クッシング症候群(クッシングしょうこうぐん、英: Cushing's syndrome)は、慢性の糖質コルチコイド過剰による症候群。ただし、下垂体腺腫が原因で起こるクッシング症候群を、特にクッシング病(英: Cushing's disease)と呼ぶ。
クッシング症候群 | |
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分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 内分泌学 |
ICD-(10) | E24 |
ICD-9-CM | 255.0 |
DiseasesDB | 3242 |
MedlinePlus | 000410 |
eMedicine | med/485 |
Patient UK | クッシング症候群 |
MeSH | D003480 |
GeneReviews |
歴史
アメリカの脳神経外科医、ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシングによって「クッシング病」が初めて報告された。
疫学
原因は、クッシング病が約40%、異所性ACTH産生が約10%、(副腎腺腫)が約50%である[1]。1970年代に日本における性差(男女比)は、1:3.9 と報告されている[2]。
分類
病態
種々の原因により糖質コルチコイドが増加していることによって、引き起こされる。ACTH産生性の腫瘍であるかどうかで、ACTH依存性、ACTH非依存性に分けられる[3]。
原因
臨床像
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主症状は
検査
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- 尿中、血中コルチゾール検査:コルチゾール値の増加が見られる。また、通常朝高く夜低くなる日内変動の消失が見られる[要出典]。
- ACTH:ACTHの減少→副腎腫瘍、ACTHの増加→下垂体腫瘍・異所性ACTH産生腫瘍と鑑別される。
- 尿中17-KS、17-OHCS:ステロイドの代謝物。1日の尿中排泄量で評価する。クッシング症候群で増加する[要出典]。
- DHEA-S:コルチゾールが高く、DHEA-Sも高いときは、ACTH依存性クッシング症候群の他に副腎癌も考慮すべきである。
- 下垂体MRI:クッシング病の場合、腫瘍を認める[要出典]。
- 腹部CT/MRI:コルチゾール産生腺腫では腫瘍を認め、対側副腎は萎縮傾向[要出典]。
- 胸部CT:異所性ACTH症候群の場合、肺や胸腺の病変を疑う必要あり。
- 副腎シンチグラフィー:コルチゾール産生腺腫では腫瘍側の集積亢進と対側の抑制[要出典]。ACTH依存性クッシング症候群では両側の集積亢進[要出典]。
- 白血球数増加、好酸球減少[要出典]
- 基礎代謝率上昇[要出典]
- デキサメサゾン抑制試験
- デキサメサゾン抑制試験(デキサメサゾンよくせいしけん)は、糖質コルチコイドのアゴニストであるデキサメサゾンを投与して副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制して血中糖質コルチコイドを測定する試験。
- 迅速法
- ニュージェント法、オーバーナイト法
- デキサメサゾン抑制試験迅速法は、糖質コルチコイド受容体のアゴニストであるデキサメサゾンを投与して副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制して血中糖質コルチコイドを測定する試験。採血で済むので外来で行える。
- 目的
- クッシング症候群のスクリーニング。
- 原理
- 正常では、糖質コルチコイドは副腎皮質刺激ホルモンをネガティブフィードバックしている[要出典]。従ってデキサメサゾンの投与によって糖質コルチコイドが過剰だと誤解した脳下垂体系は、正常ならば副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制する[要出典]。抑制されない場合はフィードバック経路のどこかに異常があると考えられる。
- 方法
- 検査前夜11時に1mgのデキサメサゾンを経口投与して翌朝8時に血中糖質コルチコイドを測定する。予めデキサメサゾンを貰っておけば1回の外来で済む。
- 判定
血中糖質コルチコイド(μg/dL) 判定 理由 5以上~ クッシング症候群 フィードバック経路のどこかに異常がある 3以上~5未満 前臨床的クッシング症候群 フィードバック経路のどこかに異常があるかもしれない ~3未満 正常((単純性肥満)) 正常では抑制される
- 標準法
- リドル原法
- デキサメサゾン抑制試験標準法は、糖質コルチコイドのアゴニストであるデキサメサゾンを投与して副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制して(尿中17-OHCS)(にょうちゅうじゅうななオーハーシーエス)を測定する検査。(24時間蓄尿)をするので入院を要する。
- 目的
- 迅速法で判明したクッシング症候群の(病型分類)。
- 原理
- 正常では糖質コルチコイドは副腎皮質刺激ホルモンをネガティブフィードバックしている[要出典]。従ってデキサメサゾンの投与によって糖質コルチコイドが過剰だと誤解した脳下垂体系は、正常ならば副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制して、糖質コルチコイドの合成は抑制されて、その代謝産物である尿中17-OHCSも減る。
