この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
アマチュア局の開局手続き(アマチュアきょくのかいきょくてつづき)では、電波法ならびに総務省令無線局免許手続規則に基づき、アマチュア局の無線局免許状を取得する手続きについて解説する。
アマチュア局には個人が開設する個人局と、団体が開設する社団局がある。アマチュア局の操作は無線従事者(相当する外国の資格者を含む。)でなければならない[1]ので、必要な資格を保有していなければ免許申請できない。 無線局事項書にも他の種別の無線局と異なり無線従事者免許証の番号又は外国政府の証明書による資格並びに取得国の記入が必須[2]である。
なお、アメリカ合衆国など従事者と無線局の免許を区別しない国もある。(いわゆる包括免許)
資格
必要な種別の資格は、次に掲げるもののいずれかである。
- 日本
- 第一級・第二級・第三級・第四級アマチュア無線技士(以下、1アマ・2アマ・3アマ・4アマと略す。)
- 第一級・第二級・第三級総合無線通信士
- 第一級・第二級・第四級海上無線通信士
- 航空無線通信士
- 第一級・第二級陸上無線技術士
操作範囲については(アマチュア無線技士#操作範囲)を参照。
- 日本以外の国
総務省告示 [3] に規定される。この告示による相当資格を示す。
国名 | 外国の資格 | 相当資格 | 操作範囲 |
---|---|---|---|
アメリカ | Amateur extra | 1アマ | 1アマ |
Advanced | 2アマ | 2アマ | |
General | |||
Conditional | |||
Technician(注) | 4アマ | 4アマ | |
Novice | 3アマ | 3アマの内、 3.5MHz帯、3.8MHz帯、7MHz帯、21MHz帯 | |
ドイツ | A class | 3アマ | 3アマ |
B class | 1アマ | 1アマ | |
C class | 4アマ | 4アマ | |
カナダ | Advanced Amateur class | 1アマ | 1アマ |
Amateur class | 3アマ | 3アマ | |
Digital class | 1アマ | 1アマの内、30MHz未満を除く | |
オーストラリア | Amateur Licence (unrestricted) | 1アマ | 1アマ |
Amateur Licence (limited) | 4アマ | 4アマ | |
Amateur Licence (novice) | 3アマ | 3アマ | |
フランス | Group A | 4アマ | 4アマ |
Group B | 3アマ | 3アマ | |
Group C | 2アマ | 2アマの内、30MHz未満を除く | |
Group D | 2アマ | 2アマ | |
Group E | 1アマ | 1アマ | |
大韓民国 | First Class Amateur Radio Operator | 1アマ | 1アマ |
First Class Radio Operator for General Services | |||
Second Class Radio Operator for General Services | |||
Second Class Amateur Radio Operator | 2アマ | 2アマ | |
Second Class Radio General Radio Technical Operator | |||
Third Class Amateur Radio Operator (Telegraph) | 3アマ | 3アマ | |
Third Class Amateur Radio Operator (Telephone) | 4アマ | 4アマ | |
Special Radio Operator for Aeronautical | |||
Special Radio Operator for Radio-telephone A | |||
フィンランド | General | 2アマ | 2アマ |
Technical | 3アマ | 3アマ | |
Novice | 4アマ | 4アマ | |
アイルランド | A class | 2アマ | 2アマ |
B class | 4アマ | 4アマ | |
ペルー | Advanced | 1アマ | 1アマ |
Intermediate | 3アマ | 3アマ | |
Beginner | 4アマ | 4アマ | |
ニュージーランド | General Amateur Operator's Certificate | 1アマ | 1アマ |
インドネシア | Amateur Extra | 1アマ | 1アマ |
Advanced Class | 3アマ | 3アマ | |
General Class | 4アマ | 4アマ | |
Novice Class | 4アマ | 4アマ | |
欧州郵便電気通信主管庁会議 (CEPT)勧告T/R61-02 付録第2号別表第1号 に規定される国 | CEPT勧告T/R61-02 付録第2号別表第1号 に規定される資格 | 1アマ | 1アマ |
注 モールス電信証明書所持者又は1991年2月14日以前に発給された者は、3アマ相当 |
これらの資格の保有者の国籍は問われない。従って、日本の無線従事者免許証を保有する外国人やアメリカの資格を保有する日本人が開局することも可能である。 外国人の免許の有効期間は在留期間までであるので、通常の5年より短くなる場合がある。 余談になるが、同告示第1項のただし書きにより、アメリカのAdvanced、General、Conditional、Technician、Novice、ドイツ、フィンランド、アイルランドの資格所有者は、社団局において一定の条件の下、本国での操作範囲の操作を行える。
