『MONSTER』(モンスター)は、日本の音楽ユニット・B'zが、2006年6月28日にリリースした15作目のオリジナル・アルバム。
『MONSTER』 | ||||
---|---|---|---|---|
B'z の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
| |||
ジャンル | ||||
時間 | ||||
レーベル | VERMILLION RECORDS | |||
プロデュース | 松本孝弘 | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
| ||||
チャート最高順位 | ||||
| ||||
ゴールドディスク | ||||
| ||||
B'z アルバム 年表 | ||||
| ||||
『MONSTER』収録のシングル | ||||
|
概要
前作『THE CIRCLE』より1年2か月ぶりのオリジナル・アルバム[5]。
B'zはあまりコンセプトなどを固定してアルバムを作ることは少ないが、本作ではレコーディングの初頭から『MONSTER』というキーワードがあり[注 1]、稲葉はそれを意識して作詞をしていった[6]。本作発売後に、ライブツアー『』が敢行された[7]。
ロックからポップな曲、バラード、はたまたレゲエ調、ブルース調など幅広くバラエティ豊かな曲構成をしている[8][5]。また、近作である『BIG MACHINE』や『THE CIRCLE』のシンプルなバンド志向とは異なり、打ち込み音やキーボード、ストリングス、ブラス、コーラスなどを多用している。本作では珍しくコーラスにサポートメンバーの声を使っている。近年ではほとんどなかったフェードアウトの曲も3曲ある。
制作は日本と自身のスタジオがあるロサンゼルスを何度も往復しながら行われた[9]。楽曲は17曲制作され、アウトテイクとなった3曲は、「BUDDY」「yokohama」「希望の歌」と後に判明した。
ジャケット写真は、黒い背景にカラフルなメンバーの写真などのコラージュというデザイン。これは、「タイトルから直接的に想像できるイメージとは逆に、ポップでライトな感じ」というテーマに制作された[10]。
前後の作品同様デジパック仕様だが、プラスチック製のスリーブケースが付属するほか、歌詞カードは通常のブックレット式ではなく、屏風式となっている[注 2]。
初回限定盤には、9月1日になんばHatchで開催されたリリース記念を兼ねた完全招待制のライブ『B'z NETWORK LIVE in Japan』の応募抽選ハガキが封入されている[11][12]。
アレンジャーの徳永暁人がアルバム全般の楽曲制作に参加した最後の作品であり、次作『ACTION』は一部の楽曲のみ参加、それ以降はB'zにまったく関与していない[注 3]。
シングル曲が4曲以上オリジナル・アルバムに収録されるのは、11thアルバム『ELEVEN』以来である。
オリコンチャートではグループ及び男性アーティストでは初となる通算20作の首位獲得となった[13]。
2018年に結成30周年記念として『DINOSAUR』までのオリジナル・アルバムと共にアナログレコード化された[14]。
収録曲
楽曲解説
- ALL-OUT ATTACK
- 「アルバムの1曲目を創ろう」という意識で制作された曲[15][6]。タイトルは英語で「総攻撃」を意味する。
- プログレッシブ・ロック調の楽曲で、異なる3曲が1つにまとめられている[1]。そのため、B'zの楽曲にはあまりなかったCメロが存在しており、セクションによってビートが変わる。
- PVは、ライブハウスに男性限定でエキストラを募集し、ライブ形式で収録されている。このPVは「純情ACTION」のPVに一部流用された。
- ベスト・アルバム『』の収録曲を決める際のファン投票では中間発表時の結果では31位で、最終的に収録となる30位以内には入れなかった。
- 2006年10月13日放送の『ミュージックステーション 20周年記念スペシャル』ではライブ形式で披露された[16]。
- SPLASH!
