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A-train (日立製作所)

A-train(エートレイン)は、日立製作所が開発した鉄道車両の製造技術(次世代アルミニウム合金車両システム)。“A-train”に用いられた「A」は、Advanced・Amenity・Ability・Aluminum を統合的に表したものとしている[1]

概要

日立製作所が「環境負荷の低減」「ライフサイクルコストの低減」「今後の熟練者就業人口の減少への対応」をコンセプトに鉄道車両の生産方式を抜本的に見直したもので[1]アルミニウム合金のオールダブルスキン構体および自立型モジュール艤装を核とした車体トータルシステムとして構築したものである。従来の鉄道車両にはないシンプルで簡素な構造となったため、数万点あった部品点数が百数点まで削減された。

具体的には、以下のような特色を持つ。

アルミ押し出し型材を用いたダブルスキン構造[2]
初期のアルミ構体では、アルミ押し出し型材(以下、型材)製の骨組にアルミ薄板製の外板を溶接した骨組み構造を採用していた。これは鋼製の構体と同様な構造でもあった。その後外板の裏側に一体化した補強部材を持つ型材を用いたシングルスキン構造が開発され、溶接コストが削減されるとともに、車体の軽量化にも貢献した。
さらにアルミ押し出し型材を中空箱型断面にしたものがダブルスキン構造である。車体の側構体・屋根構体・台枠が長手方向で接合することで、車体断面が閉じた形状を重ねた二重構造となるため、車内の騒音を軽減する効果があるとともに、中空箱型内部に設けられたトラス構造(斜め方向の強度部材)により車体強度や軽量化に優れる。また、車体全長サイズの型材を使うため部材の点数が減り、接合に伴うコストを削減する効果も期待できるほか、製造ラインの自動化がしやすい利点がある。
FSW溶接工法の採用[3]
型材の接合に摩擦攪拌溶接(FSW)工法を採用。このため従来の溶接工法に比較して接合部の軽減や強度改善、構体の見栄えの向上が図られるだけでなく、型材の接合の自動化も図られる。
自立型内装構造の採用[4]
従来の鉄道車両の内装は、構体の完成後内側からアルミ化粧板材やFRP製の内装板をネジ止めなどで取り付けていく工法を採用しており、部品点数が多く作業時間も多く要した。また、内装工程は構体完成後でないと開始できないため、車両組み立ての総工期を短縮するには限界があった。
A-trainでは、内装自身が自立できるモジュールとして独立に作られ[* 1]、完成後に構体の端部から差し込むようにして取付けられる。構体には内装モジュールを支持するガイドレールが型材で形成されており、これで内装を前後方向にスライドさせると同時に上下左右方向に保持することができる。このためモジュールを固定する締結部品は必要最小限で済み、組み立てコストが削減できた。また、内装は構体の製作と並行して別な作業場で製作できるため、車両組み立ての工期も短縮可能となった。
さらに車両の先頭部分、運転台部分、客室扉用のドアエンジン、中・長距離列車に必要なトイレなども、別工程で組立てたモジュールを取り付けるようになっている。
(統合型制御伝送装置)「ATI」の採用
「ATI (Autonomous Train Integration system)」を採用し、従来機能ごとに回路を設けていた構造をデジタル化しシリアル伝送とした。これにより、従来の回路に使用されていた100V信号線に比べて軽量化・省資材化が可能となった。また、乗務員室には編成のコンディションを各車ごと・各動力車ユニットごとに表示するモニタが配置され、乗務員の負担軽減を図っている。これに合わせて、電車の制御方式は通常VVVFインバータ制御となる。他、減速から停止まで一切物理ブレーキ(空気ブレーキ)を使用しない全電気ブレーキの採用などを可能にしている。また、自動放送など乗務員補助の機能も付加されている。
このATIは、日立製作所独自のアーキテクチャを採用しているが、規格化し複数の鉄道会社に仕様の細部のみを変更して納入するA-Train自体のコンセプトにより、幅広く普及させることでコストを軽減させている。ただし、納入先の仕様により他の制御伝送装置を採用することも可能となっている。

A-trainの採用例(日本)

A-trainの採用例(日本国外)

