PC-FX(ピーシー エフエックス)は、1994年12月23日に日本電気ホームエレクトロニクス(NECホームエレクトロニクス)から発売された家庭用ゲーム機である。当時のメーカー希望小売価格は49,800円。
PC-FX本体 | |
メーカー | NECホームエレクトロニクス |
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種別 | 据置型ゲーム機 |
世代 | 第5世代 |
発売日 | 1994年12月23日 |
CPU | (V810) 21.475MHz |
GPU | HuC62 |
対応メディア | CD-ROM |
対応ストレージ | バッテリーバックアップ PC-FX バックアップメモリパック |
コントローラ入力 | ケーブル |
外部接続 | SCSI |
売上台数 | 11万1,000台(出荷台数は40万台) |
互換ハードウェア | PC-FXボード、PC-FXGA |
前世代ハードウェア | (PCエンジンシリーズ) |
ハドソンと共同開発したPCエンジンの次世代機である。開発コードネームは「FX」。商品名は、「PC」=「PC-9800(PC-98)シリーズ」、「F」=「Future(未来)」、「X」=「未知数」から採ったものである[要出典]。
歴史
1992-1993年頃、NECホームエレクトロニクスはPCエンジンSUPER CD-ROM2の後継機として、32ビット機の開発を始めていた。共同開発したハドソンは1992年のアメリカCESにてJPEGチップを公表している[1]。一方アーケードゲーム業界では、セガ・エンタープライゼス(後のセガ)のModel2基板、ナムコ(後のバンダイナムコエンターテインメント)のSYSTEM22基板などの3Dゲーム基板が熾烈な性能競争を繰り広げていた。任天堂やセガ・エンタープライゼス、ソニー・コンピュータエンタテインメント(後のソニー・インタラクティブエンタテインメント)も次世代機の開発を進めていた。
1994年初旬、コードネームはFXと名付けられ、PCエンジン次世代機の計画が公表された。同時期にはソニー・コンピュータエンタテインメントの新規参入ハード(コードネームPS-X、後のPlayStation)やセガのメガドライブ次世代機(コードネームSaturn)など、他社からも次世代機の開発計画が公表され始める。
1994年5月、FXの仕様が公開される。
1994年12月23日、PC-FXが発売される。
1995年5月、NECホームエレクトロニクスによる「アニメ戦略」が展開される。またPC-FXのイメージキャラクターとして「ロルフィー」を発表。
1995年12月にNECは企業向けと比べて安価な開発ツールが(基本的には)別売で提供されるPC-FXGAというPC用拡張ボードを販売した。これは本体付属ツールのみでも3DCGを作成できるというもので、初回1万本に限っては別売の開発ツール(ただしスターターキットのみ)のセット販売も行われた。さらに追加の開発キットも発売され、より高度な開発環境も提供された。当時はゲーム専門学校も活況であり、同人市場やゲーム業界に興味のある人を視野に置いたアプローチも行われた。また「PC Engine FAN」の発行元である徳間書店インターメディアも自ら開発した「でべろBOX」と称する開発ツールを誌上通販した。
1998年6月、NECホームエレクトロニクスがドリームキャストへの参入を発表。同時にPC-FXからの撤退を正式に発表した。なお、NECホームエレクトロニクスは、後にNECグループの事業整理の対象になり、2000年3月31日を以て事業を停止・解散した。またNECホームエレクトロニクスとNECアベニューのソフトウェア部門を移管したNECインターチャネルも2004年に別会社に譲渡され、NECグループはゲーム業界から撤退する事となった。
最終的な販売台数は11万1千台[2]だった。
ハードウェア
- 筐体
- 家庭用ゲーム機としては初めて縦置きデザインを採用した。
- 光学ドライブ
- CD挿入部分はPCエンジンと同じトップローディング方式である。
- 映像
- CD-ROMから読み出した圧縮動画データを独自の圧縮データ伸長専用のプロセッサに送ることで高速動画再生を実現する機能を持ちグラフィック関係の機能が充実していた[3]。
チップセットについて
PC-FXのチップセットはPCエンジンと同様のハドソン製HuC62シリーズに加え、拡大・縮小・回転・セロハン(半透明)機能のある4枚のバックグラウンドが追加されている。動画再生機能としてMotion JPEGデコーダ(HuC6271)を搭載しており、動画ではなく一枚絵としてゲームの背景に使用することも可能。
一時期ポリゴン処理能力を持たせるという話題があったが、PC-FX自体には搭載されなかった。これには2つの説がある。
- 元々はハドソン社によって開発されていた次世代ゲーム機のためのチップセット(コード名「TETSUJIN」)を搭載する予定であったが、そのうちの3D用表示用チップ・HuC6273(クボタコンプスとの共同開発のグラフィックチップ)の開発がPC-FX製品化に間に合わなかったということになっている[注 1][要出典]。
