『キリストに倣いて』(キリストにならいて、De imitatione Christi)は、トマス・ア・ケンピスによって書かれた本である。「第二の福音書」「中世の最高の信心書」とも言われ、聖書に次いでカトリックのクリスチャンの霊的修練の書として識字階級に広く読まれ、親しまれている。修道者が修道者のために書いた本であるが、一般の修得書でもある[1]。
概要
ラテン語訳は匿名で1418年ごろに出された。他の著者説もあったが、現代ではケンピスの著書とみなされている。
「キリストに倣いて」は、14世紀から15世紀の神秘的ドイツ・オランダ学校の文書であり、宗教改革前のカトリック・キリスト教のもっとも偉大なディヴォーションの手引きの一つと認められている。 イエズス会は公式に訓練で使用する。ローマ教皇を中心とするカトリック教会だけでなく、多くのプロテスタントもこの本に高い評価を与えており、ムーディ出版が出している。 日本でも16世紀後半に『こんてむつすむんぢ(世のはかなさ)』として翻訳され、ローマ字版が1596年に、漢字ひらがな版が1610年に刊行された[2][3]。
逸話
ジョン・ウェスレーとジョン・ニュートンは、回心に影響を与えた著書としてあげている。チャールズ・ゴードン将軍はこの書を持って戦場に赴いた。
構成
- 第一巻 霊的生活に役立つ勧めはここにはじまる
- 第二巻 内的生活のための勧めはここにはじまる
- 第三巻 内的な慰めの書はここにはじまる
- 第四巻 聖体拝領への信心の薦めはここにはじまる[4]
日本語訳
- 『キリストにならいて』 池谷敏雄訳、新教出版社、1955、改訂版1984
- 『キリストにならいて』 大澤章・呉茂一訳、岩波文庫、1960 - 度々復刊
- 『イミタチオ・クリスティ キリストにならいて』 永野藤夫・呉茂一訳、講談社、1975、講談社学術文庫、2019
- 永野藤夫訳(改訳) エルサレム文庫・エルサレム宗教文化研究所、1986
- 『キリストにならいて イミタチオ・クリスチ』 由木康訳、教文館、1973
- 『キリストにならう』 フェデリコ・バルバロ訳、ドン・ボスコ社、新版2001
- 『涙の谷における薔薇の園 キリストに魂の癒しを求めて』 浅井太郎訳、アドスリー、2010
- 『キリストを生きる』 山内清海訳、文芸社、2017
- 『吉利支丹文学抄』「こんてむつすむんぢ抄」村岡典嗣 編、改造社、1926
- 『切支丹宗教文学』「コンテンプツスムンヂ」姉崎正治 編著、同文館、1932
脚注
関連項目
外部リンク
- 『基督に倣ひて 』中山昌樹訳 1920
- 『世範』英国聖公会布教会社 1899
- 『和語遵主聖範』漢訳より重訳 1895
- 【キリストにならいて】トマス=ア=ケンピス/結城浩他訳(プロジェクト杉田玄白)
- 『吉利支丹文学抄』村岡典嗣 編、改造社、1926
- 『切支丹宗教文学』姉崎正治 編著、同文館、1932
- Article at the Catholic Encyclopedia on Thomas a Kempis
- The Imitation of Christ, in Latin, at The Latin Library
- The Imitation of Christ - プロジェクト・グーテンベルク, in English, translated by (William Benham), 1905
- The Imitation of Christ, in English, translated by Aloysius Croft and Harold Bolton, 1940, at the Christian Classics Ethereal Library