『君の名は』(きみのなは)は、1952年から1954年に日本のNHKラジオで放送されたラジオドラマ。小説化、映画化、テレビドラマ化、舞台化もされた。
概要
脚本家・菊田一夫の代表作。1952年にラジオドラマで放送され、多大な人気を獲得した。ただし、最初の半年間は菊田が「人々の戦争体験を主題に」シリアスタッチで描いていたため、あまり人気はなかった[1]。当初は、東京・佐渡・志摩半島に住む家族を並行する社会派ラジオドラマを目指していた。真知子と春樹との恋愛にドラマが集中し始め、初めて人気番組となった[1]。「番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消える」といわれるほどであったという[2]。このエピソードは松竹の宣伝による虚構だという説もあるが、『宣伝・ここに妙手あり』(田中純一郎、1958年)では監督の夫人の森川まさみの発言がもとだとしており、『松竹の内幕』(横溝竜彦、1957年)では松竹の重役が考えたとしているなど、記述によって説がバラバラであり、これ自体が根も葉もない噂である可能性は否定できない。
ラジオドラマの人気を受けて1952年から菊田による小説版が新聞連載ののち宝文館から出版され[3]、菊田にとって初の出版におけるベストセラーとなった[4]。1953年には松竹で映画化されると大ヒットを記録し、氏家真知子のストールの巻き方が「真知子巻き」と呼ばれて女性の間で流行した。これは、主演の岸惠子が北海道でロケの合間に現地の寒さをしのごうと、神奈川県横浜市中区の馬車道界隈の店で購入して持参していた私物のストールを肩から一周させ、耳や頭をくるんでいたことによるとされる。この姿はカメラが回っている時にも使われることになり、「真知子巻き」が誕生した。真知子と春樹が出会い、再会した数寄屋橋のシーンでしていたというのは間違いである。ただし、第一部の冒頭、佐渡に渡る船上でも真知子は「真知子巻き」に類したストールの巻き方をしている。
真知子と春樹が再会しそうになる(半年ごとの数寄屋橋での待ち合わせなど)が、不都合が起きてなかなか会うことができない。この「会えそうで会えない」という事態が何度も繰り返された。これは後の恋愛ドラマでもよく見られる描写(演出)であり、本作はこのパターンの典型にして古典となっている。
2020年の連続テレビ小説『エール』でも劇中劇として使われた。劇中では真知子役は恒松あゆみ、春樹役は三木眞一郎、アナウンサー(語り部)役は尾田木美衣が務めた。
あらすじ
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
第二次大戦、東京大空襲[注釈 1]の夜。焼夷弾が降り注ぐ中、たまたま一緒になった見知らぬ男女、氏家真知子と後宮春樹は助け合って戦火の中を逃げ惑ううちに、命からがら銀座の数寄屋橋までたどり着く。一夜が明けて、二人はここでようやくお互いの無事を確認する。
お互いに生きていたら、半年後の11月24日、この橋で会おうと約束し、お互いの名も知らぬまま別れた。やがて、二人は戦後の渦に巻き込まれ、お互いに数寄屋橋で相手を待つも再会が叶わず、1年半後の3度目にやっと会えた時は真知子は、既に明日嫁に行くという身であった。しかし、夫との生活に悩む真知子、そんな彼女を気にかける春樹、二人をめぐるさまざまな人々の間で、運命はさらなる展開を迎えていく。
NHKラジオ連続放送劇
放送期間は、1952年(昭和27年)4月10日から1954年(昭和29年)4月8日。毎週木曜20時30分から21時までの30分放送。全98回。
番組の冒頭で「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」という加藤幸子[]の、1953年(昭和28年)1月からは(鎌田彌恵)の「忘れ得ぬ人とは遠き人を云うなり。人は常に忘れ得ぬ人を忘れよと云う」というナレーションが流れた。また、当時のラジオドラマは生放送だったため、劇中のBGMは音楽担当の古関裕而がスタジオにハモンドオルガンを持ち込み毎回即興で演奏していた。さらに、当初は4クールの予定だったが2年間のロングランとなった。