- PCエンジンに詳しいゲーム開発者・ゲームライターの岩崎啓眞は上記の説を否定しており[4]、「PC-FXは3Dを前提として開発していたがチップが間に合わなかった」のではなく、「PC-FXの開発陣は当時のアーケードにおける熾烈な3D競争を知らず、2D路線で成功していたPCエンジンの延長としてPC-FXをとらえていたため、3DO・サターンと『2D戦争をやる』なら、PC-FXは致命的な性能のマシンではないが、そもそも3Dについてほとんど考えておらず、プレイステーションが出てきてあわてて3D用のチップの開発を始めた」と説明している。
HuC6273は1995年に発売されたPC-9800シリーズ用及びPC/AT互換機用ゲームアクセラレータボード・PC-FXGAに搭載され、『(んーにゅー)』(1996年7月発売・NECホームエレクトロニクス、市販された唯一のFXGA用ゲームソフト)と共に発売された。なお当初計画・予告されていたPCIバス対応版のPC-FXGA/PCIは製品化されずに終わっている。これに関して実際に言えば、新グラフィックチップ・HuC6273の開発が難航しPC-FX製品化のタイムスケジュールに間に合わないという事態となった。
そこでこのチップの代わりに前世代のPCエンジン用グラフィックチップ(HuC6270)を2個搭載し、これにMotion JPEGデコーダ(HuC6271)を追加することで強力な動画再生機能を付与するという、はなはだアンバランスな構成となった。その結果、本機のグラフィック機能、特に画面モードとビデオメモリへのアクセス方法には様々な制約が存在することとなり、グラフィックメモリマッピングが極めて変則的であるため3Dゲームのみならず、2Dシューティング/アクション/対戦格闘ゲーム等の移植も困難になってしまった。
仕様
- CPU:(V810) (μPD70732GD-25)21.475MHz
- メインRAM:2MB
- VRAM :1.25MB
- CD-ROM 2倍速ドライブ、バッファ:256KB、フォトCD対応、対応
- 対応CDフォーマット PC-FX用CD-ROM、音楽CD、CD-G、フォトCD
- バックアップメモリー 32KB
- 最大表示色数:1677万色
- 表示画素数:最大320×240ドット
- スプライト数 最大128個
- BG画面数 最大7面
- エフェクト:回転・拡大・縮小・セロファン・フェード・プライオリティ
- 動画再生:Motion JPEG、30フレーム/秒、フルカラー・フルスクリーン
- 動画圧縮:JPEG、ランレングス[5]
- サウンド機能:ADPCM 2ch、波形メモリ音源(最大6音)
- 拡張端子
- 本体底 - 対応製品なし(メインメモリ拡張用スロット)
- 本体後部 - PC-98シリーズとの接続用
- 本体前面 - FX-BMP(本体メモリの4倍の容量を持つバックアップメモリパック)用
- 外形寸法:幅132mm×奥行き267mm×高さ244mm(5.2in×10.5in×9.6in)
周辺機器
- PC-FX SCSIアダプタ
- FX-PAD
- PC-FX マウス
- PC-FX バックアップメモリパック
- (PC-FXボード)(FX-98IF、98CanBe専用)
- PC-FXGA(PC-98用)
- PC-FXGA(DOS/V用)
NEC製PC-9800シリーズとの連携が意識されていたため、PC-FXボード(FX-98IF)、PC-FXGAなどPC上でPC-FXのソフトが遊べる拡張カードが発売され、SCSI接続の外付けCD-ROMドライブとしてPC-FXを使うユニットが企画された。
ゲームパッドのボタンは二列横並びの6ボタンであり、PCエンジン用6ボタンコントローラ『アーケードパッド6』((PCエンジンDuo-RX)に同梱)と同形状のデザインである[6]。しかしボタンを多用するようなゲーム性の作品はほとんど発売されなかった。
後に有志によりコントローラ端子の3Dプリンター用データが公開された[7]。
FX-PAD
PC-FX マウス
PC-FX バックアップメモリパック
PC-FXGA
ソフトウェア
ソフトの総数は雑誌付録・体験版・PC-FXGA専用ソフトを除くと62本。『バトルヒート』のような動画とゲームを融合させたゲームを強みとした。
1995年3月、NECホームエレクトロニクスと共同のプラットフォームホルダーであるハドソンが、『天外魔境III』のPC-FXでの発売を発表した(これにより一時FXの売れ行きが伸びた[要出典])が、発売日延期を繰り返し、結局お蔵入りとなった。こうしてハドソンによるPC-FX専用ソフトのリリースは少数にとどまった。
1995年10月、NECインターチャネル(NECアベニューのソフトウェア部門を移管した会社)が設立された。PC-FXへのさらなる注力を表明したがNECインターチャネルから発売されたソフトは「天地無用!魎皇鬼FX」一作のみでその後PC-FX用ソフトをリリースすることはなかった。NECインターチャネルは美少女ゲームを武器に巨大なギャルゲー市場があったセガサターンへ参入している。これについて当時TBSテレビ「JNN報道特集」にて特集されている。
