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天宮号宇宙ステーション(てんきゅうごううちゅうステーション)または中国宇宙ステーション(ちゅうごくうちゅうステーション、Chinese Space Station, CSS)[4][5]は、中国が天宮計画で運用中の宇宙ステーションである。三つのモジュールで設計されており、総質量は80トンに達すると予想されている。
天宮号宇宙ステーションを再現したCG | |
詳細 | |
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乗員数 | 最大: 未定(人員交代時は少なくとも6名) 現在: 3名 ((神舟15号)) |
打上げ日時 | 天和コアモジュール: 2021年4月29日 問天実験棟モジュール: 2022年7月24日 夢天実験棟モジュール: 2022年10月31日 |
運用状況 | 運用中 |
質量 | 100,000 kg |
全長 | ~ 20.00 m |
直径 | ~ 4.20 m |
居住空間 | 110㎥ |
近地点 | 389.5 km[1] |
遠地点 | 395 km[1] |
軌道傾斜角 | 41.58°[1] |
高度 | 389.2 km[1] |
平均速度 | 7.68 km/s[1] |
公転周期 | 92.2分[2] |
周回日数 | 2年, 19日 (2023年5月19日) |
滞在日数 | 90日, 14時間8分 (神舟12号) 580日, 1時間 and 18分[3] 合計 |
2021年10月16日現在 | |
詳細図 | |
建設は2021年4月に開始され[6]、2022年11月30日にドッキングした神舟15号のミッションによる検証や調整をもって2022年12月に建設が終了[7][8]。年末年始にかけて「2022年の実績」として「全面的に完成した」ことが報告された[9][10]。
概要
2022年12月に完成した宇宙ステーション。試験機ではなく、旧ソ連のミールに匹敵するサイズの完成した宇宙ステーションと位置づけられている。コアモジュール「天和」(てんわ)、2つの実験モジュール「問天」(もんてん) と「夢天」(むてん)、無人補給船「天舟」(てんしゅう) といった構成要素が公表されている。打ち上げには長征5号B型ロケットが用いられる。
2016年6月に国際連合宇宙局は中国国家航天局と「天宮」の利用機会を国際連合加盟国にも開放する協定を結んでおり、日本の東京大学など17か国23機関による9件の科学実験が計画された。
計画当初は天宮の名称で呼ばれていたが、2021年現在の公式発表などでは中国宇宙ステーション(China Space Station(CSS), 中国空间站)と呼ばれ、天宮の名称は使用されていない[5]。
モジュール
ミールやロシアのISSモジュールと同様に、宇宙ステーションのモジュールは完全に組み立てられた状態で打ち上げられる。これに対し、米国のISSモジュールは、ケーブル、配管、構造体の人力による接続が必要であり、設置に宇宙遊泳が必要であった。天和コアモジュールのドッキングポートは軸方向からのみ直接のドッキングに対応しており、横方向にドッキングする際には、先に軸方向にドッキングしてからロボットアームで横のドッキングポートへ移動する[11]。
天和
天和コアモジュール(てんわコアモジュール、英語: Tianhe Core Module, CCM)は、最大3人の宇宙飛行士の居住と、宇宙ステーションの誘導、航行、方向制御などに対応している中心モジュール。また、宇宙ステーション全体の電気系統、推進システム、生命維持システムもこのモジュールが中心となっている。
モジュールは居住区、サービス区、ドッキングポートの3つのエリアに分かれており、居住区には、キッチンやトイレ、火器管制装置、大気処理・制御装置、コンピュータ、科学実験装置、北京の地上管制との通信装置などが設置されている。サービス区には、カナダアーム式のロボットアームが収納されている。
2018年の中国国際航空宇宙博覧会で、天和コアモジュールのフルスケールモックアップが公開された。
中国国家航天局の映像から、天和コアモジュールは2つ建造されていることが明らかになっており、天和コアモジュールを2つ連結して宇宙ステーションを拡張した状態を描いたアニメーション等もある[12]。
諸元
天和コアモジュール(CG)
打ち上げ前の天和コアモジュール
長征5号Bで打ち上げられる天和モジュール
天和モジュール
問天
問天実験モジュール(もんてんじっけんモジュール、中国語: 问天实验舱、英語: Wentian laboratory cabin module)は2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、2022年7月24日に打ち上げられた[14]。
宇宙ステーションの制御・管理機能を持ち、天和コアモジュールのバックアップとしても機能する。中国宇宙ステーションで2つ目のエアロックとロボットアームを備えており、エアロックは主に宇宙遊泳に使用される[15]。
