イワガラミ(岩絡み[3]・岩絡[4]、学名:Hydrangea hydrangeoides )は、アジサイ科[注 1]アジサイ属[注 2]の落葉つる性木本。別名はユキカズラ[1]。若芽は食用にできる。
分布と生育環境
形態・生態
つる性の落葉木本[4]。名前のとおり、幹や枝から細い気根を出して、ほかの高木や岩崖に付着し[5]、絡みながら這い上って[3]、高さ10 - 15メートル (m) くらいになる[4]。山地の道路法面を上から這い下がる場合もある。大きな株では、つるの直径は5センチメートル (cm) を超え、樹皮も厚くなる[5]。樹皮は灰色で、太い幹には縦に裂け目が出来るが、樹皮は剥がれない[3]。枝先には短毛が生え、皮目は少ない[3]。葉には葉柄がついて枝に対生し、葉身は長さ10 cmほどの(広卵形)から(卵形)で葉の先端はトゲのように尖り、葉縁にまばらな鋸歯がある[4]。葉柄は長く、褐色の毛が生えている[5]。
花期は夏(5 - 7月ごろ)で、ガクアジサイに似た花をつける[4]。小さなややクリーム色の両性花が集まる花序のまわりに、大きな白色の装飾花が縁どる[5]。装飾花は花弁状の萼片が1枚しかない。果実は、装飾花の萼片が1枚ついたまま冬まで枝に残っている[3]。
冬芽は卵形から円筒形で、4 - 6枚の毛の生えた芽鱗に覆われる[3]。頂芽のすぐ下には頂生側芽がある[3]。側芽は、小枝に90度ずつずれてつく(十字対生)[3]。側芽の下につく葉痕は三角形で、維管束痕は3個つく[3]。
利用
春の若芽を食用にする[4]。採取時期は関東地方以西が3 - 4月ごろ、東北地方では5月ごろが適期とされ、枝先に萌え出た若芽を摘む[4]。軽く茹でて水にさらすとウリのような香りを楽しむことができ、くるみ・ごま・酢味噌・納豆などと和えた和え物や、酢の物、おひたし、煮びたしにする[4]。また生のまま天ぷら、汁の実にもする[4]。
近縁の(テリハイワガラミ)(Schizophragma hydrangeoides var. concolor)、(ケイワガラミ)(Schizophragma hydrangeoides f. molle)、(ハナイワガラミ)(Schizophragma hydrangeoides f. formosum)も同様に食用にできる[4]。
脚注
注釈
- ^ APG体系やクロンキスト体系ではアジサイ科 (Hydrangeaceae) に分類されるが、古い新エングラー体系ではユキノシタ科 (Saxifragaceae) に分類されていた[1]。
- ^ イワガラミ属とすることもある
- ^ 高橋 (2003) では、分布域は本州・四国としている[4]。
出典
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea hydrangeoides (Siebold et Zucc.) B.Schulz イワガラミ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月19日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Schizophragma hydrangeoides Siebold et Zucc. イワガラミ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 91.
- ^ a b c d e f g h i j k 高橋秀男監修 2003, p. 106.
- ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 204.
参考文献
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、91頁。ISBN (978-4-416-61438-9)。
- 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、106頁。ISBN (4-05-401881-5)。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、204頁。ISBN (4-522-21557-6)。