個人局の場合
個人局を開局するまでの手続きは次のとおりである。基本的に他の業務の無線局と同様である。 ここで、空中線電力が50Wを超えると、移動する局としては開局できず、移動しない局として免許される。[4]
- 申請書、無線局事項書、工事設計書(以下、「申請書等」という。)を、設置場所(移動しない局の場合)または常置場所(移動する局の場合)を管轄する総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む。以下同じ。)に提出する。
- 申請書等が電波法令に適合すれば、予備免許が与えられる。但し、簡易な免許手続を行うことができる無線局に該当する場合は、無線局免許状が交付される。
- 予備免許の事項に基づき、落成検査を受け、これに合格すれば、無線局免許状が交付される。
1992年(平成4年)4月20日 [5] 以降に、簡易な免許手続によることができるのは、次の二つの場合である。
- 適合表示無線設備のみを使用する場合
適合表示無線設備とは、空中線電力200W(第二級アマチュア無線技士に許可される最大の空中線電力)以下の無線機に対し、技術基準適合証明または(工事設計認証)を実施して、技術基準適合証明番号または工事設計認証番号を付与されたものである。 技術基準適合証明番号は一台毎に、工事設計認証番号は機種毎に異なる番号が付与される。 適合表示無線設備には技適マークと技術基準適合証明番号または工事設計認証番号[6]の表示が義務付けられ、アマチュア無線機を表す記号はこれらの番号の英字の1字目のK[7]である。 但し、2013年(平成25年)4月以降の工事設計認証番号(4字目がハイフン(-))に記号表示は無い。[8]
- 証明業務は1991年(平成3年)より日本アマチュア無線振興協会(JARD)が実施している。技術基準適合証明番号または工事設計証番号[6]で証明機関を表す記号は、認証の時期により、存在しないか、番号の先頭の数字の02または002[9]である
- 無線設備が電波法令の技術基準に適合している旨の保証を受けられる場合
適合表示無線設備でない空中線電力200W以下の無線設備に対し、JARDおよびTSS株式会社(TSS)が保証認定を実施している。
- 保証認定業務は、1992年4月よりJARDが実施していたが、2001年にTSSへ移行した。2014年(平成26年)11月よりJARDが再開し、複数事業者から選択できることとなった。
そこで、手続きとしては、空中線電力200Wを境に次のとおり大別される。
200W以下の場合
- 適合表示無線設備のみの場合
申請書等を総合通信局に提出する。工事設計書には、技術基準適合証明番号または工事設計認証番号を記入することにより、送信機系統図を省略できるなど簡略化できる。 ここで無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [10] により、旧技術基準に基づく無線設備が条件なしで免許されるのは「平成29年11月30日」まで [11]、 使用は「平成34年11月30日」まで [12] とされた。
旧技術基準の無線設備とは、
- 「平成17年11月30日」[13]までに製造された機器または認証された適合表示無線設備
- 経過措置[11]として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに製造された機器[14]または認証された適合表示無線設備[15]
である。
2017年(平成29年)12月1日以降に旧技術基準の無線設備はそのままでは免許を申請することはできず [16]、 次項の保証認定によることになる。
- 適合表示無線設備以外の無線設備を含む場合
申請書等は保証認定を受けるためJARDまたはTSSに提出する。
JARDでは、旧技術基準の適合表示無線設備とJARL登録機種から新スプリアス規格を満たすものを「スプリアス確認保証可能機器リスト」として公開 [17] している。
- JARL登録機種とは、1959年(昭和34年)より1992年3月まで日本アマチュア無線連盟(JARL)が実施した保証認定制度の中で1970年(昭和45年)以降にメーカーからの申請に基づき性能試験などを行い登録された機種である。JARL登録機種番号は工事設計認証番号と同様で工事設計書の記入が簡略化できた。
リストの機器については保証願書のみでよいが、これ以外の機器、つまり旧技術基準による適合表示無線設備またはJARL登録機種でリスト不掲載の機器、JARL登録抹消機、改造機、外国機、自作機などについては、従来の送信機系統図などに加え新スプリアス規格を満たすことを証明する資料が要求 [18]される。
TSSでは、「対策については、別途ご案内致します。」 [19] としている。
設備共用
TSS、JARDとも複数の使用者が同一の無線設備を共用する場合に一人分の保証認定料で済む設備共用を設定している。詳細は各社のウェブサイトを参照。
書類審査に合格すれば、無線局免許状が交付される。
200Wを超える場合
申請書等(電波防護計算書等の追加書類も必要となる。)は総合通信局に提出する。
検査に合格すれば、無線局免許状が交付される。
電子申請
書類申請以外に、2004年(平成16年)3月 [20] から住民基本台帳カードと公的個人認証サービス・インターネットを利用した電子申請・届出システム[21]に、2008年(平成20年)4月 [22] からは、住民基本台帳カード・公的個人認証サービスが不要で、あらかじめ総合通信基盤局に申請の上、郵送にて送られるIDとパスワード・インターネット、免許申請・落成検査手数料の支払いにPay-easyを利用した電子申請・届出システムLite [23]によることができる。
