滋賀県立びわ湖フローティングスクール(しがけんりつびわこフローティングスクール)は、滋賀県在住の小学5年生などを対象にした学習船「うみのこ」を運営する県の機関。事業主体は滋賀県教育委員会。
概要
滋賀県内すべて(一部県外あり)の小学5年生を対象に学習船「うみのこ」(湖の子)に乗船・航海し、宿泊をともなう教育を実施している。郷土への理解や対人・協調関係を養う「ふれあい体験学習」のほか、琵琶湖を教育の場所としていることから、同湖の環境を主なテーマとした「びわ湖環境学習」を行っている。なお、複数の学校が同時に乗船・航海し、他校の児童と混合したグループ分けを行った上で体験学習を行う。このほか、「琵琶湖・淀川流域小学生交流航海」として、他府県の小学生を含めた航海を行うこともある。運営はびわ湖フローティングスクールのスタッフのほか、「湖の子」サポーターや食育「湖の子」守り隊など、市民ボランティアが組織され支援を行っている。
2012年(平成24年)には、内閣総理大臣賞である第5回海洋立国推進功労者表彰を受賞した[1]。受賞理由は「青少年の健全な育成及び琵琶湖の環境保全を目的として、1983年から[2]琵琶湖上において、学習船「うみのこ」(総トン数928トン)による、滋賀県内の全小学5年生を対象に、船ならではの宿泊体験学習を実施[3]。地方自治体自らが船を所有し、船の教育的機能を小学校の教育課程に明確に位置付け、学校教育の一環として船内での湖上宿泊体験学習を実施していることは全国に類を見ない教育活動として注目されている。」とされた。
普段は小学生向けの学習船として運航されているが、びわ湖フローティングスクールの理解などを目的として一般向けの航海を実施することがある[4]。
沿革
学習船「うみのこ」
初代
うみのこ | |
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大津港にて(2013年) | |
基本情報 | |
船種 | 旅客船 |
船籍 | 日本 |
所有者 | 滋賀県 |
運用者 | 滋賀県教育委員会(琵琶湖汽船が受託) |
建造所 | 日立造船神奈川工場(第4739番船) 杢兵衛造船所(組立) |
母港 | 大津港 |
航行区域 | 平水 |
船級 | JG(第二種船) |
IMO番号 | 8948636 |
経歴 | |
起工 | 1983年2月8日[12] |
進水 | 1983年7月5日[12] |
竣工 | 1983年7月30日[12] |
就航 | 1983年8月2日[12] |
運航終了 | 2018年3月11日 |
要目 | |
総トン数 | 928 トン |
(載貨重量) | 145.64 トン |
排水量 | 592 トン(満載) |
全長 | 65.00 m |
垂線間長 | 60.00 m |
型幅 | 12.00 m |
型深さ | 3.30 m |
満載喫水 | 0.98 m |
機関方式 | ディーゼル |
主機関 | ヤンマー 6HAK-HTI 4基 |
推進器 | 3翼4軸 |
最大出力 | 920 PS(連続) |
定格出力 | 780 PS(常用) |
最大速力 | 10.157 ノット |
航海速力 | 9.7 ノット |
航続距離 | 509海里 |
旅客定員 | 134名または児童254名 210名または児童406名(24時間未満) |
乗組員 | 11名 |
船内の旅客施設は、主たる利用者である小学5年生を基準としたサイズで設置されている。各室定員20名の宿泊室(大部屋)、学習室、食堂(定員110名)、会議室、見学室など船内設備のほか、カッターボートを搭載。また、バリアフリー設備として車椅子用の搭乗リフターやエレベーターが設置されている。船舶の運航業務は琵琶湖汽船が、食堂の給食業務は子会社の琵琶湖汽船食堂が受託していた[12]。
2018年の2代目就航後は大津市今堅田の湖上に係留され県内の自治体や民間への売却を計画したものの売却合意に至らず、2019年4月に廃船が決定された[13]。
- 船舶要目
- 1983年8月就航。928総トン、全長65メートル、幅12メートル、航海速力8 - 9ノット。
- 旅客定員(児童)240名。日立造船神奈川工場建造、杢兵衛造船所(大津市今堅田)にて組立。
- 琵琶湖総合開発特別措置法による開発に対応するため、満載喫水は1mとなっている。
- 船内[14]
- 4階 - 操舵見学室
- 3階 - 管理室、会議室、教職員室(3室)、保健室、カッター船
- 2階 - 学習室、食堂、ロビー
- 1階 - 宿泊室(20名×12室)、洗面所、シャワー室、教職員室(1室)
2代
うみのこ (2代) | |
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基本情報 | |
