関西私鉄(かんさいしてつ)とは、近畿地方(関西)を走る私鉄のこと。その中には、大手私鉄5社と準大手私鉄4社が含まれる。 特に大阪を発着する関西大手私鉄は各社が沿線開発や流通、レジャーなどの関連事業に注力し、俗に「関西私鉄王国」と言われる強力な地盤を作り上げてきたことでも知られる[1]。
鉄道会社
大手私鉄
- 近畿日本鉄道(以下、近鉄 / 近鉄グループ)
- 阪急電鉄(以下、阪急 / 阪急阪神東宝グループ)
- 阪神電気鉄道(以下、阪神 / 阪急阪神東宝グループ)
- 京阪電気鉄道(以下、京阪 / 京阪グループ)
- 南海電気鉄道(以下、南海 / 南海グループ)
準大手私鉄
中小私鉄
ここに挙げる会社のうち、関西大手私鉄との資本関係がない会社は、水間鉄道、和歌山電鐵、近江鉄道、紀州鉄道、北条鉄道、京都丹後鉄道、信楽高原鐵道である。また、近畿地方に属する三重県(伊賀市、名張市は奈良県などに隣接するため、関西地方として扱われることがある[注 1])の鉄道は除外する。また、JRグループである嵯峨野観光鉄道も除外する。
- 能勢電鉄(阪急阪神東宝グループ)
- 神戸電鉄(阪急阪神東宝グループ[注 2])
- 大阪モノレール [注 3](第三セクター[注 4])
- 阪堺電気軌道(南海グループ)
- 水間鉄道(グルメ杵屋の子会社)
- 和歌山電鐵 (両備グループ [注 5])
- 紀州鉄道(独立系、本社は東京都千代田区)
- 京福電気鉄道〈嵐電〉(京阪グループ)
- 叡山電鉄(京阪グループ)
- 比叡山鉄道(京阪グループ)
- 近江鉄道(西武グループ)
- 北条鉄道(旧・国鉄路線を継承)
- 信楽高原鐵道(旧・国鉄路線を継承)
- 京都丹後鉄道(一部、旧・国鉄およびJR西日本の路線を継承)
- 丹後海陸交通
かつて存在した私鉄
ここでは1960年代以降に廃止となった鉄道を列挙する。
特徴
この節は(検証可能)な(参考文献や出典)が全く示されていないか、不十分です。(2020年5月) |
呼称
関西においては大手私鉄やその路線のことを「◯◯電車」と呼ぶことが一般的になっており[2]、阪急電鉄は「阪急電車」、阪神電気鉄道は「阪神電車」、京阪電気鉄道は「京阪電車」、南海電気鉄道は「南海電車」というように呼称され、実際の駅の案内表や各社のホームページ、車内放送の案内においてもそのような表記や呼び方をされている。ただし近畿日本鉄道(近鉄)においては他の鉄道事業者と比較して「近鉄電車」と呼ばれることは少なく、単に近鉄や近鉄線と呼ばれる[2]。準大手私鉄や中小私鉄に関しては山陽電気鉄道は「山陽電車」、阪堺電気鉄道は「阪堺電車」、叡山電鉄は「叡山電車(叡電)」などと呼称される。
線路幅
関東私鉄では線路幅はJRと同じ、狭軌が多数採用されている一方、関西私鉄では本項で挙げた全21社の内、12社が標準軌(新幹線と同様の幅)を採用しており、関西大手私鉄においては標準軌が主流となっている。これは、多くの鉄道が元々、路面電車だったことなどが由来となっている。また、標準軌を採用している鉄道会社の内、近鉄・京阪の鋼索線(ケーブルカー)については狭軌となっており、近鉄の南大阪線系統についても狭軌となっている。なお、地方公営企業を民営化して設立された大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)、地方公営企業である京都市交通局(京都市営地下鉄)と神戸市交通局(神戸市営地下鉄)の3つの地下鉄はいずれも標準軌を採用している。
ターミナル駅
