WPS Officeは、中国のソフトウェア会社の金山軟件(Kingsoft Corporation)の子会社である金山弁公軟件(Kingsoft Office Software Corporation Limited)が開発、販売するオフィススイート製品である。日本では同社のジョイントベンチャーであるキングソフト株式会社が販売、サポートを行っている。WPSの名前は構成している各ソフトウェアの名称「Writer」「Presentation」「Spreadsheets」の頭文字に由来する[3]。
開発元 | 金山軟件 (Kingsoft) |
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初版 | 1989年 |
最新版 | |
対応OS | Windows, macOS, Android, iOS, Linux |
対応言語 | デスクトップ版:13言語 モバイル版:46言語 |
種別 | オフィススイート |
ライセンス | プロプライエタリ |
公式サイト | WPS (China) WPS Office (Global) |
開発元 | キングソフト |
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初版 | 2007年 |
最新版 | 11.8.2.8498 |
対応OS | Windows, macOS |
対応言語 | 日本語 |
種別 | オフィススイート |
ライセンス | プロプライエタリ |
公式サイト | WPS Office (キングソフト) |
かつてはKINGSOFT OfficeやKSOfficeなどと名乗っていたが、アメリカでは2014年に[4]、日本では2016年に[5]WPS Officeの名前へ順次統一されている。
構成ソフト
- WPS Writer:ワープロソフト
- WPS Presentation:プレゼンテーションソフト
- WPS Spreadsheets:表計算ソフト
- WPS PDF:PDFビューア
特徴
Microsoft Officeに類似したユーザインタフェースと操作性、Microsoft Officeとの高いファイル互換性が特徴である。
Microsoft Officeの廉価な完全コピー版ではなく、使用頻度が少ないと考えられた機能は省略され、一方、タブ式のファイル表示や「段落書式のアシスタント」機能など、オリジナル要素が付加されている。
Microsoft Officeと似ていることによる訴訟リスクについて、代表取締役の広沢一郎は、「特許違反については、マイクロソフトの特許を精査して、問題がないようにした。著作権についても、弁理士と相談し法的に問題がないであろうと考えている」と説明している[6]。
低価格であることも特徴の一つであり、安価なオフィススイートとしてBTOパソコンの選択肢に組み込まれたり、中古パソコンに付属していることもある[7]。
評価
日本全国の主要パソコン販売店のPOSデータから決めるBCN AWARDでは、オフィス統合ソフト部門で2010年から10年以上連続でマイクロソフトに次ぐ2位である[8]。キングソフトは独自集計として「オフィス互換ソフト1位」を自称している。
中国では、2000年と2008年に「国家科技進歩賞2等賞」を受賞している。さらに、2009年12月、2010年6月には中央企業調達リストに入選し、オフィスソフトの分野で史上初の2回入選を達成している[9]。
無償版
Kingsoft Office SoftwareのWebサイトでは個人で非営利目的にのみ利用できる多言語対応の無料版が提供されている[10]。広告が表示されるほか、一部機能が制限されている。当初は日本語は対応しておらず英語やスペイン語などに限られていたが、2021年3月からはWindows版に限り日本語にも対応している。
有償サブスクリプションを購入することにより、より多くの機能が利用でき、広告も非表示となる[11]
Windows版はMicrosoftストアからも無償でダウンロードできる[12]。Android、iOS、Linux にも対応している[13]。
トピック
アメリカにおける使用制限騒動
2021年1月5日、アメリカ大統領のドナルド・トランプは、安全保障上の懸念があるとして、WPS Officeを含む8つの中華系アプリをアメリカ国民が使用することを制限する大統領令に署名した[14]。商務省がこのあと45日以内に禁止対象となる内容を特定することになったが[15][16]、トランプ大統領の退任に伴い、事実上の棚上げとなる。
2021年6月5日、アメリカ大統領のジョー・バイデンは、この大統領令を撤回した[17][18]。
結果として、明確なリスクが示されることもなく特に利用を制限されることもなかったが、この一連の騒動で話題になったこともあり、同年には米国での売り上げを伸ばした。また、同年末に米国フォーチュン誌が発表した成長企業の格付け「Future 50」では本ソフトの開発元であるKingsoft Office Softwareが10位にランクインした[19]。
中国におけるオンライン共有ファイルの検閲
2022年6月、中国のアマチュア小説家のMituがWPS Officeで文書を作成しWPSのクラウドストレージ上に保存していたところ、「違法な情報が含まれているため開くことはできません」と通知され開けなくなったと主張した[20]。Mituは、このファイルは以前は他の編集者と共有していたが、ロックされたときはMituだけが編集できる状態だったと主張しているが、閲覧の権限を他者に与えていたかどうかについてはコメントをしていない。
