UEFAネーションズリーグ(英: UEFA Nations League)は、欧州サッカー連盟(UEFA)の主催で西暦偶数年の9月から翌年の6月にかけて行われる、ナショナルチームによるサッカーの国際大会である。第1回は2018年から19年にかけて開催された。
概要
2013年にノルウェーサッカー協会会長(当時)の(イングヴィ・ハレン)により、FIFAワールドカップ(の予選)・UEFA欧州選手権(UEFA EURO)に次ぐ第三のUEFA主催の国際大会として提案され[1]、2014年3月27日に開催されたUEFA総会(アスタナ)で満場一致で採択された[2]。
UEFA加盟の全55協会の代表チームをランキングに基づいて4つのカテゴリ(リーグ)に分け、さらにそのリーグ内でグループに分かれてリーグ戦を戦い、その結果によって上位リーグへの昇格、或いは下位リーグへの降格を行うというものである。試合開催日はFIFA国際試合カレンダーに基づいて設定されるため、FIFAワールドカップ予選やUEFA EUROの日程に影響しないとされた[3]。
国際サッカー連盟 (FIFA) 会長のジャンニ・インファンティーノは、この大会が「(国際親善試合を組みにくい)成績下位の協会にとって、代表チームの強化の鍵になる」と歓迎する意向を示している[3]。また、ベルギーサッカー協会事務局長の(スティーブン・マルテンス)は、本大会の創設により、UEFAとのテレビ契約が一元化されるため、成績下位の協会は経済的に利益を得るだろうと語った[4]。加えて、FIFA国際試合カレンダーに設定される国際親善試合の日程がネーションズリーグに置き換えられることにより、多くのサッカークラブやサポーターの抱える「シーズンが国際親善試合(=非公式試合)で分断される」という不満が軽減されるという目的も果たされると言及されている[5][6][7]。
出場国
55のナショナルチームが出場する。
- アルバニア
- アンドラ
- アルメニア
- オーストリア
- アゼルバイジャン
- ベラルーシ
- ベルギー
- ボスニア・ヘルツェゴビナ
- ブルガリア
- クロアチア
- キプロス
- チェコ
- デンマーク
- イングランド
- エストニア
- フェロー諸島
- フィンランド
- フランス
- ジョージア
- ドイツ
- ジブラルタル
- ギリシャ
- ハンガリー
- アイスランド
- イスラエル
- イタリア
- カザフスタン
- コソボ
- ラトビア
- リヒテンシュタイン
- リトアニア
- ルクセンブルク
- 北マケドニア
- マルタ
- モルドバ
- モンテネグロ
- オランダ
- 北アイルランド
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- アイルランド
- ルーマニア
- ロシア
- サンマリノ
- スコットランド
- セルビア
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スウェーデン
- スイス
- トルコ
- ウクライナ
- ウェールズ
大会フォーマット
初回大会
2018年から2019年に行われた第1回大会では、以下の大会フォーマットが採用された[2][8][9]。
- UEFA加盟の54協会をUEFAランキングの順位に基づき、上から12チーム(リーグA)、12チーム(リーグB)、14チーム(リーグC)、16チーム(リーグD)に分ける[10][11]。
- 各リーグ内をさらに3チームまたは4チームずつ4つのグループに分け、グループ内でホーム・アンド・アウェー2回戦総当たりのリーグ戦を行う。
- 各グループの1位チームが上位リーグへ昇格し、グループ内最下位チームが下位リーグへ降格する。
- 最高位のリーグAではグループ1位の4チームによりシングルイリミネーショントーナメントによる決勝ラウンド(ファイナルズ)を行う。
第2回での変更
2020年から2021年に行われた第2回大会を前に、UEFAは大会フォーマットの一部修正を行うこととした。具体的には、リーグ構成について、リーグA・リーグB・リーグCを全て16チームとし、リーグDのみ7チームに変更した[12]。これらは前回大会からの昇降格の変更(全てのリーグについて降格を無くし、リーグC・リーグDからの昇格枠を拡大)で対処した。
このフォーマット修正の目的として、リーグ戦の対戦数を増やす(138試合から162試合)ことで試合の商業的価値と視聴者の魅力を高めることを狙い、さらにグループ内のチーム数を偶数とすることで、最終節を全チーム同時に行えるようになり、リーグの公平性が促進されるものとされた[12]。
EURO予選・W杯予選との関連
ネーションズリーグの結果は、直後に行われる UEFA EURO の予選並びに予選プレーオフに大きな影響を与える[13]。具体的には、10のグループに分かれて行われる UEFA EURO の予選グループステージで本大会出場を逃したチームのうち、ネーションズリーグの各リーグ上位の4チームずつが予選プレーオフに進み、4枠の本大会出場枠をかけて争う(すなわち、予選プレーオフ進出に当たって予選グループステージの結果が一切考慮されない)方式に改められている[14]。
また、FIFAワールドカップのヨーロッパ予選においても同様のレギュレーションが導入されており、2次予選に進出するチームについて、グループステージ2位のチームにネーションズリーグの各リーグ1位から選考した2チームを加える方式となっている[15]。
これらの UEFA EURO 予選並びにW杯予選のレギュレーション変更について、ネーションズリーグ上位リーグの下位チームよりネーションズリーグ下位リーグの上位チームが優遇されるレギュレーションとなっていることから、弱小チームが通常の予選プロセスではなくネーションズリーグ経由で予選を通過できるようにするものではないかとの批判もある[16]。
結果
代表別成績
- 1st – 優勝
- 2nd – 準優勝
- 3rd – 3位
- 4th – 4位
- – 昇格
- – 残留
- – 降格
国 | 2018–19 | 2020-21 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
リーグ | 順 | 替 | リーグ | 順 | 替 | |
アルバニア | (C) | 34 | (C) | 35 | ||
アンドラ | (D) | 53 | (D) | 55 | ||
アルメニア | (D) | 45 | (C) | 36 | ||
オーストリア | (B) | 18 | (B) | 18 | ||
アゼルバイジャン | (D) | 46 | (C) | 43 | ||
ベラルーシ | (D) | 43 | (C) | 38 | ||
ベルギー | (A) | 5 | (A) | (4) | ||
ボスニア・ヘルツェゴビナ | (B) | 13 | (A) | 15 | ||
ブルガリア | (C) | 29 | (B) | 31 | ||
クロアチア | (A) | 9 | (A) | 12 | ||
キプロス | (C) | 36 | (C) | 46 | ||
チェコ | (B) | 20 | (B) | 19 | ||
デンマーク | (B) | 15 | (A) | 7 | ||
イングランド | (A) | (3) | (A) | 9 | ||
エストニア | (C) | 37 | (C) | 47 | ||
フェロー諸島 | (D) | 50 | (D) | 50 | ||
