ミ・テレフェリコ(西: Mi Teleférico)は、ボリビアのラパスおよびその近郊都市のエル・アルトを結び、同名の国営企業が運営する都市型ロープウェイである[1]。交通渋滞解消を目的とした都市交通として2014年に開業し、2019年3月時点では10路線、合計30.2キロメートルが開業している世界最長の都市ロープウェイ路線網である。
歴史
両都市を合わせると100万人を超える人口を持つラパス都市圏だが、アンデス山脈の中の谷に位置するラパスは標高3,600メートル以上、その西側の山すそにあるエル・アルトは標高4,100メートルの超高地にあり、その高低差もあって地下鉄建設は困難だった。従来は貧弱なバスおよびミニバスの路線網が両都市を結んでいたが、その抜本改善策としてロープウェイの整備計画が1970年代からたびたび提言されていたが、ミニバス運転手の生活や住民プライバシーの保護などを理由にその都度棚上げされてきた。
2012年7月、ボリビア大統領のエボ・モラレスは2都市間のロープウェイ整備計画を議会に送った。大統領は両市長やこの地域を含むラパス県の責任者に同計画への協力を求め、ボリビア中央銀行の保証を受けた国費により1期線の3路線がオーストリアとスイスに本社を持つ世界最大の索道メーカー、ドッペルマイヤー・ガラベンタ・グループによって総工費は2億3,400万ドルで建設される事になった。2014年5月30日、最初の開業路線としてLínea Roja(赤色線)が開業し、次いで9月にLínea Amarilla(黄色線)、12月にLínea Verde(緑色線)が開業して、「ミ・テレフェリコ」(スペイン語で「私のロープウェイ」)と名付けられた3路線が揃った[1]。
この整備効果は大きく、慢性的な交通渋滞に悩まされてきた都市内および都市間の移動を潤滑化し[2]、同時に「アンデス山脈を望める世界最高地点の都市ロープウェイ」としてボリビアの新たな観光名所ともなった。これを受けて2015年、モラレス大統領の指示により2期線として新たに8路線の整備が決定され[3]、2019年3月までに7路線が開業して「世界最大の都市ロープウェイ路線網」が誕生した。残る区間のうち、1路線は同年11月のモラレス大統領辞任・亡命後の2020年に開業予定となっている。
路線
上記の通り、2019年3月時点で10路線、合計30.2キロメートルが開業している。2020年にはさらに新規1路線2.2キロメートルが開業し、2期線完成時の路線延長は33.8キロメートルに拡大する予定である。
1期線はLínea Roja(赤線)、Línea Amarilla(黄線)、Línea Verde(緑線)の3路線、合計10.0キロメートルからなる。その筆頭として2014年5月に開業した Línea Roja はラパス中心部とエル・アルトの間の2.4キロメートルを途中駅1つ、所要時間を10分[3]で結び、従来は自動車で30分以上かかっていた両市間の公共交通機関では大幅な移動時間短縮を実現した[1]。
2017年以降は2期線の開業が続き、2019年3月10日には Línea Plateada(銀色線)の開業により6路線でつなぐラパス市内の循環ルートが完成した。2期線で残されたのは Línea Café(茶色線)の延伸区間と Línea Dorada(金色線)の1期区間で、Línea Dorada の1期区間は2020年に開業予定とされている。
各路線のゴンドラの最大定員は10人[1]で、1時間当たり各路線片道3,000人(一部は4,000人ないし2,000人)の輸送能力がある[3]。標高4,000メートル近くというロープウェイとしては世界一の高所を走る路線であり[1]、総延長も都市交通としてのロープウェイの中では世界最長である[2]。2014年の1期線3路線開業時には1日あたりの全線輸送人員が8 - 9万人とされ、総延長で1期線の2倍を超える2期線着工への根拠となった。
路線一覧
線名 (日本語) | 区間(スペイン語駅名) | キロ数 | 所要時間 | 駅数 | ゴンドラ数 | 片道輸送力 (人/時間) | 平均秒速 | 支柱数 | 開業年月日 |
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Línea Roja (赤色線) | Estación Central – 16 de Julio | 2.4km | 10分 | 3 | 109 | 3,000 | 5 m/s | 19 | 2014/05/30 |
Línea Amarilla (黄色線) | Del Libertador – Mirador | 3.9km | 13.5分 | 4 | 169 | 3,000 | 5 m/s | 31 | 2014/09/15 |
Línea Verde (緑色線) | Irpavi – Del Libertador | 3.7km | 16.6分 | 4 | 165 | 3,000 | 5 m/s | 27 | 2014/12/04 |
Línea Azul (青色線) | 16 de Julio – Rio Seco | 4.7km | 17分[4] | 5 | 208 | 3,000 | 5 m/s | 38 | 2017/05/03 |
Línea Naranja (橙色線) | Estación Central – Héroes de la Revolución | 2.6km | 10分 | 4 | 127 | 3,000 | 5 m/s | 26 | 2017/09/29 |
Línea Blanca (白色線) | Héroes de la Revolución – Avenida Poeta | 2.9km | 13.1分 | 4 | 131 | 3,000 | 5 m/s | 26 | 2018/05/24 |
Línea Celeste (水色線) | Camacho – Del Libertador | 2.6km | 11.8分 | 4 | 155 | 4,000 | 6 m/s | 26 | 1期:2018/05/24 全線:2018/07/14 |
Línea Morada (紫色線) | Avenida 6 de Marzo – Edificio Correos | 4.3km | 16.2分 | 3 | 190 | 4,000 | 6 m/s | 34 | 2018/09/28 |
Línea Café (茶色線) | 1期:Monumento a Busch – Las Villas 延伸:Las Villas - Pampahasi | 0.7km | 3.8分 | 2 | 27 | 2000 | 5 m/s | 7 | 1期:2018/12/20 全線:****/**/** |
Línea Plateada (銀色線) | 16 de Julio – Mirador | 2.6km | 11.7分 | 3 | 117 | 3,000 | 5 m/s | 21 | 2019/03/09 |
Línea Dorada (金色線) | 1期:Irpavi – UMSA 計画:UMSA - Chasquipampa | 2.2km | 7.6分 | 3 | 106 | 3,000 | 5 m/s | 1期:2020/**/** | |
合計 | 11路線(うち開業済10路線) | 33.8km | 40 |
※ Línea Café(茶色線)と Línea Dorada(金色線)のデータは1期区間のみ。Línea Café の延伸区間は1.4キロメートル。
平均秒速5メートルは時速換算で18.0キロメートル、平均秒速6メートルは同21.6キロメートル。
脚注
- ^ a b c d e “世界で一番高い場所にあるロープウエーが開業、ボリビア”. AFPBB. (2014年5月31日)2014年11月2日閲覧。
- ^ a b “ロープウエーが市民の足 高地ボリビアで交通渋滞を解消”. 朝日新聞デジタル. (2014年11月2日) 2014年11月2日閲覧。
- ^ a b c THE GONDOLAPROJECT(英語)
- ^ “Mira el recorrido de la Línea Azul de Mi Teleférico” [Watch a trip on Mi Teleférico's Blue Line]. La Razón (2017年3月4日). 2017年3月5日閲覧。
外部リンク
- 公式サイト(スペイン語)