ヒラフネガイ(平舟貝、学名:Ergaea walshi)は(カリバガサガイ科)に属する巻貝の一種で、白色で平たい楕円形の貝の蓋のような殻がときどき浜に打ち上げられる。 ツメタガイなど大型の巻貝の内面に付着してヤドカリと一緒にくらす[6][7][8]。
形態
長さ3cm以下の白色で楕円形の平たい貝殻を持つ。若い貝殻の外側の右下にはわずかに巻いた部分が残るが、成長とともに螺旋状部は消失して平坦になる。内面にはポケットがある。軟体は、頭部に一対の触角があり、その根元1/3ほどのところに眼があるが、退化して触角にめり込んでいる。右の触角の右下にペニスがあるが、成長とともに失われる。歯舌は紐舌(ちゅうぜつ)型。楕円形で平たい足の上に鰓や内臓があり、後部には卵巣が成長とともに発達する。背側右後方へ突き出した腹部は貝殻のポケットに収まる[9]。類似の種で大西洋北部沿岸にすむCrepidula planaも他の巻貝の殻の内面に付着して平らであるが、殻頂が後端に突き出て、ネコゼフネガイなどと同じCrepidula属に分類される[10][2]。一方本種は腹が右後方へ突き出て貝殻のポケットの位置や形状がCrepidula属と異なり、早い時期からCrepidula属と分化し、Syphopatella属に分類されることが多い[2][3]。
生態
水深10~50mの砂底でツメタガイ や(テングニシ)などの大型の巻貝の殻口内部に付着し、ヤドカリと共生する。ヤドカリの邪魔にならないよう平たい貝になった[11]。(カリバガサガイ科)の特徴として、海水中の微生物を摂食してくらす。その際鰓(えら)上に生えた繊毛が海水の取り込みに役立つ。幼生はプランクトン栄養型。雄性先熟の雌雄同体で、大きなメスの殻の上に小さいオスが付着していることがある[9][7][12][8]。
分布
化石
出典
- ^ Bouchet and Philippe (2015年). “Ergaea walshi”. WoRMS. 2022年7月15日閲覧。
- ^ a b c Rachel Collin (2003). “Phylogenetic relationships among calyptraeid gastropods and their implications for the biogeography of marine speciation”. Systematic Bilology (Society of Systematic Biologosts) 52 (2): 618-640. doi:10.1080/10635150390235430.
- ^ a b c 田中利雄・川瀬基弘・柄沢宏明 (2008). “ヒラフネガイの化石と属名”. Bulletin of the Mizunami Fossil Museum (Mizunami Fossil Museum) (34): 117-119 .
- ^ a b “ヒラフネガイ”. ぼうずコンニャク. 2022年7月16日閲覧。
- ^ 『中国北部湾潮間帯現生貝類図鑑』 73扁平管帽螺,王海艳,张涛,马培振,蔡蕾,张振,科学出版社 2016年 (ISBN 9787030485571)
- ^ 波部忠重・小菅貞男 (1967). 標準原色図鑑全集 3 貝 Plate 15. 保育社
- ^ a b 奥谷喬司『世界文化生物大図鑑 貝類 p.90』世界文化社、2004年。ISBN (4-418-04904-5)。
- ^ a b 佐々木猛智 (2010). 貝類学(17)タマキビ型新生腹足目 p.75, 309. 東京大学出版会
- ^ a b 瀧庸 Isao Taki (1933). “ヒラフネガヒCrepidula (Syphopatella) walshi (Hermanson) Reeve及びスイシャウフネガヒCrepidula (Ianacus) unguiformis Lamarckの観察”. 貝類学雑誌ヴヰナス Venus (日本貝類学会) 4 (2): 87-101 .
- ^ Hugh J. Porter & Lynn Houser (1994). Seashells of North Carolina p.106 eastern white slippersnail. North Carolina Sea Grant Collage Program
- ^ 吉川晟弘 (2019年). “ヤドカリの貝殻を介した共生関係(2)〜ヤドカリの“宿”を借りるヒラフネガイ〜”. 水産無脊椎動物研究所「うみうし通信」. 2022年7月16日閲覧。
- ^ 佐々木猛智・上野正博 (2005). “京都府舞鶴周辺の海産貝類”. 日本貝類学会研究連絡誌ちりぼたん (日本貝類学会) 36 (3): 78-79 .
- ^ “中部更新統渥美層群の軟体動物化石 G70”. 瑞浪市化石博物館 鵜飼修司・川瀬基弘ら. 2022年7月15日閲覧。
関連項目