1953年12月、1954年1月に行った冬季の聴取率調査では、『君の名は』は関東地区で59パーセントと、全番組の中でベスト2位の結果になっている[5]。なお、出演者である臼井正明と七尾伶子はこの作品をきっかけに結婚した。仲人は菊田一夫である[6]。
キャスト
- 後宮春樹:北沢彪
- 氏家真知子:阿里道子
- 加瀬田修造:古川ロッパ
- 後宮悠起枝:夏川静江
- 浜口勝則:臼井正明
- 綾:七尾伶子
- (日高ゆりえ)、村瀬幸子、荒木玉枝、巌金四郎、小山源喜、山田清、加藤道子、来宮良子
スタッフ
- 作:菊田一夫
- 演出:(近江浩一)・(湯浅辰馬)
- 音楽:古関裕而
主題歌
本作の詞・曲は著作権の保護期間中のため、日本国著作権法第32条および米国著作権法第107条によりフェアユースと認められる形式の引用を除き、Wikipediaへの掲載は著作権侵害となります。また、演奏などの著作隣接権についても注意ください。 歌詞全文は(Template:歌ネット)や(Template:Genius song)を使用した外部リンクにより合法的な参照が可能です。 |
映画とレコードは織井茂子によって吹き込まれている。
ラジオ復刻版
NHK放送開始80周年記念特別番組『もっと身近に もっと世界へ NHK80』(2005年3月19日から22日)の一環として、「復刻ラジオドラマ」としてNHKラジオ第1放送で放送された。放送日時は19日から21日の連日21時5分ごろから21時55分(JST)。NHKのライブラリーに保管されている音源や台本を参考にしている。
出演は田中美里、萩原聖人他。ナレーションは、映画版で主人公の氏家真知子を演じた岸恵子が担当した。
NHK総合テレビでは、「君の名は&冬のソナタ 今夜純愛をあなたに…」の特集を組み、その中でラジオドラマの収録風景を放送している。放送日は3月20日(JST)。司会は小野文惠アナウンサー。
映画
君の名は | |
---|---|
監督 | 大庭秀雄 |
脚本 | 柳井隆雄 |
原作 | 菊田一夫 |
音楽 | 古関裕而 |
主題歌 | 「君の名は」 「君、いとしき人よ」 |
撮影 | 斎藤毅 |
編集 | 杉原よ志 |
製作会社 | 松竹 |
配給 | 松竹 |
公開 | 1953年9月15日[7] |
上映時間 | 127分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 2億5047万円[8] |
次作 | 君の名は 第二部 |
全3部。大ヒットし、通し上映では6時間を超えることから総集編も製作された。3部作の総観客動員数は約3,000万人(1作平均1,000万人)である。
君の名は(第一部)
1953年9月15日公開。2億5047万円の配給収入をあげ、1953年度の配給収入ランキング第2位(1位は同名第二部)。
冒頭のタイトル表記には「第一部」の字はなく、最後に「君の名は 㐧一篇 終」と表示される。
特殊撮影を担当した円谷英二は、公職追放解除を受け前年に東宝へ復帰しており、書籍『円谷英二特撮世界』では本作品は東宝復帰前に受注したものと推測している[7]。
キャスト(第一部)
- 氏家真知子:岸惠子
- 後宮春樹:佐田啓二
- 石川綾:淡島千景
- 後宮悠起枝:月丘夢路
- 浜口勝則:川喜多雄二
- 梢:小林トシ子
- あさ:野添ひとみ
- 奈美:淡路恵子
- 加瀬田修造:笠智衆
- 浜口徳枝:市川春代
- 信枝:望月優子
- 水沢謙吾:須賀不二男
- 勘次:市川小太夫
- 本間:伊澤一郎
- 横山:三井弘次
- 社長:北龍二
- (植芙左子)
- (水上令子)
- (本橋和子)
- 小林十九二
- (小藤田正二)
- 詩・朗読:阿里道子(NHK)
- (遠山文雄)
- (谷崎純)
- 永井達郎
- (髙木信夫)
- (井上正彦)
- (稲川忠完)
- (髙瀬乗二)
- (大杉陽一)
- (二宮照子)
- (音羽久子)
スタッフ(第一部)
- 原作:菊田一夫
- 監督:大庭秀雄