船種 | 旅客船 |
船籍 | 日本 |
所有者 | 滋賀県 |
運用者 | 滋賀県教育委員会 |
建造所 | 中谷造船琵琶湖工場 杢兵衛造船所(組立) |
母港 | 大津港 |
航行区域 | 平水 |
経歴 | |
起工 | 2016年11月 |
進水 | 2017年12月28日 |
竣工 | 2018年5月16日 |
就航 | 2018年6月4日 |
要目 | |
総トン数 | 1,355 トン |
全長 | 64.91 m |
垂線間長 | 60.00 m |
型幅 | 12.00 m |
型深さ | 3.3 m |
満載喫水 | 1.5m |
機関方式 | 電気推進 |
航海速力 | 9ノット |
航続距離 | 300海里 |
旅客定員 | 宿泊:90名または児童180名 一日:一般165名または児童330名 |
初代船の老朽化に伴い、2018年度より就航。建造にあたっては2008年に創設した建造基金[15]、ふるさと納税を活用した寄付のための条例[16][17]が設けられ、クラウドファンディングを用いた支援も行われた[18]。
- 設備
船内の設備については、以下の3点に配慮し整備された。
- 「安全な学習船」 - Z型推進装置2基による安全迅速な離接岸の実現、各種安全設備
- 「安心できる学習船」 - 電気推進による環境配慮や騒音の軽減、インクルーシブ教育に対応したユニバーサルデザイン等を用いた環境整備
- 「学びが深まる学習船」 - 教育施設としての教材備品整備、無線LANによる航海データと琵琶湖の自然学習コンテンツの配信やタブレットによる学習支援
- 船内
- 4階 - 小会議室、操舵見学室
- 3階 - 多目的室、実験室、大会議室、所員室(1室)
- 2階 - 保健室、看護室、活動・宿泊室(16名×10室・10名×2室)、シャワー室、車いすリフター、教職員室(2室)
- 1階 - 所員室(2室)、管理室、学習室兼食堂
- 地下1階 - 教職員室(6室)、防災倉庫
所在地
脚注
- ^ 内閣総理大臣賞 - 国土交通省
- ^ “都道府県だより2013年8月 小学5年生の夢を乗せて学習船「うみのこ」就航30周年”. 全国知事会. 2019年3月24日閲覧。
- ^ a b “「びわ湖フローティングスクール」出航式 新船「うみのこ」に大津の小学5年生乗船”. びわ湖大津経済新聞. (2018年6月5日)2019年3月24日閲覧。
- ^ 県政今の動き 第11489号 - 滋賀報知新聞(2005年6月9日付) ※「一般県民対象の学習船「うみのこ」見学会の参加者募集」を参照。
- ^ 琵琶湖の新学習船「うみのこ」進水 5月就航へ - 京都新聞(2017年12月29日付、2018年1月26日閲覧)
- ^ “琵琶湖の二代目の学習船「うみのこ」が命名進水式 就航は来年5月”. 産経WEST. (2017年12月30日)2019年3月24日閲覧。
- ^ 初代「うみのこ」お別れ見学会および引退セレモニー - びわ湖フローティングスクール(2018年1月26日閲覧)
- ^ “35年の歴史に幕 琵琶湖の学習船「うみのこ」引退セレモニー”. 産経ニュース. (2018年3月12日)2019年3月24日閲覧。
- ^ “琵琶湖の新学習船、就航延期 内装遅れ、28校に影響”. 京都新聞. (2018年4月17日)2019年3月24日閲覧。
- ^ “宝くじについて 滋賀ゆかりのデザイン”. 滋賀県総務部財政課 (2018年10月16日). 2019年4月29日閲覧。
- ^ “「うみのこ」宝くじ買って 琵琶湖学習船の図柄、8日発売”. 京都新聞. (2018年8月8日)2019年3月24日閲覧。
- ^ a b c d e - びわ湖フローティングスクール(Internet Archive)
- ^ 琵琶湖の学習船・初代うみのこ、廃船決定 - 中日新聞2019年4月23日
- ^ 「湖の子」指導の手引 - びわ湖フローティングスクール(Internet Archive)
- ^ 学習船「うみのこ」新船建造について - 滋賀県教育委員会事務局学校教育課
- ^ マザーレイク滋賀応援寄附条例 - 滋賀県
- ^ 環境学習船「うみのこ」新造にも 滋賀県、ふるさと納税へ新条例 - 京都新聞(2008年8月12日付)
- ^ 滋賀県の学習船「うみのこ」35年ぶりの新船が琵琶湖で子どもたちを迎えます! - LIFULL
- ^ 大津港施設平面図 - 滋賀県大津土木事務所(2008年6月30日現在)
参考文献
- 「新造船写真集(No.420)」『船の科学』第38巻第10号、船舶技術協会、1983年10月10日、ISSN 0387-0863、(NDLJP):3231859、2016年12月9日閲覧。
外部リンク
- 滋賀県立びわ湖フローティングスクール(公式サイト)