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フィル・スペクター

ハーヴェイ・フィリップ・スペクター英語: Harvey Phillip Spector1939年12月26日 - 2021年1月16日)は、アメリカ音楽プロデューサーである。1960年代から70年代にかけて「ウォール・オブ・サウンド」と称されるプロデュースで、ポピュラー音楽の分野で大きな足跡を残した。

フィル・スペクター
2000年撮影
基本情報
出生名 ハーヴェイ・フィリップ・スペクター
生誕 (1939-12-26) 1939年12月26日
出身地 アメリカ合衆国 ニューヨーク州ニューヨーク
死没 (2021-01-16) 2021年1月16日(81歳没)
ジャンル
職業
担当楽器
活動期間 1958年 - 2009年
レーベル (フィレス・レコード)(英語版)
共同作業者 (ザ・テディ・ベアーズ)(英語版)
公式サイト The Official Phil Spector Site

1989年にロックの殿堂入りし、1997年に(ソングライターの殿堂)(英語版)入りを果たした[2]。2004年にローリング・ストーン誌が発表した「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」では第64位にランクインした[3][4]

来歴

ニューヨーク市ブロンクスにてロシア系アシュケナジムの家庭に生まれた。父の死後にロサンゼルスに移住。十代の頃から音楽活動を始め、(ザ・テディ・ベアーズ)(英語版)[5]を結成。「逢った途端にひとめぼれ」が全米1位のヒットとなった。しかし彼はすぐにバンド活動よりも音楽制作の方へと興味が移り、音楽プロデューサーとしての活動を始める。

1961年に(レスター・シル)(英語版)と共に(フィレス・レコード)(英語版)(レーベル名は二人の名前 Phil + Les から)を設立。第1弾シングル『ゼアズ・ノー・アザー・ライク・マイ・ベイビー』が全米20位を記録。パリス・シスターズのヒット作を発表した。

1963年、ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」がヒット。多人数のスタジオ・ミュージシャンを起用し、独特の音響を持つ(ゴールド・スター・スタジオ)(英語版)にて録音された大編成のバンドを狭いスタジオで一発録音することで作られた重厚な音は、当時としては非常に斬新なもので「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれ、音楽制作者やミュージシャンに大きな影響を与えた。当時はまだ録音技術が発展途上だったゆえ、この手法での録音作業は完成までかなりの時間と労力を要したが、スペクターは偏執的なまでに理想とするサウンド作りにこだわった。また、ステレオ録音が主流となっても(モノラル)にこだわり続けたところに、彼の偏執ぶりがよく現れている。1963年のアルバム『クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』はクリスマスアルバムの定番として有名であり、クリスマスソングをウォール・オブ・サウンド一色にデコレートしたコンセプト・アルバムであると見る向きもある。

早い時期からビートルズとは親交があった。スペクターはビートルズの初渡米の際違う飛行機に乗るはずだったが乗る飛行機をキャンセルしてビートルズと同じ飛行機に乗った。ポール・マッカートニーはスペクターに「僕らはアメリカで必要とされているだろうか?」と漏らしたという。また1970年発表のアルバム『レット・イット・ビー』で「ゲット・バック・セッション」の再プロデュースを手がけた。ジョン・レノンジョージ・ハリスンはビートルズの解散寸前の散漫なセッション録音集を一作品として短期間のうちにまとめ上げたスペクターの手腕に感銘を受け、その後もそれぞれのソロ・アルバムでプロデューサーに彼を起用している。しかし、マッカートニーは特に「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」にオーケストラコーラスオーバー・ダビングするなどしたスペクターの再プロデュースを「オリジナル・コンセプトを無視した過剰プロデュース」として強い不満を持ち、憤慨した[6][7]

1970年代以降もプロデューサーとして活動していたが、セッション中に対立したラモーンズのメンバー[8]やレノン[9]に対して銃で脅したり、出来が気に入らないマスターテープを勝手に持ち帰って雲隠れしたり[10]といった奇行が目立ち、また麻薬を常習するなどして錯乱状態に陥り、1980年にラモーンズのアルバム『(エンド・オブ・ザ・センチュリー)』をプロデュースして以降は第一線から退いた。

