『高僧伝』(こうそうでん)は、一般名詞として、高僧の伝記、あるいは列伝を指して言う場合もあるが、固有名詞としては、中国の梁の慧皎(497年 - 554年)の撰した中国伝来以来、梁代までの高僧の伝記を集めたものを指す。全14巻、519年(天監18年)成立。また「梁高僧伝(梁伝)」ともいう。
概要
慧皎以前にも、梁の宝唱撰の「名僧伝」のように数種の僧伝が既に存在していたが、慧皎は、それら先行する類書の編集方針に満足できず、自ら新たに「高僧伝」を撰しようと思い立ったと、巻末に収められる自序において述べている。具体的には、「名僧伝」等は、世間で有名な僧、あるいは著名な僧の伝記を集めている。しかし、仏教の教えの観点から言えば、たとえ無名であっても、優れた僧、高僧はいるはずである。そういった僧の伝記が失われてしまうのを恐れて、「高僧伝」という名を立て、また、その観点から見て相応しいと判断した僧の伝記を収録した、と述べているのである。
収録されるのは、後漢の永平10年(67年)から、梁の天監18年(519年)までの453年間に及ぶ期間の高僧257名と、附伝243名の伝記である。
十科分類
また、慧皎は本書を撰するに当たって、新たに十科の分類を立てた。すなわち、
- 訳経 - 仏典翻訳
- 義解 - 教理解釈
- 神異 - 超能力
- 習禅 - 瞑想
- 明律 - 戒律研究
- 亡身 - 自傷供養即身仏
- 誦経 - 経典暗唱
- 興福 - 社会福祉
- 経師 - 宗教音楽
- 唱導 - 教化説法
である。この十科分類は、その名称には変遷が見られるが、その後の道宣の『続高僧伝』、賛寧の『宋高僧伝』等の高僧伝類に受け継がれることとなる。また、十科分類とは言っても、後代の場合とは異なり、この時代では、その大半は「訳経」と「義解」に分類される僧たちによって占められていた。
テキスト
- 『大正新脩大蔵経』巻50「史伝部2」
日本語訳
参考文献
- 『梁高僧伝索引』 牧田諦亮ほか編 (京都:平楽寺書店、1972年) - (『中国高僧伝索引(1)』)
- 紀贇 『慧皎 〈高僧伝〉研究』(上海古籍出版社、2009年)、(ISBN 978-7-5325-5140-8)。現代中国語文献