シロカブト(白兜)は、コウチュウ目(鞘翅目)・コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族・ヘラクレスオオカブト属に分類される昆虫の内で、体色が白や黄色などをしている種類の総称である。
分布
北アメリカ南部から、中央アメリカ一帯に生息し、新大陸を代表するカブトムシ類である。
しかし、同属のヘラクレスオオカブトよりも遙かに小さく、多くの種類は日本のカブトムシよりも小型であり、代表種のグラントシロカブトの体長は最大でも70mm程で、日本のカブトムシの大型個体には及ばない。
この系統で最大のヒルスシロカブトでも、最大でも90mmほどで、ヘラクレスやゾウカブトといった、他の南米産の巨大種と比べると小さい。
角がやや短く、闘争面でもヘラクレスオオカブトなどに比べて、あまり激しくはないといわれる。が、小柄な体格の割には脚の力や角で挟む力はなかなか強く、闘争心さえ発揮すれば日本のカブトムシくらいの相手なら余裕で投げ飛ばしてしまう。また、相手を押し出す力も強い。
生態
日本のカブトムシと同じく、幼虫は腐植土や(朽ち木)の下に生息し、そこの腐食物や朽ち木を食べて成長する。
成虫は夜行性で、場合によっては昼間にも活動する。樹液や熟れた果実に集まり、または木の幹を傷つけてそこからにじみ出てくる樹液を吸う。
野外に出てからの成虫の寿命は比較的短く、数ヶ月ほどであるとされる。
種類
- グラントシロカブト Dynastes granti
- アリゾナ州などの砂漠地帯に生息する。グラントオオカブトとも呼ばれる。カブトムシ類には珍しく、全身が白である。現地での採集は禁止されている。名はかつてはアメリカ合衆国第18代大統領でもある南北戦争の北軍最高司令官ユリシーズ・S・グラントに由来するという説が有力だったが、最近ではアリゾナ州(Fort Grant)に由来するという説が最も有力である。
- 北米産のカブトムシの中では最大種。
- ヒルスシロカブト Dynastes hyllus
- 中央アメリカホンジュラスに分布する。シロカブト亜属最大。ヒルスオオカブトとも呼ばれる。白に濃い黄色の混じった色合いをしており、時に黄金色と形容される。(サンタ・マルタ山脈)にssp. moroni (後述のモロンシロカブト)がいる。これはMiguel Ángel Moron-Ríosに献名されたもの。
- ティティウスシロカブト Dynastes tityus Unicorn beetle
- アメリカ合衆国東部に分布する。色はヒルスシロカブトに近い。ティティウスオオカブトとも呼ばれる。
- グラントよりも、角は短い。現地ではユニコーン・ビートルと呼ばれている。
- 体は小柄だが、シロカブトの中では比較的気性が荒く闘争心が強いと言われている。
- マヤシロカブト Dynastes maya
- メキシコのチャパス州、グアテマラ・ホンジュラスに分布する。
- ミヤシタシロカブト Dynastes miyashitai
- メキシコ南部プエブラ州(テフアカン)にのみ棲息する。名前は標本商の(宮下哲夫)に由来する。ヒルスシロカブトに近いが、色はグラントシロカブトのほうに似ている。
- モロンオオカブト Dynastes hyllus moroni Nagai
- ヒルスシロカブトの亜種。モロンシロカブトとも呼ばれる。メキシコの山塊(サンタ・マルタ山脈)に分布。
飼育
同じ属に属する(ヘラクレスオオカブト)と殆ど同じでよいが、グラントシロカブトの卵は半年間もまったく孵化せず、ある日突然孵化することもあるので注意が必要。孵化してしまえば成長にそれほど時間はかからないが、羽化後繁殖が可能になるまでは少なくとも2ヶ月・長いと3ヶ月は必要である。ヒルスシロカブトなどは1年サイクル型と2年サイクル型がある。
ティティウスシロカブトを除き好戦的な個体は少ないが、ごく稀にオスがメスを殺害してしまう事故が起こることもあるので、ペアリングの際は注意を要する。