A-trainの日本国外向け製品には種類によって4種類のシリーズが設けられている[7][8]

  • AT100 = メトロ・通勤車両
  • AT200 = 近郊車両
  • AT300 = 高速車両
  • AT400 = 超高速車両

また、モノレールに関してもA-trainから派生した車両が製造されており、重慶軌道交通中国重慶市)とセントーサ・エクスプレスシンガポール)で運行されている。

一覧 

イギリス

イギリスは日立製作所の鉄道部門にとって日本以外で初めて大規模受注をした国である。

日立製作所は2005年CTRL(ハイ・スピード1)国内列車用として最高速度225km/hで運転可能な395形6両編成28本(のちに1本追加)を受注した[9]。これらは2012年ロンドンオリンピックにちなんで運行会社のサウスイースタンによって「ジャベリン(槍投げ)」と名付けられ、各編成にはメダリストの名前が付けられた[10]

2012年にはグレート・ウェスタン本線イースト・コースト本線インターシティ125225置き換え計画であるインターシティ・エクスプレス計画の受注に成功した。395形に似たデザインで、当初は日立スーパー・エクスプレスと呼ばれていた。バイモード車両800形と電車の801形の2種類があり、電化の拡大が想定されたため800形から801形への改造が可能なように作られている[11]

なお、この計画に際しては、製造がイギリス国内で行われない(最終組み立てのみ)ことから、対案であった同じ外国の会社であっても国内で製造が行われることになっていたボンバルディア案を推す声があり、特にボンバルディアの工場(英語版)があった地域を中心に発注の撤回を求める運動が行われた[12][13]。これに加え、車両重量の増加(運輸省の要求仕様が不可能であるとの声もあった)や価格・種類配分の交渉の難航、金融機関による出資が進まなかったことなどから2010年には計画について調査が行われるなどしている[14]

2015年4月からのスコットレールの運行権を獲得したアベリオ・スコットレールは、2015年3月に日立製作所に近郊車両(AT-200)385形3両編成46本4両編成24本を発注した。

同じく2015年3月には、インターシティ・エクスプレス計画で800形・801形(後者は2016年に800形に変更)の導入が決まっていたグレート・ウェスタン・レールウェイ(当時の名称はファースト・グレート・ウェスタン)が800形同様のバイモード車両である802形を5両編成22本・9両編成7本発注した。800形との差異はデヴォンコーンウォールの勾配区間に対応するために出力の増強が図られていることと燃料タンクが大型化されていることである。バイモード車両であることからロンドン・パディントン駅からニューベリー駅(英語版駅・日本語版街までの電化区間では架線からの集電によって走行する[15]。当初の契約は合計29本であったが、9両編成7本がのちに追加された。グレート・ウェスタン・レールウェイでの営業運転開始は800形が2017年10月、802形が2018年8月であった。グレート・ウェスタン・レールウェイのAT-300は800形、802形ともに「インターシティ・エクスプレス・トレインズ(IET)」という愛称が与えられている[16][17]

800形電車385形電車において2021年4月から5月にかけて台車周辺に亀裂が見つかった[18]。4月に台車の安定増幅装置ヨー・ダンパーに深さ最大15ミリの亀裂が発見されたのに続き、5月には車両本体を持ち上げるジャッキングポイント溶接部に深刻な亀裂が見つかった[19]

イースト・コースト本線での運行事業者であるロンドン・ノース・イースタン・レールウェイでは、誘導障害が発覚したため運行開始が遅れ、800形は2019年5月、801形は同年9月に営業運転を開始している。グレート・ウェスタン・レールウェイとは異なり、ロンドン・ノース・イースタン・レールウェイのAT-300は東の和名にちなみ、「あずま」と名付けられている[20]

イギリスではこれらの他にもAT-300が発注されており、トランスペナイン・エクスプレス(愛称「ノヴァ1」)、ハル・トレインズ(愛称「パラゴン」)それぞれの802形が現在運行を開始している。これらに加え、2021年にはイースト・コースト・トレインズ803形)、2022年には(イースト・ミッドランズ・レールウェイ)(英語版)810形)、アヴァンティ・ウェスト・コースト(805形・807形)で新たに運行を開始することになっている[21][22]

