ジーン・ハックマン(Gene Hackman, 1930年1月30日 - )は、アメリカ合衆国の映画俳優。1971年に主演した『フレンチ・コネクション』で知られる。
来歴
カリフォルニア州サン・バーナディノ生まれ。本名はユージーン・アレン・ハックマン (Eugene Allen Hackman)。イングランド系の血を引く[1]。16歳のとき、年齢を詐称して海兵隊に入隊。中国の駐屯地でラジオ放送のDJを務めた[2]ことから演技に興味を持つようになる。除隊後様々な職を経験。その後イリノイ大学でジャーナリズムなどを学んだ。
30歳を過ぎてから俳優を志すようになり、(パサディナ・プレイハウス)[2]やリー・ストラスバーグ主催のアクターズ・スタジオでダスティン・ホフマンとともに演技を学んだ[2]のち、ニューヨークへ渡る。ホフマンが多数の映画に出演しスターダムへ上り詰める一方、ハックマンは舞台やテレビドラマで端役しか与えられず、鳴かず飛ばずの状態が続いた。
ブロードウェイでの公演を観たロバート・ロッセン監督に見出され『リリス』で映画デビュー。1967年にアーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない』に主人公クライドの兄バック役で出演。映画出演3作目で第2回全米批評家協会賞の助演男優賞を受賞。第40回アカデミー助演男優賞にもノミネートされ、37歳にしてようやく脚光を浴びた。
1970年に『父の肖像』で再度アカデミー助演男優賞にノミネートされると、翌1971年に出演したウィリアム・フリードキン監督の『フレンチ・コネクション』での演技が認められ、第44回アカデミー主演男優賞を獲得。一躍世界中の知るところとなった。同作品で演じた粗暴なコワモテ刑事ドイルの愛称ポパイは、現在に至るまで彼の愛称として親しまれている。
その後も『ポセイドン・アドベンチャー』、『スケアクロウ』、『カンバセーション…盗聴…』、『ミシシッピー・バーニング』といった大作・名作に立て続けに出演。主演から脇役まで、また悪役から三枚目まで幅広い役柄をこなす俳優としてアメリカを代表するトップスターに上り詰めた。中でも『スーパーマン』で演じた悪役・(レックス・ルーサー)は、2006年に公開されたリメイク版の『スーパーマン リターンズ』でケヴィン・スペイシーがハックマンと見まがうほど役に入り込んで演じたことで、話題が再燃した。
1990年には心臓発作を起こして引退も考えたが、その後も映画に出演。病を克服して自分でも忘れるほど多くの映画に出演したことでタフガイの名をほしいままにした(しかし2004年のインタビューで俳優業の引退を公言[3])。1992年に出演したクリント・イーストウッド監督の映画『許されざる者』で第65回アカデミー助演男優賞を獲得。2002年にはゴールデン・グローブ賞の功労賞にあたるセシル・B・デミル賞を受賞した。
また、考古学者のDaniel Lenihanと共にこれまで3冊の小説を出版している。また、2010年には単独で小説Payback at Morning Peakを出版した。
『ポセイドン・アドベンチャー』日本公開時に来日しており、淀川長治と対談した(淀川著『映画と共に歩んだわが半世紀』)。
2012年1月13日、自転車に乗っていたところをトラックにはねられる事故に遭うが軽い打撲で済むなど命に別状はなかった[4]。
2019年5月18日、国際天文学連合は彼を記念して小惑星番号55397の小惑星に対して「ハックマン (Hackman)」と命名した[5]。
私生活
プライベートでは1986年に30年連れ添った最初の妻と離婚。1991年に日系人女性と再婚している。子供は3人。
主な出演作品
映画
公開年 | 邦題 原題 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1964 | リリス Lilith | ノーマン | |
1966 | ハワイ Hawaii | ジョン・ウィップル博士 | |
1967 | 体当り決死隊 First to Fight | ツイード | |
俺たちに明日はない Bonnie and Clyde | バック・バロウ | 5人の強盗団一員でウォーレン・ベイティの兄、メインキャスト、出世作 アカデミー助演男優賞 ノミネート | |
1968 | 汚れた七人 The Split | ウォルター・ブリル | |
戦慄の第四帝国 Shadow on the Land | トーマス・デヴィス | テレビ映画 | |
1969 | 暴動 Riot | レッド | |
さすらいの大空 The Gypsy Moths | ジョー | スカイダイバー、16歳年長のバート・ランカスターと同世代の設定 | |
