かんむり座(かんむりざ、冠座、Corona Borealis)は、トレミーの48星座の1つ。主な星が半円の弧を描く。北天の小さな星座。
Corona Borealis | |
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属格形 | Coronae Borealis |
略符 | CrB |
発音 | [kɵˈroʊnə bɒriˈælɨs]、属格:/kɵˈroʊniː/ |
象徴 | The Northern Crown |
概略位置:赤経 | 16 |
概略位置:赤緯 | +30 |
広さ | 179平方度[1] (73位) |
主要恒星数 | 6 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 24 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 4 |
3.0等より明るい恒星数 | 1 |
10パーセク以内にある恒星数 | 0 |
最輝星 | α CrB(2.24等) |
最も近い星 | ρ CrB;(56.81光年) |
メシエ天体数 | 0 |
流星群 | None |
隣接する星座 | ヘルクレス座 うしかい座 へび座(頭部) |
主な天体
恒星
以下の恒星には、国際天文学連合によって正式に固有名が定められている[2][3]。
- α星:アルフェッカ[4] (Alphecca) は、かんむり座で最も明るい恒星で、唯一の2等星[5]。かつてはゲンマとも呼ばれた。
- β星:ヌサカン[6] (Nusakan)
- HD 145457:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」で日本に命名権が与えられ、主星はカムイ (Kamuy)、太陽系外惑星はちゅら (Chura) と命名された[2][3]。
- XO-1:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でルーマニアに命名権が与えられ、主星はMoldoveanu、太陽系外惑星はNegoiuと命名された[3]。
その他、以下の恒星が知られている。
その他
- ヘルクレス座・かんむり座グレートウォール:2013年に発見された、最大の宇宙の大規模構造。
神話
古代ローマの詩人オウィディウスはかんむり座はクレタ王女アリアドネーの冠であると述べている。クレタ島には怪獣ミーノータウロスがおり、ミーノース王は毎年7人ずつの最も美しい少年と少女を生贄に捧げていた。英雄テーセウスが生贄に交じって潜入し、怪物を退治した。このとき、ミーノースの娘の王女アリアドネーがテーセウスに恋をし彼に助力した。2人は島を脱出するが、何らかの事情(理由は諸説ある)で離れ離れになり、アリアドネーは悲しんだ。彼女を元気づけるため、酒神ディオニューソスが彼女を妃に迎え、彼女の頭の冠を空に投げるとかんむり座に変わった[7]。
エラトステネースの名で伝わる『カタステリスモイ』によると、アリアドネーの冠は鍛冶の神ヘーパイストスが燃えるような黄金とインドの宝石をふんだんに用いて制作した作品であり、ホーラーたちとアプロディーテーが2人の結婚式の際に贈ったもので、それをディオニューソスが空に投げるとかんむり座になったと述べている[8]。
呼称と方言
ラテン語での星座名 Corona Borealis は「北の冠」という意味で、みなみのかんむり座と対になっている。日本でも1922年までは「北冠座」とされていたが、1922年末から1923年にかけて「冠座」に変更された[9]。ただし、東亜天文学会系の研究者はそれ以降も「北冠」の名称を継続して使用しており、1957年から1960年にかけて学術用語として「かんむり座」と正式に定められるまでは日本名が統一されなかった[10]。
日本ではその形から、「車星(くるまぼし)」「太鼓星(たいこぼし)」「首飾り星」「馬のわらじ」など多数の呼び名があった[4]。またこれをかまどに見立てて「鬼のおかま」「地獄のかまど」「竈星(くどぼし)」「荒神星(こうじんぼし)」「へっついぼし」などとする呼び名が全国各地で使われていた[11]。
出典
- ^ “星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
- ^ a b “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN)”. 国際天文学連合 (2020年2月13日). 2020年2月19日閲覧。
- ^ a b c “Approved names” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合 (2019年12月17日). 2020年1月10日閲覧。
- ^ a b 原恵 2007, p. 131.
- ^ “Results for V* alf CrB”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2013年1月23日閲覧。
- ^ 原恵 2007, pp. 131–132.
- ^ オウィディウス, p. 316.
- ^ “伝エラトステネス『星座論』(2) りゅう座・ヘルクレス座・かんむり座”. 2022年8月31日閲覧。
- ^ 原恵 2007, pp. 43–44.
- ^ 原恵 2007, p. 44.
- ^ 野尻抱影『日本星名辞典』(七)東京堂出版、1986年4月10日、39-40頁。ISBN (978-4490100785)。
参考文献
- 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日。ISBN (978-4-7699-0825-8)。
- オウィディウス 著、中村善也 訳『変身物語(上)』(岩波文庫第2刷)岩波書店、1981年9月16日。ISBN (978-4003212011)。
座標: 16h 00m 00s, +30° 00′ 00″