アブラハヤ(油鮠、Rhynchocypris lagowskii steindachneri)はコイ目コイ科ウグイ亜科に属する淡水魚。鱗が小さく、体表のぬめりが強いことからアブラの名がある。日本の固有亜種。
地方名:ハヤ、ミノー、ヤマガオ、ムギクソ、ドロクソ、クソッパヨ、アッパヘ。
分布
生態
山地の湖沼や河川の中上流域の淵や淀みに生息する。低水温を好み、雑食性で底生生物や流下物、付着藻類などを食べる。産卵期は4月から7月であり、淵や平瀬の砂礫底に多くの個体が集まり集団産卵する。幼魚は浅く流れのゆるやかな所で群れて生活し、成長すると淵や淀みに移動する。
人為放流と交雑
1970年代後半には北海道での生息が報告されている[1]が、琵琶湖産コアユの稚魚放流に伴い移入された個体と考えられ、2000年代には道南の安野呂川(厚沢部川水系)に定着したことが北海道大学の研究グループにより報告された[2]。
2001年から2003年にかけて横浜市内鶴見川水系、大岡川水系、境川水系で行われた調査によれば、本来は調査を行った水系に生息しないタカハヤが見つかったほか、タカハヤとの交雑を示すDNAを持つ個体が捕獲されているが、タカハヤとの交雑が一代雑種なのか戻し交配を経た経代個体なのかは不明である[3]。
形態
全長は15cmほどになる。体色は黄褐色で鱗が小さく、不明瞭な小黒斑が散在する。体側に黒色の縦帯があり、タカハヤと比べ明瞭である。また、尾びれのくぼみがタカハヤに比べて深い傾向がある。
近縁種
- タカハヤ Rhynchocypris oxycephalus jouyi
- ヤマナカハヤ Rhychocyris Iagowskii yamamotis
- ヤチウグイRhychocyris percnurus sachalinensis
利用
漁・釣り
一本釣りまたは、サビキ釣りで釣られる。餌は、サシか赤虫がよく使われる。小河川にも生息し子供でも容易に釣ることが出来る。泳がせ釣り用の活き餌として釣られることもある。また、小型のルアーでも釣れる。
料理
成長した親魚では骨が太くて硬いが、小ぶりなものは骨も細くて柔らかく、多少の苦みがあるが丸ごと食べられる。内臓を取り除き天ぷら、フライ、から揚げ、マリネ、南蛮漬けなど、いろいろな料理にされる。
出典
- アブラハヤ Rhynchocypris lagowski 神奈川県水産技術センター内水面試験場
脚注
- ^ 北海道から初めて採集されたアブラハヤ 水産孵化場研究報告(1979) No.34 p.57-61
- ^ 田城文人、尼岡邦夫、三上淳史、矢部衞:北海道南部で初めて定着が確認された国内外来魚アブラハヤ 魚類学雑誌 2010年 57巻 1号 p.57-61, doi:10.11369/jji.57.57
- ^ 樋口文夫、渡辺勝敏:横浜市を流れる河川におけるアブラハヤの遺伝的多様性と交雑 魚類学雑誌 Vol.52(2005) No.1 P.41-46, doi:10.11369/jji1950.52.41
- ^ 酒井治己、斉藤貴行、竹内基 ほか、東北地方におけるコイ科エゾウグイとアブラハヤの属間雑種 (PDF) 水産大学校研究報告 J Nat Fish Univ 55(2) 45-69 (2007)
関連項目
外部リンク
- アブラハヤ 琵琶湖博物館
- 河川生態ナレッジデータベース