- 脚本:柳井隆雄
- 音楽:古関裕而
- 主題歌:「君の名は」「君、いとしき人よ」
- 製作:(山口松三郎)
- 撮影:(斎藤毅)
- 美術:(熊谷正雄)
- 録音:(小尾幸魚)
- 照明:(磯野春雄)
- 特殊撮影:川上景司、円谷英二
- 装置:(関根正平)
- 装飾:(星野武)
- 衣装:(五島サエ子)
- 現像:(神田亀太郎)
- 編集:(杉原正志)
- 監督助手:(尾崎甫)
- 撮影助手:(柳澤春雄)
- 録音助手:(栗田周十郎)
- 証明助手:(大西作蔵)
- 録音技術:(宇佐美駿)
- 進行:(新井勝次)
協賛(第一部)
君の名は(第二部)
君の名は 第二部 | |
---|---|
監督 | 大庭秀雄 |
脚本 | 柳井隆雄 |
原作 | 菊田一夫 |
音楽 | 古関裕而 |
主題歌 | 「花のいのちは」 「黒百合の歌」 |
撮影 | 斎藤毅 |
編集 | 杉原よ志 |
製作会社 | 松竹 |
配給 | 松竹 |
公開 | 1953年12月1日 |
上映時間 | 120分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 3億0002万円[8] |
前作 | 君の名は 第一部 |
次作 | 君の名は 第三部 |
1953年12月1日公開。3億2万円の配給収入をあげ、1953年度の配給収入ランキング第1位。
キャスト(第二部)
- 浜口真知子:岸惠子
- 後宮春樹:佐田啓二
- 石川綾:淡島千景
- 後宮悠起枝:月丘夢路
- 浜口[注釈 2]勝則:川喜多雄二
- 梢:小林トシ子
- アイヌの娘 ユミ:北原三枝
- 加瀬田修造:笠智衆
- 仁科:日守新一
- 永橋局長:柳永二郎
- 浜口[注釈 2]徳枝:市川春代
- 信枝:望月優子
- 奈美:淡路恵子
- あさ:野添ひとみ
- 横山:三井弘次
- 勘次:市川小太夫
- 水沢謙吾[注釈 3]:須賀不二男
- 末長:磯野秋雄
- ユミの母:(林喜美枝)
- サロム:(岸本公夫)
- 横山の乾分:桂小金治、(諸角啓二郎)
- 北海道の巡査:(土紀就一)
- 春日の女中:(植芙左子)、(東遥子)
- 宿屋の女中:(谷川浩子)
- 看護婦:(志賀直津子)
- 駅員:(髙瀬乗二)
- 唄:(高柳二葉)
スタッフ(第二部)
- 原作:菊田一夫
- 監督:大庭秀雄
- 脚本:柳井隆雄
- 音楽:古関裕而
- 主題歌:「花のいのちは」「黒百合の歌」
- 製作:山口松三郎
- 撮影:斎藤毅
- 美術:(濱田辰雄)
- 録音:大村三郎[]
- 照明:磯野春雄
- 装置:関根正平
- 装飾:(山崎鉄治)
- 衣装:五島サエ子
- 現像:神田亀太郎
- 編集:(杉原与志)
- 監督助手:尾崎甫
- 撮影助手:柳澤春雄
- 録音助手:栗田周十郎
- 証明助手:(市村政二郎)
- 録音技術:(堀川修造)
- 進行:新井勝次
協賛(第二部)
- 北海道美幌町
- 美幌町観光協会
- 北見バス株式会社(北海道北見バスの前身企業)
- 弟子屈温泉観光協会
- 茨城県観光課
- 水郷潮来観光協会
- 水郷観光交通株式会社
- 鹿島参宮鉄道株式会社
- 撮影地:北海道美幌町・弟子屈町
君の名は(第三部)
君の名は 第三部 | |
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監督 | 大庭秀雄 |
脚本 | 柳井隆雄 |
原作 | 菊田一夫 |
音楽 | 古関裕而 |
主題歌 | 「君は遥かな」 「忘れ得ぬ人」 「数寄屋橋エレジー」 「綾の歌」 |
撮影 | 斎藤毅 |
編集 | 杉原よ志 |
製作会社 | 松竹 |
配給 | 松竹 |
公開 | 1954年4月27日 |
上映時間 | 124分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 3億3015万円[9] |
前作 | 君の名は 第二部 |
1954年4月27日公開。3億3015万円の配給収入をあげ、1954年度の配給収入ランキング第1位。松竹は1954年度のゴールデンウィークに本作で勝負をかけたが、ライバルの東宝は『七人の侍』(4月26日公開)を公開している。