諸元
打ち上げ日時 (UTC) | 打ち上げロケット | 全長 | 直径 | 重量 |
---|---|---|---|---|
2022年7月24日 06:22:32 | 長征5B | 17.9m | 4.2m | 23,000kg |
問天モジュール(CG)
打ち上げ前の問天モジュール
搭載されているロボットアーム
問天モジュール
長征5号Bで打ち上げられる問天モジュール
打ち上げを見守る観衆
夢天
夢天実験モジュール(むてんじっけんモジュール、中国語: 梦天实验舱、英語: Mengtian laboratory cabin module)は2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、2022年10月31日に打ち上げられた。補給や機材運搬に用いる専用のエアロックを備えている[15]。
諸元
打ち上げ日時 (UTC) | 打ち上げロケット | 全長 | 直径 | 重量 |
---|---|---|---|---|
2022年10月31日 07:37:23 | 長征5B | 17.9m | 4.2m | 23,000kg |
夢天モジュール(CG)
夢天モジュール
巡天
巡天 (じゅんてん, Xuntian) は2024年に打ち上げが予定される宇宙望遠鏡である。
直径2メートルの主鏡と2.5ギガピクセルのカメラを搭載し、ハッブル宇宙望遠鏡の300倍の視野を持つとされており、10年間で全天の40%を撮影することが期待されている。
また、天宮宇宙ステーションと同一の軌道に設置され、修復等を行う際には天宮宇宙ステーションとのドッキングが可能とされている。
打ち上げ日時 | 打ち上げロケット | 運用開始日時 | 全長 | 直径 | 重量 | 画像 |
---|---|---|---|---|---|---|
2024年 (予定) | 長征5B (予定) | 2024年 (予定) | ~13 m (43 ft) | ~4.2 m (14 ft) | ~20,000 kg (44,000 lb) |
建設
中国宇宙ステーションの建設は2021年4月から開始され、2022年11月に完成した(巡天宇宙望遠鏡を含まない)。
モジュールの打ち上げには長征5号Bロケットが用いられた。
天和モジュールの打ち上げ
2021年4月29日11時23分(日本時間)、中国宇宙ステーションの最初のモジュールである天和モジュールが打ち上げられた[16]。
2021年6月17日15時54分には乗組員を乗せた神舟12号とドッキングし、これが中国宇宙ステーションにおける初めての有人滞在となった[17]。
問天モジュールの打ち上げ
2022年7月24日15時22分(日本時間)、中国宇宙ステーションで2つ目のモジュールであり、実験棟モジュールである問天モジュールが打ち上げられた[18]。これによりステーションでの高度な化学実験が可能となったほか、最大6人の滞在が可能となる[19]。また、問天モジュールは全長55mのソーラーパネルを4枚備えており、一日あたり平均430kWhの電力を供給できる[19]。
問天モジュールの移動
2022年9月30日13時44分(日本時間)[20]、10月に予定される夢天モジュールのドッキングに備え、天和モジュールの側面へ問天モジュールを移動した[21]。この際、移動中は宇宙ステーション全体の姿勢制御を停止する必要があり、またロボットアームが用いられたことから、中国新聞網は難易度の高いミッションと評している[22]。
夢天モジュールの打ち上げ
2022年10月31日13時37分(日本時間)、中国宇宙ステーションで3つ目のモジュールであり、実験棟モジュールである夢天モジュールが打ち上げられた[23]。夢天モジュールは微小重力実験の設備を搭載しているほか[24]、機材や物資の運搬に用いるエアロックを搭載しており、キューブサットなどの小型人工衛星を放出することができる[23]。また、天和モジュールや問天モジュールと異なり、夢天モジュールは居住設備を含まない完全な実験棟モジュールである。
夢天モジュールの移動
2022年11月2日10時32分(日本時間)、天和モジュールの側面に夢天モジュールを移動した[25]。
これにより中国宇宙ステーションは完成し、同日16時12分には乗組員が夢天モジュールに入室した[26]。
デザイン
構成 (T字型の宇宙ステーション)
公募、投票、研究者や科学家の意見などから、中国載人航天工程辦公室は2013年10月末、中国の有人宇宙ステーション全体を「天宮」、コアモジュールを「天和」、無人宇宙補給機を「天舟」、2つの実験モジュールをそれぞれ「問天」と「夢天」と命名したと発表した[27] 。
主要ミッション
- ランデブーとドッキング技術の更なる進歩
- 長期間の宇宙飛行と居住、軌道上での宇宙機の長期飛行、再生的な生命維持、無人宇宙補給機による補給等の主要技術の飛躍的な進歩
- 宇宙船の性能と機能の検証
- 中大型的な軌道上宇宙実験を実行
