フローリー・ハギンズの格子モデル。黒く数珠状につながったのが高分子を表す
低分子溶液の標準モデルが2種類の玉を格子に詰める場合の数から(混合エントロピー)を導き出したように、フローリー・ハギンズ理論では数珠状につながった玉(高分子)とつながっていない玉(溶媒分子)を考えることにより、混合エントロピーを導く。この理論では 個の溶媒分子(モル数 )と、玉が 個つながった高分子を考える。高分子が 個(モル数 )、したがって、高分子に含まれる全セグメントの個数が 、モル数が 、存在する系を考える。以下のことが仮定される。
- 溶媒分子と高分子のセグメントの体積は等しい。
- 高分子セグメントの平均濃度はどこをとっても一様(平均場近似)
これらにより、格子に配置する場合の数は となり、これより混合エントロピー は以下のように定式化される。
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、 は体積分率で , ( )である。
エンタルピーの変化は溶媒‐溶媒間や高分子‐高分子間の接触に代わり、溶媒‐高分子という接触が生じると仮定することによって計算される。 いま、混合に際する体積変化を無視してこのような新しい接触が出来る際のエネルギー変化を とし、 個の溶媒‐高分子の接触ができたとすると、エンタルピーの変化は となる。 さらに、高分子は 個の溶媒に囲まれている( は近接する座標の数)と考えることができるので、 とおけば、(混合エンタルピー) は と表せる。
よって自由エネルギーの変化は、
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と表せる。 は、相互作用をあらわす無次元量のパラメータで、この値が低いほど良溶媒であることを示す。溶媒和などにより、混合にともなうエントロピー変化が生じる場合には、このパラメータにエントロピー成分が付加される。 上の式により、溶媒の化学ポテンシャル が得られる。
- , は純状態での化学ポテンシャル
高分子溶液における溶媒の蒸気圧 と浸透圧 は化学ポテンシャルの式によりそれぞれ、以下のようになる。
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ここで、 は純溶媒の蒸気圧、 は溶媒のモル体積を表す。
上にあげたような式で、実際の溶液系を広い範囲の体積分率において説明できる。たとえば、ゴム‐ベンゼン系では で適合する。
ヒルドブランドによると、パラメータ は
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( は混合成分それぞれの溶解パラメータで凝集エネルギー を使って、 で定義される。)
しかし、 パラメータは理論的に決定することが難しく、通常は実験で測定される。