ホームベーカリー(英: bread machine[1][注 1])とは、小麦粉・水・イーストから生地をつくり発酵させ、それを焼いてパンをつくる家庭用電化製品。製パン機[2]、パン製造機[2]、パン焼き機[3][4]、パン焼き器[2]とも。
概要
小麦粉・水・イースト(酵母)等の材料を内釜に投入して、スイッチを押すと、自動的に生地の生成(混合・練り機能)、発酵の温度調整(発酵機能)、焼き上げ(焼き機能)を行い、家庭で自動で手作りパンを焼き上げる。
通常、普通のスーパーなどで販売されている普通の小麦粉(主に強力粉や中力粉)およびイーストでパンを焼くことができる。
材料として小麦粉・イースト以外にバター・スキムミルク・砂糖・塩を加えた日本風の食パンだけでなく、反対にバター・スキムミルク・砂糖などは一切入れず、小麦粉・水・イースト・塩だけを投入することであっさりしたフランスパン風のパンを作ることもできる。ナッツやドライフルーツなどお好みの材料を加えることでオリジナルの味のパンを作ることもでき、また鶏卵や砂糖などを入れることでパウンドケーキ風のパンを焼くこともできる。 焼き上げる容量は、1斤から1.5斤程度のものが中心である。
発酵まででとどめるコース(焼きはしないコース)を備えている機種も多く、そうした機種ならばピザの生地作り、麺の生地作りなどに利用できる。また、この機械に備わっているヒーターおよび内釜の内側で回転する「羽根」を活用して、餅つき、ジャム作り、ヨーグルト発酵などのコースが用意された製品もある。
市販価格は1万円程度から2万円台が中心である。
歴史
日本
1987年(昭和62年)3月頃に松下電器産業(現・パナソニック)[5][6]、船井電機[7]が相次いで製品化した。多くのメーカーが製品化し、1988年(昭和63年)には家電業界での販売台数は約32万台であった。
大ヒットの一方、(当時は、メーカーは機械販売後の粉の販売で儲けようと目論んだのか)「専用の小麦粉が必要」とほのめかしたり、そうした説明文をつけて販売していたが、にもかかわらず専用品の供給をあまりしなかったこと、コストパフォーマンスも市販のパンと同等で特に優れてはいなかったこと、などの欠点があった。この1980年代後半のブーム後は、1992年(平成4年)には販売台数が2万台弱となるまでに落ち込んだ。
米不足が問題となった1994年(平成6年)に小麦粉食が注目されて第2期ブームとなり、しかし、ブームは一過性で終わり、米の供給が正常化すると再び販売数は落ち込んだ。
2005年(平成17年)頃から、基本性能の改善・レシピの増加そして(機種によっては)多機能化、2010年代初頭現在、再び年間20万台に届く規模にまで拡大しつつある。
日本以外
日本国外でのホームベーカリーの販売は、松下電器が1987年に輸出を開始したアメリカ合衆国で始まった。パンが主食のひとつである英米では1990年代後半頃からホームベーカリーの一般家庭への普及が進んだ。
現在生産中
2023年時点の主なメーカー
- ナショナル→パナソニック(ホームベーカリー) - 1987年に国内第一号機を発売し、以後ホームベーカリー国内トップメーカーへと成長
- アイリスオーヤマ(ホームベーカリー)
- アルファックス・コイズミ(ホームベーカリー)
- エムケー精工(パン焼き機)
- グループセブ「T-fal」(ホームベーカリー)
- シー・シー・ピー (ホームベーカリー)[8]
- シロカ「siroca」(おうちベーカリー、ホームベーカリー)
- 象印マホービン(ホームベーカリー)
- タイガー魔法瓶(ホームベーカリー)[注 2]
- ツインバード(ホームベーカリー)
- 廣瀬無線電機(ホームベーカリー)
- ベルソス(ホームベーカリー)
- MakeFlow(ヘルシーベーカリー)
- レコルト(コンパクトベーカリー)
生産より撤退
- 日立製作所(ホームベーカリー『焼きたて通り』) - オーブンレンジの庫内にパンケースをセットし食パンなどが焼ける「ベーカリーオーブンレンジ」も販売していた。1988年の『7時のニュース』(MRO-B50) や、ホームベーカリー撤退後の2012年から2020年頃まで『ベーカリーレンジ ヘルシーシェフ』シリーズを生産していた。2023年現在はいずれも生産完了している。なお、系列店「日立チェーンストール」ではパナソニック・東芝・タイガー魔法瓶・象印マホービンなどの他社製品を販売
- 三洋電機(ホームベーカリー) - パナソニック完全子会社化に伴い2011年限りで生産終了。「GOPAN」ブランドは親会社パナソニック製品へ継承
- 東芝(ホームベーカリー) - かつては自社生産していたが、現在はホームベーカリー機能を持たない餅つき機のみを生産。東芝ストアーにはパナソニック・タイガー・象印などの他社製品を供給
- 船井電機
- リーガル(ブレッドメーカー)
ギャラリー
内釜の例(これが機械に入っている)
内釜を取り出した状態の機械の内部。黒っぽいリングは熱源。
内釜を機械にセットし生地をこねている状態
焼けたパンの例
別の機械の例(空の状態)
材料を投入した状態
中でパンが焼きあがった状態
焼けたパンの例
回転して生地をこねる羽根状の部品
ホームベーカリーでパネトーネを焼いた例
脚注
注釈
出典
- ^ “bread machine” (英語). Open Directory Project. 2010年5月7日閲覧。
- ^ a b c d リンク切れ 意匠分類定義カード(C6) 特許庁
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ SD-BT2は家庭用自動パン焼き機。
- 『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p110
- ^ 「松下電器産業・家庭用自動製パン器「自動ホームベーカリーSD-BT2」を2月21日に発売」『日本経済新聞』1987年1月17日付け朝刊9頁。価格は36000円。
- ^ 「船井電機・家庭用小型全自動製パン器「らくらくパンだ」を来年1月発売」『日経産業新聞』1986年12月6日付。価格は39800円。
- ^ ホームベーカリー発売