この記事は(検証可能)な(参考文献や出典)が全く示されていないか、不十分です。(2017年11月) |
漢字復活論(かんじふっかつろん)とは、元々は漢字文化圏にあったが、漢字廃止論により漢字を一旦破棄した国家の漢字を見直す機運・主張を指す。ここでは漢字を国語の正書法としては正式に廃止したベトナムと北朝鮮、及び漢字教育を廃止もしくは制限することにより普及度が極端に低くなった韓国の状況について述べる。
朝鮮半島
大韓民国
大韓民国(韓国)では、建国直後の1948年にハングル専用法が制定[1]され、公文書における文字はハングルのみに限定され、ただし当分の間漢字の使用を認める、と定められた。このため、公文書や教科書においては、漢字の使用はハングルのあとカッコにくくって表記する「併用」方式に制限されることとなった(例:「제주(濟州)」)[1]。
また、朴正煕政権(第三共和国)下の一時期(1968年 - 1972年)、政府が学校教育カリキュラムから漢字教育を追放し、マスメディアにもハングルのみの表記を強く要求するなどの漢字排斥政策を進めた[注釈 1]。その際、漢字存続を主張した大学教授が職を追われる事件も起きた。これに対し学界や言論界が正面から反対運動を展開したため、中等教育での漢文教育は容認されて漢文教育用基礎漢字も定められたが、その後も漢字教育への関心は低調だった。2000年より始まった第7次教育課程によって漢字教育は必須ではなくなった[2]。
しかし1990年代後半以降、一部に漢字存続の主張が強まり、漢字を理解する外国人観光客の利便性を理由に道路標識の地名表記に漢字が併記されるようになるなど、いわゆるハングル専用の徹底度は若干弱まっている。1998年には、(漢字教育振興会)を発展的に解消し、全国漢字教育推進総連合会が結成された。指導者は李在田。朴正熙時代の陸軍参謀総長である。
全国漢字教育推進総連合会は、次のような主張を掲げる。
ただし、日本の文部省(現:文部科学省)に相当する教育部(現:教育科学資源部)は、ハングル専用派の主張を考慮して要求を受け入れなかった。そこで、国防長官が李在田の陸軍士官学校での後輩に当たることに目を付け、徴兵された若者に軍隊の中で漢字学習と漢字使用を義務付ける準備をしていた。が、2004年の李在田の急逝を受け、この計画は暗礁に乗り上げた。[要出典]
また、2005年に国語基本法が制定され、公文書における漢字のカッコ内使用は、同法施行令11条各号の定める場合[注釈 2]に限定されることとなった。
2009年2月、首相経験者が連名で小学校からの漢字教育義務付けを建議。それまで漢字教育の是非は学校単位で判断され、課外授業として実施されただけだったが、ソウル特別市江南区では、区教育庁が主導して、区内の小学校に漢字教育を義務付けた。「同音異義語の意味が分かるようになった」と児童からは好評だと言うが、ハングル学会は「ハングルは世界に誇る科学的文字」「漢字は特権層の反民主的文字」「ハングル専用で不便を感じる韓国民はいない」と漢字教育強化に反対する姿勢を示している。[要出典]
韓国政府は、「漢字を教えろとは言わないし、教えるなとも言わない」と廃止・存続いずれの立場にもくみしない姿勢を示している。すなわち、漢字復活の問題は政治問題として取り上げられるべきものではなく、あくまで国民個人の問題にすぎない、としている。そのため、小学校でも校長裁量で漢字を教えることは認められているが、漢字教育に消極的な校長は、自由裁量時間をコンピュータやテコンドーなどの時間に充てている。また、積極的な校長でも、市販の教材で漢字教育を行うことになるため、韓国民は出身校によって漢字能力に濃淡が出ることになる。この背景には、現在教育現場の最前線にいる世代が最も漢字教育を受けていない世代に当たることが最も大きな要因とされており、漢字復活をより困難なものにしている。[要出典]
韓国の大学では、学部別で学長の裁量で卒業資格に漢字試験の資格が要求される場合が多い。そのレベルは大学ごとに異なり、おおよそ2級(2000-2800字)から3級(1000-1800字)が通過に必要な漢字数である。また、近年中国へ進出する企業が急増したことを受けて、入社試験に漢字試験を課したり、資格保有者を優遇する企業が増えている。[要出典]
