ニタリクジラ(似鯨、学名:Balaenoptera brydei)は、クジラ目ヒゲクジラ亜目に属するヒゲクジラの一種。
分布
暖海性のクジラで、北緯40度と南緯40度の間の、水温20℃以上の海に広く分布する。なかには、回遊せずに、同じ海に定住している個体も存在する。日本においては、高知県沖の土佐湾に、定住する個体が存在する。
形態・生態
イワシクジラの近縁種であるが、吻(ふん)の上面の左右両側に吻端から鼻孔付近にかけて各1条の隆起線があること、畝(うね)が長く先端がへそに達していること、くじらひげが短くて幅が広いこと、ひげ毛が太いことなどで、外形的に区別される。体長もイワシクジラよりやや小さく、最大15.5メートル[1]ぐらいである。ニタリクジラはかつて南アフリカ沿岸にだけ生息するとされていたが、第二次世界大戦後、小笠原諸島周辺で発見され、北太平洋にも広く分布することが判明した。国際捕鯨委員会は1970年に捕鯨条約の付表を修正して、本種とイワシクジラを別種として扱うこととした。南アフリカ沿岸では沿岸型と遠洋型の二つの型があり、外形的にも生態的にも、若干の差が認められている。
本種が主食とする小魚はカツオなどの大型回遊魚の餌であり、本種のいる海域には大型回遊魚の群れがいる可能性も高くなる。また、カツオには鯨につく事でカジキから身を護るメリットがあり、本種や近縁のカツオクジラは1個体で一つの小さな生態系を形作る。こういった点から水産庁の加藤秀弘に共生関係が指摘されている(えびすの項も参照)。尚、これらの群れは「鯨付き」と呼ばれ、漁業の際には本種を探す事もある。
2019年7月の日本の商業捕鯨再開に際し、本種は捕獲対象となり、水産庁は年間捕獲枠を187頭と設定している[2]。他にミンククジラ・イワシクジラも捕獲対象となっているが、頭数・鯨体の大きさ・得られる肉の量から、当面日本で流通する鯨肉はニタリクジラ肉が中心となる。
近縁種との混同
元々イワシクジラと混同されていた為、分類されるまでは、イワシクジラとして捕鯨されていた。日本において前述のカツオと群れる習性からカツオクジラとも呼ばれ、その別名がついている(ただし、カツオクジラの和名は元々は混同されていたイワシクジラの別名であり、これは混同されていたBalaenoptera edeniの和名になった)。
新種のヒゲクジラ、ツノシマクジラも沿岸型ニタリクジラと似ており、それまでは混同されていたとみられている。他にツノシマクジラとともに従来ニタリクジラの東シナ海系群とされていたクジラもカツオクジラ Balaenoptera edeni もニタリクジラから分類する意見もある。(ツノシマクジラ#分類)も参照。
遺伝子解析の結果は、最も近縁なのがイワシクジラであり、次いでカツオクジラ、ツノシマクジラと遠くなる。またシロナガスクジラもこのグループと単系統を形成する。[3][4]
保全状態評価
- DATA DEFICIENT (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
- 水産庁版レッドデータブック -希少(東シナ海系統群)
脚注
参考文献
外部リンク
- ニタリクジラの捕獲動画を公開 31年ぶりの商業捕鯨 - YouTube(朝日新聞社提供、2019年7月4日公開)