られる。
来歴
生い立ち
イングランドのスラウで生まれる。少年時代にロックンロールに興味を持ち、中学を卒業後、ロンドンに移る。
1965年頃に所属していたメイズというバンドでドラマーのイアン・ペイスと出会う[1]。メイズは何枚かのレコードを発売するがいずれも成功を収めることはなかった。
ディープ・パープル
1967年、エヴァンスとペイスはディープ・パープルの前身であるラウンドアバウトのオーディションを受けて合格した[2]。
エヴァンスの在籍期間中、ディープ・パープルは3作のアルバムを発表し、「ハッシュ」「ケンタッキー・ウーマン」のヒット曲を放った。エヴァンスはハード・ロックを指向する他のメンバーとすれ違うようになり、1969年に解雇された。彼の後任にはイアン・ギランが迎えられた。
キャプテン・ビヨンド
1971年、エヴァンスは元アイアン・バタフライのラリー・ライノ・ラインハルト（ギター）とリー・ドーマン（ベース・ギター）、ジョニー・ウィンターと優れた演奏を残したボビー・コールドウェル[注釈 1]（ドラムス）の三人とキャプテン・ビヨンドを結成した。このバンドはアルバムを2作発表して高い評価を得たが、アメリカでのセールスが振るわず商業的には苦戦を強いられた。メンバーの入れ替わりも激しく、ついにはエヴァンスも脱退し、バンドは軌道に乗らないまま1973年に活動を休止した。1977年、再結成されたが、エヴァンスは参加しなかった。
偽ディープ・パープル騒動
1980年、エヴァンスはロック史に残る「偽ディープ・パープル事件」を起こした。彼は1976年に解散したディープ・パープルの名前を騙ったバンドを無断で結成して活動したのである。
エヴァンスはディープ・パープルのメンバーによく似た外見を持つ無名のミュージシャンを集め、新聞に広告を載せ、アメリカでコンサートを開いた。このバンドは彼の在籍期間の曲ではない「スモーク・オン・ザ・ウォーター」や「ハイウェイ・スター」などの有名曲を数多く取り上げ、実体としては単なる偽者に過ぎなかった。コンサート中にそれに気付いた観客は激怒して瓶をステージに投げつけたりしたという[3]。このバンドのコンサートは数回開かれたが、ディープ・パープルのマネジメント会社が広告などで虚偽を知らせた結果、騒動は終局した。
エヴァンスはディープ・パープルのマネジメント会社に訴えられ、672,000ドルの損害賠償を命じられたうえ、彼が関わったディープ・パープルのアルバムの印税を所得する権利を放棄させられた[3]。
この後、エヴァンスは表舞台から姿を消し、ディープ・パープルのメンバーとは2017年現在も絶縁状態にある[4]。2016年に彼や他の元メンバーを含めてディープ・パープルがロックの殿堂入りを果たした[5]際にも、授賞式に顔を出さず、現メンバーのスピーチでも彼の名前は一切挙がらなかった[6]。
ディスコグラフィー
- Shades of Deep Purple - ハッシュ (1968年)
- The Book of Taliesyn - 詩人タリエシンの世界 (1968年)
- Deep Purple - ディープ・パープル III (1969年)
- Captain Beyond - キャプテン・ビヨンド (1972年)
- Sufficiently Breathless - 衝撃の極地 (1973年)
脚注
出典
- ^ Popoff (2016), p. 29-30.
- ^ Popoff (2016), p. 30-31.
- ^ a b “” (英語). Web.archive.org. 2012年3月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月17日閲覧。
- ^ “ディープ・パープル、殿堂入りするメンバー”. BARKS音楽ニュース. (2015年12月18日)
- ^ “ディープ・パープル、ロックの殿堂で過去メンバーが集まったら無視し合うことになると語る”. NME Japan. (2015年12月18日)
- ^ “D.カヴァデールとG.ヒューズ、殿堂入りセレモニーに出席 Deep Purple”. BARKS音楽ニュース. (2016年4月9日)
注釈
参考文献
- Popoff, Martin (2016), The Deep Purple Family Year By Year Volume One (to 1979), Wymer Publishing, ISBN (978-1-908724-42-7)
外部リンク
- 「偽ディープ・パープル」についてのページ(英語)