キャスト(第三部)
- 浜口真知子:岸惠子
- 後宮春樹:佐田啓二
- 石川綾:淡島千景
- 仁科悠起枝:月丘夢路
- 浜口勝則:川喜多雄二
- 梢:小林トシ子
- 清宮美子:(紙京子)
- 野島八郎:三橋達也
- 加瀬田修造:笠智衆
- 永橋局長:柳永二郎
- 副島渡:大坂志郎
- 浜口徳枝:市川春代
- 信枝:望月優子
- あさ:野添ひとみ
- 末長:磯野秋雄
- 丸岡調停員:(森川まさみ)
- 編集長:清水一郎
- 榊原弁護士:(山路義人)
- 郡山調停員:近衛敏明
- 家庭裁判所判事:奈良真養
- 裁判長:(長尾敏之助)
- 俊樹:(大田良志)
- 歌:高柳二葉
- 詩朗読・解説:(鎌田弥恵)(NHK放送劇団)
- 雲仙ホテル支配人:(竹田法一)
- メイド:(高友子)
- 事務員:東遥子
- 看護婦:大塚君代
- 東京のホテルボーイ:川村禾門
- 浜口家女中:(御室蘭子)
- 自転車の男:(手代木國男)
- 病院の看護婦:(文谷千代子)、(山本多美)
- 雑誌記者:(渡規子)
- 仁科の娘:(大野佳世子)
スタッフ(第三部)
- 原作:菊田一夫
- 監督:大庭秀雄
- 脚本:柳井隆雄
- 音楽:古関裕而
- 主題歌:「君は遥かな」「忘れ得ぬ人」「数寄屋橋エレジー」「綾の歌」
- 製作:山口松三郎
- 撮影:斎藤毅
- 美術:濱田辰雄
- 録音:(妹尾芳三郎)
- 照明:磯野春雄
- 装置:関根正平
- 装飾:山崎鉄治
- 衣装:(細井真佐江)
- 現像:神田亀太郎
- 編集:(杉原よ志)
- 監督助手:(萩原徳三)
- 撮影助手:柳澤春雄
- 録音助手:栗田周十郎
- 証明助手:市村政次郎
- 録音技術:(沼上精一)
- 進行:新井勝次
協賛(第三部)
- 長崎県観光課
- 長崎県雲仙温泉組合
- 島原鉄道株式会社
- 九州商船株式会社
- 島原市 「君の名は」撮影協力会
- 熊本県観光課
- 九州産業交通株式会社
- 阿蘇内牧町観光課
- 北海道美幌町
- 富士航空株式会社
- 撮影地:長崎県雲仙温泉
主題歌・挿入歌
舞台
(宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧)を参照。
テレビドラマ
テレビでは4度ドラマ化されている。
1962年版
1962年10月2日から1963年10月13日まで、フジテレビ系列で放映。放送時間は火曜21:00 - 21:30だったが、1963年4月14日以降は日曜20:30 - 21:00に変更された。
フジテレビ系 火曜21時台前半枠 | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
君の名は (1962年10月 - 1963年4月) | プロ野球中継枠 (20:00 - 21:30) | |
フジテレビ系 日曜20時台後半枠 | ||
平凡 歌のバースデーショー (第1期) | 君の名は (1963年4月 - 10月) | (パパ大好き) |
1966年版
1966年5月23日から1967年1月28日まで、日本テレビ系列の毎週月曜 - 土曜の13:00 - 13:15の時間枠で放映。全216回。
- 出演:伊藤孝雄、萩玲子、有沢正子、池田忠夫、折原啓子、南佐斗子、田浦正巳、二瓶秀雄など
- 脚本:岩井基成、柳川創造
- 撮影地:北海道、浅虫温泉(青森県)、佐渡島(新潟県)、水上温泉(群馬県)、熱川温泉(静岡県)、白浜温泉(和歌山県)
日本テレビ系 月 - 土曜13:00 - 13:15 枠 | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
君の名は | (有料道路) |
1976年版
1976年10月1日から12月24日まで、NETテレビ(現・テレビ朝日)系列の毎週金曜21時枠で放映。全13回。
1991年版(NHK連続テレビ小説)
連続テレビ小説 | ||
第-作 | 題名 | 放映期間 |
