このページ名「ステレグシュチイ級フリゲート」は(暫定的なもの)です。 代案としてはステレグシチィ級コルベット (フリゲート)、ステレグシー級コルベット (フリゲート)、ステレグシチー級コルベット (フリゲート)があります。 議論は(ノート)を参照してください。（2019年8月） |
ステレグシュチイ級フリゲート（ステレグシュチイきゅうフリゲート、英語: Steregushchiy-class frigate）は、ロシア海軍のフリゲートの艦級。海軍での正式名は20380型警備艦（Сторожевые корабли проекта 20380）[1][2][3]。防衛省では「ステレグシチー級」と呼称する[4]。また、発展型の20381型も、本項で扱う。
| 20380型警備艦 (ステレグシュチイ級) | |
|---|---|
| 基本情報 | |
| 種別 | 警備艦 (フリゲート) |
| 建造期間 | 2001年 - 建造中 |
| 就役期間 | 2007年 - 就役中 |
| 前級 | |
| 次級 | |
| 要目 | |
| (基準排水量) | 1,850 t |
| (満載排水量) | 2,200 t |
| 全長 | 104.5 m |
| 最大幅 | 13.0 m |
| 吃水 | 3.7 m |
| 機関方式 | CODAD方式 |
| 主機 | 16D49ディーゼルエンジン (5,916 bhp)×4基 |
| 推進器 | 固定ピッチ・プロペラ×2軸 |
| 速力 | 最大27ノット |
| 航続距離 | 4.000海里/15ノット |
| 乗員 | 100名 |
| 兵装 | #兵装を参照 |
| 搭載機 | Ka-27PL(哨戒ヘリコプター)×1機 |
| レーダー |
|
| ソナー | |
| 電子戦・ 対抗手段 | |
来歴
2000年3月4日、ウラジーミル・プーチン大統領は、「2010年までのロシア連邦海軍行動基本方針」を承認した。これに基づき、沿海用の汎用警備艦として計画されたのが本級である[5]。
2001年5月25日、サンクトペテルブルク市のアルマース中央海洋設計局が設計を受注した[1]。同設計局はミサイル艇の製造などで実績があり、シリャフテンコ主任設計官によって率いられていた。最終案は2001年12月14日に承認され、その1週間後には、同市のセーヴェルナヤ・ヴェルフィで、ネームシップの建造が開始された。当初は2005年竣工予定とされていたが[5]、工期の遅れから、進水は2006年、就役は2008年に遅延した[1]。また2番艦以降は、海軍の要請を受けて、防空能力を強化した改良型である20381型、7・8番艦は巡航ミサイルの運用能力を付与した20385型、そして無人機の運用能力などを付与された20386型へと、順次に設計変更を受けている[6]。なお20385型2隻が起工された後にも20381型の建造は続いている。
設計
本級はステルス艦として設計された。主船体は鋼製で、9つの水密区画に区分されている。水線下形状は大幅に刷新されており、水中抵抗は従来船型の25パーセント減となった。また艦首にはブルワークが付されている[1]。ステルス性への配慮も含めて、上部構造物には複合材が導入されており、主船体への新型鋼材の採用もあり、船殻重量の軽量化が達成された。上記の水中抵抗軽減もあって、より軽量小型で出力が低い主機関でも所要の速力を確保できたことから、従来の設計と比して、艦内スペースは相対的に余裕があるものとなっている[5]。
主機関は、コロムナ16D49ディーゼルエンジン4基によって2軸の固定ピッチ・プロペラを駆動するCODAD方式とされた。また非常用推進器として、隠顕式のアジマススラスターも装備されている。電源としてはコロムナ22-26DGディーゼルエンジンを原動機とする発電機4セットが搭載され、総出力2,000キロワットを確保した[1]。
装備
C4ISR
マスト頂部のレドームには、Sバンドの3次元レーダーである(5P27M「フルケ2」)が収容されている。その下方のマスト本体は、アメリカ海軍の先進型閉囲マスト/センサーと同様、特定周波数の電波だけを透過させる構造になっており、内部には対水上捜索・SSM射撃指揮用のレーダーが収容されている。機種はモノメントまたは3Ts-25E「ガルプン-B」と見られている。なお「フルケ2」の両脇には、目標捕捉用のMTK-201M電子光学センサーが配置されている[7]。
ソナーとしては、中周波数のザーリャ2をバウ・ドームに収容するほか、艦尾からはミノタウル可変深度曳航アレイ（VDS-TASS）を展開できる[7]。
武器システム
防空システムとして、20380型では、GSh-6-30 30mmガトリング砲2基と9M311(近SAM)の4連装発射機2基からなるコールチク1基を艦橋構造物直前の01甲板レベルに、またAK-630M 30mmCIWSを艦中部両舷に備えていた。しかしロシア海軍は、この防空能力に不満を表明したことから、2番艦以降では、より長射程の3K96「リドゥート」が導入された。これは陸上用のS-400と並行して開発されたもので、R-73(短距離空対空ミサイル)を元にした短射程の9M100ミサイル（射程15 km）、中射程の9M96E/96E2ミサイル（射程40/120 km）、そしてS-300FM「フォールト-M」と共通の長射程の48N6E2ミサイル（射程200 km）と、複数のミサイルを使い分けることで、単一のシステムで広範囲をカバーできるようになっている[8]。20381型では12セル、20385型では16セルのVLSが搭載された[6]。
対艦兵器としては、20380・20381型では3M24「ウラン」艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基を搭載している。また20385型では、それに代えてUKSK VLSが搭載され、カリブルNK巡航ミサイルの運用能力が付与された[6]。