形式 派生形式 画像 種類 動力方式 運行会社 愛称 編成両数 製造本数 製造期間 編成番号
385 /0   AT200 アベリオ・スコットレール なし 3両 46本 2015年~2019年 385001~385046
/1   4両 24本 2015年~2019年 385101~385124
395   AT300 サウスイースタン ジャベリン 6両 29本 2007年~2009年 395001~395029
800 /0   AT300 グレート・ウェスタン・レールウェイ インターシティ・エクスプレス・トレイン 5両 36本 2014年~2018年 800001~800036
/1   ロンドン・ノース・イースタン・レールウェイ あずま 9両 13本 2014年~2018年 800101~800113
/2   5両 10本 2014年~2018年 800201~800210
/3   グレート・ウェスタン・レールウェイ インターシティ・エクスプレス・トレイン 9両 21本 2014年~2018年 800301~800321
801 /1   AT300 ロンドン・ノース・イースタン・レールウェイ あずま 5両 12本 2017年~2019年 801101~801112
/2   9両 30本 2017年~2019年 801201~801230
802 /0   AT300 グレート・ウェスタン・レールウェイ インターシティ・エクスプレス・トレイン 5両 22本 2017年~2019年 802001~802022
/1   9両 14本 2017年~2019年 802101~802114
/2   トランスペナイン・エクスプレス ノヴァ1 5両 19本 2018年~2019年 802201~802219
/3   ハル・トレインズ パラゴン 5両 5本 2019年 802301~802305
803   AT300 イースト・コースト・トレインズ 5両 5本 2021年 803001~803005
805   AT300 アヴァンティ・ウェスト・コースト 5両 13本 2020年~2022年 805001~805013
807 AT300 7両 10本 2020年~2022年 807001~807010
810   AT300 (イースト・ミッドランズ・レールウェイ)(英語版) 5両 33本 2020年~2022年 810001~810033

台湾

イギリスからの最初の受注と同じころ、台湾鉄路管理局からJR九州885系電車をベースとしたTEMU1000型8両編成6本を受注した[23]。納入は2006年に開始され、翌2007年3月に試乗会を行い同年5月に営業運転を開始した[24][25]

韓国

2007年に韓国鉄道公社は優等列車用の電車である200000系(幹線電気動車(英語: Trunk-line Electric Car(TEC))とも)4両編成8本を日立製作所に発注した。車体・台車・駆動装置などは日本で製造されたが、部品の一部は韓国製のものを使用しているほか、最終組み立ては慶尚南道昌原市のSLS重工業にて行われた。京釜線長項線ソウル新昌間などで「ヌリロ」という愛称/種別で運行されている。最高速度は150km/hである。

タイ

バンコクSRTダークレッドラインでは日立製作所笠戸事業所のA-trainを採用した1000系電車6両15編成の計90両を発注しており、2019年には第一陣が納入された。「赤いネズミ」の愛称がつけられており、4~6両編成で運行される。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 内装モジュールは、幾つかの自立した天井パネルと側面パネルとを組立てた構造になっており、天井パネルには、空調装置のダクトや照明などの取り付け具が組込まれている。
  2. ^ 近畿車輛製、東急車輛製造製の車両もある。
  3. ^ JR九州BEC819系をカスタマイズした蓄電池駆動電車
  4. ^ 川崎重工業製、近畿車輛製、日本車輌製造製の車両もある。
  5. ^ 日本国内初採用。
  6. ^ 2008年度増備の883系(1000番台)も含む。815系N026編成のみJR九州小倉工場製。
  7. ^ (50000型)・(50050型)・(50070型)・(50090型)
  8. ^ 川崎重工業で製造した1・2・5次車は、同社独自の「efACE」コンセプトで製造されている。
  9. ^ 8両編成は近畿車輛で製造。
  10. ^ 9300系9000系の一部編成はアルナ車両が艤装を担当。
  11. ^ 全車川崎重工業製だが、日立製作所の開発した「A-train」の技術を用いており、これを川崎重工業がライセンス生産するという形になっている[要出典]
  12. ^ 第2編成以降は日本車輌製造製でステンレス構体「(日車式ブロック工法)」を採用。
  13. ^ a b c d e 日立製作所ニュートン・エイクリフ工場で製造される。
  14. ^ ただし、製造はSLS重工業。