フィンランド | (C) | 28 | (B) | 21 | ||
フランス | (A) | 6 | (A) | (1) | ||
ジョージア | (D) | 40 | (C) | 42 | ||
ドイツ | (A) | 11 | (A) | 8 | ||
ジブラルタル | (D) | 49 | (D) | 49 | ||
ギリシャ | (C) | 33 | (C) | 37 | ||
ハンガリー | (C) | 31 | (B) | 20 | ||
アイスランド | (A) | 12 | (A) | 16 | ||
イスラエル | (C) | 30 | (B) | 25 | ||
イタリア | (A) | 8 | (A) | (3) | ||
カザフスタン | (D) | 47 | (C) | 45 | ||
コソボ | (D) | 42 | (C) | 44 | ||
ラトビア | (D) | 51 | (D) | 53 | ||
リヒテンシュタイン | (D) | 52 | (D) | 51 | ||
リトアニア | (C) | 39 | (C) | 41 | ||
ルクセンブルク | (D) | 44 | (C) | 39 | ||
北マケドニア | (D) | 41 | (C) | 40 | ||
マルタ | (D) | 54 | (D) | 52 | ||
モルドバ | (D) | 48 | (C) | 48 | ||
モンテネグロ | (C) | 35 | (C) | 34 | ||
オランダ | (A) | (2) | (A) | 6 | ||
北アイルランド | (B) | 24 | (B) | 32 | ||
ノルウェー | (C) | 26 | (B) | 22 | ||
ポーランド | (A) | 10 | (A) | 10 | ||
ポルトガル | (A) | (1) | (A) | 5 | ||
アイルランド | (B) | 23 | (B) | 28 | ||
ルーマニア | (C) | 32 | (B) | 26 | ||
ロシア | (B) | 17 | (B) | 24 | ||
サンマリノ | (D) | 55 | (D) | 54 | ||
スコットランド | (C) | 25 | (B) | 23 | ||
セルビア | (C) | 27 | (B) | 27 | ||
スロバキア | (B) | 21 | (B) | 30 | ||
スロベニア | (C) | 38 | (C) | 33 | ||
スペイン | (A) | 7 | (A) | (2) | ||
スウェーデン | (B) | 16 | (A) | 14 | ||
スイス | (A) | (4) | (A) | 11 | ||
トルコ | (B) | 22 | (B) | 29 | ||
ウクライナ | (B) | 14 | (A) | 13 | ||
ウェールズ | (B) | 19 | (B) | 17 |
出典
- ^ Hojem Kvam, Lars (2013年10月9日). “Hva om Ronaldo, Özil, Balotelli og Pique møtes til ligaspill – med sine landslag?” (ノルウェー語). dagbladet.no. 2021年9月19日閲覧。
- ^ a b “UEFA Nations League receives associations' green light”. UEFA.org (2014年3月27日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ a b “Nations League: New European tournament to be confirmed”. BBC Sport (2014年3月26日). 2014年3月26日閲覧。
- ^ “Nations League moet nieuwe mijlpaal in Europese voetbal worden” (オランダ語). zita.be (2014年3月26日). 2014年3月26日閲覧。
- ^ Smith, Giles (2001年3月2日). “Put an end to these meaningless friendlies”. The Telegraph. 2018年8月31日閲覧。
- ^ Lawton, James (2018年2月20日). “Friendlies do not have to be as meaningless as this”. The Independent. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “Do friendly matches really matter?”. BBC Sport (2006年3月2日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ “UEFA Nations League: all you need to know”. UEFA.com (2014年3月27日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ “UEFA Nations League/UEFA EURO 2020 qualifying”. UEFA.com. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “UEFA Nations League format and schedule approved”. UEFA.com (2014年12月4日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ “UEFA Nations League format and schedule confirmed”. UEFA.com (2014年12月4日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ a b “How the 2020/21 UEFA Nations League will line up”. UEFA.com (2019年9月24日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ “UEFAネーションズリーグがいよいよ開幕! 欧州が試みる新たな大会が意味するものとは?” (2018年9月5日). 2021年9月18日閲覧。
- ^ “”. UEFA.com. Union of European Football Associations (2018年3月9日). 2021年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月11日閲覧。
- ^ Graham Dunbar (2019年6月5日). “UEFA plots 2022 World Cup qualifying path via Nations League”. AP通信. 2019年10月11日閲覧。
- ^ Dunbar, Graham (2017年3月24日). “As World Cup hope fades, Europeans turn to Nations League”. USA Today. Associated Press2021年9月19日閲覧。