学名
学名は、1929年に伊藤篤太郎により、日本語の「なめこ」から Collybia nameko と命名された。その後に属が移され Pholiota nameko (T.Ito) S.Ito & Imai が広く使われていた。
しかし2008年、1850年に Agaricus microsporus として記載されていたヒマラヤ産の Pholiota microspora (Berk.) Sacc. と同一種だと結論付けられ、後者が有効名だと報告された[2]。
特徴
秋、(冷夏の年は梅雨ごろにも発生)ブナやナラなどの枯れ木や切り株などに単独または群生する。湿時はおびただしいゼラチン質の粘性物質のムチレージ[注釈 1]が分泌しており、ナメタケ[3]、ヌメリタケと呼ぶ地域もある。茶褐色の(傘)と白色又は茶色の茎、ゼラチン質で茶色の(ひだ)をもつ。天然のものと人工栽培のものがある。近年は広く人工栽培が行われ、栽培の方法も主に原木栽培とおがくず菌床栽培の二通りの方法があり、一般に市場に流通しているのは菌床栽培品である[4][5]。多くのメーカーから種菌が販売されており、害菌に対する抵抗力が比較的強く家庭栽培も容易に行える。
食用
実際の栄養価は、栽培条件、生育環境、培地添加成分などで異なるため記載されている値は代表値である。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 63 kJ (15 kcal) |
5.2 g | |
食物繊維 | 3.3 g |
0.2 g | |
飽和脂肪酸 | 0.02 g |
一価不飽和 | 0.02 g |
多価不飽和 | 0.07 g |
1.7 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) | (6%) 0.07 mg |
リボフラビン (B2) | (10%) 0.12 mg |
ナイアシン (B3) | (34%) 5.1 mg |
パントテン酸 (B5) | (25%) 1.25 mg |
ビタミンB6 | (4%) 0.05 mg |
葉酸 (B9) | (15%) 58 µg |
ミネラル | |
ナトリウム | (0%) 3 mg |
(カリウム) | (5%) 230 mg |
(カルシウム) | (0%) 4 mg |
(マグネシウム) | (3%) 10 mg |
(リン) | (9%) 66 mg |
(鉄分) | (5%) 0.7 mg |
(亜鉛) | (5%) 0.5 mg |
(銅) | (6%) 0.11 mg |
(セレン) | (3%) 2 µg |
他の成分 | |
水分 | 92.4 g |
コレステロール | 1 mg |
水溶性食物繊維 | 1.0 g |
不溶性食物繊維 | 2.3 g |
ビオチン(B7) | 7.2 µg |
別名: なめたけ 試料: 栽培品 柄の基部(いしづき)を除いたもの エネルギー: 暫定値 | |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
食用キノコで、主な旬は9 - 11月とされ、市販されている栽培品は全体に粒が揃ってツヤがあり、笠が肉厚なものが市場価値の高い良品とされる[4]。味噌汁やそばの具、おひたし、炒め物をはじめとして、加熱を伴う料理に多用される。傘の開ききっていない小さなものは、全体を覆っているゼリー状のぬめりで、和え物や汁物にするとツルツルとした喉越しが楽しめる[4]。傘の開いた大きなものは直火焼きなどで香りとシャキシャキとした歯ごたえが楽しめる。ぬめりが乾いた状態では、天然のエノキタケに似る。独特のぬめりは食物繊維の一種ムチレージという成分で、タンパク質の吸収を助けて胃粘膜の保護をする働きがあるといわれている[4][1]。
日本の市場では主に100グラム (g) 程度に袋入りで小分けされたものが流通している(#画像参照)[1]。市販のナメコは傘が1 - 2センチメートル (cm) 程度の若い者がほとんどであるが、大きく育てたものは笠が開いて直径3 - 4 cmにもなり、ぬめりは少なめで小さいものよりも歯ごたえがよい[1]。使うときは、表面に汚れがあることがあるので、さっと水洗いするか、湯を回しかけて表面のぬめりと共に洗い流してから使われることが多いが、ぬめりを取り過ぎると風味や栄養分が損なわれてしまう[4][1]。他のキノコよりも傷みが早く、その日に食べきれないものは、沸騰した湯で軽く湯通しして保存袋で冷凍保存するとよいと言われている[4][1]。
ナメコ類似の食用キノコは、(ヌメリスギタケ)( Pholiota adiposa )、ヌメリスギタケモドキ( Pholiota aurivella )、(チャナメツムタケ)( Pholiota lubrica )、(シロナメツムタケ)( Pholiota lenta )がある[7]。
未成熟のうちに収穫された栽培品よりも、成長して(傘)が開いたもの、中でも天然のもののほうが味も香りも優れている[8]。
栽培と流通
広葉樹が使用され、針葉樹は使用されない。2022年現在では、市場に流通している99%が菌床栽培品である[5]。
年 | 生産量(トン) |
---|---|
2009年(平成21年) | 26,138 |
2010年 | 27,261 |
2011年 | 25,426 |
2012年 | 25,816 |
2013年 | 23,383 |
2014年 | 21,796 |
原木栽培
原木栽培では「短木」「普通長木」「伐根」法で栽培され、種菌の接種は「駒木」「ヌカ床」により行う。原木栽培の場合、林間の「通風があり」「湿度が幾分多め」「水はけの良い」「比較的明るい場所」が適する。一般には5月頃に種菌を接種し、接種後2夏を過ぎた秋から冬にかけて発生を始め、原木の樹種により3年間から7年間収穫される。菌を原木に埋めこんだ後に蝋などでふたをした場合特に安定して育つ。
菌床栽培
かつては平箱で種菌接種後、自然状態と変わらない環境下での野外栽培も行われていた。現在では栽培周期を短くするため、空調管理された室内で「平箱」「ブロック」「ビン」で栽培される。効率化と栽培周期を短くするため、ビン栽培が主流となりつつある。菌糸体が培地内に蔓延するとpHは酸性側に傾くため、培養中にpHを測定することで培地熟度を判定できる。
菌床培地には、広葉樹のオガクズに粉糠やふすまを混ぜた物が使用される。北海道立林産試験場の研究では、「乾燥オカラを混合した培地で生産した場合、増収と生育日数の短縮効果が得られた」としている[10]。
福島大学や福島県などの研究チームによると、2022年現在、栽培に使われている種菌は、1960年代に福島県喜多方市山都町で採取された「F27」を品種改良したものであるとされる[5]。
類似の毒キノコ
ナメコをテーマとした作品
- スマートフォン用ゲーム『おさわり探偵 なめこ栽培キット』
画像
天然ナメコ幼菌
菌床栽培品 日本での流通状態の例
菌床栽培品 天然に近い状態で栽培された例
なめこおろしそば
味噌汁に入ったなめこ
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 158.
- ^ Neda H.(2008) Correct name for "nameko" Mycoscience 49:88-91
- ^ ただし、エノキタケの菌床栽培品にぬめりを効かせて(ビン詰め)にしたものも「なめたけ」と呼ばれる。
- ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 223.
- ^ a b c 日本放送協会. “「なめこ」の起源 “60年前に福島県で採取の野生の菌に由来” | NHK”. NHKニュース. 2022年6月16日閲覧。
- ^ 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ a b キノコの栽培方法 -ナメコ-特許庁 (PDF)
- ^ 五明紀春『食材健康大事典』時事通信出版局、2005年11月、114頁。ISBN (9784788705616) 。
- ^ きのこ類生産量 農水省
- ^ ナメコ栽培における乾燥オカラの利用林産試験場報 第18巻(2004年)1号 (PDF)
参考文献
関連項目
外部リンク
- ナメコ - J-GLOBAL