- 方法
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- 基準値
- 入院1日目に何も投与せずに24時間蓄尿尿中17-OHCSを測定して、基準値とする。
- 2mg投与
- 入院第2日目と第3日目に0.5mgのデキサメサゾンを6時間毎に1錠、一日4錠(2mg/日、計8錠)経口投与して、24時間蓄尿尿中17-OHCSを測定する。
- 8mg投与
- 2mgで低下しない場合はさらに、入院第4日目と第5日目に2mgのデキサメサゾンを6時間毎に1錠、一日4錠(8mg/日、計8錠)経口投与して、24時間蓄尿尿中17-OHCSを測定する。ここで低下したら判定によりクッシング病と分かる。
- 基準値
- 判定
- 尿中17-OHCSが低下するのにどれだけのデキサメサゾンを要したかで行う。
- メチラポン試験
- メチラポン試験(メチラポンしけん)は、(11βヒドロキシラーゼ)(11β-HOlase)阻害薬メチラポン(商品名(メトピロン))を投与して副腎皮質刺激ホルモンの分泌を刺激して(尿中17-OHCS)(にょうちゅうじゅうななおーはーしーえす)を測定する検査。
- 目的
- デキサメサゾン抑制試験8gm投与と同じ。
- 意義
- 副腎皮質刺激ホルモン刺激試験。
- 原理
- 正常では糖質コルチコイドは副腎皮質刺激ホルモンをネガティブフィードバックしている[要出典]。従ってメチラポンの投与によって糖質コルチコイドが不足だと誤解した脳下垂体系は、正常ならば副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの分泌を増強する。その結果、11βヒドロキシラーゼの基質である11デオキシコルチゾールの産成が増強され、その代謝産物である尿中17-OHCSも増える。
- なお、H21年より17-OHCSの測定はできなくなったため、17-KGSを測定するとよい。また現在は、下記標準法よりは、1回の内服で血中のACTHと11-デオキシコルチゾール、コルチゾールを測定する方法(迅速法、オーバーナイト法)を行うことが多い。
- 方法(標準法)
- 0.5mgのメチラポンを一日六回、計3gを経口投与して、24時間蓄尿尿中17-OHCSを測定する。
- 判定
- 尿中17-OHCSが増加したかどうかで行う。
- 特異度
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン試験に劣る。この為同一目的・意義である副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン試験に取って代わられつつある。
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン試験
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン試験(ふくじんひしつしげきホルモンほうしゅつホルモンしけん)は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを投与して血中副腎皮質刺激ホルモン及び血中糖質コルチコイドを測定する試験。
- 目的
- デキサメサゾン抑制試験8gm投与に加え、副腎腫瘍と異所性ACTH産生腫瘍の鑑別を行うこと。
- 意義
- 副腎皮質刺激ホルモン刺激試験を迅速に行える。
- 原理
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが副腎皮質刺激ホルモンを刺激し、これが糖質コルチコイド産成を刺激する事[要出典]。
- 方法
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを静脈注射して、30分後と60分後の血中の副腎皮質刺激ホルモンと糖質コルチコイドを測定する[要出典]。
- 判定
- 血中の副腎皮質刺激ホルモンと糖質コルチコイドの多寡で行う。
- 特異度
- メチラポン試験に勝る。
治療
腫瘍の除去を第一として、手術・放射線治療・薬物による治療を行う[3]。
予後
クッシング病や副腎腺腫は腫瘍摘出術によって大半が治癒する。一方、異所性ACTH症候群や副腎癌は予後不良である。
脚注
- ^ 蔭山和則, 二川原健, 大門眞、「2.Cushing症候群」 『日本内科学会雑誌』 2014年 103巻 4号 p.832-840, doi:10.2169/naika.103.832
- ^ 熊谷朗, 山本昌弘, 鈴木豊、「本邦におけるCushing症候群320症例の臨床的検討」 『日本内分泌学会雑誌』 1976年 52巻 5号 p.551-565, doi:10.1507/endocrine1927.52.5_551
- ^ a b c d クッシング症候群 MSDマニュアル プロフェッショナル版
- ^ 羽田野悠子, 頼裕佳子, 河原俊介 ほか、「妊娠中に高血圧を契機に発見されたクッシング症候群の1例」 『産婦人科の進歩』 2013年 65巻 2号 p.126-132, doi:10.11437/sanpunosinpo.65.126
関連項目
外部リンク
- クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)(指定難病75) 難病情報センター
- 糖尿病・代謝 -清涼飲料水ケトーシスを契機に診断されたCushing病の一例- 『日本内分泌学会雑誌』 Vol.85 (2009) No.Supplement-1 特集号 第19回臨床内分泌代謝Update Proceeding p.152-172