ミャンマーの大統領

ミャンマーの大統領（ミャンマーのだいとうりょう、ပြည်ထောင်စု သမ္မတ မြန်မာနိုင်ငံတော်‌ သမ္မတ）は、ミャンマー（ビルマ）の元首たる大統領である。

ミャンマー連邦共和国大統領 ပြည်ထောင်စု သမ္မတ မြန်မာနိုင်ငံတော်‌ သမ္မတ
ミャンマーの国章
現職者ミンスエ（代行） မြင့်ဆွေ 就任日 2021年 2月1日（論争中）
地位	ミャンマー連邦共和国元首
所属機関	(内閣)（英語版、ビルマ語版） (国防・治安評議会)（英語版、ビルマ語版）
官邸	(大統領宮殿)（英語版、ビルマ語版）
所在地	ミャンマー連邦共和国、ネピドー
指名	連邦議会
任命	(大統領選出会議)（英語版、ビルマ語版）
任期	5年（再任は1期限り）
根拠法令	ミャンマー連邦共和国憲法
前身	(ビルマ総督)（英語版）
初代就任	(サオ・シュエ・タイク)（英語版）
創設	1948年 1月4日
職務代行者	(副大統領)（英語版、ビルマ語版）
ウェブサイト	www.president-office.gov.mm
表 (話) 編歴

2021年の軍事クーデター以降は人事が流動的になっており、クーデター勢力（ミャンマー国軍）と反クーデター勢力（国民民主連盟を中心とする民主派勢力）がそれぞれ異なる人物を大統領と認識している（後述）。

概要

1947年憲法

1947年制定の初代憲法では、大統領は民族代表院（上院）と地域代表院（下院）の議員によって選出され、行政権を有していた。助言を与える補助機関として、首相と国務大臣からなる連邦政府（内閣の名称）が存在し、首相は下院の指名に基づいて大統領が任命し、国務大臣は首相の指名に基づいて大統領が任命した^[1]。任期は5年で、各主要民族から順次選出される不文律があった。

第一軍政 (1962-1974)

1962年から1974年までの間、ビルマでは軍事政権の最高決定機関である(連邦革命評議会)（英語版、ビルマ語版）^[2]の議長が、大統領の代わりに国家元首職を務めていた。

1974年憲法

1974年制定の第二代憲法では、大統領は国家を代表する存在で、(国家評議会)（ビルマ語版）^[3]の議長が大統領に就任することとなっていた。

第二軍政 (1988-2008)

1988年以降は、軍事政権の最高決定機関である国家平和発展評議会（SPDC）の議長が、大統領の代わりに国家元首職を務めている。

2008年憲法

2008年に制定された現行憲法の規定により、大統領と二人の副大統領が連邦議会によって選出されることとなった。なお、任期途中で大統領が辞任した場合には第一副大統領が一時的に大統領代行となり、7労働日以内に連邦議会で後任の大統領を選出しなければならない^[4]^[5]。

2021年のクーデター以降

2021年のクーデター以降、大統領職の扱いはクーデター勢力と反クーデター勢力とで対応が分かれている。

クーデター勢力のミャンマー国軍は第一副大統領のミンスエを大統領代行としながら、憲法417条の規定^[6]に基づいて非常事態宣言を布告した際に国政の実権を国軍総司令官のミン・アウン・フラインが就任した国家行政評議会議長へと移管している。

一方の反クーデター勢力は、3月2日に発足した連邦議会代表委員会（CRPH）の(臨時内閣)、及び4月16日に発足した国民統一政府（NUG）が、いずれもクーデター以前の大統領であるウィンミンを引き続き大統領としている。だが、クーデター以降ウィンミンの身柄が国軍に拘束されているため、(副大統領職)（英語版）を務める人物が権限を代行している（詳細後述）。