殺人事件

 
スペクターのマグショット(2009年)

2003年2月、自宅で女優の(ラナ・クラークソン)(英語版)を射殺した容疑で逮捕される。スペクターは彼女が自殺を図ったと主張して容疑を否認し、その後保釈されている。2007年9月26日、ロサンゼルス地裁の陪審団は有罪か無罪かを判断できない「評決不能」を宣言した。

2009年4月13日、検察の申し立てを受けた2度目の審理で、ロサンゼルス郡地裁の陪審により計画性はないが故意、衝動的に犯したなどの場合に適用される第2級殺人罪で有罪の評決が出された。 同年5月29日、禁固19年の判決が言い渡され[11]、カリフォルニア州立刑務所の薬物中毒治療施設に収監されていた[12]

2013年にアル・パチーノ主演で伝記テレビ映画『(フィル・スペクター)(英語版)』が製作され、HBOで放送された[13]

死去

2021年1月16日、新型コロナウイルス感染に伴う合併症により、刑務所から移送された先の病院で死去した[14][15][16][17]。81歳没。

プロデュースしたミュージシャン

脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ a b c d e f Unterberger, Richie. “Phil Spector | Biography & History”. AllMusic. All Media Group. 2020年11月23日閲覧。
  2. ^ “”. Songwritershalloffame.org. 2008年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月23日閲覧。
  3. ^ “”. Rolling Stone. 2006年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月30日閲覧。
  4. ^ Wexler, Jerry. “”. Rolling Stone Issue 946. Rolling Stone. 2005年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月23日閲覧。
  5. ^ “The Teddy Bears Albums: songs, discography, biography, and listening guide”. Rate Your Music. Sonemic. 2020年11月23日閲覧。
  6. ^ Kreps, Daniel. “”. Rolling Stone. 2017年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月23日閲覧。
  7. ^ “ビートルズの解散と『McCartney』ができるまで【連載:第2回 】”. uDiscover. UNIVERSAL MUSIC JAPAN (2020年11月6日). 2020年11月23日閲覧。
  8. ^ “The Curse of the Ramones”. Rolling Stone: 8. (May 19, 2016). https://www.rollingstone.com/music/features/the-curse-of-the-ramones-20160519?. 
  9. ^ Pang, May (1983). Loving John. Warner Books 
  10. ^ Blaney, John (2005). John Lennon: Listen To This Book. Paper Jukebox. ISBN (0-9544-5281-X) 
  11. ^ “Phil Spector gets 19 years to life for murder of actress”. CNN (2009年5月29日). 2017年7月15日閲覧。
  12. ^ “Phil Spector moved to California prison”. CNN (2009年6月24日). 2017年7月15日閲覧。
  13. ^ “殺人罪で服役中、フィル・スペクターの伝記映画公開へ”. 阪神コンテンツリンク. (2013年2月8日). https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/10010 2020年11月23日閲覧。 
  14. ^ “Music Producer Phil Spector Dead at 81”. TMZ (EMH Productions). (2021年1月17日). https://amp.tmz.com/2021/01/17/phil-spector-dead-dies-81/?__twitter_impression=true 2021年1月18日閲覧。 
  15. ^ “フィル・スペクター受刑者、獄中で死亡 米音楽プロデューサー”. AFP (2021年1月18日). 2021年1月18日閲覧。
  16. ^ “Phil Spector, Famed Music Producer and Convicted Murderer, Dies at 81”. ニューヨーク・タイムズ (2021年1月17日). 2021年1月18日閲覧。
  17. ^ “Pスペクター受刑者はコロナ死と米各紙が報じる”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2021年1月18日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202101180000185.html 2021年1月18日閲覧。 

関連項目

外部リンク

  • The Official Phil Spector Site
  • Phil Spector - Discogs
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