『チェイス 第1章』(チェイス だいいっしょう)は、ジョーカーフィルムズ株式会社により製作されたインターネットドラマ。2017年12月22日から、アマゾンジャパン合同会社により配信された。
概要
ジョーカーフィルムズにより製作され[1]、アマゾンジャパンにより配信されたオリジナルのインターネットドラマである[2]。福田靖が脚本を手掛け[1]、深川栄洋が総監督を務めた[1]。
「このドラマはフィクションです」と称して配信していたが、内容が足利事件など実際の幼女殺害事件を取材したノンフィクションに酷似していた[3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14]。さらに、このドラマは制作にあたって被害者の遺族に対して全く取材をしておらず[15]、遺族から許可も得ないまま配信したため[15]、被害者感情を無視しているとして問題になった。
この事態を受け、アマゾンジャパンは第7話のみ配信を中止したが[16][17]、あくまで一時的な措置であり後日配信すると主張している[16][17]。
経緯
大谷亮平と本田翼がダブル主演を務めるサスペンスドラマである[18]。アマゾンジャパンのオリジナルドラマシリーズとして制作が開始された[2]。本田扮するテレビ局のスタッフが未解決事件について取材を進めるうち、DNA型鑑定に基づいて有罪判決が下された過去の裁判を知り、冤罪ではないかと疑問を持つという展開である。なお、このドラマはフィクションだと謳っていたが[19]、内容が1990年に発生した足利事件など一連の幼女殺害事件を取材した清水潔のノンフィクション『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』に酷似していたため[3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14]、物議を醸した。
清水の著書を刊行した新潮社がドラマを検証した結果、ストーリーや台詞、情景の描写などに数多くの類似点が見つかっている[3]。また、清水の著書は実際の幼女誘拐殺人事件を取材したノンフィクションであるため、ストーリーは全て実話であり、登場する被害者や遺族らは全て実在の人物である。しかしながら、ドラマの制作スタッフは遺族への取材や許諾を一切取っておらず[15]、さらには被害者を殺害するシーンが放送されるに至ったため、新潮社、日本テレビ放送網、および、清水潔がアマゾンジャパンに抗議する事態となった[3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][20]。
清水潔の著書との類似
- 新潮社
- 『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』を刊行した新潮社は、2017年12月に「弊社および清水氏はドラマ『チェイス』の制作について何ら関知いたしておりません」[21]としたうえで「映像化につきましては、書籍発売後から数多くのお話を頂戴しておりますが、事件の被害者であるご遺族の感情に配慮し、弊社および清水氏は慎重を期して検討を進めております」[21]とのコメントを発表するなど、映像化には被害者や遺族らに対して配慮が必要であるとの姿勢を表明している。
- 翌年1月、新潮社は『チェイス 第1章』を配信するアマゾンジャパンに即時配信停止を申し入れた[20][4][6]。産経新聞社の取材に対して、新潮社ノンフィクション編集部の編集長は「ドラマを検証した結果、物語の展開やセリフ、情景描写など多くの類似点が見つかった。アマゾン側から映像化の申し入れはなかった。映像化については事件の被害者である遺族の感情に配慮し慎重を期している」[3]と説明している。
- 日本テレビ放送網
- 清水潔は日本テレビ放送網の『NNNドキュメント』にて足利事件など一連の幼女殺害事件の調査報道を地道に続けてきたが、日本テレビ放送網も「本ドラマ制作にあたり両社および本ドラマ関係者から、当報道局には一切の相談・通知もありませんでした」[15]と説明している。そのうえで「本ドラマは、当報道局はもとより被害者遺族への連絡・取材なども一切無く、事件被害者らの描写について多くの点で本件報道と類似点のある内容で制作・配信された」[15]と指摘したうえで「当報道局としては倫理的にも著作権法的な見地からも到底看過できません」[15]とのコメントを発表し、2018年1月にアマゾンジャパンとジョーカーフィルムズに対して抗議した[7][9]。
- 『チェイス 第1章』制作スタッフ
- 清水の著書との類似が問題視されるようになると、このドラマの共同プロデューサーを務める四宮隆史は『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』を刊行直後に読んでいたことを認め[22][23][24][25]、「足利事件に限らず、未だ解決の目処が立たない未解決事件を、未解決のまま放置しておくべきではない」[26]と感じたので「架空の連続ドラマという『入りやすい入り口』で表現することにより、広い範囲の人と共有することができ、結果として真相解明に向けた糸口が見つかるかもしれない。こんな想いから、ドラマ《チェイス》の制作を企画しました」[27]と主張している。
- ただ、四宮が同書を読んでいたと認めて以降も、このドラマを制作したジョーカーフィルムズは「複数の文献や判決文等に記載された、客観的に明らかとなった周知の事実を踏まえて『架空の物語』を創作したものであり、特定の書籍に依拠したものではありません」[19]と主張し続けており、足利事件など一連の幼女殺害事件の被害者や遺族らに対して謝罪していない。
- 清水潔