白銀のレーサ Downhill Racer | ユジーン | ||
宇宙からの脱出 Marooned | バズ・ロイド | グレゴリー・ペック他オールスター映画、メイン3人宇宙飛行士一員 | |
1970 | 父の肖像 I Never Sang for My Father | ジーン・ギャリソン | アカデミー助演男優賞 ノミネート |
1971 | さらば荒野 The Hunting Party | ブランド | |
フレンチ・コネクション The French Connection | (ジミー・ドイル)(ポパイ) | アカデミー主演男優賞 受賞 英国アカデミー賞 主演男優賞 受賞 ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門) 受賞 | |
1972 | ブラック・エース Prime Cut | メリー・アン | |
ポセイドン・アドベンチャー The Poseidon Adventure | フランク・スコット牧師 | 1970年代パニック映画の代表作 | |
1973 | スケアクロウ Scarecrow | マックス・ミラン | 出所後アル・パチーノと呉越同舟の旅 |
1974 | カンバセーション…盗聴… The Conversation | ハリー・コール | |
西部に来た花嫁 Zandy's Bride | ザンディ・アレン | ||
ヤング・フランケンシュタイン Young Frankenstein | 盲目の男 | ||
1975 | フレンチ・コネクション2 French Connection II | ジミー・ドイル (ポパイ) | |
ナイトムーブス Night Moves | ハリー・モーズビー | ||
弾丸を噛め Bite the Bullet | サム・クレイトン | ||
ラッキー・レディ Lucky Lady | キビー | ||
1977 | ドミノ・ターゲット The Domino Principle | ロイ・タッカー | |
遠すぎた橋 A Bridge Too Far | スタニスラウ・ソサボフスキー准将 | ||
外人部隊フォスター少佐の栄光 March or Die | フォスター少佐 | ||
1978 | スーパーマン Superman | レックス・ルーサー | |
1981 | スーパーマンII 冒険篇 Superman II | レックス・ルーサー | |
(恋のドラッグストア・ナイト) All Night Long | ジョージ | ||
レッズ Reds | ピート | ||
錆びた黄金 Eureka | ジャック | ||
1983 | アンダー・ファイア Under Fire | アレックス・グレイザー | |
地獄の7人 Uncommon Valor | ジェイソン・ローズ大佐 | ||
1984 | ウィンター・ローズ Misunderstood | ネッド | |
1985 | 燃えてふたたび Twice in a Lifetime | ハリー・マッケンジー | |
ターゲット Target | ウォルター・ロイド / ダンカン・ポッター | ||
1986 | キングの報酬 Power | ウィルフレッド・バックリー | |
勝利への旅立ち Hoosiers | ノーマン・デイル | ||
1987 | スーパーマン4 最強の敵 Superman IV: The Quest For Peace | レックス・ルーサー | |
追いつめられて No Way Out | デヴィッド・ブライス | ||
1988 | バット★21 Bat 21 | アイシール・ハンブルトン中佐 | |
私の中のもうひとりの私 Another Woman | ラリー・ルイス | ||
(傷だらけの青春) Split Decisions | ダン | ||
(ブルーウォーターで乾杯) Full Moon in Blue Water | フロイド | ||
ミシシッピー・バーニング Mississippi Burning | ルパート・アンダーソン | アカデミー主演男優賞 ノミネート ベルリン国際映画祭 銀熊賞 (男優賞) 受賞 | |
1989 | ザ・パッケージ/暴かれた陰謀 The Package | ジョニー・ギャラガー | |
1990 | キャノンズ Loose Cannons | マック・スターン刑事 | |
ハリウッドにくちづけ Postcards from the Edge | ローウェル・コルチェク | ||
カナディアン・エクスプレス Narrow Margin | ロバート・コールフィールド | ||
