AKM-63とは、共産主義政権下のハンガリーにおいて生産された、AK系のアサルトライフルである。
AK-63F | |
AKM-63 | |
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種類 | 軍用小銃 |
製造国 | ハンガリー |
設計・製造 | Fegyver- és Gázkészülékgyár(FÉG) |
年代 | 冷戦中 |
仕様 | |
種別 | アサルトライフル |
口径 | 7.62mm |
銃身長 | 16.5インチ |
使用弾薬 | 7.62x39mm弾 |
装弾数 | 30+1発 |
作動方式 | (ロングストロークピストン式) 回転ボルト閉鎖 セミ/フルオート切替射撃 |
全長 | 878mm |
重量 | 3.08kg |
発射速度 | 620発/分 |
銃口初速 | 720m/s |
有効射程 | 500m |
歴史 | |
製造期間 | 1963年~1977年(AKM-63) 1977年~現在(AK-63F/D) |
配備先 | ハンガリー軍 |
バリエーション | #派生型を参照 |
概要
第二次世界大戦後にソビエト連邦によって共産主義政権が樹立されたハンガリーは政治的にも軍事的にも東側陣営に組み込まれ、軍の兵器もソ連の兵器体系に合わせる形で整備がすすめられた。その一環としてソ連はハンガリーに対してAK-47の製造ライセンスを与え、AK-55として国産化され1957年から生産開始された。
その後、ソ連軍でプレス加工のレシーバーを採用した改良型のAKMが導入されると、ハンガリー軍もプレス加工のレシーバー導入に向け研究を開始、1963年にAKM-63として制式採用した。その際、ハンガリーはただ単にコピーするだけでなく、ガスシリンダーを覆う上部ハンドガードを廃止したうえで下部ハンドガード部分をプレス加工鋼板で制作し、フルオート連射時の制御性を確保するためにハンドガード下部に垂直前部グリップを取り付ける改良を行った。また、銃口部分にはAKMに特徴的な竹槍状のマズルブレーキも装着されていない。 当初は、銃床(ショルダーストック)、グリップ、前部グリップが乳白色のプラスチック素材で製造されたが、冬季の中央ヨーロッパではよくあるマイナス30度近い低温環境下で破損しやすいことが判明し、採用後数年で木製部品に交換された。
AKM-63は木製部品に交換されることによりハンガリー軍に使用が継続されたが、鋼板製の下部ハンドガードの加熱による火傷の発生、垂直前部グリップは標準型のAKMに比べて製造コストがかさむ上に伏射時に破損しやすく、弾倉交換時に干渉しやすいなどの欠点が判明した。このため、下部ハンドガードをソ連軍のAKMと同一形状の木製ハンドガードに再設計(上部ハンドガードも導入)し、竹槍型マズルブレーキを装着したモデルが1976年に制式採用されAMMの制式名称が与えられ(ハンガリー軍内でAK-63Fとも呼称される)、AKM-63を更新した。
なお、AKM-63以降のハンガリー製AK派生型は、ピストルグリップ下部が膨らんでいる点で他国製AKと区別できる。
AK-63Fおよび金属製折り畳み銃床を装備した派生モデルのAK-63D(制式名称AMMSZ)は現在でもハンガリー軍で使用されているほか、多くの国に輸出された。
2004年、製造企業のFEG社は、民間輸出向けの派生型SA-85Mの輸出において正規の手段を踏まない違法な武器輸出を行ったことにより、アメリカをはじめ複数の国から制裁を受け輸出が出来ない状態に陥り、東側社会主義諸国の自由化後の混迷のなか経営に行き詰まっていた同社は倒産した。FEG社の銃器製造部門は近年復活し限定的ながら一部モデルの製造を再開している。
派生型
- AK-55
- ハンガリー製のAK-47。
- AK-63F
- AKM-63を木製ハンドガードに交換したモデル。ハンガリー軍の制式名称はAMM。
- AK-63D
- AK-65Fに金属製折畳式銃床を装着したモデル。ハンガリー軍の制式名称はAMMSZ。
- AMD-65
- AKM-63の銃身を短縮化し、右側面折り畳み式銃床を備えたアサルトカービン。
- AMP-69
- AMD-65にライフルグレネード発射機能を追加した改良型。
- NGM-81、NGM
- AK-63Fをベースに使用弾薬を5.45x39mm弾に変更した、AK-74相当の改良型[1]。1981年に制式採用されNGM-81の制式名称が与えられた。射撃リコイル軽減のためPKマシンガンのものに似た形状のスリット付きのマズルコンペンセイターが装備された。1980年代半ば以降の東側社会主義諸国の混迷によりハンガリー軍では導入が進まず、もっぱら外貨獲得のための輸出用に5.56x45mm NATO弾使用モデル(単にNGMと呼称されることが多い)が製造された。金属製折り畳み式銃床を装備した型はNGVと呼ばれる。
- SA-85M
- NGM-81から派生した民間マーケット向けの輸出用セミオート専用型。5.56x45mm NATO弾を使用。
- AK-63MF
- AK-63D(制式名称AMMSZ)のうち7,700挺が現在ハンガリーで近代化改修を受けており、AK-63MFと呼称されている[2]。ピカティニーレイル付きの金属製ハンドガード、樹脂製の伸縮式ショルダーストック(銃床)やピストルグリップ、ハンドガード下部に二脚組込みのバーチカルグリップ、レシーバー左側面にスコープマウントとしてピカティニーレイルを装備する等の改良が加えられている。これらの改修部品は西側企業からの輸入により調達されている。
運用国
脚注
- ^ 床井 2022, p. 98-99.
- ^ 床井 2022, p. 96.
- ^ “”. 2019年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月10日閲覧。
- ^ Rottman, Gordon (24 May 2011). The AK-47: Kalashnikov-series assault rifles. Osprey Publishing. p. 49. ISBN (978-1-84908-835-0)
- ^ http://firearmsworld.net/hungary/ak/akm63.htm
- ^ https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:First_slovenian_honor_guard.jpg
- ^ https://www.awm.gov.au/collection/C268252
- ^ “Mẫu súng AK-47 “hiếm có” của VN: Khác biệt lớn với thiết kế gốc "huyền thoại" từ Liên Xô”. 2020年8月22日閲覧。
参考文献
- 床井, 雅美「カラシニコフバリエーション Part5」『Gun Professionals』、ホビージャパン、2022年1月、88-99頁。
関連項目
- AK-47
- AIM (アサルトライフル) / AIMS-74 - ルーマニア製のAKM / AK-74系アサルトライフル。これらも垂直フォアグリップを有する。
外部リンク
- Manowar's Hungarian Weapons - AK-55 / AKM-63 / NGM-81 / SA-85M(英語)
- www.gunsworld.net - AKM63突击步枪 / 匈牙利半自动民用AK(簡体字中国語)
- KALASNYIKOV.hu - AKM-63のマニュアル / NGVの写真集(ハンガリー語)