比較的小型の艦であるが、艦尾甲板をヘリコプター甲板とし、上部構造物後端にKa-27PL(哨戒ヘリコプター)1機分のハンガーを設けて、航空運用能力を備えている[2]。また20386型では、無人機の運用能力も付与される[3]。
なお、最新の電子機器が搭載されている為に徴兵レベルの兵員では扱えず、乗員の訓練や後方支援のシステムにも大幅な変更・改善が加えられている[5]。
兵装
同型艦一覧
本級は、派生型もあわせて20隻が建造される予定である。初期に建造された艦はいずれもバルチック艦隊に配属されているが、最終的には全ての艦隊に配分される方針である[2]。なお、太平洋艦隊配備予定の20381型は極東方面コムソモリスク・ナ・アムーレ市アムール造船所で建造されている。
| 設計 | # | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20380型 | 530 | (ステレグシュチイ)≪Стерегущий≫ | 2001年 12月21日 | 2006年 5月16日 | 2007年 11月14日 | 2008年2月27日バルチック艦隊編入 |
| 20381型 | 531 | (ソオブラジーテリヌイ)≪Сообразительный≫ | 2003年 5月20日 | 2010年 3月31日 | 2011年 7月31日 | バルチック艦隊編入 |
| 532 | (ボイキー)≪Бойкий≫ | 2005年 7月27日 | 2011年 4月15日 | 2013年 5月16日[9] | バルチック艦隊編入 | |
| 333 | (ソヴェルシェンヌイ)«Совершенный» | 2006年 6月30日 | 2015年 5月22日 | 2017年 7月20日[10] | 太平洋艦隊編入 | |
| 545 | (ストイキー)«Стойкий» | 2006年 11月10日 | 2012年 5月30日[11] | 2014年 5月28日[12] | バルチック艦隊編入 | |
| 335 | (グロームキー)«Громкий» | 2012年 4月20日 | 2017年 7月28日[13] | 2018年 12月25日[14] | 太平洋艦隊編入 | |
| 535 | (メルクーリィ)≪Меркурий≫ | 2015年 2月20日 | 2020年 3月12日 | 2023年 5月13日[15] | バルチック艦隊編入 | |
| (ストローグイ)≪Строгий≫ | 2015年 2月20日 | 2019年 6月[16] | 黒海艦隊編入予定[17] | |||
| 339 | (アルダー・ツィデンジャポフ) ≪Алдар Цыденжапов≫ | 2015年 7月22日 | 2019年 9月12日 | 2020年 12月25日 | 太平洋艦隊編入 | |
| 343 | (レーズキィ)≪Резкий≫ | 2016年 7月1日 | 2021年 7月1日[18] | 2023年 7月（予定）[19] | 太平洋艦隊編入予定 | |
| グローズヌイ «Грозный» | 2021年 8月23日[20] | 2024年（予定） | 2024年（予定）[21] | 建造中 | ||
| ブラーヴイ «Бравый» | 2021年 9月29日[22] | 2025年（予定） | 2026年予定 | 建造中 | ||
| 20385型 | 337 | (グレミャーシチイ)≪Гремящий≫ | 2012年 2月1日[23] | 2017年 6月30日[24] | 2020年 12月29日 | 太平洋艦隊所属 |
| 341 | (プロヴァルヌイイ)≪Проворный≫ | 2013年 7月25日 | 2019年 9月[25] | 2024年（予定）[26] | 建造中の火災により損傷[27] | |
| ブイヌイ ≪Буйный≫ | 2021年 8月23日[20] | 2025年（予定） | 2026年 12月（予定） | 建造中 | ||
| ラズムヌイ ≪Разумный≫ | 2022年 6月12日 | 2026年（予定） | 2027年 12月（予定） | 建造中[28] | ||
| ビイストリィ≪Быстрый≫ | 2022年 7月1日 | 2027年（予定） | 2028年 7月（予定） | 建造中[29] | ||
| リチヴィイ≪Ретивый≫ | 2023年 6月（予定） | 2027年（予定） | 2028年 12月（予定） | 建造準備中[28] | ||
| 20386型 | デルジキイ≪Дерзкий≫ | 2016年 10月28日[30] | 2021年 3月[31] | 未定[32] | 北方艦隊編入予定 |
脚注
- ^ a b c d e Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 594. ISBN (978-1591149545)
- ^ a b c 岡部いさく「注目のロシア軍艦 : その最新動向 (特集 ロシア海軍さの現況)」『世界の艦船』第817号、海人社、2015年6月、78-85頁、NAID 40020458492。
- ^ a b 小泉悠「ロシア水上戦闘艦の戦力分析 (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、2016年3月、98-103頁、NAID 40020720349。
- ^ “ロシア海軍艦艇の動向について” (pdf). 報道発表資料. 防衛省統合幕僚監部 (2018年9月13日). 2018年9月14日閲覧。
- ^ a b c d Polutov Andrey V.「ロシア海軍の新型フリゲイト計画」『世界の艦船』第619号、海人社、2003年12月、106-107頁。
- ^ a b c 小泉悠、小林義秀、加川嬴介「写真特集 今日のロシア軍艦」『世界の艦船』第817号、海人社、2015年6月、21-55頁、NAID 40020458457。