出典

  1. ^ a b c d e 宮本,北林,山田 2001, p. 11.
  2. ^ 宮本,北林,山田 2001, p. 12.
  3. ^ 宮本,北林,山田 2001, p. 13.
  4. ^ 山田,大場 2003, p. 13.
  5. ^ a b c 山田,大場 2003, p. 11.
  6. ^ a b 相鉄、東急線のトンネルくぐれる新型車 - 日経コンストラクション 2017年6月12日発信、同年6月13日閲覧。
  7. ^ “Hitachi unveils modular EMU designs”. Railway Gazette (2014年7月22日). 2015年3月12日閲覧。
  8. ^ “AT300 - Intercity High Speed | Hitachi Rail EU”. www.hitachirail-eu.com. 2020年1月10日閲覧。
  9. ^ Hitachi's Entry into the European Railway Market - Japan Railway & Transport Review No. 42 (pp.10–16)
  10. ^ “Javelin train speeds into London” (英語). (2008年12月12日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/7779224.stm 2020年2月28日閲覧。 
  11. ^ “Agility Trains Announced as Preferred Bidder for Intercity Express Programme”. Hitachi. 2020年4月8日閲覧。
  12. ^ “Anger over new UK trains contract”. BBC News. (2009年2月12日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7886766.stm 2010年5月4日閲覧。 
  13. ^ Jones, Alan; Woodman, Peter (2009年2月12日). “Trains boost queried over Japan jobs”. The Independent (London). https://www.independent.co.uk/news/uk/politics/trains-jobs-boost-queried-as-japan-factory-confirmed-1607428.html 2010年5月4日閲覧。 
  14. ^ RAILNEWS. “Government backs away from IEP decision - Railnews - Today's news for Tomorrow's railway”. www.railnews.co.uk. 2018年4月16日閲覧。
  15. ^ “First Great Western plans AT300s to Cornwall”, Railway Gazette, (23 March 2015), http://www.railwaygazette.com/news/policy/single-view/view/first-great-western-plans-at300s-to-cornwall.html 2015年5月31日閲覧。 
  16. ^ “GWR unveils new fleet of IETs”. 2020年4月8日閲覧。
  17. ^ Switchboard 0300 330 3000. “All aboard the new Intercity Express trains that will transform journeys across Britain” (英語). GOV.UK. 2020年2月28日閲覧。
  18. ^ “日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃”. newsweekjapan. (2021年06月02日(水)19時05分). https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2021/06/800_2.php 
  19. ^ “日立車両の亀裂問題とイギリスの「国鉄復活」”. newsweekjapan. (2021年05月23日(日)21時47分). https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2021/05/post-105.php 
  20. ^ “LNER” (英語). Brand Cooke. 2020年2月28日閲覧。
  21. ^ Holden (2019年7月9日). “Milestone for Transpennine Express with Nova 1 Trains” (英語). RailAdvent. 2020年2月28日閲覧。
  22. ^ “Hull Trains Reveals Name of New Fleet | News | Hull Trains”. www.hulltrains.co.uk. 2020年2月28日閲覧。
  23. ^ . International Railway Journal. オリジナルの2012年10月23日時点におけるアーカイブ。.  
  24. ^ “”. Tilting Train Project. Hitachi. 2009年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。YYYY-MM-DD閲覧。
  25. ^ “TRA conducts test ride of tilting trains”. Taipei Times. (2007年3月21日). http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2007/03/21/2003353205 

参考文献

  • 宮本俊治・北林英朗・山田敏久、2001、「環境対応型の新しい車両コンセプト"A-train" (PDF) 」 、『日立評論』(2001年8月号)、日立製作所 pp. 11-14
  • 山田敏久・大場英資、2003、「最近の鉄道車両 "A-train" (PDF) 」 、『日立評論』(2003年8月号)、日立製作所 pp. 11-14
  • 『史上最強カラー図解 プロが教える電車のメカニズム』ナツメ社、2011年、p.86-p.87、ISBN (9784816349904)

関連項目

外部リンク

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