スズキ・K型エンジンは、日本のスズキ、およびインドのマルチ・スズキ・インディアによって製造される排気量0.66リットル - 1.5リットルのガソリンエンジンで、同社のF型エンジンの領域を引き継いでいる。
スズキ・K型エンジン | |
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生産拠点 | 日本: スズキ インド: マルチ・スズキ・インディア |
製造期間 | 1994年9月 - 現在 |
タイプ | 直列3気筒DOHC12バルブ 直列4気筒DOHC16バルブ |
排気量 | 0.66リットル 1.0リットル 1.2リットル 1.4リットル 1.5リットル |
概要
バルブ駆動方式は全てDOHCを採用し、バルブ数は吸気2、排気2の気筒当たり4バルブを採用する。2015年4月現在、軽商用車を含む一部の軽自動車から、Bセグメントクラスのコンパクトカーに至るまで、多くの車種に搭載されている。また社外向けにも2013年から(ケータハム・セブン)160/165用としてK6A型を供給しており、660 ccながら(軽自動車の自主規制)を超える58.8 kW(80 PS)を出力する(後には96PSモデルも登場した[1])。
K6A型エンジンについては、軽自動車初の直噴式によるインタークーラー付ターボ仕様が存在していた[2]。
なお、従来のF型が全て鋳鉄シリンダーブロックを採用していたのに対し、K型は全てアルミニウム合金ダイカストを採用した設計となっており、従来のF型に対して軽量化を達成している。更に同社の自動車用のエンジンとしては初めてカムシャフト駆動用としてタイミングチェーンが用いられた。
0.66リットルモデルの後継はR型エンジン。なお、ジムニーのモデルチェンジに伴い、スズキの国内ラインナップからK6Aエンジン搭載車がなくなった。
K6A
先代のF型を置き換えるように開発されたが、F型とは異なり国内軽自動車向けのK型エンジンはこのK6Aのみしか開発されなかった。そのため「A」を省略して「K6」と口述されるケースが多い。ただし排気量こそ同じものの、構造や性能が異なるモデルが下記のとおり複数あるが、エンジン形式名だけからその違いは判別できない。 K6AはK型エンジンの中でも特筆すべきエンジン型で、長い期間スズキ社の軽自動車ほぼ全ての車種に搭載され、レースシーンでも取り扱われてきた。今でこそ燃費を主とする性能向上のためR型に世代交代したが、スズキ社の歴史を代表するエンジンと言える。
先代のF型エンジンで既に自主規制の64馬力出力に達していたため、K6Aのターボエンジンは初期型から64馬力として搭載されたが、後のエコカーブームから「マイルドターボ」と呼称し60馬力版が開発されている。これの違いも、エンジン型式から判別はできないため「この車種の、この時期に発売された、このグレード」と説明しないと出力の違いはわかりにくい状況がある。
- 生産期間:1994年 - 2018年
- 排気量:0.66リットル(658 cc)
- シリンダー数:3
- 内径×行程:68.0 mm×60.4 mm
- 圧縮比:10.5(NA) 、8.4、8.6、8.9(ターボ)、 9.0(直噴ターボ)、12.5(CNG)
- 出力・トルク
- 自然吸気
- 40 kW(54 PS)/6,500 rpm 63 Nm(6.4 kg·m)/3,500 rpm VVT
- 40 kW(54 PS)/6,500 rpm 61 Nm(6.2 kg·m)/4,000 rpm
- 36 kW(49 PS)/5,800 rpm 62 Nm(6.3 kg·m)/4,000 rpm
- 34 kW(46 PS)/6,000 rpm 57 Nm(5.8 kg·m)/3,500 rpm (リーンバーン)
- 32 kW(44 PS)/5,500 rpm 57 Nm(5.8 kg·m)/3,500 rpm
- 27 kW(37 PS)/5,500 rpm 55 Nm(5.6 kg·m)/3,500 rpm (ハイブリッド)
- インタークーラーターボ
- 47 kW(64 PS)/6,000 rpm 95 Nm(9.7 kg·m)/3,000 rpm
- 44 kW(60 PS)/6,000 rpm 83 Nm(8.5 kg·m)/3,000 rpm M-ターボ
- 47 kW(64 PS)/6,500 rpm 103 Nm(10.5 kg·m)/3,500 rpm S-ターボ
- 47 kW(64 PS)/6,500 rpm 103 Nm(10.5 kg·m)/3,500 rpm DI-ターボ
- 47 kW(64 PS)/6,500 rpm 105 Nm(10.8 kg·m)/3,500 rpm
- 47 kW(64 PS)/6,500 rpm 108 Nm(11.0 kg·m)/3,500 rpm VVT
- 58.8 kW(80 PS)/7,000 rpm 107 Nm(10.9 kg·m)/3,400 rpm
- CNG
- 37 kW(50 PS)/6,500 rpm 58 Nm(5.9 kg·m)/3,500 rpm VVT
- 自然吸気
K10A
K10B
- 生産期間:2008年 - (現時点では日本国外専用)
- 排気量:1.0リットル(996cc)
- シリンダー数:3
- 内径×行程:73.0mm×79.4mm
- 圧縮比:11.0
- 出力・トルク
- 自然吸気
- 50kW(68PS)/6,000rpm 90Nm(9.2kg·m)/4,800rpm VVT
- 自然吸気
K10C
- 生産期間:2014年 -
- 排気量:1.0リットル(996cc)
- シリンダー数:3
- 内径×行程:73.0mm×79.4mm
- 圧縮比:12.0(NA) 10.0(ターボ)
- 出力・トルク
- 自然吸気
- 50kW(68PS)/6,000rpm 90Nm(9.2kg·m)/4,800rpm デュアルジェット
- インタークーラーターボ
- 82kW(111PS)/5,500rpm 160Nm(16.3kg·m)/1,500 - 4,000rpm (ブースタージェット)(プレミアムガソリン仕様)
- 75kW(102PS)/5,500rpm 150Nm(15.3kg・m)/1,700 - 4,500rpm ブースタージェット(レギュラーガソリン仕様)
- 自然吸気
K12B
K12C
- 生産期間:2015年 - (日本国内)
- 排気量:1.2リットル(1,242cc)
- シリンダー数:4
- 内径×行程:73.0mm×74.2mm
- 圧縮比:12.5
- 初搭載車種:ソリオ/ソリオバンディット(3代目)
- 出力・トルク
- 自然吸気
- 67kW(91PS)/6,000rpm 118Nm(12.0kg·m)/4,400rpm デュアルジェット
- 自然吸気
K14B
K14C
K15B
K15C
- 生産期間:2022年 -
- 排気量:1.5リットル(1460cc)
- シリンダー数:4
- 内径×行程:74.0 mm×84.9 mm
- 圧縮比:13.0
競技用エンジンとして
K型エンジンのうちでも、特にK6A型は競技車両にも多く搭載された。選ばれた理由としては市販車として生産された数が特に多かったため改造のベースとなる母数が多い、修理用部品の流通も多い、耐久性、出力、特性が概ね好評であった、多くの車種に及んで搭載されたため、同一レースで車種が異なってもレギュレーションを揃えやすい、などが挙げられる。
また、次世代のR06型エンジンは、コンロッドの薄肉化やメインベアリングのラダーキャップ構造の廃止など、小型軽量化がより進んだ省燃費エンジンとして設計されており、競技環境下での極限状況における耐性などが不透明なため、整備やチューニングのノウハウが十分に蓄積されているK6A型は、国内新車での搭載が終了した後も選択され続けている。