- 『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』を執筆した清水は、日本テレビ放送網にチーフディレクターとして勤務している。そのため、清水は「私はテレビ局員で普段はチーフディレクターという立場です。自らでドラマを撮った事もあり、自著『殺人犯はそこにいる』を簡単にドラマ化にして良いなら、とっくの昔に自分でやってます。なぜそこに想いが至らないのか」[28]と苦言を呈している。
- また、2018年1月には「何より大切なことは遺族への配慮です。現実に起こった事件の『殺害の瞬間』描写など『ドラマ化』してはならないと考えています。これは日テレの足利報道や、桶川報道でも実践してきました」[29]と批判したうえで「もしもあなたの大切な誰かが不幸な最期を迎え、悲しみの中で暮らしている時、ある日突然にその不幸をエンターテイメントの題材にされ、『架空の事件』なのだと再現映像化された時、あなたはそれを許すことができるのでしょうか?」[30]と疑問視している。
登場人物
- 三上 一樹(36)
- 演 - 大谷亮平
- フリーのベテランジャーナリスト[1]。
- 相沢 麻衣(24)
- 演 - 本田翼
- BS東都のアシスタントディレクター[1]。
- 長谷川 正(52)
- 演 - 岸谷五朗
- BS東都のエグゼクティブプロデューサー。三上とは旧知の仲[1]。
- 斉藤 真紀子
- 演 - 羽田美智子
- BS東都が放送する『サンセットニュース』のキャスター[1]。
- 渡辺 俊哉(38)
- 演 - 小林且弥
- BS東都の技術部の職員。過去に世話になった上司を殴ってしまいBS東都に左遷される。ぶっきらぼうな性格だが男気のあふれる職人気質で頼れる兄貴肌[1]。
- 田中 一平(26)
- 演 - 橋本淳
- BS東都のアシスタントディレクター。とにかく軽い性格で「合コン行きましょ」が口癖[1]。
- 平山 英一(59)
- 演 - 田山涼成
- 事なかれ主義のBS東都の局長[1]。自らのメンツのために麻衣の計画を全面的にバックアップする。
- 白井 徹子
- 演 - かとうかず子
- 白井法律事務所の弁護士[1]。山崎の弁護を担当した[1]。
- 赤坂 吾郎
- 演 - でんでん
- 山崎を逮捕した元警察官。現在は隠居生活を送っているが、現役当時は暴力的な捜査・取り調べでその名をはせ、山崎に対しても執拗な取り調べで自白させる。[1]。
- 守谷 秀人
- 演 - 嶋田久作
- 『チェイス 第1章』の公式ウェブサイトでは「謎の男」[1]とだけ紹介されている。
- 山崎 登(67)[31]
- 演 - 平田満
- 幼女誘拐殺人事件の被疑者として逮捕された元保育園用務員。朴訥とした性格で気が小さくしゃべり下手。未だに無実を主張している[1]。
スタッフ
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Amazonオリジナル『チェイス 第1章』 公式サイト”. アマゾンジャパン. 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b “大谷亮平&本田翼、Amazonドラマ「チェイス」で初共演!12月22日配信スタート”. 映画.com (エイガ・ドット・コム). (2017年10月24日) 2017年10月24日閲覧。
- ^ a b c d e 塩原賢 (2018年1月18日). “新潮社、アマゾンのドラマ「チェイス」の配信中止を要請”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社) 2018年1月18日閲覧。
- ^ a b c d “新潮社、Amazonドラマ「チェイス」配信中止要請 『殺人犯はそこにいる』と酷似”. ITmedia NEWS (アイティメディア). (2018年1月18日) 2018年1月18日閲覧。
- ^ a b c “新潮社「チェイス」配信中止をアマゾンに申し入れ”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2018年1月18日) 2018年1月18日閲覧。
- ^ a b c d “新潮社:アマゾンに配信中止申し入れ -”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2018年1月19日) 2018年1月19日閲覧。
- ^ a b c d “アマゾン配信ドラマに抗議=「事件報道に酷似」-日本テレビ”. 時事ドットコム (時事通信社). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “アマゾン配信ドラマに日テレも抗議 「報道想起させる」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c d “配信ドラマ「チェイス」は「とうてい看過できない」 日本テレビもアマゾンに抗議”. 産経ニュース (産経デジタル). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “配信ドラマ「チェイス」とうてい看過できない…日本テレビもアマゾンに抗議”. SankeiBiz (産経デジタル). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “日テレもアマゾンなどに抗議 ドラマは自局報道を想起と”. 千葉日報オンライン (千葉日報社). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “日テレ 盗作疑惑のAmazonドラマ「チェイス」に抗議文「到底看過できない」”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “本テレビがAmazonドラマ「チェイス」に抗議文 「到底看過できません」”. デイリースポーツ online (デイリースポーツ・神戸新聞社). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b c “日テレ、アマゾンなどに抗議 ネットドラマが自局報道に酷似”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2018年2月3日) 2018年2月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g “ドラマ「チェイス」への抗議について|NNNドキュメント”. 日本テレビ放送網. 2018年2月2日閲覧。
