ギャングスタ・ラップ(Gangsta rap)とは、ラップのジャンルの1つである。
ギャングスタ・ラップ | |
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様式的起源 | ヒップホップ |
文化的起源 | 1980年代後半、アメリカ合衆国にて。 |
使用楽器 | ドラムマシン, ビートボックス, ヴォーカル |
地域的なスタイル | |
ウエストコースト・ヒップホップ イーストコースト・ヒップホップ サザン・ヒップホップ (ミッドウエスト・ヒップホップ) チカーノ・ラップ |
一般的には、暴力的な日常をテーマにしたラップ・ミュージックを指す言葉で、代表的なアーティストには、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、N.W.A、2パックなどがいる[1]。 なお「ギャングスタ」とは、本来はストリートギャングやヤクザ者の事を表すスラングだが、「タフな人」、「男らしさ」などの意味で用いられることもある[2]。
概要/起源
ハーレム等の黒人街を中心に、1980年代中盤に誕生。Ice-Tはインタビューでブギ・ダウン・プロダクションズが『クリミナル・マインデッド』で話題となったが、あのアルバムはメッセージや「あなたは学ばなければならない」についてではなく、ギャングについてだったとインタビューで語っている。2011年、Ice-Tは自伝の中で東海岸のラッパー、スクーリーDがギャングスタ・ラップのインスピレーションであると、繰り返し述べた。スクーリーD、Ice-T、N.W.A.らはギャングスタ・ラップの元祖とされている[1]。
歴史
1980年代、1990年代
1988年にアイスTのアルバム「パワー」から「アイム・ユア・プッシャー」がヒットしたのが、ギャングスタ・ラップの快進撃のきっかけとなった出来事だった。また、オークランドのトゥー・ショートのアルバムも話題となった。その後、88年から89年にかけてN.W.Aのアルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」が空前の大ヒットとなり、全米にギャングスタ・ラップの存在が認識されることとなる。しかし、当初のNWAに対する評価は非難ごうごうであり、肯定的な評価は少なかった。しかし90年代にはいると、1992年にN.W.A.のメンバーの一人だったドクター・ドレー[注釈 1]が発表したアルバム「The Chronic」により、ラップミュージックの中で最も影響力を持つ存在となった。この頃からようやくギャンスタ・ラップがチャートやポップ・チャートでのヒットを出せる音楽へと、発展し始めた。彼らの楽曲には、バックトラックにPファンクやジェームス・ブラウンを使用するなどの共通点が見られる。これと同時期に、ドレーとシュグ・ナイトが創設したレーベル「Death Row Records」から、2パックやスヌープ・ドッグ等のアーティストが商業的な面でも成果を収めるようになる。さらにイージーE、アイス・キューブ、DOC、DJクィック、アバーブ・ザ・ロウ、MCエイト、コンプトンズ・モスト・ウォンテッド、トゥー・ショート、アント・バンクス、スパイス1らのギャングスタ・ラッパーも斬新な内容のアルバムを発表し、シーンを活気づかせた。その後2パック[注釈 2]とイージーE[注釈 3]は、惜しくも若くして亡くなってしまった。90年代前半はウエストコースト・ラップの全盛期だったが、90年代の後半以降は次第に南部ラップやチカーノ・ラップへと、シーンの中心が移っていった。南部ラップでは、ゲトー・ボーイズが90年代初頭には早くもヒットを出していた。しかし本格的に南部の人気が出てきたのは、マスター・Pのノー・リミットや、キャッシュ・マネーのラッパーたちがヒットを出し初めてからである。チカーノ・ラップでは、キッド・フロストやメローマン・エースが活躍した。
2000年代以降/衰退期
2000年代になっても南部ラップやチカーノ・ラップは、一定の人気を保ってきた。だが、2000年代で最も活躍が「目まぐるしい」ギャングスタラッパーと言えば、50セントだった。しかし2004年以降になると、リル・ジョン等の登場により、電子音楽を多用した次世代ヒップホップミュージック、いわゆる「クランク」と呼ばれた新たなラップムーヴメントが発生し、1990年代当時の勢いを失い始める[3]。それに加えて、オプラ・ウィンフリー、ビル・コスビー、スパイク・リー等のアメリカを代表する黒人エンターテイナー達による「ギャングスタ・ラップの攻撃性」に対する大々的な批判も、その衰退傾向に拍車を掛けている[3]。
反社会的な内容を含むギャングスタ・ラップは長年、各方面から批判を受け続けている[3]。そのため、これらのCDのジャケットには「ペアレンタル・アドバイザリー」の表示が必須であり、アメリカだけでなく他の英語圏の国々でも未成年への販売を拒否する店舗がある。ギャングスタラップに見られる暴力性は、アフリカ系アメリカ人に対して人種差別を行う白人優位社会への抵抗という見方も存在する。2020年には警察官による黒人殺害事件に対する抗議行動として、ブラック・ライブズ・マター運動が盛り上がった。
脚注
注釈
出典
参考文献
- ソーレン・ベイカー『ギャングスター・ラップの歴史 スクーリー・Dからケンドリック・ラマーまで』塚田桂子訳・解説、DU BOOKS、2019年9月。
関連項目
外部リンク
- History of Gangsta rap
- PARENTAL ADVISORY
- SLAPPIN' MUSIC -Gangstarap Online Shop-