ティルヴィング(Tyrfingr)[1]は、北欧神話の古エッダ、サガに登場する魔剣[2]。名称は「西ゴート族の剣」を意味し、西ゴート族を指すラテン語 Tervingi (森に住む者たち)に由来する[3]。
オーディンの血を引く王、(スウァフルラーメ)が(ドヴァリン)、(ドゥリン)という二人のドヴェルグを捕らえ、命を救うのと引き換えに黄金の柄で錆びることなく鉄をも容易く切り、狙ったものは外さない剣を作るように命じた。
ドワーフたちはこの要求を飲み剣を鍛えた。しかし彼らは去り際に、この剣が悪しき望みを3度は叶えるが持ち主にも破滅をもたらす呪いをかけたことを明かし、岩の中へ逃げ込んだ。
スウァフルラーメはティルヴィングを帯びて戦場におもむき勝利した。しかし(アルングリム)と戦ったときに剣を奪われ、これで刺されて命を落とした。その後アルングリムの息子(アンガンチュール)に受け継がれたが持ち主や近親者がこの剣により死んだ。
持ち主の変遷
スウァフルラーメ1 | |||||||||||||||||||||||
アルングリム2 | ユウフラ | ||||||||||||||||||||||
アンガンチュール3 | 11子 | ||||||||||||||||||||||
ヘルヴォル4 | ホーフンド | ||||||||||||||||||||||
アンガンチュール | ヘイズレク5 | ヘルガ | |||||||||||||||||||||
アンガンチュール6 | ヘルヴォル | ||||||||||||||||||||||
- ドヴェルグにティルヴィングを作らせるがアルングリムとの戦いで奪われ殺害される。
- スウァフルラーメを殺し、王女ユウフラを略奪する。
- 王女インゲボルグへの求婚を巡って決闘、相討ちとなりティルヴィングと共に葬られる。
- 父アンガンチュールの墓を暴きティルヴィングを手に入れる。
- 人を殺して追放される際に母ヘルヴォルからティルヴィングを与えられる。後年オーディンの怒りを買い奴隷に殺害される。
- 父ヘイズレクの復讐を果たしティルヴィングを取り戻す。
※イタリック体は女性。
脚注
参考文献
- V.グレンベック著『北欧神話と伝説』山室静 訳、講談社、2009年。
- 松下正雄著『スカンジナビヤ伝承文学の研究』創文社、1965年。