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ユソウボク

ユソウボク(癒瘡木、学名: Guaiacum officinale)は、カリブ海の諸島と(コロンビア地域)沿岸部に分布するハマビシ科(ユソウボク属)の樹木である。リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[2]#歴史も参照)。

ユソウボク
ユソウボクの花
保全状況評価[1]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ハマビシ目 Zygophyllales
: ハマビシ科 Zygophyllaceae
: (ユソウボク属) Guaiacum
: ユソウボク G. officinale
学名
Guaiacum officinale L.[注 1]
和名
ユソウボク[注 1]

名称

リグナムバイタ(Lignum vitae)と呼ばれることもある。lignum vitae はラテン語で「生命の樹」を意味する。これはかつてユソウボクが薬用として重用されたことに由来する[3]#歴史も参照)。ただし「リグナムバイタ」という名称は本種のみならず近縁種も含めた類似種に対して使われることもあり、また、本種や近縁種の木材を指すこともある[4]。特に木材関係ではリグナムバイタと称することが多い[4]

ユソウボクという和名は「癒瘡木」であり、後述のようにかつて梅毒(瘡)の特効薬と考えられていたことからの命名である[5]。 また、種小名の officinale も「薬効あり」の意味である[6]

特徴

幹は垂直に伸び、高さ5〜10 m。直径は10〜45 cm だが、太いものは70 cm に及ぶ[6]。成長は遅い[4][7]。樹冠は濃い緑の密な葉で覆われる[7]。樹皮は淡褐色で平滑。灰白色と灰褐色の斑紋があり薄い鱗片状に剥れることなどが同属他種との区別点である[4]。葉は偶数羽状複葉。小葉は4〜6枚。広楕円形または倒卵形、長さ2〜5 cm 、幅 1.2〜3.2 cm 。革質[6]。小葉は倒卵形や広楕円形で基部は鈍形から円形で、全縁、革質で、下面は帯白色、長さ1〜3 cm[4]。 花は散形花序で多数つく。わずかに芳香があり花弁5、長さ1.2 cm。濃いまたは薄い紫。果実は扁平な倒卵形。種子は1〜2個。裂開する[6][4]プエルト・リコでは早春から秋まで、キューバでは3月から5月までが花期である[7]。本種は、近縁種の(バハマユソウボク)(Guaiacum sanctum)と共に生息していることもあるが、両者の雑種は知られていない[7]。多くの昆虫がユソウボクの葉を食べ、時として樹木を丸坊主にしてしまうこともあるが、食害のためにユソウボクが枯死した例は記録されていない。また、放牧に対しても耐性がある[8]

分布

本種は小アンチル諸島の大部分と大アンチル諸島バハマ諸島の南カイコス、およびベネズエラコロンビアパナマの沿岸部、アルバボネール島トバゴ島キュラソーなどの島に自生する。また、トリニダード島ガイアナにも見られるが、これらは在来種ではない可能性がある[7]。山火事や病害や開発のためカリブ海のいくつかの島では絶滅したかもしくは絶滅寸前である[7]。また、本種は自然分布域の各地で、あるいはフロリダインドを含む世界各地で栽培される[9]

生育環境

生息地の(年間平均気温)は 24.5 ℃ から 27.5 ℃ までの幅があるが、いずれも無霜地帯である。生息地の(年間平均降水量)は、キューバでは500 mm から 800 mm、プエルトリコでは 750 mm から 1000 mm であり、ハイチでは 300 mm 以下の地域にも広がっている。沿岸部に生息するため生息地の相対湿度はかなり高く、プエルトリコでは平均 80%である[8]

本種の生育環境としては、深く肥沃で中間的な(土性)(英語版)の土壌が最適と思われる。キューバでは、河口付近における砂質の沖積土壌において最もよく成長していた。しかし、本種は成長が遅いため、競争相手の少ない、岩だらけの土地にわずかな浅い土壌で覆われているような貧弱な環境でのみ生き延びている。このような土壌の典型的なものは、沿岸部の多孔質の石灰岩地帯である。本種はあらゆる土性で成長するが、水捌けのよさが要求される。また、pH 8.5 程度のアルカリ性土壌には耐性がある[8]

歴史

1514年に、サントドミンゴに上陸したスペインの歴史家 Gonzalo Fernández de Oviedo y Valdés は、「カリブの先住民はこの木で梅毒を治療している」と報告した[10]。彼はこの樹木を"Uguayacan"の名称で、自生種として言及している[11][注 2]。本種はヨーロッパの王族で入手競走となり、最終的にカルロス1世が独占した。彼は即位するとハプスブルク家の御用商人だったフッガー家にユソウボクの交易を委ねた[12]ウルリヒ・フォン・フッテンは1519年に著した "De morbo Gallico (On the French disease)" において、ユソウボクにより梅毒から回復したと報告し、ユソウボクの人気が沸騰した[12]。16世紀前半にユソウボクはヨーロッパで水銀とともに梅毒の治療薬として使われ[13]、フッガー家は巨万の富を築いた[12]。1529年にパラケルススは論文の中で梅毒治療薬としてのユソウボクの効果を否定した[12][注 3]。フッガー家は圧力をかけて論文の出版を停止させたが、ユソウボクの人気も次第に翳り、フッガー家は16世紀末にはユソウボクの交易事業から撤退した[12]

1687年から1689年にかけて、ジャマイカ総督アルベマール公爵(二代目)付きの医者、ハンス・スローンが本種の標本を採集し、『ジャマイカの博物』(1725)にその特徴や材の堅さ、薬効などについて詳細に解説し、その標本スケッチを元にリンネが学名を付けた[15]