乗組員
神舟12号
プレスリリースにて(左から湯洪波、聶海勝、劉伯明)
聶海勝氏 - ソマリアにおいて発行された記念切手
劉伯明氏
湯洪波氏
神舟13号
発射前にて(左から葉光富、翟志剛、王亜平)
翟志剛氏
王亜平氏
葉光富氏
神舟14号
発射前にて(左から蔡旭哲、陳冬、劉洋)
陳冬氏
劉洋氏
蔡旭哲氏
神舟15号
船内環境
宇宙ステーションにはWi-Fi環境があり、 乗組員はコミュニケーション用に骨伝導ヘッドホンとマイクを着用している[28]。また、船内の表記には中国語が用いられている[29]。
宇宙食は宇宙飛行士の好みに応じて最大120種類が船内に保管されており、様々な中華料理や野菜、お茶やジュースなどがある[30]。補給は天舟無人宇宙補給機で行われ、果物や野菜はクーラーボックスに保管されている。
中国国家航天局の主任宇宙飛行士トレーナーであるHuan Weifenは、"ほとんどの食品を固形で食べることができ、骨等は除去されているほか、微小重力下での味覚の変化を補うため花椒などの調味料を追加している"としている。
天和コアモジュールには調理用の小さなキッチンと、宇宙ステーションとして初となる電子レンジが備わっており[31]、乗組員が(温食)を食べることができるように配慮されている[32][33]。
天和コアモジュールの居住区には、3つの個室兼寝室とトイレ、シャワー、ジム設備などがある[34][35][36] 。
個室兼寝室は国際宇宙ステーションのものより大幅に大きく設計されており、ダブルマットレス、窓、ヘッドホン、換気装置などの設備や、筋萎縮を防ぐための電気刺激装置が備えられている[37][38]。
履歴と予定
- すべての日付はUTCで表記されており、打ち上げ予定日は変更される場合がある。
打ち上げ日時 (UTC) | ドッキング日時 (UTC) | ドッキング解除日時 (UTC) | 結果 | ペイロード | 打ち上げロケット | 発射場 | 打ち上げ事業者 | ドッキング先 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年4月29日, 03:23:15[13] | - | - | 成功 | 天和 | 長征5B | 文昌発射場 LC-1 | CASC | なし |
2021年5月29日, 12:55:29[39] | 2021年5月29日, 21:01[40] | 2022年3月27日, 07:59 | (天舟2号) | 長征7号 | 文昌発射場 LC-2 | CASC | 天和 後方 | |
2021年6月17日, 01:22:27[41] | 2021年6月17日, 07:54[41] | 2021年9月16日, 00:56 | 神舟12号 | 長征2F | 酒泉発射場 SLS-1 | CASC | 天和 前方 | |
2021年9月20日, 07:10[42][43] | 2021年9月20日, 14:08[43] | 2022年7月17日, 02:59 | (天舟3号) | 長征7号 | 文昌発射場 LC-2 | CASC | 天和 後方 | |
2021年10月15日, 16:23:56[44][45] | 2021年10月15日, 22:56[46] | 2022年4月15日, 16:44[47] | 神舟13号 | 長征2F | 酒泉発射場 SLS-1 | CASC | 天和 前方 | |
2022年5月9日, 17:56:37[48] | 2022年5月10日, 00:54 | 2022年11月09日, 06:55 | (天舟4号) | 長征7号 | 文昌発射場 LC-2 | CASC | 天和 後方 | |
2022年6月5日, 02:44:10[49] | 2022年6月5日, 09:42 | 2022年12月4日, 03:01 | 神舟14号 | 長征2F | 酒泉発射場 SLS-1 | CASC | 天和 前方 | |
2022年7月24日, 06:22:32[50][14] | 2022年7月25日, 3:13[51] | - | (問天) | 長征5B | 文昌発射場 LC-1 | CASC | 天和 左側 | |
2022年10月31日, 07:37:23[52] [53] | 2022年10月31日, 20:27 | - | (夢天) | 長征5B | 文昌発射場 LC-1 | CASC | 天和 右側 | |
2022年11月12日, 02:03:12 | 2022年11月12日, 04:10 | 未定 | (天舟5号) | 長征7号 | 文昌発射場 LC-2 | CASC | 天和 後方 | |
2022年11月29日, 15:08:17 | 2022年11月29日, 21:42 | 未定 | (神舟15号) | 長征2F | 酒泉発射場 SLS-1 | CASC | 天和 下方 |
ほか、2024年に宇宙望遠鏡モジュールの巡天の打ち上げが予定されている。
参照
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