45 | 京、ふたり | 1990年10月1日 - 1991年3月30日 |
46 | 君の名は | 1991年4月1日 - 1992年4月4日 |
47 | おんなは度胸 | 1992年4月6日 - 10月3日 |
君の名は | |
---|---|
ジャンル | テレビドラマ |
脚本 | 井沢満 ほか |
演出 | 原嶋邦明 ほか |
出演者 | 鈴木京香 倉田てつを 布施博 田中好子 平田満 宍戸開 古舘伊知郎 村田雄浩 高品格 中原ひとみ 加藤武 佐々木すみ江 宍戸錠 蟹江敬三 金田龍之介 佐藤友美 樹木希林 橋爪功 加藤治子 いしだあゆみ |
ナレーター | 八千草薫 |
音楽 | 池辺晋一郎 |
オープニング | 石川さゆり「君の名は」 |
時代設定 | 昭和20年 - 30年 |
製作 | |
制作 | NHK |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 1991年4月1日 - 1992年4月4日 |
放送時間 | 月曜日 - 土曜日 8:15 - 8:30 |
放送枠 | 連続テレビ小説 |
放送分 | 15分 |
回数 | 全312[10] |
番組年表 | |
前作 | 京、ふたり |
1991年(平成3年)4月1日から1992年(平成4年)4月4日まで、NHK連続テレビ小説30周年記念作品(第46作)として放送された。連続テレビ小説では、1983年(昭和58年)度の『おしん』以来の1年間放送[11][12][13]。
解説
年々視聴率が下降を続けていた連続テレビ小説のテコ入れとして、1975年以前の原点に戻り放送期間を1年間とした。千葉県野田市に1億円をかけ数寄屋橋のオープンセットを造る[12]など、異例の予算が組まれた。原作は一世を風靡した作品であったため前評判は大変高く、視聴率が50%を超えるのではないかともいわれていた。
しかしながら、最高視聴率34.6%、期間平均視聴率29.1%(1991年 - 1992年の記録。関東地区、ビデオリサーチ調べ)[14]とも、本ドラマ終了時点での当時の歴代最低を記録した。
あまりの低視聴率に放送途中に前例のない改変が行われ副題タイトルの挿入、オープニングテーマを曲調を明るいものに変更、ストーリーも暗さをなくすなどテコ入れを行ったが視聴率は改善することはなかった。
朝ドラの主な舞台地としては、新潟県が主な舞台地になった最初の朝ドラとなった。他に三重県と北海道が主な舞台地になるのは、前者は『おしん』以来、後者は1987年(昭和62年)度前期の『チョッちゃん』以来4年ぶりで、どちらも平成初となった[15]。
なお、第五部の舞台は、長崎県島原市の予定だったが、(雲仙普賢岳)の噴火により中止となり、舞台は、静岡県西伊豆に変更された。
完全版・総集編共にDVDは未発売。
放送ライブラリーでは第1回が公開[16]。
2022年(令和4年)現在、三重県が主な舞台地になった作品はこれよりなく、近畿地方では最も新作舞台から遠ざかりかつ、半年体制の作品は1本も制作されていない[17]。
構成
- 第一部:第1 - 12週(第1 - 72回)[注釈 4]
- 第二部:「結婚編」:第13 - 19週(第73 - 114回)
- 第三部:「旅立ち・北海道編」:第20 - 25週(第115 - 150回)
- 第四部:「愛ふたたび・志摩編」:第26 - 34週(第151 - 204回)
- 第五部:「愛のゆくえ・対決編」:第35 - 39週(第205 - 234回)
- 第六部:「それからの二人・夫婦編」:第40 - 52週(第235 - 312回)
キャスト(1991年版)
東京(浜口家)
その他 東京の住人
- 小野瀬綾
- 演 - いしだあゆみ
- 真知子・春樹の友人。佐渡出身。
- 本間定彦
- 演 - 古舘伊知郎
- 真知子・春樹の友人。佐渡出身。北国文学天天教の布教師。
- 美村蘭子
- 演 - 佐藤友美
- 夜の女。
- 美村礼治
- 演 - 小坂一也
- 蘭子の夫。戦争によって記憶喪失になる。
- 美村千枝子
- 演 - (川田美香)(幼少期:(小川京子))
