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アリソン 250

アリソン モデル 250 (Allison Model 250) は、1960年代初期にアメリカ合衆国の航空エンジン製造会社であるアリソン・エンジン社によって開発された、非常に成功を収めたターボシャフト/ターボプロップエンジンのシリーズであり、米軍指定ではT63と呼ばれている。

アリソン 250-C20B

アリソン・エンジンは1995年イギリスロールス・ロイス・ホールディングスに買収され、同社の子会社となった。

特徴

Model 250は、ロールスロイス社によって製造されているエンジンの中では販売台数が最も多い。このエンジンは多数のヘリコプターと小型の固定翼機に使用されており、総生産数はおよそ30,000基、現在までの総運転時間は1億8000万時間に達する。これらのうちおよそ16,000基は、現在も世界中で利用されている。開発当初は317 SHPであった出力も、250-C40では715 SHPに達している[1]。アリソンは、Model 250のために「トロンボーン」スタイルと呼ばれる構成のエンジン設計を採用した。吸入空気は従来のエアインテークから軸流圧縮機遠心式圧縮機を通り、180度方向を変えて燃焼室へ導かれる。

圧縮機(コンプレッサー)

250 C20B

コンプレッサーローター・アセンブリは軸流6段、遠心1段の(軸流遠心結合型)である。圧縮機(コンプレッサー)回転数(N1)が100 %の時には、50,970 rpmで回転している。この時には1秒間に40.9ft3(1.1 m3)の空気を吸入して、6.2:1に圧縮する。この圧縮された空気は燃焼と(パワータービン)の冷却のために供給され、この時の空気温度は、232 に達する。

この高温高圧の圧縮空気は、燃料制御や、エンジンの防氷の他、機体側の要求に応じて暖房やパーティクルセパレーターの異物排出等にも使用する事ができる。この圧縮空気の取出しは遠心圧縮機後方のディフーザースクロールから行われる。

圧縮機五段目に設けられた抽気弁から空気を逃がすことにより、圧縮機の失速を防止し、加速特性を改善している。この抽気弁の開閉はディフーザースクロールからの抽気によってコントロールされており、エンジンの運転状態に応じて行われる。

このエンジンは最大で、420 SHPの出力(離陸出力強化型のB17F型で450 SHP)を取り出すことが可能である。しかし圧縮機を100 %で駆動させるには、約800 SHPもの出力が必要であり、実際には1200 SHP以上を発生していることになる。すなわち、発した出力から圧縮機駆動分の約800 SHPを引いた残りである420 - 450 SHPが利用できる出力となる。これは実用量産ターボプロップエンジンとしては最小クラスであるが、それでも航空機の操縦に不慣れな操縦訓練生にとっては強力すぎるために、自衛隊の初等練習機(T-7T-5)のように、リミッターによりに出力を抑制して使用する例もある。

派生機種

ロールスロイスでは、240-300 SHPまで出力を抑えたRR300を小型ヘリコプター向けのエンジンとして販売している。またRR3300を大型化したRR500も開発している。

性能・主要諸元

250 C20B

  • 形式:ターボシャフト
  • 乾燥重量: 158 lb (72 kg)
  • 圧縮機: 軸流6段、遠心1段 軸流遠心結合型
  • 圧縮比: 7.2:1
  • (最大出力): 420 SHP *SHP=軸出力
  • 抽気: 圧縮機5段目
  • 正規燃料: (MIL-T-5624),(JP-4),(JP-5),(ASTMD-1655),(Jet A),(A-1),(B),(JP-1)または(Diesel No.1)
  • 代用燃料: (航空ガソリン)1に対し(ジェット燃料)2の混合燃料。*40 °F(4 )以下で運転の場合
  • 非常用燃料: 航空ガソリン MIL-G-5572 (TCP[3]混入の燃料は使用不可。)
  • 温度
    • 圧縮機出口温度: 260
    • 燃焼室内温度: 1700 - 1800 ℃
    • タービン出口温度: 810 ℃(最大)
  • 燃料消費率
    • 0.709 lb/Hr/SHP: タービン出口温度 650 ℃
    • 0.665 lb/Hr/SHP: タービン出口温度 690 ℃
    • 0.650 lb/Hr/SHP: タービン出口温度 738 ℃ / 巡航最大出力
    • 0.650 lb/Hr/SHP: タービン出口温度 779 ℃ / 連続最大出力
    • 0.650 lb/Hr/SHP: タービン出口温度 810 ℃ / 離陸出力
  • (燃料流量)
    • 70 lb/HR: グランドアイドル
    • 197 lb/Hr: タービン出口温度 650 ℃
    • 221 lb/Hr: タービン出口温度 690 ℃:
    • 240 lb/Hr: タービン出口温度 738 ℃ / 巡航最大出力
    • 273 lb/Hr: タービン出口温度 779 ℃ / 連続最大出力
    • 273 lb/Hr: タービン出口温度 810 ℃ / 離陸出力
  • 出力
    • 35 SHP: グランドアイドル
    • 278 SHP: タービン出口温度 650 ℃
    • 333 SHP: タービン出口温度 690 ℃
    • 370 SHP: タービン出口温度 738 ℃ / 巡航最大出力
    • 400 SHP: タービン出口温度 779 ℃ / 連続最大出力
    • 420 SHP: タービン出口温度 810 ℃ / 離陸出力
  • トルク
    • 323 ft/lbs: タービン出口温度 650 ℃
    • 323 ft/lbs: タービン出口温度 690 ℃
    • 323 ft/lbs: タービン出口温度 738 ℃ / 巡航最大出力
    • 384 ft/lbs: タービン出口温度 779 ℃ / 連続最大出力
    • 384 ft/lbs: タービン出口温度 810 ℃ / 離陸出力
  • 排気ガス推力
    • 10 lbs/min: グランドアイドル
    • 32 lbs/min: タービン出口温度 650 ℃
    • 36 lbs/min: タービン出口温度 690 ℃
    • 38 lbs/min: タービン出口温度 738 ℃ / 巡航最大出力
    • 42 lbs/min: タービン出口温度 779 ℃ / 連続最大出力
    • 42 lbs/min: タービン出口温度 810 ℃ / 離陸出力

[4]

製品一覧

  • 250-C18
  • 250-C20
  • 250-C20B
  • 250-C20F
  • 250-C20J
  • 250-C20R
  • 250-C20R-1
  • 250-C20R-2
  • 250-C20S
  • 250-C20W
  • 250-C28
  • 250-C30
  • 250-C30P
  • 250-C40
  • 250-C47
  • 250-B17D
  • 250-B17F/2

搭載機

脚注

  1. ^ ロールスロイス社公式HP
  2. ^ 桜井俊男「石油製品添加剤」『油化学』第31巻第10号、日本油化学会、1982年、850-854頁、2020年5月15日閲覧 
  3. ^ リン酸トリクレシル: 表面着火防止剤である[2]
  4. ^ 性能・主要諸元数値は、アリソン社タービンスクール資料

関連項目

外部リンク

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