- ^ a b 多田智彦「現地報告: ロシアの国際海洋防衛展示会IMDS2015」『軍事研究』第50巻第10号、ジャパン・ミリタリー・レビュー、2015年10月、42-57頁、NAID 40020591742。
- ^ (多田智彦)「ロシア海軍の新しい艦載兵器 (特集 ロシア海軍の現況)」『世界の艦船』第817号、海人社、2015年6月、86-91頁、NAID 40020458494。
- ^ “Russian Navy Gets Advanced Stealth Corvette”. sputniknews.com (2013年5月16日). 2016年3月14日閲覧。
- ^ “Корвет «Совершенный» вошел в состав Тихоокеанского флота”. ロシア国防省. 2017年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月20日閲覧。
- ^ “Severnaya Verf Shipyard Put Corvette Stoiky Afloat”. rusnavy.com (2012年5月30日). 2016年3月14日閲覧。
- ^ 「Петербургский завод "Северная верфь" передаст Военно-морскому флоту РФ корвет "Стойкий"」『ТАСС』、2014年5月28日。オリジナルの2014年5月31日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「海外艦艇ニュース 露太平洋艦隊向け新鋭フリゲイトが進水」 『世界の艦船』通巻867集（2017年10月特大号） 海人社
- ^ “Корвет «Громкий» проекта 20380 вошел в состав ВМФ России”. bmpd.livejournal.com (2018年12月26日). 2019年5月26日閲覧。
- ^ “ロシア海軍待望の新装備 ステルス艦「メルクーリィ」就役 配備先は？”. 乗り物ニュース. 2023年5月14日閲覧。
- ^ “”. Российская газета. 2021年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月6日閲覧。
- ^ “”. 2020年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月10日閲覧。
- ^ “”. Российская газета. 2020年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月21日閲覧。
- ^ “Названа дата вхождения корвета "Резкий" в состав ТОФ России”. РЕН ТВ (2023年3月3日). 2023年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月14日閲覧。
- ^ a b “”. 2021年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月23日閲覧。
- ^ “”. www.korabel.ru. 2022年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月14日閲覧。
- ^ “”. 2021年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月6日閲覧。
- ^ “”. 2016年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月28日閲覧。
- ^ “”. 2020年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月30日閲覧。
- ^ “В Петербурге заложили первый серийный корвет проекта 20385”. lenta.ru. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月25日閲覧。
- ^ “”. ИА «Оружие России». 2020年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月4日閲覧。
- ^ “Корвет «Проворный» серьезно пострадал от пожара”. Ридус. 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月14日閲覧。
- ^ a b “Минобороны заключило контракт на строительство шести корветов для Тихоокеанского флота”. TACC. 2021年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月14日閲覧。
- ^ “На Амурском судостроительном заводе заложили корвет "Быстрый"”. ФлотПром. 2022年7月1日閲覧。
- ^ “”. 2021年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月30日閲覧。
- ^ “”. 2021年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月11日閲覧。
- ^ “”. Дзен | Блогерская платформа. 2022年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月23日閲覧。