数学の実解析において、実数値関数の極値(きょくち、英: extremum[注 1])とは、関数の局所的な最小値および局所的な最大値の総称である。関数の極値を求める問題は極値問題と呼ばれる。
定義
n 次元ユークリッド空間 (Rn, d) の開集合 U 上で定義された実数値関数 f: U → R をとる[注 2]。 関数 f を定義域 U に属する点 p のある ε 近傍に制限すると値 f(p) がその最小値であるとき、値 f(p) を関数 f の極小値(local minimum)といい、点 p を関数 f の極小点(local minimum point[1])という。この条件は論理式を用いると
と表せる[注 3]。同様に関数 f を定義域 U に属する点 p のある ε 近傍に制限すると値 f(p) がその最大値であるとき値 f(p) を関数 f の極大値(local maximum)といい、点 p を関数 f の極大点(local maximum point[1])という。
極小値と極大値を総称して極値(extremum)といい、極小点と極大点を総称して極値点という。
上の条件に現れる d(p, q) < ε ⇒ f(p) ≤ f(q) を 0 < d(p, q) < ε ⇒ f(p) < f(q) へ置き換えたとき、値 f(p) を関数 f の狭義の極小値(strict local minimum)という。同様に狭義の極大値(strict local maximum)も定義される。またこれらを総称して狭義の極値という。(ただし狭義の極値を単に極値と呼ぶこともあるので、実際に用いられている定義をよく確認する必要がある。)
必要条件
n 次元ユークリッド空間 Rn の開集合 U 上で定義された実数値関数 f: U → R をとり、これが微分可能であるとする。
定義域 U に属する点 p における関数 f の勾配
が 0 であるとき、点 p を関数 f の停留点(stationary point)あるいは臨界点(critical point)といい、値 f(p) を停留値(stationary value)あるいは臨界値(critical value)という。
点 p が関数 f の極値点であるためには、点 p が関数 f の停留点であることが必要である。
十分条件
n 次元ユークリッド空間 Rn の開集合 U 上で定義された実数値関数 f: U → R をとり、これが2回連続微分可能であるとする。
関数 f の停留点 p におけるヘッセ行列
が正の定符号(∇2 f(p) > 0)であるならば関数 f は点 p において狭義の極小値をとる[2]。またヘッセ行列 ∇2 f(p) が負の定符号(∇2 f(p) < 0)であるならば関数 f は点 p において狭義の極大値をとり、不定符号であるならば関数 f は点 p において極値をとらない(このとき点 p は関数 f の鞍点と呼ばれる)。
この方法[注 4]により、ヘッセ行列 ∇2 f(p) が特異行列で停留点 p が退化している場合を除けば、極値判定ができる。
注釈
出典
関連項目
参考文献
- ユルゲン・ヨスト『ポストモダン解析学』シュプリンガー、2000年。ISBN (978-4-431-70871-1)。
- 書評 doi:10.11429/sugaku1947.54.314
外部リンク
- Weisstein, Eric W. "Extremum". MathWorld (英語).
- extremum - PlanetMath.(英語)
- Ivanov, A.B. (2001), "Extremum", in Hazewinkel, Michiel (ed.), Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4。
- extremum in nLab