人間との関係

本種の木材は、世界でもっとも堅く重い材として知られる。また、脂分を多く含み(自己潤滑性)がある。これらの特徴のため、船用プロペラシャフト軸受け滑車ベアリングなど海洋で使う製品に最適である[4][16]。また、古くから彫刻木彫り、(ろくろ細工)に利用されていた[16]

花の美しさのため、鑑賞用樹木として広く植栽される。カリブ海沿岸地域では特に多い[7]ジャマイカ国花である[17]

本種の滲出液や木材のチップや鋸屑などから抽出されるグアヤック脂の成分の一つであるグアイオールは酸化されると色が変わるため[4]シアン[18]過酸化水素オゾンハロゲンガスなどの検出に用いられる[4]。グアヤック脂はまた酸化防止剤ガムベースなどの食品添加物としても利用される[19]

ギャラリー

脚注

注釈

  1. ^ a b 和名・学名はYlistに準拠。
  2. ^ 本種は1508年にはスペイン人によってマットグロッソ州からサントドミンゴに導入され、それ以降、そこの自生とされていた、というブラジルの植物学者による主張もある[11]
  3. ^ パラケルススは、梅毒治療薬としての効果を完全に否定したわけではなく、効果を過大に信用することに対して警鐘を鳴らした[14]

出典

  1. ^ Barstow, M (2019). "Guaiacum officinale". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2020.2. International Union for Conservation of Nature. 2020年9月28日閲覧 Listed as Endangered (EN A2d v3.1)
  2. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 381. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358400 
  3. ^ 森林総合研究所 (1963)
  4. ^ a b c d e f g h i 平井 (1994)
  5. ^ 『朝日百科 植物の世界』 3, p. 175
  6. ^ a b c d 『新訂原色樹木大図鑑』, p. 369
  7. ^ a b c d e f g Francis (2002)
  8. ^ a b c Francis (1993)
  9. ^ Barstow (2019)
  10. ^ シェヴァリエ (2000), pp. 216–217
  11. ^ a b Record (1921), p. 15
  12. ^ a b c d e 濱田 (2004), pp. 51–66
  13. ^ レウィントン (2007), pp. 432–433
  14. ^ カイザー (1977), pp. 90–92
  15. ^ ケアリー (2015), pp. 176–179
  16. ^ a b ウォーカー (2006), p. 107
  17. ^ 在ジャマイカ日本国大使館 (2018年9月). “ジャマイカ概況” (PDF). 2020年8月23日閲覧。
  18. ^ “シアンおよびシアン化物による中毒について”. 日本中毒情報センター (1998年7月29日). 2020年8月24日閲覧。
  19. ^ 既存添加物名簿収載品目リスト

参考文献

  • 朝日新聞社『朝日百科植物の世界』 3巻、朝日新聞社、1997年。ISBN (978-4023800106)。 
  • アンドリュー シェヴァリエ 著、難波恒雄 訳『世界薬用植物百科事典』誠文堂新光社、2000年。ISBN (4416400012)。 
  • アンナ・レウィントン 著、光岡祐彦 訳『暮らしを支える植物の事典 --衣食住・医薬からバイオまで』八坂書房、2007年。ISBN (4896948858)。 
  • エイダン・ウォーカー 編、乙須敏紀 訳『世界木材図鑑』産調出版、2006年。ISBN (9784882824701)。 
  • エルンスト・カイザー 著、小原正明 訳『パラケルススの生涯』東京図書、1977年。 
  • “既存添加物名簿収載品目リスト”. 公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 (2014年2月14日). 2020年8月23日閲覧。
  • 濱田篤郎『疫病は警告する』洋泉社、2004年。 
  • 平井信二「内外樹木のいろいろ(31)ユソウボク属の樹木 [1],[2],[3],[4]」『木材工業』第49巻第5号、1994年、240-243頁、2020年8月23日閲覧 
  • フランシス・ケアリー 著、小川昭子 訳『図説 樹木の文化史 知識・神話・象徴』柊風舎、2015年。ISBN (4864980314)。 
  • 邑田仁(新訂監修)『新訂 原色樹木大図鑑』北隆館、2004年。ISBN (4-8326-0005-2)。 
  • 森林総合研究所 組織研究室「輸入外材の構造(No 33) リグナムバイタ材の構造」『林業総合試験場報告』第150号、1963年、137-138頁。 
  • John K. Francis (1993). Guaiacum officinale L. Lignumvitae. Guayacan. Zygophyllacea. Caltrop family (PDF) (Technical report). SO-ITF-SM. 67. USDA Forest Service, International Institute of Tropical Forestry. 2020年9月7日閲覧
  • Jhon K. Francis (2002), “Guaiacum officinale L.'”, Tropical Tree Seed Manual, U.S. Department of Agriculture, Forest Service, pp. 483-485, https://rngr.net/publications/ttsm/species/PDF.2004-03-03.2104/at_download/file 2020年8月24日閲覧。 
  • Samuel J. Record (1921) (PDF). Lignum-Vitae: A Study of the Woods of the Zygophyllaceae with Reference to the True Lignum-Vitae of Commerce--Its Sources, Properties, Uses, and Substitutes. Yale School of Forestry & Environmental Studies Bulletin. 5. Yale University Press. doi:10.5962/bhl.title.43550. https://elischolar.library.yale.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1005&context=yale_fes_bulletin 2020年8月23日閲覧。 
  • Barstow, M (2019). Guaiacum officinale (Report). The IUCN Red List of Threatened Species 2019. International Union for Conservation of Nature. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-1.RLTS.T33701A68085935.en. https://www.iucnredlist.org/species/33701/68085935 2020年9月27日閲覧。. 

関連項目

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