2022年7月、金山弁公軟件は、中国のサイバーセキュリティ法では、インターネットで情報サービスを提供する事業者には提供されるコンテンツを確認する義務があることを改めて説明し、同社のクラウドストレージサービスも、同法に従い公開される文書等に法律や行政指導による規制で禁止された情報が含まれないか確認していることを説明した。これは不特定多数への公開に限らず、家族や友人など限られた人への共有でも同様である。一方で、ローカルに保存したファイルや、クラウドストレージ上に保存しても他者と共有していないファイルについては検閲は行われないことも公表した[20][21][22]。
なお、日本で提供されているクラウドサービス(WPS Cloud/WPS Cloud Pro)は日本のキングソフト株式会社が日本国内のデータセンターで運用しているものであり[23]、前述のサービスとは異なるものである。
歴史
1989年に中国でリリースされたワープロソフト「WPS1.0」がその起源である。その後機能を増やしオフィススイートに発展し、一時は中国国内で90%のシェアを占めるが、Windows 95の発売でデファクトスタンダードの地位をMicrosoft Officeに奪われ、シェアを10%にまで落とした。
起死回生の一手として2005年9月にリリースしたのがWPS Office2005である。あえてMicrosoft Officeに操作性を似せ、同一のファイル形式 (.doc, .xls, .ppt) にしたことが好評を博し、シェアを20%台にまで回復した。
日本におけるリリース履歴
日本ではキングソフト株式会社が独自の商標と独自のバージョン番号をつけて販売しているため、他の国とは統一されていない。
Kingsoft Office 2007
2006年9月21日、発表[6]。
2007年2月1日、正式ダウンロード版を発売[25][26]。
2007年5月8日、v1.1の公開[27]。不具合修正や画像をドラッグ&ドロップで文書内へ挿入できるなどの操作性の向上。
2007年7月19日、バージョンアップの公開[28]。VBAに対応。
2008年6月20日、パッケージ版「Kingsoft Office 2007 Plus」を発売[29]。ユーザービリティを中心に機能強化された。
KINGSOFT Office 2010
2009年4月24日パッケージ版発売。
2009年9月3日、USBメモリから直接起動できる「KINGSOFT Office 2010 USB起動版」発売。
2010年5月14日、Microsoft Officeにも採用されている「HGゴシック」「HG明朝」など計29種類のフォントを同梱した「KINGSOFT Office 2010 フォント同梱版」発売[31]。
Office Open XMLの読み込みが可能になった。
KINGSOFT Office 2012
リボンインターフェースを採用した。
KINGSOFT Office 2013
Microsoft Office 2007以降のファイル形式 (Office Open XML) の読み込み、編集、保存(xlsxのみ)に対応した。
KINGSOFT Office 2016
Microsoft Office 2007以降のファイル形式 (Office Open XML) の読み込み、編集、保存に完全対応した。
WPS Office
2016年11月15日、KINGSOFT Officeの日本市場での販売開始10周年を迎え、グローバルブランド「WPS Office」へリブランドを実施[5]。
WPS Office 2
2020年6月9日、ダウンロード版を発売[35]。
2020年9月4日、パッケージ版を発売[36]。
ソフトウェア上では WPS 2019 と表記されている。PDFの作成/閲覧ができるソフト「WPS PDF」が追加された。
出典
- ^ WPS Office
- ^ What's New - wps.com
- ^ “”. ksosoft.com (2018年9月15日). 2018年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月15日閲覧。
- ^ “”. kingsoftstore.com (2019年5月4日). 2019年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月4日閲覧。
- ^ a b キングソフト、10周年を機にリブランディング - 「KINGSOFT Office」をワールドブランドと同じ「WPS Office」へ - マイナビニュース 2016年11月15日
- ^ a b “キングソフト、マイクロソフト オフィスそっくりの「Kingsoft Office 2007」”. pc.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “「WPS Office」を分かりやすく解説 - リコレ!|ソフマップの中古通販サイト”. リコレ! | ソフマップの中古通販サイト【公式】. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “統合ソフト”. BCN AWARD・BCN IT ジュニア賞. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 【中国OSS】金山ソフト、中央企業の集中購買で受注を獲得 2010/06/22(火) 09:08:01 [サーチナ] []
- ^ “Free Download WPS Office for PC/ Windows/ Mac | WPS Office Latest Version Download”. wps-official-website. 2022年2月22日閲覧。
- ^ お客様にとってのベスト プランを提供 - WPS.com
- ^ WPS Office 2019 is Available at Microsoft Store - WPS.com