- 美村夫妻の娘。戦争によって行方不明になる。志摩内野家での名は里子。
- あさ
- 演 - 伊藤嘉奈子
- 夜の女。
- 石上梢
- 演 - 河合美智子
- 夜の女。
- 加瀬田修造
- 演 - 橋爪功
- 元陸軍少将。
- 加瀬田岸枝
- 演 - 中原ひとみ
- 修造の妻。曙荘の管理人。
- 加瀬田和子
- 演 - 羽田美智子
- 加瀬田夫妻の娘。
- 田上うらら子
- 演 - 益田愛子
- 天天教の教祖。
- 富士子
- 演 - うえだ峻
- 天天教の信者。おかま。
- 岩間(副島)伝次
- 演 - 宍戸開
- 闇市でならしたヤクザ。
- マリー
- 演 - 伊佐山ひろ子
- 夜の女・蘭子のライバル。
- 永橋
- 演 - 加藤武
- 勝則の上司。
- 永橋清子
- 演 - 高田敏江
- 永橋の妻。
- 深野柳子
- 演 - 樹木希林
- 下町の長家の大家。
- 叶哲司
- 演 - でんでん
- 長屋の住人、畳屋。
- 住職
- 演 - 鈴木清順
- 真知子・春樹の結婚式を行う寺の住職。
- 多比良良作
- 演 - 蟹江敬三
- 定彦の仕事仲間。税務署職員。
- 木村吾郎
- 演 - (八百坂圭祐)→大沢樹生(当時:光GENJI)
- 大学受験生。下宿し勉強中。
- 真知子の父
- 演 - 冨田浩太郎
- 東京大空襲で死去。勘次の弟。
- 真知子の母
- 演 - (泉よし子)
- 東京大空襲で死去。
清宮家(東京)
北海道 美幌・弟子屈
- 末永保
- 演 - 村田雄浩
- 春樹の大学の先輩。
- 牧子
- 演 - 塚田きよみ
- 末永の妻。
- 松吉
- 演 - 高品格
- 末永の先代から牧場で働いている。
- ユミ
- 演 - 松永麗子
- 春樹を好きになった女。
- 三郎
- 演 - 土門廣
- 牧場で働いている男。
新潟・佐渡
- 野添絹子
- 演 - 早乙女愛
- 定彦の友人。勘次の不倫相手。
- 角倉勘次
- 演 - 宍戸錠
- 真知子の叔父。角勘の主。
- 角倉信枝
- 演 - 佐々木すみ江
- 真知子の叔母・角勘の女将。
- 米夫
- 演 - 井上康
- 角勘の従業員。
- 捨松
- 演 - 中野英雄
- 角勘の従業員。
- スミ代
- 演 - (山家千花)
- 捨松の妻。
- 忠公
- 演 - 三井善忠
- 角勘の従業員。
三重県・志摩
- 西崎(→後宮→水沢)悠起枝
- 演 - 田中好子
- 春樹の姉。
- 水沢謙吾
- 演 - 平田満
- 悠起枝の友人。
- 戸村(→水沢)奈美
- 演 - 杉本彩
- 海女。謙吾の妻。後に行方不明になる。
- 水沢フサ
- 演 - 小林トシ江
- 謙吾の母。
- 西崎
- 演 - 森山周一郎
- 悠起枝の義父。
- 長島龍伍
- 演 - 鶴田忍
- 密輸組織のボス。
- 善吉
- 演 - 横山あきお
- 長島の溜り酒場店主。
- 海渡琴乃
- 演 - 伊藤友乃
- 志摩で店を営む。
- 西野彰一
- 演 - (柾木卓)
- 里子の義父。
- 西野珠子
- 演 - (内田藍子)
- 里子の義母。長島龍伍の姉。
- 草薙
- 演 - (岡部雅郎)
- 小学校校長。住職。
- 柴山晴男
- 演 - 伊沢勉
- 小学校教諭。
- 前野
- 演 - 小澤寛
- 元長島の手下。
愛知・名古屋
- 尾田登美子
- 演 - 山田昌
- 那古野旅館の女将。
- 天馬徹太郎
- 演 - 金田龍之介
- 浪漫タイムス編集長。
- 菅谷三千代
- 演 - (たかべしげこ)
- 天馬の元妻。
- 菅谷博史
- 演 - 美木良介
- 三千代と天馬の子。現在は巣鴨留置所で生活。
その他
- きし子
- 演 - 安達祐実
- 浜口家の前で遊ぶ女の子。
- 美代子
- 演 - 星野真理
- 春樹が列車の中で出会った女の子。
- 数寄屋橋の警官
- 演 - きたろう
- その他
- 演 - 常松めぐみ、佐々木菜摘、松澤重雄、(大倉順憲)、二見忠男、今西正男、久ヶ沢徹、大島蓉子、田根楽子、(岡田俊博)、にしだまちこ、春延朋也、金沢きくこ、恩田恵美子、劇団ひまわり、(劇団いろは)、劇団東俳、劇団若草、ジャパンアクションクラブ、若駒、東京児童劇団、(早川プロ)、(鳳プロ)、悪役商会、丹波道場 ほか
