チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔; 学名: Datura metel)は、ナス科の植物。園芸用にはダツラ、ダチュラの名で広く流通しているほか、マンダラゲ(曼陀羅華)、キチガイナスビ(気違い茄子)、トランペットフラワー、ロコ草などの異名もある。原産地はアメリカ合衆国テキサス州からコロンビアにかけてである[1]。日本へは、江戸時代(1684年)に薬用植物としてもたらされ、現在は本州以南で帰化・野生化したものが見られる。日本に渡来したのはシロバナヨウシュチョウセンアサガオよりも前だが、国内の個体数は少ない傾向にある[2]。
形態
多年草。草丈は1メートルほどで茎はよく枝分かれする。葉は大型の卵型で、長さ10-20センチメートル、幅7-15センチメートル。夏から秋にかけて長さ10-15センチメートルほどの漏斗状の白い花を咲かせる。がくは筒状で、長さ4-5センチメートル、先が5つに分かれる。果実は球形で直径3-5センチメートル。短いとげが多数付いており、中に多くの種子が入っている[2]。熟すと割れて種子を飛ばす。
毒性
有毒植物で、経口後30分程度で口渇が発現し,体のふらつき、幻覚、妄想、悪寒など覚醒剤と似た症状が現れる。成分はヒヨスチアミン (Hyoscyamine)、スコポラミン (Scopolamine) などのトロパンアルカロイドなどである。
中毒事例
人間との関係
薬用植物
チョウセンアサガオの薬効は、古くから知られており、中国明代の医学書「本草綱目」にも、患部を切開する際、熱酒に混ぜて服用させれば苦痛を感じないとの記述がある。ベラドンナやハシリドコロなどと同様にアトロピンを含んでおり、過去には鎮痙薬として使用された。世界初の全身麻酔手術に成功した江戸時代の医学者である華岡青洲は、本種を主成分とする麻酔薬「通仙散」を使用していた[2]。このことから日本麻酔科学会のシンボルマークに本種の花が採用されている。ほか、市販の医薬品内服剤(錠剤)「ストナリニS」(佐藤製薬)にダツラエキスが12mg配合されており、「副交感神経を遮断するダツラエキス配合でつらい鼻水、鼻づまりの症状を緩和します。」とある。[1]
薬用植物で毒性も著しく強く、「キチガイナスビ」といった別名を持つ。近年ではエンジェルズ・トランペットの名で園芸店で販売されている場合もあるので要注意である。
名称など
和名のチョウセンは特定の地域を表すものではなく、「在来種、日本のものによく似ているが少し違う」という意味での命名である。また、アサガオの名を冠してはいるが、チョウセンアサガオはナス科に属し、ヒルガオ科に属するアサガオとは別種である。単に花がアサガオに似ていることによる命名である。
なお、キダチチョウセンアサガオ属は、木本化する多年草のグループであり、明確に種類の異なるものである。
出典
- ^ POWO (2019). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:314739-2 Retrieved 31 August 2021.
- ^ a b c 竹松哲夫、一前宣正『世界の雑草 Ⅰ -合弁花類-』 1巻、全国農村教育協会、1987年、455-456頁。ISBN (4-88137-031-6)。OCLC 672705102。
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 179
- ^ チョウセンアサガオに接木したナスによる食中毒事例 食品衛生学雑誌 Vol.49 (2008) No.5 P376-379
関連項目
外部リンク
- チョウセンアサガオ - 厚生労働省