- 42ndシングル。
- ゆるぎないものひとつ
- 41stシングル。
- 恋のサマーセッション
- レゲエ調の楽曲で[1]、松本はレゲエのリズムと夏というテーマでメロディーを作った[17]。しかし、普段レゲエを聴かないためボブ・マーリーのベスト・アルバムを購入したという[6]。
- また、女性のコーラスがあったほうが良いとのことで久々に女性コーラスが入っている[6]。
- 作詞の際に“夏期講習”という言葉を思いついたので辞書で調べると“サマーセッション”だったためタイトルに採用している[17]。稲葉は曰く「“夏期講習”自体は歌いたい言葉だったんで、変えたくなかった」という理由で、歌詞中では“恋のサマーセッション”ではなく、“恋の夏期講習”と歌われている[17]。
- この曲でもPVが制作されており、街の通りの店舗で二人で演奏していると、外国人の男性エキストラがサビの一部を歌いながら二人の前に乱入して去っていくという内容。
- ライブでは松本がストラトキャスターを使用し、ダンサーも登場した[18]。
- ケムリの世界
- 衝動 〜MONSTER MiX〜
- 40thシングル。
- 本作にはアルバムバージョンとして収録されており、アコースティック・ギター以外のギターのパートのほか、ボーカルやコーラスも一部が録り直された[19]。
- 無言のPromise
- 間奏では、GOWによるタガログ語での語りがある。このように、B'zの楽曲で女性が歌詞部分にメインで声を入れているのは「(WILD ROAD)」以来。語りに使用する言語として普段あまり馴染みのない言葉という理由からフランス語、スペイン語が候補に挙がっていたが、GOWがタガログ語も話せるため試したところ、一番良かったため採用された[6]。
- ストリングスは稲葉のソロ曲「遠くまで」のように弦楽四重奏となっている。
- 「80年代のメタルバラードにならないようにしないといけないな」[6]という松本の話もあり、先述の間奏の後の大サビまでエレクトリック・ギターが出てこない。
- 稲葉は歌詞について「太い絆で繋がっている人は、物理的に別れたりとかしても、もう1回会うっていう約束を無言でしてるんだ、っていうのがテーマ」とコメントしている[20]。
- 「ケムリの世界」とこの曲はフェードアウトで終わっている他、いずれもライブ未演奏となっている。
- MONSTER
- ネテモサメテモ
- Happy Birthday
- 元々は、『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』で未発表曲として演奏されていた楽曲で、B'z初の(バースデイソング)となっている。
- 松本は「こういった曲は音源化すると旬じゃなくなってしまうから、大切にしていきたい」という旨の発言もあったが、松本曰く「自然の流れ」で本作に収録された[6]。
- 『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』のツアー中にジャムセッションをしながら固めていったアレンジだっため、アルバムへの収録には厳しいと判断し、一部歌詞の追加や大幅なアレンジが行われた[6]。
- 『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』で演奏した際はイントロにピアノのメロディが存在した。
- PVが存在しており、『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』で演奏された際の映像とそのリハーサルの映像が使用されている。
- 『B'z LIVE-GYM 2006 "MONSTER'S GARAGE"』では、松本と稲葉、増田隆宣、シェーン・ガラース、徳永暁人、大田紳一郎の6人によるアコースティック・ギター主体のアコースティック・バージョンで披露された[18]。
- ピエロ
- 41stシングル『ゆるぎないものひとつ』(2nd beat)。
- 2nd beatがオリジナル・アルバムに収録されるのは珍しいが、松本は周囲からの評判がよく、アルバムの構成として悪くならなければいいという事で収録となった[6]。
- 雨だれぶるーず
- 明日また陽が昇るなら
- 本作の制作過程で最初に制作が開始された楽曲(M-1)で、元々は「OCEAN」と同時期に制作に入っていたが[6]、なかなか完成せず、結局は本作のレコーディング終盤に完成した[22]。
- アレンジの段階で、イントロが違うものやリズム・パターンが違うものなどが様々なパターンを試している[22]。
- 曲順についても試行錯誤しており、レコーディングの当初は1曲目にする予定であったが[22]、「雨だれぶるーず」の後にすることで繋がった感じがあり現在の曲順になった[6]。また、松本は「ちょっと最後(の曲)っぽい」とも語っており[6]、アルバムツアーでは本編ラストに演奏された。
- 歌詞はライブが終わった後、観客と別れるときの気分で書いたと語っている[6]。
- この曲もPVが制作されている。
- OCEAN 〜2006 MiX〜
- 39thシングル。
- 本作にはアルバムバージョンとして収録されており、シングルバージョンよりもエレクトリック・ギターが強調されたアレンジとなっている[1]。またシングルとアルバムではミキサーが違っており、シングルバージョンでは小林が担当したが、アルバムバージョンではジェイが担当した。
- 本作の制作開始前に完成していた楽曲ではあるが、松本は「最後に入れて、アルバムがすごく締まったなっていう感じがする」と語っている[6]。
- ちなみに、年をまたいでオリジナル・アルバムに収録されたシングルは「ultra soul」以来である[注 5]。
参加ミュージシャン
- 松本孝弘:ギター、全曲作曲・編曲
- 稲葉浩志:ボーカル、全曲作詞・編曲、ブルースハープ (#9)
- 徳永暁人:ベース、コーラス (#1.4-6.8.10)、全曲編曲
- シェーン・ガラース:ドラム・パーカッション
- 小野塚晃:キーボード (#4.5.7.12.13)
- 上石統:トランペット (#4.12)
- 東條あづさ:トロンボーン (#4.12)