スタッフ(1991年版)
- 原作 - 菊田一夫[13][16]
- 脚本 - 井沢満[16]、横光晃、宮村優子、星川泰子、小林政広
- 音楽 - 池辺晋一郎[13][16]
- 演奏 - 東京コンサーツ
- 主題歌 - 君の名は
- 作詞 - 菊田一夫 作曲 - 古関裕而 歌 - 石川さゆり
- 挿入歌 - 黒百合の歌
- 作詞 - 菊田一夫 作曲 - 古関裕而 歌 - 藤野ひろ子
- 語り - 八千草薫[13][16]
- 副音声解説 - 関根信昭
- 題字 - 篠田桃紅
- 考証 - 松平誠
- 考証協力 - 天野隆子
- アイヌ民俗関連監修 - 萱野茂
- 所作指導 - 鈴木宗卓
- 医事指導 - 雨宮昭
- 方言指導 - 佐渡稔、山國成男、谷津勲、山中篤、岡部雅郎
- 撮影協力 - 三重県志摩郡阿児町、千葉県野田市、新潟県佐渡、静岡県西伊豆、北海道美幌町、同弟子屈町
- 制作 - 石井愼[16]、松本守正
- 美術 - 藤井俊樹、岡本忠士、矢野隆士
- 技術 - 沖中正悦、渡部浩和、原滋
- 音響効果 - 田中正男、太田岳二、矢島清[16]
- 撮影 - 中村和夫、川崎一彦、安田熙男[16]
- 音声 - 篠根正継[16]、谷島一樹
- 照明 - 大地祥嗣、高橋伴幸
- 記録・編集 - 田中美砂、高室晃三郎、岡部敦子、上田裕里子
- 演出 - 原嶋邦明、宮沢俊樹、伊豫田静弘、諏訪部章夫、長沖渉、一井久司、吉川幸司、松本順、三井智一、若泉久朗、吉田雅夫、林可奈子
エピソード
参考文献
脚注
注釈
出典
- ^ a b 小幡欣治『評伝 菊田一夫』(岩波書店)P.175
- ^ 『NHK年鑑 1955〔年版〕』日本放送出版協会、1954、124頁。
- ^ 君の名は : NHK連続放送劇NHKラジオ新聞連載国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ 『学校図書館』1955年8月号、52-53頁。(NDLJP):10292650/33
- ^ 『NHK年鑑 1955〔年版〕』日本放送出版協会、1954、297頁。
- ^ 『婦人生活 8(3)』婦人生活社、1954年3月、138-142頁。
- ^ a b 円谷英二特撮世界 2001, pp. 26–27, 「初期作品紹介 1950-53年」
- ^ a b 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2012年5月、104頁。ISBN (978-4873767550)。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2012年5月、112頁。ISBN (978-4873767550)。
- ^ NHKクロニクル
- ^ 「NHKトピックス」『放送教育』第46巻第1号、日本放送教育協会、1991年4月1日、83頁、(NDLJP):2341112/42。
- ^ a b 「『君の名は』の制作 / 渡部浩和 ; 中村和夫 ; 中山鎮雄 ; 佐藤勝彦」『映画テレビ技術 = The motion picture & TV engineering』第467号、日本映画テレビ技術協会、1991年7月1日、24 - 29頁、(NDLJP):4433248/20。
- ^ a b c d 日本放送協会放送文化研究所 放送情報調査部 編『NHK年鑑'92』日本放送出版協会、1992年10月9日、155頁。ISBN (978-4-1400-7172-4)。
- ^ ビデオリサーチ NHK朝の連続テレビ小説【関東地区】より。
- ^ 「NHK放送史『朝ドラ100』」の「ご当地マップ『北海道』、『新潟』、『三重』、」を参照。
- ^ a b c d e f g h i 放送ライブラリー program番号:177859
- ^ 「NHK放送史『朝ドラ100』」の「ご当地マップ」を参照。
- ^ 鈴木京香 - NHK人物録