海洋貯熱量(かいようちょねつりょう)とは、海が蓄えている熱量(海洋が蓄積した熱エネルギー)の指標である。深度300m程度までの平均水温により算出される[1]。
概要
海が蓄えている熱量の変化は、海面水温の変化を見ただけではわからないため、この指標を用いる。海の深いところではほとんど水温が変化しないため、赤道では深度300m程度までの平均水温を求めることで、海が蓄えている熱量の変化を知ることができる。海洋貯熱量が大きいということは、一般に、温度躍層が深く、高い海面水温が維持されやすいことを意味する。そのため、海洋貯熱量は将来のエルニーニョ現象を予測する上で重要な指標となる[1]。海洋貯熱量はエルニーニョ・ラニーニャに同期して変化を示す。発生・収束に先行して現れることもあるが、MJOよりは相関性が低い。太平洋・インド洋赤道域0〜300m水温の平年偏差の経度-時間断面図などから変化傾向を割り出す。
長期変化傾向
全球の海面から深さ2000mにおける海洋貯熱量は、長期的に増加している。2022年の貯熱量は1955年から約47×1022J増加した。この間、海面から深さ2000mまでの平均水温は約0.16℃上昇した[2]。
海洋貯熱量の増加率は、1990年代半ばからはそれ以前と比べて大きくなっており、1993年の前後で比べると、1993年以前は10年あたり約3.9×1022Jだったのが1993年以降は10年あたり約10.0×1022J となり、増加速度がおよそ2.6倍となっている。海洋貯熱量の増加率の上昇については、IPCC第6次表報告書(2021)でも、1993年以降、特に2010年以降に増加していると報告している[2]。
また、海洋表層(ここでは海面から深さ700m)と中層(ここでは深さ700mから2000m。海洋の平均深さは約4000m)で比較すると、それぞれの貯熱量の増加量は、約30×1022J、約17×1022Jとなっている。このことから、地球温暖化の影響が海洋表層のみならずさらに深い層まで及んでいることがわかる[2]。