- 宮崎隆睦:サクソフォーン (#4.12)
- 武田和大:サックス (#4.12)
- 石橋尚子:ヴァイオリン (#7)
- 徳永友美:ヴァイオリン (#3)
- 永田真希:ヴァイオリン (#7.8)
- TAKAHASHI MAYU:ヴィオラ (#7)
- ONUKI EIKO:チェロ (#7)
- TAMA MUSIC strings:ストリングス (#3.8.14[注 6])
- 大田紳一郎:コーラス (#1.4-6.8.10.13.14[注 6])
- 竹井詩織里:コーラス (#4.10)
- 森田葉月:コーラス (#4.10)
- 森川七月:コーラス (#4.10)
- GOW:ヴォイス (#7)
- ジェイ・バウムガードナー:ミキシング・エンジニア
- セルジオ・チャベズ:レコーディング・エンジニア
- 鎌田真吾:ブラス譜面起こし・指揮
- 池田大介:ストリングス譜面起こし・指揮
ライブ映像作品
シングル曲については各作品の項目を参照
ALL-OUT ATTACK
- B'z LIVE in なんば
- (特典DVD)
恋のサマーセッション
MONSTER
ネテモサメテモ
Happy Birthday
雨だれぶるーず
明日また陽が昇るなら
関連項目
脚注
注釈
- ^ 松本孝弘が稲葉浩志に「MONSTER」のモチーフをメールで送った。
- ^ 折りたたみ式だったデビューアルバム『B'z』を除き、他のCDアルバムの歌詞カードは全てブックレット式である。
- ^ ただし、2014年には稲葉のソロアルバム『Singing Bird』、2016年には稲葉のソロシングル『羽』の製作に参加している。
- ^ 1995年以降、6分を超える曲は「Raging River」(『ELEVEN』収録、7分32秒)と本曲、および「Rain & Dream」(『NEW LOVE』収録、6分18秒)の3曲のみとなっている(リメイク作品・ライブ音源除く)。
- ^ なお、「ultra soul」もアルバムバージョンだった。
- ^ a b 「OCEAN」(#14)については本作では表記されていないが、シングル盤で表記されている。
出典
- ^ a b c d e f g “B'z / MONSTER [デジパック仕様]”. CDJournal. シーディージャーナル. 2020年7月19日閲覧。
- ^ “MONSTER | B'z”. ORICON NEWS. オリコン. 2020年8月1日閲覧。
- ^ “速報!7月度 月間アルバムランキング~B'z首位、アンジェラ健闘!”. ORICON NEWS (オリコン株式会社). (2006年8月2日)2021年12月15日閲覧。
- ^ 「Gold Album+...認定 2006年6月度」『The Record』第561号、日本レコード協会、2006年8月、14頁。
- ^ a b 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、89頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 『be with!』第70巻、B'z Party、2006年6月。
- ^ “”. ORICON STYLE. オリコン株式会社. 2006年6月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月8日閲覧。
- ^ “B'z 〜ニュー・アルバム『MONSTER』”. Music Freak Magazine. エムアールエム. 2019年11月23日閲覧。
- ^ B'z[ 『B'z まさに『MONSTER』! B'zの比類なき可能性』](インタビュアー:住田理恵)、ヤフー株式会社、2006年7月6日。 オリジナルの2021年11月10日時点におけるアーカイブ2021年11月8日閲覧。 。
- ^ 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、139頁。
- ^ “B'z、アルバム先行試聴開始!”. BARKS (ジャパンミュージックネットワーク株式会社). (2006年6月27日) 2019年11月23日閲覧。
- ^ “”. SANSPO.COM. 株式会社産業経済新聞社. 2006年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。
- ^ “B'z、グループ、男性初のアルバム首位20作目到達!”. ORICON NEWS (オリコン株式会社). (2006年7月4日)2021年12月15日閲覧。
- ^ “B'z、アルバム全20作品をアナログ化。大型エキシビションで販売”. rockin'on.com (ロッキング・オン). (2018年3月22日) 2018年11月10日閲覧。
- ^ 佐伯明 2008, p. 287.
- ^ “出演者ラインナップ|ミュージックステーション”. テレビ朝日 (2006年10月13日). 2019年11月23日閲覧。
- ^ a b c 佐伯明 2008, p. 288.
- ^ a b “B'z 〜 LIVE DVD「B'z LIVE-GYM 2006“MONSTER'S GARAGE”」”. Music Freak Magazine. エムアールエム. 2019年12月8日閲覧。
- ^ 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、91頁。
- ^ a b 佐伯明 2008, p. 290.
- ^ B'z[ 『B'z まさに『MONSTER』! B'zの比類なき可能性』](インタビュアー:住田理恵)、ヤフー株式会社、2006年7月6日。 オリジナルの2021年11月10日時点におけるアーカイブ2021年11月8日閲覧。 。
- ^ a b c d 佐伯明 2008, p. 292.
参考文献
- 佐伯明『B'z ミラクルクロニクル 1988-2008』ソニー・マガジンズ、2008年。ISBN (978-4-7897-3328-1)。
外部リンク
- B'z DISCOGRAPHY『MONSTER』※楽曲の試聴が可能