- ^ “wps-official-website” (英語). wps-official-website. 2022年2月25日閲覧。
- ^ “トランプ氏、中華系アプリの取引禁止する大統領令に署名 安全保障上のリスク踏まえ”. ITmedia NEWS. 2022年7月22日閲覧。
- ^ “米政権、中国8アプリの禁止狙う大統領令 アリペイなど:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2022年7月22日閲覧。
- ^ Trump bars U.S. transactions with eight Chinese apps including Alipay - Reuters
- ^ “バイデン米大統領、TikTokなど利用禁止を撤回、商務長官に新たな対策検討指示(中国、米国) | ビジネス短信”. ジェトロ. 2022年7月22日閲覧。
- ^ “バイデン氏、前政権のTikTok禁止令を撤回 代替策を検討”. 日本経済新聞 (2021年6月10日). 2022年7月22日閲覧。
- ^ “Future 50” (英語). Fortune. 2022年7月28日閲覧。
- ^ a b “「この原稿は違法です」中国のワープロソフト、未公開小説をロック”. MITテクノロジーレビュー. 2022年7月28日閲覧。
- ^ “Sina Visitor System”. passport.weibo.com. 2022年7月28日閲覧。
- ^ A million-word novel got censored before it was even shared. - MIT technology review 2022年7月22日。
- ^ “よくある質問”. クラウド型オフィス「WPS Cloud」. 2022年7月30日閲覧。
- ^ “キングソフト、MS Office 2003に最大限近づけた「Kingsoft Office 2007」β版を公開”. pc.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “窓の杜 - 【NEWS】キングソフト、オフィス統合環境「Kingsoft Office 2007」の正式版を公開”. forest.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “MS Officeに最大限近づけた「キングソフトオフィス2007」販売開始”. internet.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “窓の杜 - 【NEWS】キングソフト、オフィス統合環境「Kingsoft Office 2007」の最新版v1.1を公開”. forest.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “「Kingsoft Office 2007」に新機能追加、VBA対応版も発売”. internet.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “MS Officeとの互換性を強化した「キングソフトオフィス2007 Plus」”. internet.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “キングソフト、セキュリティとオフィスソフトの最新版を提供開始”. internet.watch.impress.co.jp. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2010年5月14日). “キングソフト、オフィス統合環境「KINGSOFT Office 2010」の最新版を公開”. 窓の杜. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2011年10月7日). “キングソフト、リボンUIを採用した「KINGSOFT Office 2012 Standard」”. PC Watch. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2013年6月26日). “キングソフト、互換性を高めた統合ソフト「KINGSOFT Office 2013 Standard」 ~学習用のAndroidアプリも公開”. PC Watch. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2016年2月18日). “【.biz 】 互換性向上やUIが改善されたKINGSOFT Office 2016 ~「.xlsx」、「.docx」、「.pptx」形式に完全対応”. PC Watch. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2020年6月9日). “キングソフト、オフィスソフトのメジャーアップデート版「WPS Office 2」”. PC Watch. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2020年9月4日). “キングソフト、オフィスソフト「WPS Office 2」を家電量販店などで発売開始”. PC Watch. 2022年2月22日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 公式ウェブサイト (日本語)
- WPS - 金山軟件 (China) (中国語)
- WPS Office 2 - キングソフト (日本語)
- WPS Office - Free Office Suite - Microsoft Store