元首の一覧

大統領
ビルマ連邦
代	大統領	所属政党	期	在任期間		備考
01	(サオ・シュエ・タイク)（英語版） စဝ်ရွှေသိုက် Sao Shwe Thaik	反ファシスト人民自由連盟	1	1948年 1月4日 - 1952年 3月16日	7000400000000000000♠4年 + 72日
02	(バー・ウ)（英語版） ဘဦး Ba U	反ファシスト人民自由連盟	2	1952年3月16日 - 1957年 3月13日	7000400000000000000♠4年 + 362日
03	(ウィン・モン)（英語版） မန်းဝင်းမောင် Win Maung	反ファシスト人民自由連盟	3	1957年3月13日 - 1962年 3月2日	7000400000000000000♠4年 + 354日	任期満了前に解任^[7]
革命評議会議長
代	議長	所属政党	期	在任期間		備考
0-	ネ・ウィン နေဝင်း Ne Win	無所属（軍人）	-	1962年3月2日 - 1974年 3月4日	7001120000000000000♠12年 + 2日
ビルマ連邦社会主義共和国
大統領
代	大統領	所属政党	期	在任期間		備考
04	ネ・ウィン နေဝင်း Ne Win	ビルマ社会主義計画党	4	1974年3月4日 - 1981年 11月9日	7000700000000000000♠7年 + 250日
05	サン・ユ စန်းယု San Yu	ビルマ社会主義計画党	5	1981年11月9日 - 1988年 7月25日	7000600000000000000♠6年 + 259日
06	セイン・ルイン စိန်လွင် Sein Lwin	ビルマ社会主義計画党	6	1988年7月25日 - 1988年8月12日	18日	任期満了前に辞任
0-	(エー・コ)（英語版） အေးကို၊ ဦး Aye Ko	ビルマ社会主義計画党	6	1988年8月12日 - 1988年8月19日	7日	大統領代行
07	マウン・マウン မောင်မောင် Maung Maung	ビルマ社会主義計画党	7	1988年8月19日 - 1988年9月18日	30日	任期満了前に解任
ビルマ連邦・ミャンマー
国家法秩序回復評議会議長
代	議長	所属政党	期	在任期間		備考
0-	ソウ・マウン စောမောင် Saw Maung	無所属（軍人）	-	1988年9月18日 - 1992年 4月23日	7000300000000000000♠3年 + 218日
0-	タン・シュエ သန်းရွှေ Than Shwe	無所属（軍人）	-	1992年4月23日 - 1997年 11月15日	7000500000000000000♠5年 + 206日
国家平和発展評議会議長
代	議長	所属政党	期	在任期間		備考
0-	タン・シュエ သန်းရွှေ Than Shwe	無所属（軍人）	-	1997年11月15日 - 2011年 3月30日	7001130000000000000♠13年 + 135日
ミャンマー連邦共和国
大統領
代	大統領	所属政党	期	在任期間		備考
08	テイン・セイン သိန်းစိန် Thein Sein	連邦団結発展党	8	2011年3月30日 - 2016年3月30日	7000500000000000000♠5年 + 0日
09	テイン・チョー ထင်ကျော် Htin Kyaw	国民民主連盟	9	2016年3月30日 - 2018年3月21日	7000100000000000000♠1年 + 356日	任期途中で辞任
0-	ミン・スエ မြင့်ဆွေ Myint Swe	連邦団結発展党	9	2018年3月21日 - 2018年3月30日	9日	大統領代行（第一副大統領）
10	ウィン・ミン ဝင်းမြင့် Win Myint	国民民主連盟	10	2018年3月30日 - 2021年2月1日	7000200000000000000♠2年 + 308日	クーデターにより身柄拘束^{[注釈 1]}。
国家行政評議会議長（軍事政権）
代	議長	所属政党	期	在任期間		備考
01	ミン・アウン・フライン မင်းအောင်လှိုင် Min Aung Hlaing	無所属（軍人）	-	2021年2月2日 - （現職）	7000200000000000000♠2年 + 109日	国軍最高司令官。2021年8月1日からは暫定政府の首相を兼任。
大統領（軍事政権）
代	大統領	所属政党	期	在任期間		備考
0-	ミン・スエ မြင့်ဆွေ Myint Swe	連邦団結発展党	-	2021年2月1日 - （現職）	7000200000000000000♠2年 + 110日	大統領代行（第一副大統領）
大統領（連邦議会代表委員会及び国民統一政府）
代	大統領	所属政党	期	在任期間		備考
0-	（空席）		-	2021年2月1日 - 2021年3月2日	29日	(臨時内閣)樹立までの準備期間。
01	ウィン・ミン ဝင်းမြင့် Win Myint	国民民主連盟	1	2021年3月2日 - （現職）	7000200000000000000♠2年 + 81日	在任期間は臨時内閣の期間を含む。クーデター以降ミャンマー軍に身柄を拘束されており、名目上の就任に留まる。
0-	(マン・ウィン・カイン・タン)（英語版） မန်းဝင်းခိုင်သန် Mahn Win Khaing Than	国民民主連盟		2021年3月9日 - 2021年4月16日	38日	臨時内閣において、(副大統領代行)（英語版）として権限を代行。
0-	(ドゥーワーラシーラ)（ビルマ語版、英語版） ဒူဝါလရှီးလ Duwa Lashi La	カチン民族協議会		2021年4月16日 - （現職）	7000200000000000000♠2年 + 36日	NUGの内閣において、(副大統領)（英語版）として権限代行。

脚注

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注釈

^ 身柄拘束後の扱いは、クーデターを支持するか否かで異なってくる。クーデターを支持する立場では、任期満了前に解任されたものとして扱う。一方、クーデターを否定する立場では、引き続き在職しているものとして扱う。

出典

^ 首相と国務大臣は共に地域代表院の議員でなければならず、連邦政府は下院に対して連帯責任を負った（議院内閣制）。
^ ビルマ軍の高級将校16名によって構成された。
^ 国家評議会：(人民議会)（英語版）（国会の名称）閉会中に法的拘束力を持つ命令を出す権限が与えられた組織。地方行政区分を基準に選出された国会議員28人と首相によって構成され、議長は大統領に就任することとなっていた。非常事態宣言や条約の締結・批准・脱退など高度な政治的権限が付与されていた。
^ . 時事通信. (2018年3月21日). オリジナルの2020年5月3日時点におけるアーカイブ。. 2018年3月21日閲覧。
^ “ミャンマー大統領が辞任 7日以内に後任選出”. 日本経済新聞. (2018年3月21日) 2018年3月21日閲覧。
^ 工藤年博編, ed (2010). (Report). アジア経済研究所. オリジナルの2017-08-18時点におけるアーカイブ。. 2021年2月13日閲覧。.
^ クーデターにより軍事政権に移行し、大統領に代わって連邦革命評議会の議長が権力を掌握。

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