字形
筆記体
大文字は、縦棒の下が左に曲がった形である。しばしば折り返す。フラクトゥールは で、書体によっては (I) と区別が付かない(あるいは、もともと異体字であったIとJの区別を設けていない)。このため、記号としては (J) を抜かすことがある( (I) の次の記号に (K) を使う)。また、T の筆記体と紛らわしいが、フラクトゥールで T は のようであり、区別が付く。
小文字は(ミーンライン)より下に書かれるが、(ベースライン)を越えて下に突き出す。このため、実質的な大きさはこれだけでも大文字と同等である。さらに、i同様、上に点を付ける。フラクトゥールは 。文字の上部に付けるダイアクリティカルマークが付く場合、普通は点を付けないで、ダイアクリティカルマークのみを付ける。
歴史
ギリシャ文字のΙ(イオタ)に由来し、キリル文字のІ, Јと同系の文字である。IとJの2形があったが、Iが母音を、Jが半母音を、区別して表すようになった。両者が区別して使われるようになったのは15世紀以降である。
呼称
音価
文字 J は、半母音(硬口蓋接近音) [j] を表すのに用いられるほか、言語によっては以下のような音を表すのに用いられる。
東アジアの諸言語をラテン文字で転写する際には、[dʒ] の近似音を J で表すことが多い。有声音と無声音の区別がなく有気音と無気音を区別する言語では、無気音のほうに J が当てられる。その場合、J は無声音をも表すことになる。日本語のヤ行の子音等[j]の近似音は代わりにYで表すことが多い。
- 朝鮮語では、[dʒ]に近い有声音で発音されるㅈ([dʑ])に J が当てられている。大韓民国の文化観光部2000年式では無声音で[tɕ]と発音される場合でも母音が後続するなら J を用いる。ㅉは常に無声音で発音されるが jj となる。
- 中国語の漢語拼音では、J は無声歯茎硬口蓋破擦音の無気音[tɕ]を表す。
- 日本語のヘボン式ローマ字表記では、[dʒ]に近い「ジ」および「ジャ」行の子音[dʑ]に J が当てられている。ジャ行の表記において jy と表記されることもあるが、基本的には正しくない。なお訓令式では使用しない。
J の意味
学術的な記号・単位
- エネルギーの単位、発熱量、ジュール。
- 虚数単位の記号
- 十九を意味する数字。二十進法以上(参照: (位取り記数法#Nが十を超過))において十九(十進法の19)を一桁で表すために用いられる。ただし、アルファベットの I と数字の 1 が混同し易いために、アルファベットの I を用いない(この場合、J が十八を意味する)例もある。
- APLの後継にあたるプログラミング言語 - J (プログラミング言語)
- 医学や歯学領域で消毒剤としてのポビドンヨードや、ヨウ素を慣例的にJと略す。J綿球(ポビドンヨード綿球)や、JGパスタ(ヨードグリセリンパスタ製剤)など。ドイツ語のjodから。
- 素粒子物理学で(内量子数)(大文字・小文字)
- 量子力学で、交換積分を表す文字。交換相互作用を参照のこと。
- J/Ψ粒子の旧称、J粒子。
- 数学やコンピュータ・プログラミングで、i, j, k はイテレータ、(インデックス)、整数の値をとる変数名としてよく使われる。
その他の記号
- Japan(日本)の略としてよく用いられる(例:Jリーグ、JA、JT、J-POP、JAL、JR、JRA、J-PHONE、JOCなど)。
- 日本の自動車国際識別記号。
- なお、ISO 3166-1など、日本国の国名コードには、JP、JPNがよく使われる。過去にはJapが使われたが、英語で日本の蔑称にも使われたため、最近は避けられる。また、ISO 639など、日本語の言語名コードにはJAがよく使われる。
- かつての国際電気通信連合条約の呼出符号では、大日本帝国時に「J」単独での使用が認められたが、第二次世界大戦で敗戦したため「J」1文字のコールサインは取り上げられた。
- サッカー・Jリーグの略称。1993年から1995年頃のJリーグブーム時には、商品名(「Jビーフ」「Jポーク」等)や作品名(『勇者警察ジェイデッカー』『キャプテン翼J』『仮面ライダーJ』等)にJを冠する事が流行した。
- トランプなどでジャック (11) を表す。
- 鉄道のサインシステムにおいて、JR播但線、近鉄信貴線の路線記号として用いられる。
- 不動産、建築において面積を表す畳 (単位)(帖)の代わりとしてJと表記することがある。
- アステル・ウィルコムにおいて、日本無線製端末を表す記号。
商品名・作品名・固有名等
- INFINITIの車種、J。
- 小説・ドラマ・アニメの題名
- 曲名
- 人名・団体名
- LUNA SEAのベーシストで日本のミュージシャン - J (ミュージシャン)
- KoRocKのメンバーで日本の男性ダンサー - J (ダンサー)
- ジャニーズの略として用いられることがある。「J禁」など。
- 漫画『魁!!男塾』および『曉!!男塾』『天より高く』の登場人物。⇒(男塾 (架空の学校)#J(ジェイ))
- 漫画『』の登場人物。
- 漫画『BLOODY MONDAY』の登場人物。
- ソルダード・J - アニメ『勇者王ガオガイガー』の登場人物。
- アニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』の登場人物。
- アニメ『』の登場人物。⇒(アニメ版ポケットモンスターの登場人物#J)
符号位置
大文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 小文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
J | U+004A | 1-3-42 | J J | j | U+006A | 1-3-74 | j j | |
J | U+FF2A | 1-3-42 | J J | j | U+FF4A | 1-3-74 | j j | 全角 |
Ⓙ | U+24BF | ‐ | Ⓙ Ⓙ | ⓙ | U+24D9 | 1-12-35 | ⓙ ⓙ | 丸囲み |
🄙 | U+1F119 | ‐ | 🄙 🄙 | ⒥ | U+24A5 | ‐ | ⒥ ⒥ | 括弧付き |
𝐉 | U+1D409 | ‐ | 𝐉 𝐉 | 𝐣 | U+1D423 | ‐ | 𝐣 𝐣 | 太字 |
他の表現法
フォネティックコード | モールス符号 |
Juliet | (・---) |
脚注
- ^ 「放送用語委員会 ● 第1413回(東京)外来語としての「アルファベット」の発音」(PDF)『放送研究と調査』第67巻第6号、NHK放送文化研究所、2017年6月、100-111頁。