タンジェ(ベルベル語: ⵜⵉⵏ ⵉⴳⴳⵉ Tin Iggi, アラビア語: طنجة ṭanǧah, フランス語: Tanger, スペイン語: Tánger タンヘル, ポルトガル語: Tânger タンジェル, 英語: Tangier)は、モロッコ北部にある都市。人口は、約95万人(2014年)。ジブラルタル海峡に面した港町で、スペインやジブラルタルなどから多くフェリーが行き来し、国際都市として栄えている。タンジールの表記も見られる。
歴史
フェニキア人によって設けられた交易拠点が起源となる。ローマ帝国(マウレタニア・ティンギタナ属州)、ヴァンダル王国、東ローマ帝国の支配を経てイスラム教勢力が征服した。キリスト教徒によるレコンキスタ(再征服運動)の進展にともない、1415年にはアフリカ北岸のセウタがポルトガル領に組み込まれ、タンジェも15世紀後半にはポルトガル領となった。17世紀後半、ポルトガル王女カタリナとイングランド王チャールズ2世の結婚による持参金代わりに一時的にイギリス領になってしまったが、その後モロッコのイスラーム王朝によって奪還した。
帝国主義の時代になると、モロッコがフランスとドイツの角逐の場となり、1905年にはフランスのモロッコ支配を阻止しようとするドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がタンジェに上陸した。このタンジェ事件(第一次モロッコ事件)は翌1906年のアルヘシラス会議で妥協が図られたが最終的な決着はつかず、1911年のアガディール事件(第二次モロッコ事件)を経て、モロッコはフランスにより保護国化され、タンジェは国際管理地域とされた。タンジェの国際管理化は第一次世界大戦での中断を経て、1923年12月18日のパリ会議でフランス、スペイン、イギリスの三国による条約が締結され、同年6月24日より開始された。後に条約にイタリア、ポルトガル、ベルギー、オランダ、アメリカ、ソビエト連邦も加入した。
第二次世界大戦勃発後の1940年6月14日、スペイン軍はタンジェに侵攻し、一方的併合を宣言した。しかし世界大戦終結から半月後の1945年8月31日、タンジェは国際管理地域に復帰した。1956年10月、条約加盟各国はタンジェの国際管理終結を決定。1956年12月31日をもって国際管理は終わり、タンジェはモロッコに復帰した。復帰に当たり、1960年4月18日までの期限付きで為替や貿易に関する特別措置が採られている。
地理
ジブラルタル海峡に臨む港湾都市である。
気候
タンジェ(イブン・バットゥータ国際空港) (1961年–1990年、極値 1961年–現在)の気候 | |||||||||||||
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月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
最高気温記録 °C (°F) | 22.0 (71.6) | 27.0 (80.6) | 25.0 (77) | 27.0 (80.6) | 34.0 (93.2) | 36.0 (96.8) | 41.0 (105.8) | 39.0 (102.2) | 39.5 (103.1) | 30.0 (86) | 27.0 (80.6) | 24.5 (76.1) | 41.0 (105.8) |
平均最高気温 °C (°F) | 16.2 (61.2) | 16.8 (62.2) | 17.9 (64.2) | 19.2 (66.6) | 21.9 (71.4) | 24.9 (76.8) | 28.3 (82.9) | 28.6 (83.5) | 27.3 (81.1) | 23.7 (74.7) | 19.6 (67.3) | 17.0 (62.6) | 21.8 (71.2) |
日平均気温 °C (°F) | 12.5 (54.5) | 13.1 (55.6) | 14.0 (57.2) | 15.2 (59.4) | 17.7 (63.9) | 20.6 (69.1) | 23.5 (74.3) | 23.9 (75) | 22.8 (73) | 19.7 (67.5) | 15.9 (60.6) | 13.3 (55.9) | 17.7 (63.9) |
平均最低気温 °C (°F) | 8.8 (47.8) | 9.4 (48.9) | 10.1 (50.2) | 11.2 (52.2) | 13.4 (56.1) | 16.2 (61.2) | 18.7 (65.7) | 19.1 (66.4) | 18.3 (64.9) | 15.6 (60.1) | 12.2 (54) | 9.7 (49.5) | 13.6 (56.5) |
最低気温記録 °C (°F) | −4.2 (24.4) | 1.0 (33.8) | 3.5 (38.3) | 1.0 (33.8) | 7.0 (44.6) | 10.0 (50) | 11.0 (51.8) | 11.0 (51.8) | 10.0 (50) | 7.0 (44.6) | 3.0 (37.4) | 4.0 (39.2) | −4.2 (24.4) |
降水量 mm (inch) | 103.5 (4.075) | 98.7 (3.886) | 71.8 (2.827) | 62.2 (2.449) | 37.3 (1.469) | 13.9 (0.547) | 2.1 (0.083) | 2.5 (0.098) | 14.9 (0.587) | 65.1 (2.563) | 134.6 (5.299) | 129.3 (5.091) | 735.9 (28.972) |
平均降水日数 | 11.2 | 11.4 | 10.1 | 9.3 | 6.1 | 3.7 | 0.8 | 0.8 | 3.1 | 8.0 | 11.1 | 12.0 | 87.6 |
% 湿度 | 80 | 81 | 78 | 78 | 76 | 74 | 70 | 72 | 73 | 76 | 79 | 81 | 76 |
平均月間日照時間 | 169.2 | 166.9 | 231.7 | 251.7 | 298.9 | 306.8 | 344.0 | 330.7 | 275.6 | 238.2 | 180.6 | 166.9 | 2,960.7 |
出典1:NOAA[1] | |||||||||||||
出典2:ドイツ気象局 (humidity, 1973–1993)[2] Meteo Climat (record highs and lows)[3] |
経済
交通
空港
南西15kmのところにはイブン・バットゥータ国際空港がある。
鉄道
市内南部にはONCFの鉄道駅(Tanger Ville駅)がある。
2018年11月18日には、北アフリカ最初の高速鉄道として、フランスのTGVを土台にしたタンジェ=カサブランカ高速鉄道がカサブランカとの間で開通している [4]。
フェリー
市内のフェリー乗り場からは、アルヘシラスなど向かうフェリーが出ている。
スポーツ
サッカー
タンジェをホームとするサッカークラブがある。
- Atletico Tanger
- Ittihad Tanger
タンジェ出身の著名人
施設
別荘地
多文化な国際都市であることから、1930年代ごろから著名人や富裕層が集まるリゾート地として人気を集め、ポール・ボウルズ、テネシー・ウィリアムズ、ウィリアム・バローズ、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアック、ローリングストーンズ、ジョージ・オーウェルといった文化人や、バーバラ・ハットンら世界のミリオネラーが別荘を所有し、滞在した。
姉妹都市
ギャラリー
中心街の広場
旧市街
関連項目
脚注
- ^ “Tangier Climate Normals 1961–1990”. National Oceanic and Atmospheric Administration. 2016年10月14日閲覧。
- ^ “Klimatafel von Tanger / Marokko” (German). Baseline climate means (1961–1990) from stations all over the world. Deutscher Wetterdienst. 2016年10月14日閲覧。
- ^ “Station Tangier Airport” (French). Météo Climat. 2016年10月14日閲覧。
- ^ “アフリカ初の高速鉄道LGV、モロッコで開通式”. 日本貿易振興機構 (2018年11月20日). 2023年3月12日閲覧。
外部リンク
- タンジール、コトバンク
- 『世界飛び地領土研究会』