このようにPC-FXに参入して独自にソフトウェアを販売するサードパーティは少数に限られた。その結果PC-FXのほとんどのソフトをNECホームエレクトロニクスがリリースすることとなった。
1998年4月27日、PC-FX最後のソフトである『ファーストKiss☆物語』(NECホームエレクトロニクス)が発売された。
アニメ戦略
NECホームエレクトロニクスが1995年5月から展開したのが「アニメ戦略」である。これにあわせてリリースされたソフト『アニメフリークFX』創刊号(vol.1)では「(業界初!)アニメファンのためのゲームマシンで見るOVA登場!!」とうたっている。また、PC-FXアニメファンクラブが設立され、積極的にアニメファンや声優ファンの取り込みを行っている。
1995年8月発売の『アニメフリークFX vol.1』を皮切りに、8月に開催されたコミックマーケット48への出展、『アニメフリークFX』シリーズや『チップちゃんキィーック!』の販売を行っている。
PC-FXの購入者のほとんどは「PCエンジンからのファンの方たち。」20歳前後の男子であった。こういった状況から「当初、アニメ戦略を展開しましたが、みなさんの反応を見て、現在はさらに進んでギャルアニメ路線になりました。」として事業の方向性を鮮明にしていった[8]。
レーティング
1995年4月、NECホームエレクトロニクスにより倫理審査基準が定められた。
- 『一般向け』 - 残酷なシーン、暴力による刺激を与えないもの。性的な刺激のないもの。年少者に対して犯罪・反社会的行為を煽らないもの。
- 『18歳以上推奨』 - 著しく性的感情を刺激しないもの。性行為表現は間接的でも禁止。暴力シーンにおける残酷な描写は禁止。
- 『18歳未満禁止』 - 年少者がプレイするのは好ましくないと思われるもの。ただし、性行為・著しく残虐な暴力の直接的な表現は禁止。
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アニメ戦略を展開する際、PC-FXのマスコットキャラクター(イメージキャラクター)としてロルフィーを誕生させた。NECホームエレクトロニクスのゲーム事業向けのコーポレートキャラとして機能した。『アニメフリークFX』のチラシや表紙などを飾っており、ゲームソフト『となりのプリンセス ロルフィー』も発売されている。
関連商品
1996年11月には徳間書店インターメディアからゲーム開発に焦点を絞ったムック『DEVELO MAGAZINE』が刊行され、PC-FXGAやでべろBOXと連動するという形式になったが、2号で休刊している。
反響
PCエンジンファン1994年8月号の18ページにて、「ポリゴンは必要なのか」という問いにハドソンの中本伸一は「今はみんなポリゴンで見ちゃうんだよね。」、「ポリゴンは今注目されているから・だからそういう面ではPC-FXに動画機能という違った切り口があるっていうのがひとつ面白いやりかたなんじゃないかな。」と発言している。当時のリアルタイムポリゴン映像のほとんどが、実質数パターンのカメラ視点(視点切り替え)しか使用していない事を挙げ、同数の動画を用意すれば結果的に同じ事だと断じている。
こうして1994年の年末商戦にはセガサターンやPlayStationも発売され、PC-FXはこれらの2機種とともに次世代機戦争の一角を担うとされていた。しかし、他社に対抗できるキラーソフトをハードウェア立ち上げ時に用意できず、他の(同世代機)が持っていた3D機能を持たずに動画をメインとしたハードウェア設計[4]により、競合機種の勢いに引き離され、1995年10月27日『ファミコン通信』(No.358)にて行われた「国勢調査’95」の「持っているゲームマシン」において、PC-FXの割合は3.2%と、PSの40.2%、サターンの34.5%に対して大きく差をつけられた(回答710名、男性73.8%、女性9.9%、不明16.3%)。
脚注
注釈
出典
- ^ 徳間書店「PCエンジンFAN」1992年3月号102ページより。
- ^ 朝日新聞2001年12月1日(夕刊)「ウィークエンド経済 第765号」
- ^ 週刊ファミ通 No.315. 株式会社アスキー. (1994-12-30). p. 172
- ^ a b 岩崎啓眞 (2010年6月4日). “決戦前夜(6)-追補”. Colorful Pieces of Game
- ^ 週刊ファミ通 No.315. 株式会社アスキー. (1994年12月30日). p. 172
- ^ アーケードパッド6
- ^ PC-FX Controller Connector by TDLinux - Thingiverse
- ^ 電撃姫vol.2、112-113ページのNEC-HEのホームサーバー事業部・粕谷氏インタビュー記事より
- ^ “テレビゲーム機 NEC PC-FX”. 日本デザイン振興会 (1994年). 2022年1月5日閲覧。