関東大手私鉄のターミナル駅はJR山手線に接続する駅(渋谷・新宿・池袋など)に存在し、環状路線である山手線より内側、つまり千代田区・中央区などの東京都心にはターミナル駅は存在しない。これは山手線の各駅に接続することにより、各私鉄が自力で都心延伸するよりもターミナルに百貨店などの自社の商業施設を集中した方が利益になると判断したからである。こうして、関東大手私鉄のターミナル駅を中心としたにある副都心の渋谷・新宿・池袋はその交通利便性から今日のような巨大繁華街へと発展を遂げた。
一方、関西大手私鉄は山手線と同じ環状路線のJR大阪環状線と接続する大阪梅田駅(大阪駅)、大阪阿部野橋駅(天王寺駅)に加え、天満橋駅、難波駅、大阪上本町駅といった大阪環状線よりも内側にある大阪都心側に独自のターミナル駅を形成してきた。大阪の鉄道における大動脈は大阪環状線ではなくOsaka Metro御堂筋線となっており、開業後は同線と接続する駅として京阪は淀屋橋駅に、近鉄・阪神は大阪難波駅に延伸し、さらに都心部への乗り入れを果たした。地下鉄御堂筋線は東海道・山陽新幹線との乗り換え駅である新大阪駅、キタの中心の梅田、ミナミの難波・心斎橋、天王寺といった大阪の重要拠点を結んでおり、各私鉄が御堂筋線に接続することにより各所への移動が容易となっている。 また、近鉄が難波に延伸したことにより、東京とは違い、大阪におけるターミナル駅がある程度集約されたことになる。また、日本最大の頭端式ターミナル駅の阪急梅田駅(現・大阪梅田駅)を筆頭に、南海難波駅、上本町駅(現・大阪上本町駅)など戦前からのターミナル駅は関東大手私鉄の起点駅と比較して規模がかなり大きいことが特筆される。
なお、大阪に限らず関西では、接続駅において鉄道会社ごとに駅名が異なる場合が多い。例えば梅田では、駅の立地の微妙な違いなどにより駅名が異なっている。
- 主なターミナル駅と乗り入れる路線
- キタ(梅田周辺)
- ミナミ(難波周辺)
- 天王寺
- 淀屋橋
乗り入れ
関西私鉄は競争が激しく、かつては乗り入れも少なかったが、現在は大手私鉄同士では、阪神・山陽(準大手私鉄)、阪神・近鉄で行われている。また、近鉄と阪神の直通により、線路だけで見ると山陽姫路駅から阪神を介して近鉄名古屋駅まで繋がったことになる(ただし、近鉄と山陽は乗り入れを行っていない)。また、関西大手私鉄では京阪のみが他の私鉄と乗り入れを行っていない(かつては近鉄京都線と相互乗り入れを行っていた)。一方で、地下鉄を介して他の大手私鉄やJR線との相互直通運転が盛んな関東大手私鉄と比較すると、旧・大阪市営地下鉄(現在のOsaka Metro)の市営モンロー主義の影響で、地下鉄は第三軌条のような郊外私鉄路線が直通出来ない企画が採用され、その数は少ないと言える(都営地下鉄浅草線や東京メトロ副都心線など首都圏では地下鉄を介した3社局以上の直通運転も頻繁に見られる)。
脚注
注釈
- ^ 伊賀市を通っているJR関西本線(亀山以西)と草津線はいずれもJR西日本の管内
- ^ 2004年(平成16年)までは準大手私鉄
- ^ 2020年(令和2年)5月31日までの社名は「大阪高速鉄道」。
- ^ 株主には大阪府などの他に京阪(京阪ホールディングス)、阪急、近鉄(近鉄グループホールディングス)を中心に関西大手私鉄が名を連ねている。なお、大阪モノレールに接続している大手私鉄は京阪と阪急のみである。
- ^ 岡山電気軌道系。和歌山電鐵はかつて南海の路線だった貴志川線を分離独立して発足した。なお、近畿圏では分離独立した路線は独立前の鉄道会社の子会社となる例(伊賀鉄道や阪堺電軌など)が多いが和歌山電鐵は南海グループとは資本関係がない。
出典
関連項目
- スルッとKANSAI
- PiTaPa
- ICOCA
- 小林一三 - 阪急電鉄(阪急阪神ホールディングス)の創業者。現代にも繋がる鉄道会社の多角経営モデルを築いた。