手数料
- 2004年(平成16年)3月29日[24]現在
|
登録検査等事業者等による点検を受け、一部省略された場合 2,550円 (2,450円) | |||||||||||||||||
基本送信機とは、送信機が一台のみの場合は当該送信機、送信機が二台以上の場合は最大空中線電力のもの ( )内は電子申請による。 |
保証認定・点検の手数料は、電波法関係手数料令に規定されておらず、事業者毎に異なる。
社団局の場合
社団局の開局には、個人局を開局する際の申請書等に加え、定款、社団の構成員に関する事項、理事の氏名・住所・生年月日及び略歴を添えることが必要となる。
社団局の無線設備には、構成員の無線従事者資格の操作範囲内にあるものが含まれていなければならない。
- 空中線電力50Wの無線機(3アマ以上の資格が必要)のみでは、10W以下に空中線電力を低減できるものであっても、構成員に4アマがいれば操作できないので免許されない。
- 4アマ用の空中線電力10W以下の無線機を上級資格者が操作する事は操作範囲内にあるため免許される。
呼出符号の指定
識別信号(呼出符号)は、無線局免許状または予備免許の交付の際に指定されるが、空いているものから順次交付されるため、申請時に指定することはできない。ただし、
- 過去に受けていた免許が失効し、それと同一の免許人が開局申請を行う
- 過去に受けていた呼出符号を書類により証明出来る
- 設置場所または常置場所が、過去に受けていた免許と同じ総合通信局管内にある
- 当該呼出符号が他局に使われていない
の全ての条件を満たす場合に限り、過去に受けていたものと同一の呼出符号を指定することができる(「旧呼出符号の復活」という。)。
電波利用料
開局申請と同時に、電波利用料の前納(1年単位で免許の有効期限までの希望する期間で最大5ヵ年)が可能である。前納しない場合は、毎年送付される納入告知書により指定される方法で納付する。
その他
令和5年9月25日よりアマチュア無線従事者免許の交付申請と開局申請を同時にできるようになる予定である[25]
脚注
- ^ 電波法第39条第1項
- ^ 無線局免許手続規則別表第2号の3第3 アマチュア局の無線局事項書及び工事設計書の様式 記載要領 (PDF) 注8(総務省電波利用ホームページ - 無線局免許手続様式)
- ^ 平成5年郵政省告示第326号 電波法施行規則第34条の8及び第34条の9の規定に基づく外国において電波法第40条第1項第5号に掲げる資格に相当する資格、当該資格を有する者が行うことのできる無線設備の操作の範囲及び当該資格によりアマチュア局の無線設備の操作を行おうとする場合の条件(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
- ^ 無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準第6条の2第2項
- ^ 平成4年郵政省令第18号による無線局免許手続規則改正
- ^ a b これらの番号の構成は(技適マーク#表示)を参照
- ^ 特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則様式7
- ^ 平成23年総務省令第163号による特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則改正の施行
- ^ 平成15年総務省告示第460号 特定無線設備に付する文字等
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
- ^ a b 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
- ^ 平成19年総務省告示第513号 無線設備規則の一部を改正する省令附則第3条第2項の規定に基づく平成29年11月30日までに限り、無線局の免許等若しくは予備免許又は無線設備の工事設計の変更の許可をすることができる条件(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
- ^ 新スプリアス規格への対応に関する手続き (PDF) p.2 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値( 総務省電波利用ホームページ - 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値)
- ^ スプリアス確認保証可能機器リスト (PDF) 日本アマチュア無線振興協会
- ^ - ウェイバックマシン(2018年1月14日アーカイブ分) (PDF)
- ^ スプリアス発射等の基準改正について TSS株式会社
- ^ 平成~2005年 アマチュア無線年表(日本アマチュア無線連盟)
- ^ 電子申請・届出システム(総務省)
- ^ 2006年~現在 アマチュア無線年表(日本アマチュア無線連盟)
- ^ 電子申請・届出システムLite(総務省)
- ^ 平成16年政令第12号による電波法関係手数料令改正
- ^ 総務省電波利用ホームページアマチュア無線とは
関連項目
外部リンク
- 外国人のアマチュア局の開設 情報通信法令wiki(情報通信振興会)
- 無線局開局の手続き・検査 総務省電波利用ホームページ
- アマチュア局保証業務のご案内 JARD
- アマチュア無線局の保証業務 TSS株式会社保証事業部
- 外国人の日本での運用 ワールド・コーナー(JARL)