- ^ a b “日テレ、Amazonドラマ『チェイス』に抗議「到底看過できません」”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年2月2日)2018年2月2日閲覧。
- ^ a b “日本テレビもAmazonオリジナルドラマ「チェイス」に抗議文 「倫理的にも著作権法的な見地からも到底看過できません」”. ねとらぼ (アイティメディア). (2018年2月2日) 2018年2月2日閲覧。
- ^ “大谷亮平×本田翼が連続幼女殺人事件の真犯人を追う、W主演ドラマ予告編公開”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2017年11月29日)2017年11月29日閲覧。
- ^ a b “”. ジョーカーフィルムズ (2018年1月1日). 2018年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月24日閲覧。
- ^ a b “Amazonドラマ「チェイス」への配信中止の申し入れ”. 新潮社 (2018年1月18日). 2018年1月18日閲覧。
- ^ a b “Amazonドラマ「チェイス」に関して”. 新潮社 (2017年12月28日). 2018年1月18日閲覧。
- ^ 四宮隆史 [@ebisukara5hun] (2017年12月31日). "@NOSUKE0607 ご著書の「殺人犯はそこにいる」も出版当初に拝読し、その圧倒的な筆致に衝撃を受けました。ご著書を読む前から、足利事件で無罪が確定する過程で記者の方が果敢に真相解明に向けて動かれていたことは知っていましたが、その裏側でこんな苦悩や、地道な取材と調査があったのかと驚きました" (ツイート). Twitterより2017年12月31日閲覧。
- ^ 安藤健二 (2017年12月31日). “ドラマ『チェイス』が物議。清水潔さんの『殺人犯はそこにいる』との類似の指摘が相次ぐ”. ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン. 2017年12月31日閲覧。
- ^ Kikka (2017年12月31日). “Amazonオリジナルドラマのパクリ疑惑に共同プロデューサーが反省の弁 新潮社は関係を否定 (1/2)”. ねとらぼ. アイティメディア. 2017年12月31日閲覧。
- ^ 宮原れい (2018年1月28日). “Amazonオリジナルドラマ「チェイス」最終話が未配信で視聴ユーザーから不満の声 「続き見たい」「何もかもが中途半端」”. ねとらぼ. アイティメディア. 2018年1月28日閲覧。
- ^ 四宮隆史 [@ebisukara5hun] (2017年12月31日). "@NOSUKE0607 足利事件に限らず、未だ解決の目処が立たない未解決事件を、未解決のまま放置しておくべきではない。そして、未解決のまま放置される背景には、国家権力による不当な隠蔽があるのではないか。司法関係者も報道関係者も、この事実をより重く受け止めるべきではないか。" (ツイート). Twitterより2017年12月31日閲覧。
- ^ 四宮隆史 [@ebisukara5hun] (2017年12月31日). "@NOSUKE0607 この問題意識を、架空の連続ドラマという「入りやすい入り口」で表現することにより、広い範囲の人と共有することができ、結果として真相解明に向けた糸口が見つかるかもしれない。こんな想いから、ドラマ『チェイス』の制作を企画しました。" (ツイート). Twitterより2017年12月31日閲覧。
- ^ 清水 潔 [@nosuke0607] (2017年12月31日). "私はテレビ局員で普段はチーフディレクターという立場です。自らでドラマを撮った事もあり、自著「殺人犯はそこにいる」を簡単にドラマ化にして良いなら、とっくの昔に自分でやってます。なぜそこに想いが至らないのか。突然の映像化に対して遺族がどう思うか。そこを真剣に考えて欲しかった。" (ツイート). Twitterより2017年12月31日閲覧。
- ^ 清水 潔 [@nosuke0607] (2018年1月1日). "そして何より大切なことは遺族への配慮です。現実に起こった事件の「殺害の瞬間」描写など「ドラマ化」してはならないと考えています。これは日テレの足利報道や、桶川報道でも実践してきました。だからこそ遺族のお許しを頂けるのです。これは私の個人的な感情ですがネット映画はあまりに残酷でした。…" (ツイート). Twitterより2018年1月1日閲覧。
- ^ 清水 潔 [@nosuke0607] (2018年1月1日). "もしも…、もしもあなたの大切な誰かが不幸な最期を迎え、悲しみの中で暮らしている時、 ある日突然にその不幸をエンターテイメントの題材にされ、「架空の事件」なのだと再現映像化された時、あなたはそれを許すことができるのでしょうか? 私には無理です。…" (ツイート). Twitterより2018年1月1日閲覧。
- ^ 27年前に40歳なので