1991 | 訴訟 Class Action | ジェデダイア・タッカー・ウォード | |
ロシアン・ルーレット Company Business | サム・ボイド | ||
1992 | 許されざる者 Unforgiven | リトル・ビル・ダゲット | アカデミー助演男優賞 受賞 英国アカデミー賞 助演男優賞 受賞 ゴールデングローブ賞 助演男優賞 受賞 |
ザ・ファーム 法律事務所 The Firm | エイヴァリー・トラー | ||
1993 | ジェロニモ Geronimo: An American Legend | ジョージ・クルーク | |
1994 | ワイアット・アープ Wyatt Earp | ニコラス・アープ | |
1995 | The Quick and the Dead | ジョン・ヘロッド | |
クリムゾン・タイド Crimson Tide | フランク・ラムゼイ | ||
ゲット・ショーティ Get Shorty | ハリー・ジム | ||
1996 | バードケージ The Birdcage | ケヴィン・キーリー上院議員 | |
ボディ・バンク Extreme Measures | ローレンス・マイリック医師 | ||
チェンバー/凍った絆 The Chamber | サム・ケイホール | ||
1997 | 目撃 Absolute Power | アレン・リッチモンド大統領 | |
1998 | トワイライト 葬られた過去 Twilight | ジャック・エイムズ | |
アンツ Antz | マンディブル将軍 | アニメ映画、声の出演 | |
エネミー・オブ・アメリカ Enemy of the State | ブリル / エドワード・ライル | ||
2000 | アンダー・サスピション Under Suspicion | ハリー・ハースト | |
リプレイスメント The Replacements | ジミー・マクギンティー | ||
2001 | ザ・メキシカン The Mexican | アーノルド・マルゴリース | クレジットなし |
ハートブレイカー Heartbreaker | ウィリアム・B・テンシー | ||
ザ・プロフェッショナル Heist | ジョー・ムーア | ||
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ The Royal Tenenbaums | ロイヤル・テネンバウム | ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門) 受賞 | |
エネミー・ライン Behind Enemy Lines | レスリー・マクマホン・レイガート司令官 | ||
2003 | ニューオーリンズ・トライアル Runaway Jury | ランキン・フィッチ | |
2004 | ムースポート Welcome to Mooseport | モンロー・コール |
広告・CM
受賞歴
- アカデミー賞
- 1967年『俺たちに明日はない』 助演男優賞(ノミネーション)
- 1970年『父の肖像』 助演男優賞(ノミネーション)
- 1971年『フレンチ・コネクション』 主演男優賞(受賞)
- 1988年『ミシシッピー・バーニング』 主演男優賞(ノミネーション)
- 1992年『許されざる者』 助演男優賞(受賞)
参照
- ^ Profiles - Gene Hackman - hellomagazine.com
- ^ a b c Stated on Inside the Actors Studio, 2001
- ^ Blair, Iain (2008年6月5日). “Just a Minute With: Gene Hackman on his retirement”. Reuters. 2008年7月19日閲覧。
- ^ ジーン・ハックマンがトラックにはねられ - 芸能ニュース : nikkansports.com
- ^ “NEW NAMES OF MINOR PLANETS”. The MINOR PLANET CIRCULARS/MINOR PLANETS AND COMETS. 小惑星センター (2019年5月18日). 2019年5月25日閲覧。
外部リンク
- ジーン・ハックマン - allcinema
- ジーン・ハックマン - KINENOTE
- Gene Hackman - IMDb(英語)
- Gene Hackman - インターネット・ブロードウェイ・データベース(英語)
- Gene Hackman - Internet Off-Broadway Database