現在、韓国で日常的に漢字混用をする出版物は漢文関係の書籍を除けば仏教、法学書籍などに限定されている。
2014年10月[3]、漢字教育の重要性を訴えてきた[4]朴槿恵政権は2018年より小学3年生以上の教科書で漢字を併用する形で漢字教育を復活させることを決定したが、ハングル関連団体からの反発が上がり[5]、韓国教育部は漢字併記から脚注での表記などに変更することを発表した[6]。
朝鮮民主主義人民共和国
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では1948年の建国以来、漢字は廃止されているが、恐らく1950年代後半頃から漢字教育が行われていると見られ、2016年現在も行われていることが確認されている[7]。金日成は1964年1月3日の「朝鮮語を発展させるためのいくつかの問題」の中で「漢字を使う必要はない」としたうえで漢字問題は統一問題でのみ考えなければならないとし、すなわち廃止すれば韓国で出回っている出版物を読めなくなるため、一定期間漢字を学ばなければならないが、国内の出版物で使う必要はないと述べている[8]。
そのため北朝鮮では一般に漢字は用いられず、新聞はハングル専用で漢字は全く用いられない。人名や地名の漢字表記は外国語表記として存在する。ちなみに、毛沢東から金正日に贈られた漢詩では簡体字が用いられた。
なお、金正恩の漢字表記をめぐる問題については(こちら)を参照。
ベトナム
17世紀にフランスのカトリック宣教師、アレクサンドル・ドゥ・ロードが考案したベトナム語のローマ字転写法が、19世紀後半のフランス植民地化以降「クオック・グー(国語)」と呼ばれるようになって普及し、1919年の科挙廃止という要因もあって漢文の使用領域が狭まったため、次第に漢字使用は減少した。
1945年のベトナム民主共和国成立後、北部では公教育における漢字教育が実質的に消滅したが、南ベトナムでは1975年まで中等教育に「漢文科」が存続していた。1960年代後半のベトナム民主共和国では、漢字語を固有ベトナム語に言い換える運動が推進された。[要出典]
現代のベトナムで、漢字復活の主張もない訳ではない。ホーチミン市国家大学のカオ・スアン・ハオ(高春灝)教授(言語学)は、「言語学的にはベトナム語のローマ字表記は適切ではなく、漢字と字喃を捨てたことは、文化的損失だ」と述べる等、義務教育での漢字学習の必修化をもとめる主張もある[9]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b “韓国、漢字撤廃政策のツケ…過去にこだわる民族が歴史を知らないという皮肉”. デイリー新潮. (2020年8月11日)2020年8月17日閲覧。
- ^ “「ブウンを祈る」ってどんな意味? 韓国で検索順位が急上昇”. 朝鮮日報. (2021年11月21日). オリジナルの2021年11月25日時点におけるアーカイブ。 2021年11月25日閲覧。
- ^ “韓国にはやっぱり漢字が必要!世論調査で漢字に対する韓国人の考えが明らかに―韓国メディア” (2014年10月11日). 2016年5月24日閲覧。
- ^ “韓国の朴槿恵大統領が漢字教育の重要性を強調” (2013年7月12日). 2016年5月24日閲覧。
- ^ “小学校教科書への漢字併記 ハングル関連団体が反発” (2015年5月1日). 2016年9月7日閲覧。
- ^ “韓国教育部、小学教科書の漢字併記撤回” (2015年9月22日). 2016年9月7日閲覧。
- ^ “金正恩の新教科書を解剖する(1) 北朝鮮の教科書事情 市場で買わされる教科書”. 2020年4月28日閲覧。
- ^ “朝鮮民主主義人民共和国における漢字教育 ―1990年代を中心に―”. 2012年7月30日閲覧。
- ^ “Cần khôi phục việc dạy chữ Hán trong nhà trường”. Báo Tuổi Trẻ (2010年6月26日). 2017年5月30日閲覧。